【名前】フィア
【出典】ウィザーズ・ブレイン
【性別】女
【名セリフ】
「みんなのために頑張ったあなた自身を、好きになってあげて……」
あなたが行く道の上に、どうか―――

【人物】
金髪緑眼の少女。外見年齢及び精神年齢は14歳だが、実年齢は3歳。出身地はドイツだが、遺伝子上はロシア人に当たるらしい。
性格は明るく、好奇心旺盛で珍しい物を見たり触ったりするのが大好き。神戸市民1000万人の命と引き換えに生き残ったことに罪悪感を抱いており、それだけに人の死には敏感。
他者と存在情報をリンクして支配下に置き、思考や肉体機能を共有する『同調能力』の持ち主。これにより行動の一切を支配し記憶や感情を読み取り、果ては肉体機能を自分と同じレベルまで引き上げることで肉体の損傷を治癒したりと中々汎用性が高い(ただし痛覚や生死まで共有するため、攻撃は一切できない)。
天樹錬とは相思相愛の関係にある。

【本ロワでの動向】
ヘイズの名前を知っていたことから、少なくとも4巻以降から参戦したと思われる。

最初に出会ったのはザ・ヒーローことフツオ。
参戦時期の関係上精神が摩耗していた彼に襲われるも、同調能力で肉体の行使権を奪い無力化する。そしてその際、二人の記憶が一時的に共有されることとなる。
人々のために見返りも求めず戦い続けてきた孤独な英雄。多数を生かすため、最初から殺されるために生み出された少女。
無辜の民衆のために運命を狂わされた二人は、しかし精神を擦切らせたフツオとそれでも人々の安寧を願ったフィアという真逆の結果を露呈する。

何故そこまで人を信じられる? 何故そこまで人を慈しむことができる?
呆然と言葉を絞り出すフツオは、しかしその理由を誰より知っていた。
愛する者がいるから、支え合える人がいるから。
同調能力による記憶と感情の共有。そこに映る悪魔使いの少年や町の人々。
そして己の脳裏に浮かぶ、母や親友たちの姿。
流出する記憶の波を受け止め、全てを理解したフィアはフツオに告げる。

フィア「大事な人たちがいなくなってしまったのは悲しいけど、それでもあなたのやってきたことは無駄なんかじゃないと、そう思います」

それは静江を目の前で失った彼女だからこそ言えた言葉であり。
何より、その言葉が嘘偽りのものではないと理解したフツオは、この時だけは普通の少年に戻り、涙を流すのだった。


こうしてフツオと和解した後は持ち前の好奇心を抑えきれず、彼を(少々)振り回しながら会場を探索することに。
見慣れない街の風景や森の木々、合成じゃない本物の精肉や果実などに興味を持ち、「これはなんですか?」とフツオに聞いて回るシーンでは某えるたそを想起する読み手も多かっただろう。
凸凹ながらも相性のいい二人だったが、ここで第一村人の夜刀様と遭遇する。
流れ出る圧倒的な神威に禍々しい外見、そも神という存在に良い印象のないフツオは戦闘態勢をとるが、しかしフィアだけは夜刀が邪悪な存在でないことに無意識に気付いていた。
互いに無為な戦闘をする意志のないことを確認すると、3人は情報交換という名の語らいを始める。
ICBMと悪魔により荒廃した東京、暗雲により極寒の地獄と化した未来、そして大欲界天狗道。この世の地獄とも言うべき世界から来た3人は、しかしそうとは思えないほど穏やかに会話を続けたのであった。
夜刀は自分と同じく神に挑んだ者であるフツオには「普通の幸せを望んでもいい」と諭し、フィアには「俺の愛した人を思い出させてくれてありがとう」と礼を述べた。
束の間の団欒、しかし殺し合いの場においてそれを長く続けるわけにもいかなかった。
果たすべき用があるという夜刀と別れ、フィアはフツオと共に会場の探索へと戻ることとなる。

その後も二人は、ちょっとズレていながらも笑顔で探索を続けていた。
久しぶりの安息と善意に、ぎこちないながらも笑顔を返すフツオ。
錬を心配に思う気持ちもあったが、しかし彼ならきっと大丈夫と強く信じたフィア。
不安こそあれども前を見据え、彼らは確かに笑いあっていた。

そして彼らは運命の時を迎える。
突如空間がひび割れ、そこから4体の天使が降臨。フィアの持つ同調能力と、その能力者を表す『天使』の呼び名が気に入らないと上から目線でのたまいつつハマによる即死魔法を仕掛けたのだった。
フツオ諸共抹殺しようとする四大天使の所業に、しかしフィアはとっさにフツオを押しのけ魔法の全てを自身で受け止める。
崩れ落ちるフィア、呆然とするフツオ、ヒット&アウェイで帰っていく四馬鹿。この突然の事態にフツオはフィアに駆け寄るしかできなかった。

どうして、何故助けた。君はここで死んでいい人間じゃない。
ダメだ死なないでくれ、君はまだ天樹錬と会ってないじゃないか。
自分にはもう誰もいない。愛する人はみんな死んでしまった。だからこそ、この少女には想い人の少年と再会してほしかった。
しかしそんなフツオの想いとは裏腹に、フィアの体はどんどん冷たくなっていく。

自分の体温をすべて少女に分け与えてやれたらどんなにいいだろうか。
しかし自分にはそんな芸当できはしない。
誰かを癒すことも、ましてや死人を蘇らせることもできない。壁があれば打ち壊し、敵がいれば斬り伏せるしか能がないのにそれすらできなかった無能。
その無能の果てに今少女は死のうとしている。その事実に心砕かれそうになるが、しかし彼の手を握った少女は違うと首を振る。

―――きっとあなたは、世界や人を恨んでいると思う。自分は都合よく祭り上げられた英雄で、役に立ちさえすれば壊れても構わない道具で……だから自分が死んだって誰も悲しまないって、そんな風に傷ついてると思う。

吐く息は途切れ途切れで、視界はどんどん薄れていく。
もう錬と再会することはないだろう。それは確かに残念だし、とても悲しいが、錬は強いからきっと大丈夫。
だから、今は目の前のこの人に伝えなければいけないと、そう思ったのだ。

―――だけど、そうやってあなたに何もかも押し付けないと生きていけないことを、悲しいとか悔しいと思う人間だって、ちゃんといるから。

最早瞳からは生気が失われ、既に少年の顔すら捉えていないだろう目で、しかし少年と向かい合い。

―――忘れないで……世界はいい所じゃないかもしれないけど、でもそんなに悪い所でもない。

だからあなたは、と少女は笑い、力を失った唇を言葉の形に動かした。

「みんなのために頑張ったあなた自身を、好きになってあげて……」

それが少女の遺言となった。


能力が便利すぎるというメタな理由で終始戦闘に参加させられず、挙句は半ば無理やり退場させられてしまった感のある彼女であるが、しかしその遺志はフツオがちゃんと引き継いでくれている。
なお、死亡後も神州王のゾンビ騒動でフツオの前に出現したり、主催戦で死亡したフツオに影狼と共にガーディアンとして現れたりしている。こちらはフツオの項目を参照のこと。

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最終更新:2013年12月08日 03:32