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Dear My Friend - (2011/11/25 (金) 17:19:03) の1つ前との変更点
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*Dear My Friend ◆1yqnHVqBO6
白髪鬼、津幡共仁は頭に穴が開いた少年を見下ろしていた。
空は陽が上がり、死体の状況と死体の素性を余すことなく伝えてくれる。
同行していた子供が腰を抜かし、怯えてしまったほどには。
子供、パピーを抱きかかえ、
死体から離れた壁に寄り掛からせてから。
津幡共仁は死体を検めた。
額に空いた銃創。
銃弾に突き破られた皮膚の周囲は焦げていた。
そして、この創穴からすると小口径の弾丸だ。
頭を持ち上げて死体の後頭部を見ると
銃弾の出口があった。
ならばと、津幡共仁は射線上、
突き当たるであろう
壁へと歩き、辺りを調べた。
「やはり、か」
見つけた弾丸は大きくひしゃげていたが
間違いなく.38スペシャルと呼ばれるものだった。
パピーが目覚める前、自らを覆うアーマーを叩いた銃弾と同じもの。
「不意打ち……か」
何故そう思ったか。
それは少年の顔があまりにもきれいすぎることだ。
この弾丸を用いる銃を至近距離で額に撃たれたのなら
まず顔面は判別不可能なほどに破砕されているはず。
兜か仮面越しの銃創でもなかった。
ならばこそ、凡そだが推察できる。
この少年はなにかしらの特別な力を持っていたのだと。
だからこその至近距離。
話術か何かで接近し、不意を打って
幻想を貫いた。
「この弾丸。
そして時間から考えれば
あの男が犯人と思っていいだろうな」
掌で弾丸を転がしながら白髪鬼は考えた。
この死体が纏う白銀のプレート。
まるで物語の勇者のような出で立ち。
酔狂でこのような格好をしているとは考えにくい、か?
それはどうだろうなと白髪の鬼は首を振った。
雲ひとつない青空。
風が心地よいとはいえ照りつける太陽。
服の下では汗でじっとり濡れている身。
そして純白のタキシード。
自分のような伊達男ならば
こんな格好は嬉々としてするだろう。
「なあパピー」
後方、離れた所にある建物に寄り掛かって
座りこんでいるパピーは驚き声を出す。
「な、なんだよう!?」
「お伽噺の戦士のような格好をしたものは
どういう人間なのだと思う?」
「し、知るかよ! 俳優かなんかじゃないのか!?」
ふむ、と白髪鬼は顎に手をやる。
少年の纏うものは勇壮。
しかし、装具に着られているという感は死体と言えども全くない。
それもこの少年が観劇に生きる者ならば説明はできる。
そして、この地で勇者、異常の力を手に入れ、
戦おうとした矢先に呆気なく殺された。
正解とは思えないがそれも中々に面白い想像だ。
白髪鬼はそう思う。
そのような同志といえる者が短い間でも
この殺し合いの舞台にいたと考えるのは、面白い。
彼もまたこの舞台で英雄になろうとするものなのだから。
「なあ、もういいだろ。ティオを探しに行こうぜ!?」
背後からパピーの声が聞こえる。
掌にある弾丸を白髪鬼は懐にしまった。
あの男、猿谷がこの少年を殺したという確たる証拠はない。
だが彼が同じ弾丸を扱う銃を持っている以上、
疑いをかけるのは自然。いや当然だろう。
「うむ。そうじゃな」
頷いた白髪鬼はパピーを
立ちあがるのを黙って待った。
腰を上げたパピーは死体に眼を向けないよう気をつけながら
おっかなびっくりパピーは白髪鬼に駆け寄った。
「止まれ!」
それを一拍の気合がこめられた声で
制する白髪鬼。
「そこにいるんじゃろう?」
声、それが向けられたのはビルディングの群れ、
その影へ。
「ああ、鋭いご老人だ」
感心するような。
賞賛するような声とともに姿を見せたのは青年。
だが顔に塗られた儀式めいた化粧が
この青年の異様さを際立たせていた。
「覗き見するとは感心せん若者じゃな」
「これは失礼を。僕の名はブック。
しがない魔獣使いさ」
恭しくブックは礼をする。
「ところでご老人。
その彼は貴方が?」
「いいや。わしではないぞ」
心外そうに肩をすくめて、
白髪鬼は懐から先の弾丸をとりだした。
「これと同じ弾丸を支給されている
猿谷甚一という男が殺したようだ」
「へえ……ただの銃弾で旅人を」
仰々しい仕草でブックは
驚きを露わにした。
「旅人? この少年の名前を知っているのか?」
「ええ。ワタルという少年さ。
勇敢でやさしい少年だった」
悲しげに伏せたまつ毛を震わせてブックは話す。
「こんなところで死んでいい少年じゃなかったのに」
白髪鬼は興味深く、最大の用心もこめて
ブックの挙動を観察する。
どこかおかしいこの男。
内に底知れない傲慢さと冷酷性を持っているように思えた。
信用は、すべきではないだろう。
「な、なあ!」
白髪鬼がこの場をどう対応するか悩んでいた中、
後ろにいたパピーがブックへと話しかける。
「ティオっていうやつを知らないか!?
ピンク色の長い髪をした女の子なんだけども」
パピーの言葉を聞いてブックは眉を上げる。
「ティオ? 友達かなにかかい?」
「い、いや……そういうんじゃないけどよ」
「ああ、そうだろうね」
ブックは同意するようにしきりと頷く。
「ティオは君のことを――」
その瞬間、空間が震えた。
圧倒的な音量がパピーと
白髪鬼の鼓膜どころか体全体を震わせた。
建物群の波打ったガラスがたまらず
振動に耐えきれず粉となって割れ散った。
警戒に眼つきを一層鋭くした
白髪鬼は音のした方へと視線をやった。
「君のことを敵だと言っていたからね。
レオパルドン・パピプリオ」
豪風が面ではなく点となって
パピーへと襲いかかった。
凄まじい破壊力が地面を砕き。
周囲丸ごと陥没させた。
コンクリートが砕けて
泥団子のような固形となって舞い上がった。
パピーの命は奪われていない。
とっさにクシャスラと合体した白髪鬼が
パピーを抱え上げて5階建ての建物の屋上に着地した。
「凄いね。ティオ」
微笑み。褒めるように
ブックは手を上品に叩いた。
乾いた音が埃で覆われた
空間に虚しく響いた。
「な、なんだよお前!」
唇を震わせたパピーが
必死に口を動かして言葉をなそうとしている。
「ほんとうにティオなのかよそれ!?
なにをしたんだよティオに!?」
パピーの声に反応したように。
なにかに抗うような、叩き潰す咆哮が辺りを震わせる。
ピンク色の髪の化け物の服装は
パピーから聞いたものとさして変わらない。
ただ、大きさが、少なくとも5mはある。
顔は、およそ少女と表現できるものではない。
顔中の筋肉が著しく膨張し、
目が埋没してしまうほどになり。
伸びた白い牙が禍々しく陽光を反射する。
「なにもしてないよ」
口に手を当ててカラカラと笑うブック。
「ただ、ね。もう誰のことも信用できないみたいなんだ。
君を殺すほどにはね」
肥大した足の筋肉を撓め、爆発させ、
ティオらしき化け物が白髪鬼達がいる建物へと突進する。
踏みしめている場所。
下の下の方で何かが欠けて傾く感触。
そして体が建物ごと落下しようとする。
景色が上へと落ちていった。
パピーを抱えたまま、
堪らず白髪鬼は地面へ降りた。
瓦礫の山と化した建物跡。
太い腕がそこからにょきりと生え、
ピンク色の頭が瓦礫を撥ね退けた。
「ひ、ひぃ!」
恐怖に歯の根が合わないのだろう。
かちかちという音が聞こえてきた。
雄叫びとともにティオがその巨腕をふるう。
速く、強く、そして重い。
パピーを抱えた白髪鬼には到底受け止められるものではない。
己の身を分裂させて壁にし、
辛うじて白髪鬼はティオから距離をとった。
「キシャア!」
硬質な鳴き声が背後から聞こえる。
後ろを見た白髪鬼に映ったのは黄色の蟹のような怪人。
疲労しきった白髪鬼は一瞬反応が遅れ、
やむを得ず片手で攻撃を受け止めた。
その拍子にパピーが腕から振り落とされ
地面を転がった。
すぐ助けに向かおうとした白髪鬼だが
そこを蟹の鋏が襲いかかる。
遅く、そして軽い。
万全ならばおよそ苦も無く倒せただろうが
今の白髪鬼ではどうじても手こずってしまう。
「あ、あああああ…………」
静かに、足音強くティオがパピーへと近づく。
息遣いはまさしく獣。
だがその中にもたしかにティオの面影を感じることができて、
パピーは言いようのない悲しみに顔を歪める。
矢継ぎ早の蟹の攻撃を紙一重でかわす白髪鬼は
とっさに拳銃を構え、ブックに狙いを定めた。
パピーの言葉を信じるのなら、
ティオという少女はこの男に操られている可能性が高い。
男は今、愉悦の表情でティオとパピーに見いっている。
蟲惑的に弧を描いた口元は
劇を楽しむ観客のものか、
己の台本の出来を自賛する演出家のものなのかはわからないが。
好機と見た白髪鬼は引き金を引いた。
銃声とともに弾丸が飛び出す。
こちらを見ていないブックの額に確かに当たるはずだったそれは
まるで予知していたかのように上体を反らすことで外れた。
ブックの着ている動きやすくゆったりとした装束。
その胸元から小動物の鳴き声とともに
栗鼠のような生き物が顔を出し
「ありがとうジュリー」
ブックが指の腹で頭を撫でる。
次の手を考える前に、
蟹の鋏が横殴りに白髪鬼の頭部を叩いた。
白髪鬼はたまらず錐もみして建物へと突っ込んだ。
クシャスラの風をもって
あのティオとかいう化け物となった少女を足止めするにも
あれを止めるほどの風を出すには体力が足りない。
「ぐ、ぐぅぅ……!」
涎を口の端から垂らして。
今にもパピーの喉笛を
食い破ろうとするようにティオは歯を剥いた。
「ま、待ってくれよティオ!」
必死に、懇願するように両手を前に出して
パピーは語りかける。
「落ち着いてくれ、ティオ。
頼むよ。前のおまえにもどってくれよ。
お、オレ。そうしないとちびっちゃいそうだよ」
涙を目の端に浮かべて震えた声で弱弱しく話す。
「わ、わかるぜ。怖いんだよなティオ。
正気でいるのがさ。オレですら怖くてしょうがないぜ?」
虚勢を張るように笑みを浮かべて
パピーはティオへと呼びかける。
わずかに、ティオの動きが鈍る。
油がきれ始めたからくりのように。
「で、でもさ。
オレもいるからさ。
元気だぜよ。一緒に協力してやるからさ。
へへへ。百人力だぜ?」
自分の言葉に自分で勇気づけられたのか
パピーは徐々にいつもの元気をとりもどしていく。
「な? 大丈夫だって。
なんならオレが、その、『ともだち』になってやるからさ」
ティオの両の手が震え、弱弱しくパピーへと伸ばされる。
顔は俯いたまま。巨大になった体を小さくして。
「オレもガッシュが殺し合いにのってたのはショックだけどさ。
もうへっちゃらだしさ」
パピーの肩へとティオの手が置かれた。
「オレは、おまえの味方だからさ」
「うそをつくな」
パピーの言葉への返答。
それは底冷えして、感情がなく。
置かれた両の手はそのままパピーの首へと移動して
包み込むように首を捻じり切った。
「ヴそをづくな」
何が起こったのかもわからないまま死んだだろう
パピーの生首を両手で握りしめる。
「ヴぞをづくな」
ゆっくりとそれは圧縮されていき。
ついには血と脳漿の色の混じり合った悪趣味なジュースとなって
ティオの手から零れおちていく。
「がっじゅがのるはずがなヴぃだろう」
伏せられた顔はピンクの髪がかかって
表情をうかがい知ることはできない。
「がっじゅをおとじいれようどするのなら」
髪を振り乱し。
濁った瞳は焦点が合うことなく。
ティオは空を見上げ、叫ぶ。
「おまえはともだちなんかじゃない!」
血を落とすことなく
顔を覆った。血が顔中を真っ赤に染める。
「あ、ああ……!」
ブックは嗤う。
ひたすらに喜ばしそうに嗤い続ける。
「あああああああああ!!」
顔中を掻き毟り、
耐えきれない痛みを狂った心ですら感じたのか。
ティオは何処へと去っていった。
ティオが走っていった方角をしばし見てから
ブックは白髪鬼に視線を向けた。
そこにいたのは、
白の翼人が力尽きたように膝をついている姿と。
散らばった蟹怪人の残骸。
「おまえさんの“願い”は……なんじゃ?」
白髪鬼が苦しそうに喘ぎながらブックへと問う。
その言葉にブックは凝った装飾が施された一冊の本をとりだした。
「これは、魔界の魔物たちの術を
人間の力で引き出すものなんだけどもね。
面白いよこれは。人間の心の力で術を発動するんだ」
ブックの話に白髪鬼は黙っている。
ブックは、嘲りを浮かべて本を翳す。
「これは。心の限界を教えてくれるものなんだ。
人間の限界をね」
白髪鬼はやっとのことで体中の力を振り絞って立ち上がる。
「人は心から逃れることはできない。
だが心は限界がある。
それなら……心なんて滅びるべきなんだ」
それを聞き、白髪鬼は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「若いな」
「若くてもかまわないさ」
ブックはその場から立ち去った。
僕は直接戦うのは苦手だからね、と最後に言い残して。
残された白髪鬼は、瓦礫に埋め尽くされた道を歩いて。
体だけとなったパピーへと歩み寄る。
幸運にも残っていた首輪と。
荷物を回収して、白髪鬼は静かに漏らした。
「疲れたなあ」
その言葉を聞くものは、いない。
&color(red){【レオパルドン・パピプリオ@金色のガッシュ!! 死亡確認】}
&color(red){【残り 26名】}
【D-3/一日目/午前】
【津幡共仁@銀齢の果て】
[状態]:気絶寸前、ダメージ(小)
[装備]:クシャスラ@waqwaq、コルト・シングル・アクション・アーミー(5/6)@現実
[道具]:基本支給品×2、簡易工具セット、輸血パック(各種血液型、黒い血のも)、
ワタルを打ち抜いた弾丸 、月の石@金色のガッシュ!!、
レオパルドン・パピプリオの首輪、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:英雄として行動する
1:……すこし休むか
2:ワタルの首輪も回収しておく。
3:ワタルを殺してのは猿谷だと言いふらす。
(本当かどうか関わらず)
【D-3→???/一日目/午前】
【ティオ@金色のガッシュ!!】
[状態]:狂戦士(バーサーカー)の術により狂化・外見にも変化
[装備]:
[道具]:基本支給品、ヨキの弓矢(9/10)@waqwaq
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:グウウウウウウウ!!
※魔法が使えるかどうかは不明です
※体長5m、顔は鬼みたいな感じになってます。
【ブック@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:ダメージ小 、心の力消費小、ボルキャンサー……きみはいいやつだった
[装備]:契約の玉@ブレスト、ジュリー(銀嶺)@ブレスト、双眼鏡@現実、
[道具]:基本支給品、青酸カリ@バトルロワイアル、魔本(ティオ)@金色のガッシュ!!、
[思考・状況]
基本行動方針:人の心と生命を殺していく
1:ティオを利用し人間を殺す
2:ガッシュ達魔物の子に興味
※ボルキャンサーは津幡共仁に破壊されました。
|[[白光のスプンタ・マンユ~What a beautiful hopes~]]|投下順|[[【おまえがそう想うのならそう在るのだろう。】]]|
|[[白光のスプンタ・マンユ~What a beautiful hopes~]]|時系列順|[[【おまえがそう想うのならそう在るのだろう。】]]|
|[[立ち上がれども]]|津幡共仁|[[]]|
|~|レオパルドン・パピプリオ|&color(red){GAME OVER}|
|[[優しさに飢える少女]]|ティオ|[[]]|
|~|ブック|~|
*Dear My Friend ◆1yqnHVqBO6
白髪鬼、津幡共仁は頭に穴が開いた少年を見下ろしていた。
空は陽が上がり、死体の状況と死体の素性を余すことなく伝えてくれる。
同行していた子供が腰を抜かし、怯えてしまったほどには。
子供、パピーを抱きかかえ、
死体から離れた壁に寄り掛からせてから。
津幡共仁は死体を検めた。
額に空いた銃創。
銃弾に突き破られた皮膚の周囲は焦げていた。
そして、この創穴からすると小口径の弾丸だ。
頭を持ち上げて死体の後頭部を見ると
銃弾の出口があった。
ならばと、津幡共仁は射線上、
突き当たるであろう
壁へと歩き、辺りを調べた。
「やはり、か」
見つけた弾丸は大きくひしゃげていたが
間違いなく.38スペシャルと呼ばれるものだった。
パピーが目覚める前、自らを覆うアーマーを叩いた銃弾と同じもの。
「不意打ち……か」
何故そう思ったか。
それは少年の顔があまりにもきれいすぎることだ。
この弾丸を用いる銃を至近距離で額に撃たれたのなら
まず顔面は判別不可能なほどに破砕されているはず。
兜か仮面越しの銃創でもなかった。
ならばこそ、凡そだが推察できる。
この少年はなにかしらの特別な力を持っていたのだと。
だからこその至近距離。
話術か何かで接近し、不意を打って
幻想を貫いた。
「この弾丸。
そして時間から考えれば
あの男が犯人と思っていいだろうな」
掌で弾丸を転がしながら白髪鬼は考えた。
この死体が纏う白銀のプレート。
まるで物語の勇者のような出で立ち。
酔狂でこのような格好をしているとは考えにくい、か?
それはどうだろうなと白髪の鬼は首を振った。
雲ひとつない青空。
風が心地よいとはいえ照りつける太陽。
服の下では汗でじっとり濡れている身。
そして純白のタキシード。
自分のような伊達男ならば
こんな格好は嬉々としてするだろう。
「なあパピー」
後方、離れた所にある建物に寄り掛かって
座りこんでいるパピーは驚き声を出す。
「な、なんだよう!?」
「お伽噺の戦士のような格好をしたものは
どういう人間なのだと思う?」
「し、知るかよ! 俳優かなんかじゃないのか!?」
ふむ、と白髪鬼は顎に手をやる。
少年の纏うものは勇壮。
しかし、装具に着られているという感は死体と言えども全くない。
それもこの少年が観劇に生きる者ならば説明はできる。
そして、この地で勇者、異常の力を手に入れ、
戦おうとした矢先に呆気なく殺された。
正解とは思えないがそれも中々に面白い想像だ。
白髪鬼はそう思う。
そのような同志といえる者が短い間でも
この殺し合いの舞台にいたと考えるのは、面白い。
彼もまたこの舞台で英雄になろうとするものなのだから。
「なあ、もういいだろ。ティオを探しに行こうぜ!?」
背後からパピーの声が聞こえる。
掌にある弾丸を白髪鬼は懐にしまった。
あの男、猿谷がこの少年を殺したという確たる証拠はない。
だが彼が同じ弾丸を扱う銃を持っている以上、
疑いをかけるのは自然。いや当然だろう。
「うむ。そうじゃな」
頷いた白髪鬼はパピーを
立ちあがるのを黙って待った。
腰を上げたパピーは死体に眼を向けないよう気をつけながら
おっかなびっくりパピーは白髪鬼に駆け寄った。
「止まれ!」
それを一拍の気合がこめられた声で
制する白髪鬼。
「そこにいるんじゃろう?」
声、それが向けられたのはビルディングの群れ、
その影へ。
「ああ、鋭いご老人だ」
感心するような。
賞賛するような声とともに姿を見せたのは青年。
だが顔に塗られた儀式めいた化粧が
この青年の異様さを際立たせていた。
「覗き見するとは感心せん若者じゃな」
「これは失礼を。僕の名はブック。
しがない魔獣使いさ」
恭しくブックは礼をする。
「ところでご老人。
その彼は貴方が?」
「いいや。わしではないぞ」
心外そうに肩をすくめて、
白髪鬼は懐から先の弾丸をとりだした。
「これと同じ弾丸を支給されている
猿谷甚一という男が殺したようだ」
「へえ……ただの銃弾で旅人を」
仰々しい仕草でブックは
驚きを露わにした。
「旅人? この少年の名前を知っているのか?」
「ええ。ワタルという少年さ。
勇敢でやさしい少年だった」
悲しげに伏せたまつ毛を震わせてブックは話す。
「こんなところで死んでいい少年じゃなかったのに」
白髪鬼は興味深く、最大の用心もこめて
ブックの挙動を観察する。
どこかおかしいこの男。
内に底知れない傲慢さと冷酷性を持っているように思えた。
信用は、すべきではないだろう。
「な、なあ!」
白髪鬼がこの場をどう対応するか悩んでいた中、
後ろにいたパピーがブックへと話しかける。
「ティオっていうやつを知らないか!?
ピンク色の長い髪をした女の子なんだけども」
パピーの言葉を聞いてブックは眉を上げる。
「ティオ? 友達かなにかかい?」
「い、いや……そういうんじゃないけどよ」
「ああ、そうだろうね」
ブックは同意するようにしきりと頷く。
「ティオは君のことを――」
その瞬間、空間が震えた。
圧倒的な音量がパピーと
白髪鬼の鼓膜どころか体全体を震わせた。
建物群の波打ったガラスがたまらず
振動に耐えきれず粉となって割れ散った。
警戒に眼つきを一層鋭くした
白髪鬼は音のした方へと視線をやった。
「君のことを敵だと言っていたからね。
レオパルドン・パピプリオ」
豪風が面ではなく点となって
パピーへと襲いかかった。
凄まじい破壊力が地面を砕き。
周囲丸ごと陥没させた。
コンクリートが砕けて
泥団子のような固形となって舞い上がった。
パピーの命は奪われていない。
とっさにクシャスラと合体した白髪鬼が
パピーを抱え上げて5階建ての建物の屋上に着地した。
「凄いね。ティオ」
微笑み。褒めるように
ブックは手を上品に叩いた。
乾いた音が埃で覆われた
空間に虚しく響いた。
「な、なんだよお前!」
唇を震わせたパピーが
必死に口を動かして言葉をなそうとしている。
「ほんとうにティオなのかよそれ!?
なにをしたんだよティオに!?」
パピーの声に反応したように。
なにかに抗うような、叩き潰す咆哮が辺りを震わせる。
ピンク色の髪の化け物の服装は
パピーから聞いたものとさして変わらない。
ただ、大きさが、少なくとも5mはある。
顔は、およそ少女と表現できるものではない。
顔中の筋肉が著しく膨張し、
目が埋没してしまうほどになり。
伸びた白い牙が禍々しく陽光を反射する。
「なにもしてないよ」
口に手を当ててカラカラと笑うブック。
「ただ、ね。もう誰のことも信用できないみたいなんだ。
君を殺すほどにはね」
肥大した足の筋肉を撓め、爆発させ、
ティオらしき化け物が白髪鬼達がいる建物へと突進する。
踏みしめている場所。
下の下の方で何かが欠けて傾く感触。
そして体が建物ごと落下しようとする。
景色が上へと落ちていった。
パピーを抱えたまま、
堪らず白髪鬼は地面へ降りた。
瓦礫の山と化した建物跡。
太い腕がそこからにょきりと生え、
ピンク色の頭が瓦礫を撥ね退けた。
「ひ、ひぃ!」
恐怖に歯の根が合わないのだろう。
かちかちという音が聞こえてきた。
雄叫びとともにティオがその巨腕をふるう。
速く、強く、そして重い。
パピーを抱えた白髪鬼には到底受け止められるものではない。
己の身を分裂させて壁にし、
辛うじて白髪鬼はティオから距離をとった。
「キシャア!」
硬質な鳴き声が背後から聞こえる。
後ろを見た白髪鬼に映ったのは黄色の蟹のような怪人。
疲労しきった白髪鬼は一瞬反応が遅れ、
やむを得ず片手で攻撃を受け止めた。
その拍子にパピーが腕から振り落とされ
地面を転がった。
すぐ助けに向かおうとした白髪鬼だが
そこを蟹の鋏が襲いかかる。
遅く、そして軽い。
万全ならばおよそ苦も無く倒せただろうが
今の白髪鬼ではどうじても手こずってしまう。
「あ、あああああ…………」
静かに、足音強くティオがパピーへと近づく。
息遣いはまさしく獣。
だがその中にもたしかにティオの面影を感じることができて、
パピーは言いようのない悲しみに顔を歪める。
矢継ぎ早の蟹の攻撃を紙一重でかわす白髪鬼は
とっさに拳銃を構え、ブックに狙いを定めた。
パピーの言葉を信じるのなら、
ティオという少女はこの男に操られている可能性が高い。
男は今、愉悦の表情でティオとパピーに見いっている。
蟲惑的に弧を描いた口元は
劇を楽しむ観客のものか、
己の台本の出来を自賛する演出家のものなのかはわからないが。
好機と見た白髪鬼は引き金を引いた。
銃声とともに弾丸が飛び出す。
こちらを見ていないブックの額に確かに当たるはずだったそれは
まるで予知していたかのように上体を反らすことで外れた。
ブックの着ている動きやすくゆったりとした装束。
その胸元から小動物の鳴き声とともに
栗鼠のような生き物が顔を出し
「ありがとうジュリー」
ブックが指の腹で頭を撫でる。
次の手を考える前に、
蟹の鋏が横殴りに白髪鬼の頭部を叩いた。
白髪鬼はたまらず錐もみして建物へと突っ込んだ。
クシャスラの風をもって
あのティオとかいう化け物となった少女を足止めするにも
あれを止めるほどの風を出すには体力が足りない。
「ぐ、ぐぅぅ……!」
涎を口の端から垂らして。
今にもパピーの喉笛を
食い破ろうとするようにティオは歯を剥いた。
「ま、待ってくれよティオ!」
必死に、懇願するように両手を前に出して
パピーは語りかける。
「落ち着いてくれ、ティオ。
頼むよ。前のおまえにもどってくれよ。
お、オレ。そうしないとちびっちゃいそうだよ」
涙を目の端に浮かべて震えた声で弱弱しく話す。
「わ、わかるぜ。怖いんだよなティオ。
正気でいるのがさ。オレですら怖くてしょうがないぜ?」
虚勢を張るように笑みを浮かべて
パピーはティオへと呼びかける。
わずかに、ティオの動きが鈍る。
油がきれ始めたからくりのように。
「で、でもさ。
オレもいるからさ。
元気だぜよ。一緒に協力してやるからさ。
へへへ。百人力だぜ?」
自分の言葉に自分で勇気づけられたのか
パピーは徐々にいつもの元気をとりもどしていく。
「な? 大丈夫だって。
なんならオレが、その、『ともだち』になってやるからさ」
ティオの両の手が震え、弱弱しくパピーへと伸ばされる。
顔は俯いたまま。巨大になった体を小さくして。
「オレもガッシュが殺し合いにのってたのはショックだけどさ。
もうへっちゃらだしさ」
パピーの肩へとティオの手が置かれた。
「オレは、おまえの味方だからさ」
「うそをつくな」
パピーの言葉への返答。
それは底冷えして、感情がなく。
置かれた両の手はそのままパピーの首へと移動して
包み込むように首を捻じり切った。
「ヴそをづくな」
何が起こったのかもわからないまま死んだだろう
パピーの生首を両手で握りしめる。
「ヴぞをづくな」
ゆっくりとそれは圧縮されていき。
ついには血と脳漿の色の混じり合った悪趣味なジュースとなって
ティオの手から零れおちていく。
「がっじゅがのるはずがなヴぃだろう」
伏せられた顔はピンクの髪がかかって
表情をうかがい知ることはできない。
「がっじゅをおとじいれようどするのなら」
髪を振り乱し。
濁った瞳は焦点が合うことなく。
ティオは空を見上げ、叫ぶ。
「おまえはともだちなんかじゃない!」
血を落とすことなく
顔を覆った。血が顔中を真っ赤に染める。
「あ、ああ……!」
ブックは嗤う。
ひたすらに喜ばしそうに嗤い続ける。
「あああああああああ!!」
顔中を掻き毟り、
耐えきれない痛みを狂った心ですら感じたのか。
ティオは何処へと去っていった。
ティオが走っていった方角をしばし見てから
ブックは白髪鬼に視線を向けた。
そこにいたのは、
白の翼人が力尽きたように膝をついている姿と。
散らばった蟹怪人の残骸。
「おまえさんの“願い”は……なんじゃ?」
白髪鬼が苦しそうに喘ぎながらブックへと問う。
その言葉にブックは凝った装飾が施された一冊の本をとりだした。
「これは、魔界の魔物たちの術を
人間の力で引き出すものなんだけどもね。
面白いよこれは。人間の心の力で術を発動するんだ」
ブックの話に白髪鬼は黙っている。
ブックは、嘲りを浮かべて本を翳す。
「これは。心の限界を教えてくれるものなんだ。
人間の限界をね」
白髪鬼はやっとのことで体中の力を振り絞って立ち上がる。
「人は心から逃れることはできない。
だが心は限界がある。
それなら……心なんて滅びるべきなんだ」
それを聞き、白髪鬼は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「若いな」
「若くてもかまわないさ」
ブックはその場から立ち去った。
僕は直接戦うのは苦手だからね、と最後に言い残して。
残された白髪鬼は、瓦礫に埋め尽くされた道を歩いて。
体だけとなったパピーへと歩み寄る。
幸運にも残っていた首輪と。
荷物を回収して、白髪鬼は静かに漏らした。
「疲れたなあ」
その言葉を聞くものは、いない。
&color(red){【レオパルドン・パピプリオ@金色のガッシュ!! 死亡確認】}
&color(red){【残り 26名】}
【D-3/一日目/午前】
【津幡共仁@銀齢の果て】
[状態]:気絶寸前、ダメージ(小)
[装備]:クシャスラ@waqwaq、コルト・シングル・アクション・アーミー(5/6)@現実
[道具]:基本支給品×2、簡易工具セット、輸血パック(各種血液型、黒い血のも)、
ワタルを打ち抜いた弾丸 、月の石@金色のガッシュ!!、
レオパルドン・パピプリオの首輪、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:英雄として行動する
1:……すこし休むか
2:ワタルの首輪も回収しておく。
3:ワタルを殺してのは猿谷だと言いふらす。
(本当かどうか関わらず)
【D-3→???/一日目/午前】
【ティオ@金色のガッシュ!!】
[状態]:狂戦士(バーサーカー)の術により狂化・外見にも変化
[装備]:
[道具]:基本支給品、ヨキの弓矢(9/10)@waqwaq
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:グウウウウウウウ!!
※魔法が使えるかどうかは不明です
※体長5m、顔は鬼みたいな感じになってます。
【ブック@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:ダメージ小 、心の力消費小、ボルキャンサー……きみはいいやつだった
[装備]:契約の玉@ブレスト、ジュリー(銀嶺)@ブレスト、双眼鏡@現実、
[道具]:基本支給品、青酸カリ@バトルロワイアル、魔本(ティオ)@金色のガッシュ!!、
[思考・状況]
基本行動方針:人の心と生命を殺していく
1:ティオを利用し人間を殺す
2:ガッシュ達魔物の子に興味
※ボルキャンサーは津幡共仁に破壊されました。
|[[白光のスプンタ・マンユ~What a beautiful hopes~]]|投下順|[[【おまえがそう想うのならそう在るのだろう。】]]|
|[[白光のスプンタ・マンユ~What a beautiful hopes~]]|時系列順|[[人間/人形らしく]]|
|[[立ち上がれども]]|津幡共仁|[[]]|
|~|レオパルドン・パピプリオ|&color(red){GAME OVER}|
|[[優しさに飢える少女]]|ティオ|[[]]|
|~|ブック|~|
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