「ヴァルホークが幻想入り」




第126季 皐月4日

いつも神社の日誌を付けている早苗に代わり、今日は神奈子が書く。
というのも朝起きたら早苗の姿が神社の何処にもなく、
日付の変わる直前である今まで帰って来ていないからだ。
参拝に来た天狗や河童たちも今日は早苗を見ていないという。
これまで何の連絡も無しに家を空けるということはなかったので、心配だ。

嫌な予感がする。

第126季 皐月5日

早苗が帰ってこない。
諏訪子と手分けして私の知る限りの幻想郷の主だった人妖に事情を話し
捜索を依頼したが、早苗は幻想郷の何処にも居なかった。

事態は予想以上に深刻であった。
聞けば、竹林の医者の弟子の玉兎も昨日から姿が見えないという。
ついでに麓の神社周りをフラフラしている宵闇の妖怪も。
もしやと思い冥界や旧地獄なども当たってみたが、音沙汰は無かった。
なぜ早苗たち3人は姿を消したのか?
私なりに共通点などを考えてみるが……てんで思いつかない。

異界からの人さらいを疑うスキマ妖怪に、外界の捜索も依頼した。
何と異世界や並行世界の協力者と共同しての大捜索だったらしい。
だが、捜索から帰ってきた紫は……。

「あんなのに『見なかったことにしよう』なんて言われたら、
 黙って帰るしかないじゃない……勝てるわけないでしょう、あんなの……!」

……などとつぶやきながら、屋敷の隅で頭を抱えて小さくうずくまり、震えていた。
『あんなの』とは一体何なのか。
早苗たちをさらい、幻想郷を脅かす存在はあの八雲紫を
ここまで怯えさせるほど強大なのか。
だとしたら、その存在を目にすることもできない我々は何たる無力な存在か。
神たる存在の我々が、家族の一人も取り返せないとはなんというザマだ。
悔しさと歯がゆさに打ちひしがれつつ、
紫のように外界に出られるわけでもなく、
何の手立てもない私はヤケ酒をあおって床につくしかなかった。

第126季 皐月6日

夢を見た。諏訪子と共に何者かに呼び出される夢。
呼び出されたのは我々だけではなかった。
一際目を引く緑色に輝く巨大な人型ロボットの他、
実に多様な姿かたちをした者たちが呼び出された。
そして、それらは全て我々と同様の信仰の力を帯びていた。
呼び出された先は、巨大な兵器と未知の異能と悪魔の合唱が飛び交う、
地獄のごとき戦場だった。
私と諏訪子は呼び出されるままに、目の前に現れた巨大な機械の怪物に攻撃を仕掛ける。

「へへっ、ありがてえ。
 俺の知らない世界じゃあ、モビルスーツまで神様扱いされてんだな。
 向こうのアレはガンダム・タイプのようだが、
 今オレたちを助けてくれたのは……
 大砲を背負ってるから、さしずめガン・キャノンって所か」

……ガンキャノンとは私の事か?
私の背後で倒れ伏すロボットの中の声にそう突っ込もうした瞬間に、気付いた。
早苗がいる!あの中に!
状況は全く把握できないが、私が目の前に迫る者と戦う理由はそれだけで十分だった。
諏訪子ほか、呼び出された神々と共闘し、早苗に近寄る敵を食い止める。
するといつの間にか現れた、鎧を纏う白塗りの悪魔が無数の残像を残しながら飛び回り、
(信じがたいことに)3体の敵を一緒くたにして犯していた。
その間に体勢を立て直す早苗の仲間たち。
重傷を負っていたはずの青年が最期の力を振り絞って時を止め……

それからは、刹那の出来事だった。
あまりに多くの事が同時に起こりすぎ、私の頭が理解を拒んだ。

黒い巨大な鳥が敵のうち1体を魔法陣に引きずり込み、
戻ってきたと思ったら首に血まみれの短刀を手にした学生を乗せていた。
早苗と少年の乗っていたロボットは神霊と化した早苗の力で立ち上がり、
ひときわ巨大な獣の機械を道連れに光となった。
銀髪の青年が召喚した竜に何十人もの死者達の霊が宿り、
最後に残った男をどこともつかぬ所へと押し込んでいった。
死者達の中には早苗の姿もあって、ふとこちらに気がつくと振り返って
「ごめんなさい」と口を動かしたのが見え、そのまま竜とともに行ってしまった。

何が何だか理解できなかった。理解など、したくなかった。
全てが夢のようだった。

昼過ぎにようやく目を覚ますと、紫が神社に報告に来ていた。
紫はあの後どうにか気をとり直し、早苗たちの再捜索に向かっていたのだ。
紫の報告は概ねこうだ。
  • 早苗たちは連れ去られ、バトルロワイアルと言う名の殺し合いに参加させられていた。
  • 紫達は昨日その会場に突入を試みたが、ある途方も無い力の持ち主に追い返されて、やっと潜入できたのが今日になってからである。
  • 先ほど潜入した会場にすでに生きている者は無かった。死体と、考えるのをやめたものしかいなかった。
  • 発見された死体のうち、幻想郷に関係があったのは死姦された鈴仙の死体と、ルーミアの死体だけだった。
  • 会場全域で大規模な戦闘があったようだが、最も新しい2箇所の戦場跡のうち片方は主催者の本拠地と思しき場所であった。
  • 主催者は参加者たちの反乱によって倒されたか逃げ出した。生き残った参加者もすでに各々脱出したと考えられる。

「だから、あの風祝が今になっても戻ってこないということは
 ……言いにくいことだけど……もう……」
「待った」

諏訪子が紫の言葉を遮った。
そして、私が見た夢と同じ内容をそっくりそのまま話し始めた。
ゆうべの夢は、夢ではなかった。
どこかで、確かに現実にあった光景。
バトルロワイアルの会場に呼び出された私たちの分霊が見ていた光景だったのだ。

……早苗はもう、戻ってこないのだ。

第126季 皐月△日

守谷の信徒たちとその他早苗と親しかった人妖たちを集め、
ささやかな葬儀を行った。
早苗は現人神であるが、人と同じ長さしか生きられない。遠からぬうちにこの日が来る。それが思ったより早く来てしまっただけのこと。
そう無理矢理納得して、これからのことを考える。
次代の風祝をどうするか。麓の神社のように、素質のありそうな捨て子を拾ってくるか。
いやその前に、当面の間の人里への営業は誰に行かせようか。
諏訪子は目立つのは好まないし、天狗たちは元々の仕事が忙しい。
河童たちは人見知りが激しいから論外。あの地獄鴉は……もっと論外。
他にいるのは……あ、私か。明日から忙しくなる。今日はもう寝よう。
明日起きたら人里に降りる事を諏訪子と早苗に伝えなければ。

……早苗はもう居ないんだった。

第126季 皐月□日

早朝、私はものすごい音で叩き起こされた。
オンバシラを天界から百本まとめて石畳にたたきつけたような音。
あの鳥頭、また火力の調整を誤ったか?
それとも暇な天人が今度は守谷を狙ってきたのか?

寝床を飛び出して表へ出てみると、
境内に真新しいクレーターができていた。
白煙と土煙の立ち上るその中心を見下ろすと、
そこには巨大な人型のロボットが横たわっていた。
青・白・赤のトリコロールカラー。スリムで直線的なフォルム。
右手にはライフル銃のようなもの、左手には盾を携えている。
いかにもアニメの花形として出てきそうなロボットだ。
どこかで飾られていたハリボテが忘れ去られて幻想郷に流れ着いたのだろうか。
ともかく境内をこのままにはしておけない。
当初予定していた人里への営業は取りやめ、境内の復旧作業にかかることにする。

轟音を聞きつけて集まってきた山の妖怪たちに手を借り、復旧作業は進んでいく。
人間離れした筋力の妖怪たち、数十人がかりで
クレーターの中からロボットを引っ張りあげていく。
ハリボテかと思ったら意外に重いのだな、コレ。
機械オタクの河童達がロボットを見て目を輝かせている。
どうやら、処分先にも困らなさそうだ。
この場に早苗がいたら、やっぱり同じ表情を見せるのだろうか……。

それにしても、外界のモノが無縁塚以外に流れ着くのは珍しいことだと聞くが。
まあ、細かいことはいい。
さっさとこのデカブツを河童たちに売り払って、
次はクレーターの埋め戻しにかからなければ。
私は、天狗の新聞記者よりも早く、
一番乗りに神社に駆けつけたリーダー格の河童に値段を提示した。

「ひゅい!?……こんな値段?無理ですよぉ。」

流石にふっかけ過ぎたか?
それならば、と、先程の6割程の値を示す。
すると、河童は急に怒りをあらわにした。
値段の付け方がテキトー過ぎたのがまずかったか。

「神奈子様……あの子を鉄でできたハリボテか何かだと思ってるでしょう!」
「違うのか?」
「私の見立てですけど、あの子、
ついさっきまでは元気に動いていたシロモノです!
直せばまた動くんですよ!……せめてコレぐらいは出させて下さい!」
「……河童のお前に、いや、幻想郷のどこにそんな大金があるんだ」

妖怪の山に他に置けそうな場所が無いということもあり、
結局ロボットは河童たちに引き取られることなく
本殿の裏に寝そべることとなった。
鳥居をくぐって本殿の方を見るとロボットの頭と足先がのぞき、すごく目立つ。
アレを見た参拝客が逃げ出さなければ良いが。

まあ、あのロボットが実際に立って動いていたというのなら、
将来、技術革新の神を目指す私としては、それはそれで興味深い。
河童たちに混じって、色々調べてみるのも面白いか。


第126季 皐月●●日

もう何日ロボットについて調べていただろうか。
その間、この日誌以外にも神社のことを全て諏訪子に任せきりにしてしまっていた。
彼女にはしばらく頭が上がらないな、こりゃ。

それにしてもあのロボットは一体何なのだろうか。
こんなことを神や妖怪が言うのもおかしな話であるが、
動力に材質に構造に装備、何から何まで未来世界が舞台のフィクションから
飛び出してきたようなものばかりである。
だが不運なことに、コクピットの中のコンソールが故障してしまっていて
全く手出しできなかった。
これではこのロボットを動かすことなどできないし、
記録されているデータさえ読み取ることができない。
あの河童は、何十年かかっても必ずこの子を直してみせる、なんて言っているが……。
結局数日かかって分かったのは、このロボットが

“Valhawk”

と名付けられていることぐらいだった。
このロボット……ヴァルホークの解析には、長い時間が掛かりそうだ。

第126季 皐月●▲日

山の妖怪たちを監督しながら境内のクレーターの穴埋め作業をしていると、諏訪子に
「神奈子、そういう仕事すると本当にサマになるねー」
と笑われた。
うるさい、気にしてるんだよ。一応私も女だ。
悪かったな、女子力が足りなくて。

……そうじゃなくて、大事なのはこっちだった。
数少ない人里から参拝にやってきた信者から、
本殿の後ろに横倒しにしてあるロボット……ヴァルホークについて聞かれたのだ。
守谷に鉄の巨人が降ってきたという噂はすでに人里まで届いていたらしい。

もしかしてこれは…ウケるのか?



第12△季 ▲月▲日

新たな入信者たちの支援もあり、守矢神社の新たな本殿が完成した。
ヴァルホークが立った状態ですっぽり収まる、巨大な木造の格納庫だ。
ヴァルホークが守谷神社に降ってきて以来
物珍しさで参拝客が大幅に増えたのはもちろんであるが
守谷の入信者の数も増加してきている。
外界から幻想郷に移り住んだ我々がそうであったように、
新しくやってきた異邦人のヴァルホークが
幻想郷に新たな風をもたらすと信じられているからであろう。

実際、ヴァルホークの機構の中でも最も現代の技術と近しかったレーザー砲は
すでに河童たちの手を借りて解析を始めている。
このまま行けば数年の間にレーザー砲のレプリカが完成しそうだ。





第▲☆☆季 □月■●日

今日、プラズマドライブの実験プラントがようやく完成した。
ヴァルホークが守谷に流れ着いてから何年の月日が流れただろうか。
あのロボットによりもたらされたテクノロジーは、
幻想郷の人妖の生活を大きく変えた……という程でもなかった。
あのプラズマドライブも
エネルギー密度だけでいえばあの地獄鴉に託した核融合反応に及ばないし。
河童たちって、技術を開発するのは得意でも、量産化して広めるのは苦手なのよね。

それでも、手のひらサイズまで小型化されたレーザー銃は、
今では護身用の武器としては妖怪よけの御札よりメジャーで、
威力の加減が可能なので、あの銃で弾幕ごっこを行う者も出始めていると聞く。
また、加粒子ビーム砲をもとに開発された工作機械は、
今では河童の金属加工の現場に欠かせないものとなっている。
私は今、着実に技術革新の神としての道を歩み始めている。
……ヴァルホークの方が信仰が集まっている気もしないではないが。

このプラズマドライブの解析をもって、
ヴァルホークの主なテクノロジーはほぼ解明されたことになる。
あとは、コンピューター……ヴァルホークのシステム周りの解析が残っているのみだ。
機械の解析に比べると、内蔵されているデータの解析作業は一向に進まない。
この手の暗号解析は数字に強い八雲の天狐にも手伝いを依頼しているが、
他の部分のデータとは全く系統の異なった、解析不能な箇所が出てきており
どうしても作業が進まないという。
……この記号の並び、何処かで見た気がするのだが……。

それでもいつの日か、何としてももう一度ヴァルホークを空に羽ばたかせたい。
私はあの技術オタクの河童ではないが、そう思う。
今になって気付いたが、それはヴァルホークが
あの日逝ってしまった風祝と入れ替わるようにして
守谷にやってきたせいかもしれない、と思うのだった。



第▲☆★季 ●月■☆日

きっかけは、ある宴会の席だった。
ほろ酔い気分で冥界の管理者、妖怪寺の住職、
などといったいつもの面子と話していると、ヴァルホークの話題になった。
件の箇所の解析が一向に進まないといって話のタネにデータを見せて回ったら
竹林の医者が興味を示した。
確か彼女の専門は医学・薬学だったはず。
彼女がいくら天才と称されているとはいえ、プログラミングは畑違いのはずだが……。
まあダメでもともと、彼女にデータを託してみることにした。

そして今日、永琳が久しぶりに守矢神社を訪問してきた。
彼女は、何か小さなタツノオトシゴのような物体を試験管に入れて持ってきていた。
先日託した例のデータの解析の成果が、この物体……ヒトの胚だというのだ。
ヴァルホークのデータに残された解析不能データは、
ヒトの遺伝情報だったのだ!
ヴァルホークの元々の乗り手が手足を失うなどの大怪我を負った際は、
このデータをもとに治療を施したのだろう。

では、この胚を培養し育てることができたら、ヴァルホークの元々の乗り手、
カズマ・アーディガン(……何処か別の場所でも見た名だが……)、
のクローンと対面できるというわけか?と聞くと、
永琳は首を横に振った。

「落下の衝撃のせいか、あるいは長い間放置されていたせいか、
 データには半分ほど欠損があったのよ。
 そのままではとても人の形に育つ状態にはなかったから、
 足りない部分は別の人の遺伝子で穴埋めさせてもらったわ。」

……今さらっとものすごいことを言わなかったか?
だが、その後の発言が、更に私を驚愕させた。

「ずっと前、ウドンゲや風祝の子がいた頃のこと、覚えてる?
 その頃に健康診断で採血した風祝の子の血液が冷凍保存されてたから、
 それを使わせてもらったわ。
 そして今日、やっと胚まで育つサンプルができたのよ!」

……何だって!!?



第▲☆★季 ◇月●▲日

例の胎児は無事健康体で育ち、今日産声を上げた。
元気な3700グラムの女の子だ。生物学的には、早苗と、ヴァルホークの乗り手…
カズマ・アーディガンという少年の間に生まれた子ということになる。
永琳が言うには、
幻想郷の様々な人妖の遺伝子で欠損の補完を試したが、結局上手く育ったのは
冷凍庫の奥底に眠っていた早苗の遺伝子を用いたサンプルだけだったという。
結局私は、せっかく奇跡的に生まれた命を無碍に処分してしまうわけにもいかず、
なし崩し的に培養を許可してしまった。

最初は早苗の遺伝子を勝手に使って
何をやっているんだ、このマッドサイエンティストと永琳に突っかかったりもした。
だがあの子が大きくなっていくにつれ、
その成長を楽しみにしている私がいるのがわかった。
私は、いつの間にか早苗が生まれた頃のことを思い出していた。

生まれた子供は、私たちが引き取って守矢の子として育てたい。
そのことを永琳に伝えると、彼女は少し残念そうな顔をしたが

「いいわよ。……最初からそのつもりだったし。
 今のあなた達のはしゃぎ様を見ていると、
 永遠亭で引き取ってゆくゆくは私の弟子にしたい、なんてとても言えないわね。」

と、了解してくれた。

さて、まずは……この子に何という名前をつけようか?



第▲▲◇季 ◇月●●日

 明日はあたしの14歳の誕生日。
あたしの人生の二大イベントが待っている日でもあります。
一つ目は早苗お母さんが失踪して以来、ずっと居ないままだった風祝の襲名の儀。
そしてもう一つは、カズマお父さんを乗せてずっと昔に守谷に現れたヴァルホークの、
幻想郷での初フライトの日です。
この日のためにあたしは、
風祝の修行とシミュレータでの飛行訓練の二足のわらじで頑張って来ました。
いやあ、大変だったなあ。
……本当に、マジで、大変だったなあ……。
興奮してこれを書いている真夜中でも全く眠くならないのですが、
明日に備えてもう無理矢理にでも寝ることにします。

あっ、明日のヴァルホークの副操縦席、だれにお願いするかだけは決めないと!
思えば、いろんな人につきあってもらったんだよね。
風祝の修行も、シミュレータの訓練も……。
今まであたしはたくさんの人達に支えられて生きてきました。
あたしがこの世に生まれてくることだけでも、
偶然の上に偶然が無数に重なった末のことなのに。

あたしは、少し恵まれすぎているんじゃないだろうか。
あたしがこうして幻想郷に生まれてきたのは
もしかしたら神様が起こしてくれた奇跡なのかも知れない、とふと思います。

ていうかあたしも明日から神になるんだった。
……家族も知り合いも神様ばっかりだよ!

とにかく、あたしをこの世に生むように計らってくれた神様がいるなら
この場を借りてお礼を言わせてください。ありがとう。




「おめでとう。これにて無事襲名の儀を終えた○○○は
 人であると同時に神でもある存在……現人神となった。
 ……頑張ったね。」
「ありがとうございます、神奈子様。でもこの服まだ少し大きいですよ。
 それにすっごいスースーします。
 腋の辺りとか特に……風邪引いちゃいそうです。風祝なのに」
「けど、これからはもっと大変なんだよ?
 まずは麓の神社の巫女や……早苗みたいに、
 この服を真冬の空の上でも平然と着続けられるようにならないと
 異変の解決は務まらないよ?」
「うう、自信ないです……」
「○○○、アンタは私と神奈子が直々に仕込んだ風祝の子だ、
 早苗とカズマだけでなく、私と神奈子の遺伝子も入ってるんだよ?
 それくらい自信持たなきゃ。」
「……諏訪子様……
 ……蛙も蛇も寒さには弱いのですが……」
「神様の揚げ足取るとは何て子だい、この娘は。
 それより、空といえば午後の試験飛行の副操縦士はもう決めたのかい?」
「ええ。もう、決めています。飛行場に行きましょう」


「うおおおおお!
 これ、生で見るの、初めてです!エアフォースモード!」
「いつも本殿では人型だったからねえ。
 この形態はシミュレーターでの練習でしか見たことなかったんだっけ?」
「興奮するのもいいけどさ、副操縦士早く呼ばないと……
 候補者全員相討ちでKOしちゃうよ?」

「わちきを見て『ナスみたいな色の傘―!』って驚いて
 お腹いっぱいにしてくれる○○○に恩返しするのー!
 そんで、わちきが乗ってさらに人間をいっぱい驚かせるのー!」
「藍しゃまと一緒にコンピュータの修理手伝った私が乗るのー!
 本当は藍しゃまに乗ってもらいたいけど
 尻尾が邪魔で座席に座れないから代わりに私が乗るのー!」
「「○○○―!私とこの子どっちを選ぶのー?!」」
「ごめんね。今日は、」
「……え?私?」
「レイセン、お願いしてもいいかな?」
「えっ、私で、いいの?」
「だって、シミュレータの訓練、一番頑張ってたんだもん。
 ヴァルホークのデータに残ってた
 カズマお父さんみたいなエースになりたいって、いつも言ってたよね?
 シミュレータみたいに、戦闘はないけど……いいかな?」
「……うん!」

「じゃあ、みんな。
 ちょっと月まで試運転に行ってくるよ!」
「しかし、○○○はお父さん似だねー。
 こうやってコックピットで操縦桿を握る姿は
 データに残ってたあの子が、そのまま女の子になって髪を緑にしたみたいだ」
「そうですか、嬉しいです!満足です、諏訪子様」
「いいかい、○○○。
 くれぐれも、博麗大結界の外に出ちゃいけないからね?
 最近、外界は色々とキナ臭いから
 見知らぬ戦闘機が急に現れたら、いきなり撃ち落されるかも……」
「わかってますって、神奈子様は心配性だなぁ」
「あのっ、にとりさんたちっ、待ってますよ!」


「ミッションディスク、ブート!
 フライトプログラム、スタート!」
「にとりさん、お願いします!」

「カタパルト開放!行けるよ、○○○!」


「ヴァルホーク、エアフォースモード……行きます!」


【厨二ロワ カズマ・ア―ディガン&東風谷早苗 完】







256:Over the Fourteen -Final Game 8- カズマ・ア―ディガン
256:Over the Fourteen -Final Game 8- 東風谷早苗

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年11月23日 19:19