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…村八分というバンドをご存じだろうか?
1970年代初期に活躍したロックバンドだ。
ローリングストーンズの影響を受けた音楽性を持ち、
日本語ロックの生みの親とまで言われた。
そして、その楽曲全ての作詞をしたのが、
ボーカルのチャー坊こと、柴田和志である…

何故こんな話をしたのかというと…

「チ、チャー坊…」

蒼星石の目の前にそのチャー坊がいるからである。
チャー坊は1994年に亡くなっているので、無論本人ではない。
しかし、そのボサボサに伸ばした髪とその奥から覗く目の雰囲気は、
まさしくチャー坊その人のように蒼星石には思えた。

「お、よく知ってるな。嬢ちゃん」

軽い口調でチャー坊(のコスプレをした男)は言う。
蒼星石はポ~っとした顔でチャー坊を見る。

「ねぇ、チャー坊。久しぶりに来たんだからなんか歌ってよぉ」

水銀燈がチャー坊の格好をした男に声をかける。
「わかったよ」と言って、チャー坊の格好をした男はステージに向かう。
水銀燈もギターを出してステージに向かった。

「ね、ねぇめぐさん…あの人…」

蒼星石はチャー坊を目で追いながらめぐに声をかける。

「あぁ、チャー坊そっくりでしょ?私も初めて見た時びっくりしたわ」
「えぇ、本人かと思いましたよ」
「でしょ?だからみんな「チャー坊」って呼んでるの」

唖然とした様子のまま、蒼星石はチャー坊を見ていた。
チャー坊はステージでマイクをセッティングしている。
横で水銀燈は彼女の数あるギターコレクションの一本、真っ黒なギブソンのセミアコを直接アンプにつないだ。
本物の村八分同様、アンプをフル10にしてギターのボリュームを抑えるセッティングだ。

一瞬の沈黙。

水銀燈がEのコードをアルペジオで弾きだした瞬間、店内に歓声があふれた。

「はぁ…さすが、私の天使さん…」

めぐがちょっとイッちゃった目で水銀燈を見てるのは、この際見なかったことにしよう。
蒼星石も感心して水銀燈の演奏を聴いていた。
水銀燈は普段、メタルに影響を受けたハードな演奏を好んでいる。
故に今の彼女の演奏スタイルは新鮮だった。

「(…水銀燈って、こんな穏やかなギタープレイも出来るのか…)」

そして、穏やかなアルペジオに人々が包まれたのを見計らって。

チャー坊は歌い出した。

「(あっ、この曲…)」

蒼星石は懐かしい感じに包まれた。曲は村八分の「くたびれて」
チャー坊(本人)がギタリストの山口冨士夫と一緒に初めて作った曲だ。

「(…この曲、昔聞いたことがある…いつだったっけ?)」

チャー坊の少年の様な歌を聞きながら、蒼星石の意識は過去に飛んでいった。





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最終更新:2008年03月17日 22:55