【名前】堕悪魔刃頑駄無
【名ゼリフ】「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!!」
【本ロワの動向】
 武者頑駄無シリーズで唯一3作品に出演し内2作品でラスボスを務めた、歴代屈指の巨悪であり数少ない純粋な悪の頑駄無の筆頭格。バンダイロワでは基本的に出展作の武者○伝準拠の描写がなされたが、時折見せる狡猾さと邪悪さは刕覇大将軍編を彷彿とさせた。もう一つの作品? そっちだと一話限定のゲストな上にかませだったんで……。

 ロワ開始直後、武王頑駄無に敗れ死んだはずの自分が生きていることに驚いたが、オープニングで集められていた人間や頑駄無たちの姿や反応を見て、すぐに主催者が、かつて魔刃が45人の歴代の正義の武者を時空を超えて集めたのと同じことをやったのだと見破る。同時に、枷として爆薬付きの首輪を嵌めるだけで洗脳などを一切行っていないことを疑問視する。
 少ない情報から現状を可能な限り把握した魔刃は、取り敢えずこれからどうした物かと思案に耽った。そこへ、背後から近寄る小さな人影があったのだが、魔刃の肩鎧についている物を見て仰天して大声を上げた。

なお「嫌ぁぁ! 虫ぃ~!」
魔刃「誰が虫だこらぁ! 待たんか小娘!」

 少女の叫びに反射的にツッコミを入れつつ一喝し、同時に魔界獣グレッシュを虫けらなどと見間違えて呼び称した罰として、緑川なおの右腕を容赦なく切り落とす。
 突如として右腕を失い、動転して悲鳴を上げ、涙を流しながら必死に止血をするなおの姿を見て、魔刃は哄笑する。同時に、やはり自分のやるべきこと、行くべき道はこれだと再確認し、殺戮者としてバトルロワイアルを彩ること、そしていずれは自分を利用しようとした鉄仮面のように、主催者どもを亡き者にしてその力を奪い取ってくれようと。
 その初手として魔刃は、敢えてなおにトドメを刺さずそのまま捨て置いた。武者軍団のようなお人好しに拾われれば、足手纏いの怪我人として大いに役立つだろうという判断だった。同時に、グレッシュから小さなサソリを一匹放ち、密かになおの足を刺し、微量の毒を盛っておいた。これで誰にも拾われずとも、2日の内には死に至るという算段だった。
 その後は移動しつつ各所を転戦していくことになる。特に最初に交戦した2人の剣崎――仮面ライダーブレイドとキュアソードはその実力を認め一時撤退し、実力では勝る魔刃を退散せしめた人の持つ想いの力を改めて痛感し、その想いの力を体現する者達、即ち武者頑駄無と仮面ライダーとプリキュアを何よりも警戒することとした。
 そして、魔刃にとってある意味での転換期となる事件、というかイベントが起きる。
 様々な対主催の面々が集まり開かれた料理対決。その中には魔刃とも因縁深い武者號斗丸の姿もあったのだが、魔刃はそちらよりも先に高級ホテル内部でスパイク・スピーゲルと乱痴気騒ぎを起こしていた。狭い室内だろうとお構いなしにファントムハーケンを振るい、壁や天井を紙切れのように切り裂き、銃弾も鎧で受けて跳ね返し、スパイクを確実に追い詰めて行く。しかし戦闘が食堂に至った所で、事態は一変する。食堂の奥の厨房を物色していた男が現れ、暴れるばかりが能じゃないなら杯酒解怨といこうじゃないかと、魔刃に酒を差し出して来たのだ。
 それはワインだった。しかもただのワインではなく、あの62年物の高級ワイン。魔刃の唯一の心残りだった、とっておきの一品だったのだ。
 他の酒ならばいざ知らず、このワインを差し出されては魔刃も黙ってはいられずファントムハーケンを仕舞って戦闘を中断する。そして、山岡士郎とスパイクと共に、そのワインを飲むことになった。

魔刃「ほう……この芳醇な味わい、素晴らしい」
山岡「本当なら、これほど上等なワインはデキャンタを使うべきなんだがね」
スパイク「いいじゃねぇか。酒は飲んで美味けりゃ、それでいい」
山岡「そうかもしれないが、美味い物をより美味しくする工夫は……」
魔刃「興味深いな。是非とも聞かせてもらおうか」

 美食家であり一流の料理人でもある山岡のワインの知識には魔刃も唸り、素直に聞き入りワインをより美味しく飲む為の方法を教授された。同席したスパイクも心中で呟いていたが、お前さっきまで殺る気満々だったのにどうしたんだ。
 これ以降、魔刃はワインを求めて流離うようにもなり、ワインさえ差し出せば高確率で見逃してくれる謎の強豪マーダーとなったのだった。ちなみに山岡とスパイクとは普通に別れました。
 魔刃がホテルから出た頃には料理対決もお開きとなっており、魔刃は次なる戦場とワインを求めて歩き出した。次に向かったのは銭湯。この銭湯、何故か冷蔵庫にコーヒー牛乳やフルーツ牛乳と一緒にワインが置いてあり、魔刃は連戦の疲れを癒す為に風呂に入り食後の一杯を美味しく飲むことを決めた。なのでこの場で戦闘をしようという思考がこの時点で放棄された。それでいいのか。
 鎧を脱衣場に置き入浴中はグレッシュに守りを任せ、魔刃は湯船に浸かった。暫くして司馬懿サザビー率いる一団がやって来たのだが、自身がマーダーであることを明かしつつも

魔刃「まぁ、なんだ。せっかく風呂に入ったんだからすぐに汚して汗をかくのも無粋だろう」
司馬懿「そうであるな。ハハハ」

と戦闘を華麗にスルー。キャプテンガンダムとヒイロにそれぞれ反応されるが、そこは敢えて軽く受け流した。だが、その内容からキャプテンが武者頑星刃の同僚か若しくは鉄機武者である可能性や、ヒイロが機動武者かそれに類する機兵の操手であると予想するなど、微妙に惜しいが鋭い洞察をする。
 そして、闇の使徒である司馬懿とは魔界の王として、他の面々には聞こえないように離れた位置で、意味深な会話を交わした。

司馬懿「魔界の王を称する貴殿に問う。世を闇に覆うことの真理とは」
魔刃「闇が光を、万物を呑み込むことは自然の道理であり摂理。全ての命は、やがて星々すらも暗黒星雲に呑まれて消え、後にはただ闇が残るのみ」
司馬懿「この世を成す全ては空、即ち無であり、無たる道の行く末は暗黒にして常闇であるか……」
魔刃「貴様の働きには期待しているぞ、闇の盟主よ」

 一通り情報交換もしてから、魔刃は一足先に浴場から出ると、兜を被り鎧よりも先にバスローブを身に纏って風呂上がりのワインを味わった。安物にも安物ならではの味わいと楽しみがあるとは本人の談。ちなみにこの風呂上がり姿は公式なので、気になる人は武者○伝第二巻をチェックしよう。
 銭湯から上がった後、魔刃は戦闘から一時身を引き、会場内の怪しげな施設の調査を行い始めた。そしてダークタワーの構造を解析していた時に、バンダイロワでも屈指の大事件、インベーダー天鎧王が誕生する。
 遺跡の奥底に秘蔵されていた天界の決戦兵器の災機動を遠目に見届けて、魔刃は歓喜した。その天鎧王は魔刃が召喚し掌握し、是断の門に設置していた物だったのだ。既に闇の力に染まった天鎧王に、更に未知なる邪悪な存在までもが混ざった状態。これならば堕悪融合して更なる力を、天界の力をも掌中に収めることも容易い。実際に魔刃のガンプラには天鎧王との合体機構が存在する為、多くの住人はこれが実現するものと予想していた。
 しかし、魔刃は天鎧王が破壊されるまでに間に合わなかった。その途中で、銭湯で出会った司馬懿の一行と再会することになったからだ。先んじてピエモンと交戦していた司馬懿達の前に立ち塞がり、その退路を塞いだ。同じ湯に浸かり語り合った仲ではないかとれいかとモモタロスが声を上げたが、魔刃はそれを一笑に附す。
 光と闇、善と悪、その道は決して交わることはない。どちらかがどちらかを凌駕し呑み込むか、同等の力が激突し対消滅をするのみ。
 和解の道を切って捨て、魔刃はピエモンと共に司馬懿達をじわじわと追いこんでいく。戦況は優位であったが、ピエモンとは初対面で取り敢えず共通の敵を互いに潰しにかかっているだけ、そして相手にはガンダムとプリキュアと人間の子供が揃っていることもあり、その想いの力の発動を最大限に警戒していた。
 やがて、司馬懿たちを建物の内部にまで追い込んだ。その時、1人の仮面ライダーが突如として姿を露わした。唐突に現れた新たなる敵に、魔刃とピエモンも驚愕し先手を奪われてしまう。
 現れたのは仮面ライダー電王。モモタロスを宿し装着者となっているのはヒイロ・ユイ。しかしたった1人でどれ程の事が出来るものかと魔刃とピエモンが同時に襲いかかるが、それを見計らって飛行オプションを装備したキャプテンガンダムが司馬懿とれいかを連れて離脱しようと飛び立った。魔刃は即座にハーデス・ジェノサイドで撃墜しようと鎌を構えたが、横から飛びかかって来たヒイロによってバランスを崩され、タイミングを逸してしまった。それはモモタロスに組みつかれたピエモンも同様だった。
 ここで魔刃は、自分がまんまと策に乗せられたことに気が付いた。ヒイロとモモタロスの目は、死を賭して己が為すべきことを成さんとする戦士のものだった。その姿に武王頑駄無とその傍にいた人間の少年ススムを重ねた魔刃は、距離を取ろうと身を動かしたヒイロに右手“ジーグ”を翳し、動きを封じた上で
「死ねぇ!!」
その首をファントムハーケンで斬り落とした。少しして、ピエモンもモモタロスを倒した。
 戦闘後、魔刃はピエモンが主催者と関わりが深い参加者であると判断し接触。結託している者達を皆殺しにする為に自分達も結託しようという提案に、ピエモンも快諾。ここに最強マーダーコンビ『魔人と魔刃』が誕生した。
 魔刃はピエモンと共に会場の中央に設置された、一際巨大なダークタワーへと向かった。会場内のダークタワーは殆どが闇の力を受け取って周囲に発散するアンテナであり、その発信源となっていたのは中央のダークタワーだったのだ。魔刃はダークタワーを破壊し、その中から巨大な暗黒玉璽を発見する。
 人の心の闇、あらゆる負の想念によって創造されたそれを前にして、魔刃は笑みを浮かべ、懐から使いどころが思いつかず死蔵していた赤玉を取り出し、遂にその力を解き放った。

魔刃「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!!」

 解放されたバッドエンドエナジー、暗黒玉璽、そしてダークタワーの残骸と堕悪融合し、魔刃は魔王頑駄無として新生した。その力はピエモンをして、デジモンにおける究極体をも超えた存在、超究極体と呼ぶべきものだと言わしめた。しかし特に名乗ったりしなかったので、一貫して魔刃と呼ばれ続けるのだった。
 魔刃がパワーアップを遂げて意気揚々と獲物を探していると、生き残りの対主催メンバーの中でも屈指の実力者、號斗丸と刹那・F・セイエイと遭遇し有無を言わさず戦闘となった。いきなり「貴様はガンダムではない! 貴様がガンダムであるものかぁ!!」などと難癖を付けられた時は流石に困惑したが、魔刃とピエモンはこの2人を相手にも優勢を保っていた。敢えて優位に立たされているのだということにも気付かないほど、絶妙な戦いぶりだった。

孔明「今です!」
司馬懿「今である!」

 号令が聞こえるや否や、煙幕と閃光弾がありったけ撃ち込まれ、これでは敵も味方も関係無く身動きが取れないという状況になってしまった。だが、この中で唯一、正確に敵を捉えられる者がいたのだ。突進して来たキャプテンガンダムに捕まえられ、そのままピエモンから引き剥がされてしまった。ピエモンは魔刃の援護には向かえず、そのまま撤退を余儀なくされた。
 魔刃とピエモンによって追い詰められた司馬懿が、遂に宿敵孔明と合流し共に軍配(団扇と扇子)を揮ったのだった。しかしこの時の彼らの策は、魔刃を孤立させるという一点のみだった。
 キャプテンを振り解き強引に突破しようとしたが、そこへれいかと司馬懿が現れ、魔刃の行く手を阻んだ。3人の顔ぶれを見て復讐でもしに来たのかと嘲り、魔刃は手始めにファントムハーケンの一振りで3人を吹き飛ばす。しかし、それでも折れない、決して褪せない強い意志を感じ取り、3人を武王頑駄無や刕覇大将軍以来の強敵として認め、一切の油断や容赦なく3人に襲いかかる。
 魔王頑駄無となった魔刃の圧倒的な力の前に、かつての闇の盟主も、プリキュアも、ガンダムも圧倒される。そして戦いの中で、3人は魔刃の力の源泉に気付く。

キャプテン「魔刃頑駄無、君もソウルドライブを!?」
魔刃「想いの力、あるのはお前たちだけだと思うな!」
司馬懿「悪意、強欲、支配欲、破壊衝動……それもまた、天地を貫く人の意志か!」
魔刃「然り! 我こそは魔界の王! 世界の支配者! 俺は己の欲の想いを貫くままに戦い続けよう!」
れいか「だったら私たちは、自分の感情のままに、許せないあなたを倒す為に、守りたい仲間を守る為に戦います!」

 ならば俺は気に食わぬ貴様らを殺す為に戦おう。キュアビューティの決意をも一笑に附し、グレッシュから大量の毒蠍を放ち、動きを封じた所へハーデス・ジェノサイドを叩きこむ。魔刃が勝利を確信した直後、大破同然の損傷を負いながら、キャプテンガンダムが拳を叩きこんで来た。想像以上のダメージに思わず仰け反るとそれにキュアビューティも続き、強烈な蹴りがグレッシュと共に肩の鎧を砕いた。乱暴にファントムハーケンを振るってキュアビューティを叩き返したが、続けざまに振るわれたキャプテンの拳を空いている左手で受け止めるも、痛烈なダメージが魔刃の体を襲った。
 不意に魔刃の脳裏に、あの時の、是断の門での決戦の光景がフラッシュバックした。

れいか「がんばって! キャプテーン!!」
キャプテン「魔刃。君も想いを貫く為に戦っていると言うのなら……やることが違うだろ!!」
魔刃「これは……? 武者魂、ではない。まさか、魂と魂の交わりが生み出す奇跡の力――交魂(キャッチボール)だというのか!?」

 剥き出しになったキャプテンのソウルドライブから放たれる光の中に、鉄機武者にはあり得ない武者魂と、キャプテン以外の仲間達の魂をも感じ取り、魔刃はキャプテンや武王や紅零斗丸が持っていた意志の力の正体に、この時やっと気付いた。
 自分ひとりだけではない、仲間や友と心と魂が繋がり合うことによって生み出される意志の力。天の宿命をも覆す、絆が生み出す奇跡の力。
 魔刃は倒されるが、同時にキャプテンのソウルドライブを砕いた。ただで死ぬのは性に合わないとばかりに。機能を停止させたキャプテンに変身を解いたれいかが涙ながらにすがりつく一方、魔刃には司馬懿が歩み寄って来た。
 司馬懿は静かに問い掛けて来た、心残りや思い残しは無いのかと。
 問われて、魔刃の脳裏に様々な言葉が飛び交ったが、実際に出て来たのは全く違う言葉だった。

魔刃「またしても人の子の想いの力に破れるか。オレも焼きが回ったものだ。だが……あのワインを飲めたんだ。今回は、それでよしとするさ」

 バンダイロワで双璧を成した最強マーダーの1人は、あまりにも意外な言葉を遺して、安らかな表情で永遠の眠りに就いた。

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最終更新:2013年10月10日 22:39