【名前】東方仗助
【出典】ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない
【性別】男
【名ゼリフ】
「スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃……!!」
「“治す”のはよォ~~~~ コイツで最後だ。
『バネ足ジャック』は、二度蘇るッ!!」

【人物】
M県S市杜王町のぶどうヶ丘高校に通う高校一年生。リーゼントに学ラン姿で、いわゆる不良学生であるが、気のいい性格をしており、仲間思いの人情家。ただし、尊敬する人物に倣った自らの髪形をけなされると激昂して手がつけられなくなり、格上や目上の相手でも容赦なく攻撃する厄介な面もある。
可視化された超能力の一種である「スタンド」の使い手で、人型のヴィジョンに強力なパワーとスピード、さらに手で触れた対象を「直す(治す)」能力を備えた「クレイジー・ダイヤモンド」を持つ。

【本ロワでの動向】
 吉良吉影との戦闘やその決着について言及していることから、四部本編終了後からの参戦であると思われる。

 首に装着された「爆弾」に苦々しい懐かしさを覚えながらも、生きて会場から脱出することを決意。ひとまずは同じ考えの仲間を見つけようと歩いていたところで、不良怪獣ゼットンと遭遇する。
 明らかに人間ではないその姿を警戒するが、ゼットンの立ち居ぶるまいから害意のなさを感じ取り、また、ゼットンによって物陰に隠されていた柊つかさが出てくるに及んで、三人で対主催のチームを組むこととなる。

 なお、合流時にはゼットンとつかさの仲の良さから二人を恋人同士だと勘違い、その絵面に思わず「スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃……!」の迷台詞を吐いている。つかさの説明で誤解は解けたものの、元の世界でのゼットンの事を聞いて、「結局(彼女)いるんじゃねぇかよォーっ」と言った後、「俺けっこう純愛タイプだからなあ~~女の子の“ハント”とかできねえしよお~~」とぶつくさ呟くなど、早くもコメディリリーフとしての一面を見せた。

 元の世界で不良学生をやっていた同士だからか、ゼットンとは妙にウマが合い、つかさの通訳なしでもすぐに打ち解けてしまった。会話の中で出た一言で、反射的にパシリに出かけようとするゼットンに仗助がツッコむ、というのが、初期のお決まりパターンである。

 また、つかさに対しては、あまり出会ったことのないタイプだとの認識(まあ、山岸由花子を筆頭とするジョジョ世界女子に、「らき☆すた」みたいな子がいるわけがないが……)。「『スっトロい!』というのが率直な感想」らしく、日常系ならではのその雰囲気にペースを乱されることしばしばであったが、共に過ごす中で、こんな過酷な殺し合いの場でなお懸命に前を向き、恐れられがちなゼットンの心の支えになり続けていることや、また、自らの髪形について、持ち上げるでも貶すでもなく「仗助君らしい」と言ってくれた事実などから、ある種の尊敬の念を抱いている。「不思議な包容力」という点では、両者似た部分があると言えるだろう。

 一方、その次にチームに合流した不良貴族――ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイドとのファーストコンタクトは最悪で、警戒しつつも軽い調子で話しかけた仗助に対し、口の悪いウォルターがいきなり「クロケット頭」と揶揄の言葉を投げたためにロワでの初プッツンを披露。居丈高なウォルターをクレイジー・ダイヤモンドでぶちのめし、暴れるところをゼットンに止められるという事態となった。
 合流後もウォルターとは何かと衝突し、意地を張り合っている。
 ちょっとした言い合いから後に引けなくなったためにトランプを用いた賭けに発展、蒸気機関車正面衝突パーティーなど数々のイカレた経歴を持つウォルター相手に冷や汗をかきながらイカサマを仕掛け、ジョジョ本編張りの心理戦(ただしロワとは関係ない)を繰り広げたりもしていた。(そしてこの手の衝突のたび、最終的には二人してゼットンに止められる、というのがまたお決まりのパターンとなっていた)
ただ、チームとして困難を潜り抜けるうちに、ウォルターは仗助の本質を見抜き、また仗助もウォルターに一目置くようになり、憎まれ口を叩き合いながらも有事には不思議なコンビネーションを発揮。空条承太郎や岸部露伴、虹村億泰、広瀬康一などとはまた違う、「年上の悪友」とも言うべき関係を形成していた。

 中盤で出会ったフツオ(ザ・ヒーロー)と今泉影狼コンビとは、当初は一時的な協力関係を取るというだけのはずだったのが、マーダーとの戦闘や、「アルターの黒い森」での怪物戦などを経て結局は合流し、特にフツオとは、最後の最後まで一緒に戦い抜くこととなる。
 原作、そしてこのロワの会場で失ってきた色々なものの影を抱えるフツオに、最初こそ近寄りがたい雰囲気を感じていたものの、影狼やウォルターの仲介、そして何より、戦いの端々で、その重苦しい雰囲気の底に秘めた仲間への思いと自らの決意を覗かせるフツオの姿を見て、一人の友人として接することを決める。
 頭脳担当としてシリアスになりがちなフツオにゼットンを巻き込んで茶々を入れたり、ウォルターともどもたちの悪い冗談合戦に引き入れたりする仗助。フツオは困惑し、様々な疑問を投げかけるが、難しいことは“頭悪い”からわからない、と、億泰の口癖を引いて、ただ「お前は俺の『トモダチ』だ、それでいいんじゃねーかな」と言ってみせた。それは、このロワイアルの会場、善悪や正邪の混沌の中で、考えることを「放棄」するのではなく、むしろ信じたいシンプルな答えを手繰り寄せるために行動し続ける、という、仗助なりのスタンスの表明でもあった。
 その言葉を聞き、フツオは、コーヒーを入れる。いつかの世界で、彼がそうしたように。
 皆でそれを飲みながら、彼らはここで新たにできた繋がりを確かめ合った。


 こうして、「奇妙な日常風景」を共にした六人は、主催打倒に向けて行動していくことになるのだが――――ここはバトルロワイアル。その「日常」が、当然ながらいつまでも続くはずはない。


 最初に倒れたのはウォルターだった。
 中盤、フツオとの連携でフレディ・クルーガーを撃破した「バネ足ジャック」は、続けて発生したゾンビ騒動の中、避難所へ来襲したフランシス・ボーモンを、傷を抱えたままたった一人で迎え撃ったのである。
 フツオ、影狼とともに、避難所を包囲しようとするゾンビたちを掃討していた仗助は、避難所へのマーダー奇襲の報を聞き、すぐにそちらへ向かった。血だまりの中に倒れているウォルター、そばに膝をついたつかさとゼットン、嫌な予感が的中する。しかし、仗助にはクレイジー・ダイヤモンドがある。二人を押しのけ、すぐにスタンド能力を発現させた。

 「趣味の悪い冗談はよォ~~、いつものホラ話だけにしてくださいよ。……おら、さっさと起きんだよ、ウォルター!」

 しかし、傲岸不遜にして奔放な不良貴族は、閉じたその目を開かず、二度とあの耳障りな笑い声を上げることはなかった。
 『生命が終わったものは戻らない』。
 誰よりも自分自身がよく知っている、そのルールを胸の内で繰り返し、嗚咽を上げるつかさの声を背に聞きながら、仗助はただ両こぶしを握りしめた。

 そして、これを皮切りに、「この世のどんなことよりも優しい」能力を持つ仗助は、次々とこの不文律の無情さを噛みしめることとなる。

 次に犠牲となったのは、不良怪獣ゼットン。不良チームのツッコミ役にして、この会場で仗助と一番最初に友達になった、不器用な宇宙恐竜。
 終盤へ向かう局面で、対主催者たちに立ちふさがった強マーダー・ゾフィーとの、他者の立ち入れない凄まじい戦闘の中、彼は、あれほど強く抱いていた「仲間たちと愛する彼女のいる町へ帰る」という願いを手放して、つかさの盾となり、その命を散らしてしまった。
 この時も仗助は、ゼットンが息絶えるまで、何もすることができなかった。
 爆散するまでめちゃくちゃにしたゼットンの遺骸を前にして、「正義」を掲げ高笑いするいびつな光の戦士の声を聞き、無力さと怒りに震えながら、それでもつかさに駆け寄り、敵討ちを誓う。殺される前、ゼットンはコスモテクターを破壊しており、仗助はその穴を、メタルウルフを奪取したマイケル・ウィルソンと共に突いたのである。
 ……大統領が地に引き倒したゾフィーのカラータイマーへ、つかさの声を受けた仗助が6レス分のドララララッシュをぶち込むシーンは圧巻。

「ゾフィー。てめえの敗因はたった一つ。てめえは『俺達』を怒らせた……!」

 しかし、この空しい勝利の後、振り返った仗助が目にしたのは、もう一人のマーダー・ブラックロックシューターの放った流れ弾によって、言葉を残す間もなく、粉々に吹き飛ぶつかさの姿だった。

 何が起こったか分からない。おそらく、読み手も同じであっただろう。

 爆風をかき分け、ウォルターが、ゼットンが、命を懸けて守り抜いた優しい少女の、原形をとどめない肉片を前にして、ついに仗助は膝をつく。
 半ば無意識に、クレイジー・ダイヤモンドの拳が空を切ると、柊つかさは、いつもの姿を取り戻した。
 あくまで、見た目だけは。

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!」

 叫びだけを残し、ひとまずの戦いは終わる。

 主催戦へ向けてせめても互いをねぎらおうと催された宴会の場では、仗助はいつもの調子で振舞っていた。
 しかしフツオだけは、仗助が無理をしていることを知っていた。誰もが同じように誰かを失っているこの場で、自分だけが感情を露にし、士気を下げてはならないと。
 だから、慰めるでも、叱咤するでもなく、彼はコーヒーを入れて、仗助に差し出す。
 カップから立ち上る香りが、ほんの少し前にあったはずの光景を思い出させる。


 「うわぁ、美味しい~!私、苦いの苦手なんだけど、すごく美味しいよー、フツオくん!」
 「……母さんがね、好きだったんだ。拘りのある人で……いつも同じ店のコーヒー豆ばかりを買ってたよ。母さんに認められるコーヒーを淹れられるようになるまでは、随分苦労したっけ……」
 「……。美味しいよ、フツオ。すごくあったかい」
 「…………」
 「おいフツオ、うちの屋敷に来な。メイドたちにこいつの作り方を伝授してやってくれ。そうすりゃあ、つまらない胡麻すり野郎の溜まるコーヒーハウスになんざ、誰も行かなくなる」
 「あっ、ダメ!フツオは私と一緒に行くんだから!」
 「ゼットーーン……ピロロロロ……」
 「ね、ゼットンくんも、おいしい、って」
 「……うん、わかる。わかるよ」
 「こりゃ俺も、カフェ・ドゥ・マゴにしばらく行けねーな。
 やっぱり家にオメーを引っ張ってくるしかね~かなァ~~(ウリウリ」


 ……それは、かつて仗助がフツオにかけた言葉と同じ、フツオから仗助への、気持ちの表明。
 彼らのことを、共に過ごした日常を、忘れて押し隠してしまうことはない、という言葉でない言葉。
 温かなコーヒーをすすりながら、何度も袖口で目元をこする仗助。
 影狼と寄り添ったフツオは、静かにただ、そんな「トモダチ」の隣に座っていた。


 その後、ダークザギ戦を経て、局面は主催との全面対決に突入していくが、最終決戦における仗助はまさに「回復の鬼」で、大統領に機動力や防御面での協力を受けつつ、傷ついた仲間を次々と治療し、身体的には一般人でありながら、チート揃いの戦場の中でのサポートの一翼を担う。「死なせない」。その一念に突き動かされ、仗助とクレイジー・ダイヤモンドは走り続けたのである。

 そして、皮肉にも、そんな仗助が――人間讃歌を紡ぐ黄金の精神が、この殺し合いの最後の局面で相対したのは、人間の血の歴史が孕んだおぞましき「絶対悪」の化身・シックスであった。(→Shine On You Crazy Diamond ~Sail on the steel breeze
バネ足ジャックを破壊し、つかさとゼットンの絆を踏みにじり、強化された金属融合の能力と、仗助の能力を利用して、巨大に成長するシックス。
 しかし、仗助は、膨れ上がったその力ゆえに生じた隙を突き、壊されたバネ足を利用して、単身、鉄塊の巨人を打ち倒す。
 蘇った絶対悪を以てしても、仗助が仲間と紡いだ黄金の精神は、クレイジー・ダイヤモンドは、砕くことができなかった。

 そして、戦いは、バトルロワイアルは終わりを迎える。
 最終決戦の後、フツオと再会した仗助は、そこに影狼の姿がなく、フツオの胸に、彼女のブローチがあるのを見つけた。
 竹林に棲んだ優しいウェアウルフは、一度命を落としたフツオを救うため、フィアと共に彼のガーディアンとなり、消滅したのだ。
 二人だけになった「チーム不良」は、黙ったままで向かい合う。
 彼らのみならず、そこにいる者の全てが、失ったもの、その大きさを改めて噛みしめながら、立っていた。

 死者は帰ってこない。
 わかっていても、それでも。
 なんで、死なせてしまったのだろう。
 なんで、守ってやれなかったのだろう。

 現実と幻想を分つべくその身をささげた藤井蓮に、かつて仗助が呟いた問いへ、その時、蓮の代わりに、フツオが答える。

 「――――僕たちが神様じゃないからだよ」

 確かめるように、自らにも、言い聞かせるように。

 「それでも、僕たちは立ち上がって前に進まなきゃいけない。僕たちにできることをやるしかないんだ」

 その言葉にうなずいて、仗助は自らの掌を見つめた。
 死んで行った全ての者のために。そして、生きて行く自分たちのために。
 “To be continued”――「物語」は紡がれ続けねばならない。

 エンディングまでの束の間を、仗助とフツオは、いつものように笑いあって過ごした。
 訪れる別れを前に、それでももう、涙は見せない。
 いつ、どんな場所に居ようとも、この場所で紡いだ絆、過ごした日々の思い出は、決して消えはしないのだから。

 「ありがとう、仗助。――――元気で」
 「ああ。――――またな、フツオ」

 友と過ごした「奇妙な日常」を胸に刻み、東方仗助は、杜王町へと帰還した。

 歴代ジョジョの中では、その能力と立ち位置からか、主人公らしくないと言われがちな仗助だが、このロワにおいては、仲間の死を幾度も経験し、悩み苦しみながらも、常に他者を癒し支える柱となって、「この世の何よりも優しい」力を持った主人公ならではの信念を貫いてみせた。
 その思い、その姿、砕けないダイヤモンドの魂は、混沌ロワイアルの中でも、ひときわ強く輝いた主役格の一人だと言えるだろう。



エピローグ
 書き手自ら、半ば没扱いにしたエピローグではあるが、杜王町立図書館を訪れる仗助の姿が描かれている。
 本棚から抜き出した『ロンドンの怪奇事件』(『黒博物館スプリンガルド』執筆のきっかけとなった、バネ足ジャックの紹介されている本)のページを繰り、『真・女神転生』のソフトと『東方輝針城』のコピー、『らき☆すた』のコミックス、『ウルトラゾーン』DVDをそれぞれ袋に入れた仗助は、居合わせた康一と億泰に訝しがられながら、窓の外の空を見上げ、そっと笑う。
 ――――いつか、“自由人狂騒曲”の鳴り響くどこかの世界で、仗助が彼らと邂逅する、そんな風景も。もしかしたら、あるのかもしれない。
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最終更新:2024年01月21日 00:21