水銀燈に案内されたのは、路地裏にあるバーだった。
少しレトロな感じのビルに小さなネオンの看板がかかっていた。
「…Angel?」
「そう、私の行きつけのバーよぉ」
そう言って水銀燈はバーへと入っていった。蒼星石も後に続く。
「わぁ…」
バーの中に入った蒼星石は、感嘆の声をあげた。
外の雰囲気とは違い、中は洒落た感じの綺麗なカクテルバーだった。
ビルのフロア全体を利用した広いバーで、大きなカウンターがある。
そして、壁には往年のロックスター達の写真やポスターが大量に飾られていた。
「あ!いらっしゃい天使さん!!」
と、カウンターの中にいるバーテンダーの女性がこちらに手を振っている。
二人はカウンターの中央に座る。バーテンダーはニコニコと微笑んでいた。
黒くて長い髪の、色の白い綺麗な女性だった。
「もう、めぐったらぁ…天使はやめてって言ってるでしょぉ?」
水銀燈はバーテンダー、柿崎めぐに言った。
「いいじゃない。だって、貴方は私の天使なんだもん」
と、全く反省する気のない様子のめぐに水銀燈は苦笑を浮かべた。
「まったくこの娘は…あっ、紹介するわねぇ。この娘は私がギターしてるバンドのリーダーで、ベーシストの蒼星石」
「あら、この娘がローゼンメイデンのベースさんなのね!はじめまして」
と、蒼星石に手を差し出すめぐ。蒼星石はその手を取り、握手した。
「はじめました。めぐさん」
二人は微笑みあう。水銀燈は横で二人の様子を楽しそうに見ていた。
「さぁ、蒼星石。今日は私がおごってあげるからぁ、じゃんじゃん飲みなさぁい!」
と言うと、水銀燈は「めぐ、いつもの!」と言う。すぐにめぐはカクテルを作りだす。
先ほどまでのほのぼのした雰囲気から一転、真剣な表情で華麗にシェイカーを振るめぐ。
「はい、お待たせ」
と、元の笑顔でグラスにカクテルを注ぐ。出来たのは乳白色のカクテル。
「…水銀燈、ひょっとしてこれって…」
蒼星石はその見覚えのある色に嫌な予感を覚えた。
「そう!乳酸菌飲料のカクテルよぉ、これここでしか飲めないのよねぇ」
とおいしそうに乳酸菌カクテルを飲む水銀燈。蒼星石も覚悟を決めて一口。
「あっ…おいしい」
意外なことになかなかの味だったようだ。
「そりゃあね、まずいものは流石に商品に出来ないわ」
と言いながらも苦笑気味のめぐ。どうも、相当苦労して考えたカクテルのようだ。
「…でぇ?」
唐突に、水銀燈は真面目な顔で蒼星石を見る。
「一体何を悩んでるのかしらぁ?蒼星石」
全てを見抜くような赤い、鋭い目が蒼星石を射抜いた。
最終更新:2008年03月16日 23:24