【名前】 イヴ
【出典】 ib
【性別】 女
【年齢】 9歳
【名ゼリフ】
「諦めない、絶対に……諦めてなんかあげない、ずっと」
【人物】
茶色の長髪と赤い大きな目が特徴の幼女。公式HPではお嬢様と紹介されており、実際高級そうな身なりをしている。
作中では明確に台詞等が出てくることはないが、曰く「大人しく、聞き分けがよくて物静かな子」とのこと。
原作で巻き込まれることになる奇妙な美術館では途中までたった一人で物怖じせず行動するなど年の割に肝が据わっているが、道中気疲れして寝入ってしまう・難しい漢字が読めないなどやはり年相応なところが多い。
保護者ポジのギャリー(オネエ口調のイケメン)には非常に懐いていたが……
【本ロワの動向】
EDの一つ、忘れられた肖像から参戦。
奇妙な美術館での出来事、及びギャリーのことは忘却されており、実質ただの一般人の状態でロワを開始することになる。
かの美術館とは違い、明確な死の危険と悪意が渦巻く殺し合いの場において、多少胆力があるとはいえ普通の9歳児であるところのイヴが恐怖しない道理などなく、開始直後はスタート地点だった民家で震えながら時を過ごしていた。
しかしそこにギーがやってきたことで、震えるだけではどうしようもないのだと自覚。ロワを生き延びるために一歩を踏み出すのだった。
恐る恐る、しかし強い意志を持って一歩を踏み出す。ギーと共にロワを巡り、安全な場所や信用できる相手を探す当てのない道。
時折襲ってくるマーダーは全てギーが撃退したが、未だ幼いイヴにとっては誰かの悪意に晒されることそれ自体が大きな苦痛であり、その精神はどんどん磨耗していった。
終わりの見えない道程、光の見えない現状。心の何処かに諦めの感情が湧き始めるも、しかしギーは決して諦めてはいけないと諭す。
希望を捨てればそこで終わり、ならば最後まで手を伸ばし続けるべきだ、と。
それはイヴを励ますためのおためごかしか、単なる強がりや自己暗示か。
否、ギーはそれを誤魔化しやその場しのぎで口にしているのではない。彼には決して諦めない何かがあるからこそ、イヴにそんな言葉を投げかけている。
詳しい事情も物の道理もよくわからない、しかしイヴには何故かそれがしっかりと感じ取ることができたのだった。
そんな折、幾度目かになるマーダーの襲撃により、イヴは怪我こそ負わなかったものの戦闘に移るギーと離れ離れになってしまう。
庇護者たるギーと離れてしまったことによる不安、しかし足手まといの自分が戦いの場に戻っていいのかという疑問。それらの感情が綯い交ぜになり、ギーを探そうとする足が竦んでしまう。
ふと気がつけば、あたりは一面が闇に覆われていた。
そこは参加者の一人(一柱)であるクトゥルフの潜伏場所。序盤から定位置にて他参加者をテレパシーで発狂・マーダー化させながら引きこもっていたその場所に、イヴは偶然入り込んでしまったのだ。
クトゥルフは積極的に殺し合いに乗っていないとはいえ本物の邪神。イヴの命運もこれで尽きたと思われたが……
『ここへ来い』
怪物のじゃない、人間の声。
確かにそれが聞こえたような気がして。
『まだお前が 諦めていないのなら』
耳に届いた声ではない。周囲には自分とクトゥルフ以外誰もいないのだから。
しかしそれは確かに聞こえたのだ。自分の真後ろの方向から。
―――そこに行けばいいの?
自然と、再び走っていた。恐怖が膝をおかしくする前に。
声ならぬ声の主の言葉。ここへ来いという、普通なら信じるに値しないような言葉に縋って。
―――だって、私は諦めるつもりなんてないから
そうして走って、走って、走り疲れて。もう動けないところまでやってくる。
息は切れ、足も動かず、しかし意志だけは先行して。
クトゥルフの触手が迫る。もう逃げ切れない。体が動かないのだから、逃げ切れる道理などない。
それでも。
「―――諦めない!」
それでも諦めない。ギーが諭してくれた言葉、それを思い出して心の支えにする。
諦めない、こんなところで死ねない。そう啖呵を切り前を見据え、迫り来るクトゥルフを睨み付け……
「そこまでだ」
闇の中から、一人の男が姿を現した。
黒い男、眼帯をかけたその男は、眼前に聳え立つクトゥルフの巨体を目にしても一切ひるまず、むしろふてぶてしく言葉を続ける。
クトゥルフを騙る哀れな者よ、お前の声は届かない。
ただそれだけを告げると、男の体は影のように歪み、そこから這い出た黒い腕によりクトゥルフは打ち砕かれる。
いや、その巨体を覆われて、捕食される。あまりにも呆気なく、嘘のような顛末で。
そうして全てに片がつき、クトゥルフの結界が解除されたことでイヴは無事解放される。
その後、イヴを捜索していたギーが合流。Mと名乗った黒い男と一時険悪な雰囲気となるも、Mに助けられたイヴの弁護によって取り成されることになる。
そうしてギーとMは手を組み、ここに一つのチームが出来上がるのだった。
チームを結成してからしばらく、襲い来るマーダーをこれまで以上に
テンプレしていると、一行は藤井蓮の捜索をしている
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンと遭遇する。
互いに殺し合いには乗っておらず、探し人が見つからない以上手を組むことも已む無し。そう判断したマキナはM、ギー、イヴに同行することを決めるのだった。
なお、イヴを除く三人は(ギーはまだマシとはいえ)いずれも劣らぬ無愛想な男ばかり。マキナとの初遭遇時は怖くてギーの後ろに隠れていたイヴは、道中においてむしろ間を保たせようと努力していた。大人しい子なのに頑張ったものである。
そうしてチームの一員として行動するイヴ。マーダーの襲撃こそあれどこのまま行けばどうにかなるのではないか、そう思いかけていたまさにその時、新たに悲劇はやってくる。
藤井蓮の居場所が特定されたことによりチームからマキナが離れた直後、即席でコンビを組んだラインハルト・赤屍という本ロワでも最強格のマーダーが襲撃してきたのだ。
ラインハルトをMが、赤屍をギーが受け持ち戦闘に突入。戦力は拮抗していたものの幾度となくマーダーの襲撃を退けてきたこちらの消耗は決して軽視できるものではなく、またイヴという非戦闘員の存在が明暗を分けた。
Mのクルーシュチャ方程式がラインハルトを打ち砕くも、Mもまたラインハルトのロンギヌスにより刺殺。その余波からイヴを守ろうとしたギーも、その隙を突いてきた赤屍のブラッディソードにより貫かれてしまう。
ギー「僕はもう、人を助けることはできないのか……」
赤屍「もうこりごりですよ、か弱い人間は……」
戦う術を持たないか弱い人間(イヴ)、そしてそんな弱者を助けて身を滅ぼすギーのことすら精神的弱者と切って捨てる赤屍。ギーが最期の力で以って一撃を加えるも、その表情は失望の色を湛えたままであった。
ごめんなさい、私のせいで。そう慟哭するイヴに、しかしギーは怒るでも嘆くでもなく、薄い笑みと共にイヴの頭に手をやった。
最期に君を助けることができて良かった。ただそう言って笑うギーに、しかしイヴは何の言葉も返すことができなかった。
君にとっては色々押し付けがましいかもしれないが、それでも生きることを諦めないで欲しい。
最期にそれだけを言い残して、ギーはその目を閉じる。
ただ一人残されたイヴは、二人の亡骸に寄り添い、ただ涙を流すのだった。
その後、イヴは偶然その場を立ち寄ったコーヘイにより保護されることになる。
ルーラー、斉藤一といった月打で変異してしまった者たちの襲撃を受けるもなんとか退けながら終盤まで生存する。
しかしイヴの胸中の大半を占めていたものは、ギーとMの足枷になってしまったことへの自責の念であった。
終盤、コーヘイとイヴの二人はマーダーであるゴランに襲われる。
死亡後参戦で慎重になっていたこと、対価となるハンバーガーを大量に入手していたことで常より大きな実力を発揮するゴランに、コーヘイは為す術なく地に伏せる。
コーヘイを下したゴランの次なる標的は当然イヴ。目では追えない速度で駆けて来るゴランに、イヴはとっさに目をつぶり全てを諦めかけるが……
―――生きることを諦めないで欲しい
脳裏に浮かんだのは、ギーが残した最期の言葉。何も言うことができなかったあの場面がまぶたの裏でフラッシュバックする。
生きることから逃げ出さない。それは当たり前のことで、しかし今までイヴが目を逸らしてきたもの。
失うことが怖かった。ギーも、Mも、そして記憶に残っていない「かつて」のことも。
自分以上に失うことが怖くて、だからこそ自分自身が生き残るということには頓着していなかった。
目の前には迫り来る凶刃、最早逃げることは叶わないし、自分の力がこの相手に敵わないことも理解している。
だがそれでも、生きることを諦めないで欲しいと言われたのだから。最期まで逃げ出さないとここに誓おう。
自分を助けてくれた人たちに少しでも報いるために。
そうしてイヴは右手を伸ばし―――
―――背後から別の右手が伸びて
イヴの背後に突如として異形の影が出現する。それはイヴを守るように立ち、ゴランの攻撃を右手で受け止めていた。
それは《背後に立つ者》、それは奇械。ギーに宿りし鋼の彼、ポルシオン。それはギーが死んだことにより共に消滅したかと思われたが……
しかし彼は今こうしてイヴを守っている。死してもイヴを守ろうとするギーの想いに応え、ポルシオンがイヴの背後に立ったのだ。
イヴ「私、ここで死ねない。絶対に生きなきゃいけないの。だからポルシオン、お願い」
しっかりと前を見据え、生きようとする意志は堅固に。
イヴは背後の彼にそれを命じた。
《王の巨腕よ、打ち砕け》
ポルシオンの放つ攻撃により、ゴランは一撃の下に吹き飛ばされる。ただし命だけは取らず、行動できない程度のダメージのみを残して。
―――決して誰も死なせない。
それはギーの抱いた信条であり、今はイヴが貫くべき信条だ。それはマーダーが相手だろうと変わらない。
自分を、仲間を守り、誰も死なせずロワを打破する。それこそがポルシオンと共に在る自分が為すべき最低限の事物であり、自分を守って死んでいったギーやMへの恩返しなのだと信じて。
そしてロワは主催戦へと移行する。
戦艦ハルバードを居城として主催陣営に乗り込む対主催者たち。迫り来る主催の尖兵を迎撃する参加者の中には、当然のようにイヴの姿もあった。
主催本拠地に地球破壊爆弾を仕掛けに行くコーヘイと別れ、イヴは機関(ハルバード)を狙って押し寄せるアブホールをレオ・栄光と共に迎え撃つ。
一切の物理的影響を受けないという厄介な特性を持つアブホールであったが、レオの巨神、栄光の夢、イヴとポルシオンの前には悉くが砕かれ、消滅していく。
戦況はイヴたち対主催側の優勢であったが、しかし黒幕たるサクシャの手によりレオと巨神に《白き死の仮面》が埋め込まれてしまう。
そのことでレオはアブホール(ホラー)と精神を同調、彼らの正体が古代文明ヴァルーシアの民の恐怖の残滓であることと、その恐怖の根源が自分達が生み出した文明がもたらす恐るべき明日であることを知った。
『ひとを止める』
『文明を止める』
『それが、きみたちの』
『心よりの願いであるのなら』
『私は叶えよう』
その嘆きの願いを聞き届けたレオはアブホールを取り込み、巨神を空を覆う巨大な白き死の仮面《ホラー・エンド》へと変容させ、その嘆きに従い、恐怖をもたらす全てのものを今ここで消却するか、あるいはそれをも超える命題への答えを参加者たちが示してみせるのか。それを以て己の行動を決定することを決める。
『ーー未来を切り開かんとする者達よ』
『さあ、私に見せてくれ』
『物語拓くものを』
『嘆きの果てに消えぬ願いを』
『恐怖の果てに消えぬ望みを』
『この私に』
『その手に輝くものを』
『きみを、否、君たちを導くもの』
『白光溢るる絶対なるものが』
『果てなく無限に在るということを!』
空を灰色に染めて、地に火を放つ人間。そんな人類には価値がないと悟り、しかしそんな命題を否定するために探求し続けた男。
最早力技でこの場を乗り切ることはできない。物理的にも不可能だが、仮にそれが可能であったとしても、それを実行することは私自身の想いを自ら踏みにじることになるから。
故にイヴはレオに己の言葉を届けるため、栄光と共に空を翔る。突如として発生した災厄に戦闘の手を緩めていた他参加者もその姿に希望を見出し、迫る主催の魔の手を跳ね除ける。
言うべき言葉は決まっている。生きるということ、明日を望むということ。自分たちは皆がそれを望んでいるのだから、それを届けることに否はない
だからこそ、イヴはかつて末期のギーに返せなかった言葉を反芻するのだ。
―――助けてくれてありがとう、と。
栄光「俺は願う、俺達は望む!未来がどう在っても!俺は、俺達はきっとそれを止めない!」
イヴ「ううん、止められないんだ!ギーも、Mも。ううん、違うよ、みんなが!みんな、きっと、願ったはずなんだ!」
栄光「俺も!」
イヴ「私も!」
「 「 あ な た も ! 」 」
「 「 あ な た た ち も ! 」 」
誰よりも弱く、無力で、しかし誰より強い心を持った少年と少女が示してみせた輝き、眩い願い。
それは、恐怖に嘆く影に、神ならぬ万能の男に、いつか願ったはずの想いを思い出させて―――
『ひとの、情念』
『かくも、眩いものだったか』
『長い間、忘れていたな』
命題の答えを見出したレオは《ホラーエンド》を消滅させ、当座の脅威は消滅するのだった。
しかしその瞬間、呪怨城崩壊後を生き延び支給品の螺旋城教本(プレラーティーズスペルブック)を用いたデイヴィ・ジョーンズが大海魔を召喚。ようやく事態を収束させた対主催目掛けてそれらを嗾けてくる。
前線に立つイヴと栄光は満身創痍、これ以上戦闘を続けられる体ではなく、万事休すであったが……
レオ「君たちの願いを聞き届けた。ならば後は私に委ねるといい」
そこに立つのは《万能王》レオ。彼は再び巨神を呼び出し、襲い来る海魔の群れを睥睨して告げるのだった。
その言葉通り、レオは視界を覆いつくすほどの海魔の群れを諸共に打ち砕く。乱戦に不向きな巨神ではあれど、有象無象の理性なき化け物相手に後れを取る道理はなかったのだ。
そして主催や黒幕たちがそれぞれ死亡・撤退することでロワは終了、イヴもまた自分の世界に帰ることとなる。
それぞれが別れを惜しむなか、イヴはレオに呼び止められ、頭に手のひらを翳される。
その瞬間にイヴの頭の中には失われた記憶が蘇っていた。
ゲルテナ展、異形の美術館、そして自分を助けてくれたギャリーという青年。
突如蘇った記憶に困惑すると、それを見ていたレオが笑みを浮かべながらイヴに告げる。
これで君の願いのきっかけが戻ってきたはずだ。君の願いの果ては、君自身がたどり着くべきものだからね
人の願いを聞き入れて助言を授けるレオは、イヴの抱いていた無意識の願いもまた聞き届けていたのだ。
こうして記憶を取り戻したイヴは、警死庁世界を経由して元の世界に戻ると、改めてゲルテナ展へと足を進める。
背後の彼を引き連れて、心は決して挫けずに。
―――今度は私が貴方を助ける番だよ。ギャリー
守られる側から守る側へと転進を果たした少女は、毅然とした表情で新たな戦場へと飛び込んでいくのだった。
最終更新:2014年06月10日 15:02