「おお!銀ちゃん来てたのか!!」
しばらく二人の間に続いた沈黙を破ったのは、水銀燈でも蒼星石でもめぐでもない第三者だった。
二人は声の方を見る。
「久しぶりねぇ」
と、水銀燈は声の主に手を振り返事をした。しかし、蒼星石はその声の主を見て固まっていた。
「ジ…ジミィ・ヘンドリックス…?」
蒼星石の言葉の通り、彼女の視線の先にはジミィ・ヘンドリックスがいた。
よく見ると随分日本人顔のジミィ・ヘンドリックスだったが…
「ふふ、驚くのはまだ早いわよぉ?」
と、水銀燈が言うと…
「おぉ!銀ちゃん久しぶりじゃないか!!」
「メジャーになってから全然顔出さなかったから、みんな寂しがってたんだぞ!」
「今日は久しぶりにセッション出来るな!!」
続々と現れる水銀燈の知り合い集団。
その一人一人が、往年のロックスターの格好をしていた。
蒼星石は絶句を通り越して目が点になっている。
そんな蒼星石の様子を見て、めぐは苦笑を浮かべた。
「ここね…バーとして開いた時に、どうせならみんながロックを楽しめるようにって、ステージを作ったのよ」
「最初はみんな普通の格好で演奏してたんだけど、段々本格的になってって」
「気がついた時には、ここで演奏する人みんな憧れのロックスターのコスプレするようになってたのよ」
めぐが蒼星石の目の前の異常な風景を解説してる間にも、店は古今東西のロックスターが増え続けている。
KISSの格好を完コピした集団までいるが、彼らはその格好でここまで来たのだろうか?
「す…凄い光景ですね…」
「えぇ、私もそう思うわ…でも…」
めぐは言葉を句切り、辺りを見回す。古今東西、ありとあらゆるロックスター達が好き勝手に話し合っている。
シド・ヴィシャスがスティーヴ・ハリスとベースについて熱く語り合うという、あり得ない現象まで起こっている。
「みんな…とっても楽しそうでしょ?」
「…はい」
みんな楽しそうに話している。中にはジャンルの違いで口論している人もいるが、それすら楽しそうだ。
蒼星石はその光景を見ながら、いつの間にか微笑んでいた。
蒼星石はふと疑問に思った。「そういえば、僕は何でロックを始めたんだっけ?」と…
「よ!銀ちゃん、めぐちゃん、久しぶり!」
と、バーの入り口の方から声がした。蒼星石と、その声に聞き覚えのある人たちは皆そちらを見た。
「あらぁ!久しぶりじゃなぁい!!」
水銀燈は驚き、叫ぶように彼に声をかけた。
他の人々も口々に「久しぶり」と言っているから、しばらくここに来てなかったのだろう。
蒼星石は何となく彼の顔が気になった。
目を細め彼を見ようとするが、そこからは影になって見えなかった。
蒼星石がそうしてる間に、彼はカウンターへとやってきて蒼星石の隣に座った。
「あっ!」
蒼星石は驚きの声を上げた。
最終更新:2008年03月17日 22:56