「誰かぁ!助けてかしらー!!」
綺麗に透き通った声が、辺りに響いている。
「この声は…どうしたの、金糸雀!?」
その声からは、危険な状態にあるということが聞き取れるため、急いで声のする方に向かった。
「はっ!蒼星石ぃ!枝に服が引っ掛かって降りれないかしらぁ~」
――杞憂だったか…
「全く…レンピカ、手伝ってあげて」
「ありがとうかしら、蒼星石!」
「また真紅たちを観察してたの?子供っぽいことはやめなよ…」
君のために、あんなに急いで駆け付けたのに…という言葉を飲み込んで、注意する。毎度毎度、こっちの気持ちも考えてほしい。
「んなっ!蒼星石、カナは子供じゃないかしら!」
「十分子供だよ。…心配ばかり、掛けるじゃないか…」
「…!蒼星石!」
え?と声を出すより先に、強引に唇を塞がれる。あの綺麗な声を紡ぐ唇。柔らかくて、とろけそうで…
負けじとこちらも、舌を入れてみる。少し驚いたようだけど、止めるどころか、さらに深く、貪るように舌を絡ませてくる。
最後に一度、くちゅ…と卑猥な水音をさせ、唇を離す。名残惜しそうに僕の顔を見ながらも、一言。
「子供には、こんなこと…できないかしら…」
――今回ばかりは、どうやら僕の敗けのようだ。
『アリスゲームが始まれば、必ず誰かがいなくなる……』
「………」
妹の言葉が、やけに頭に残っていた。
アリスゲームは、自分達の創造主であるお父様が望む事。けれど、第3、第4、第5、第6はアリスゲームから逃げている。使命感より、姉妹の大切さの方が勝っているから。
自分はどうだろう。姉妹を倒し、アリスゲームが出来るだろうか……。
姉妹の顔が次々と浮かんだ。
誰よりもお父様に会いたがっている水銀燈。意地悪だけど誰よりも戦いを嫌う優しい翠星石。凛としているけど本当はさみしがり屋の真紅。子供っぽいけど最近は心が強くなった雛苺。まだ見ぬ第7ドール。そして……。
「……蒼星石……」
4番目の姉妹、妹。誰にでも優しくて、真面目で、全て自分で溜め込もうとする子。
「もし、アリスゲームをするなら……」
彼女とも戦わなければいけない。彼女を倒し、ローザミスティカを……。
「だめ…!そんな事……出来ない……っ」
自分は何故彼女の事ばかり考えるのだろう。皆大切な姉妹だ。けれど、やはり出てくるのは蒼星石の優しい笑顔。
「どうして……?」
答えてくれる声は、無い。