名古屋CLUB QUATTRO、数多くのロックンローラーがライブを行うライブハウスだ。
大物バンドが二日連続できたらしく、スタッフ達は大忙しのようである。
「…ところで、前日来たバンドって誰なのぉ?」
水銀燈が聞くと、メンバー達は手に持ったパンフレットを開いてみる。
「…大槻ケンヂ…」
「筋肉少女帯ですぅ」
「そうなんだ…だったら真紅、ひび割れメイクしとくかい?」
「…断固拒否するのだわ」
「じゃぁ、私がやっちゃおうかしらぁ?」
メンバー達が賑やかにする中、黙々と作業する二人。雪華綺晶と雛苺は黙々と何か作業をしていた。
雪華綺晶は…また食べている。またカレーだ。彼女は辛い物が好きなようなので、カレーが辛くても帰ることはないと思うが…
雛苺はというと、生け贄の儀式用のナイフを研いで…
「って!何やってるですかチビ苺!!?」
「あぁ!翠星石返してなのぉ!!」
さすがにそんなことさせるわけにも行かないので、ナイフは没収となった。
ちなみに横でせっせと水銀燈は目の周りに大槻ケンヂを真似たひび割れメイクを書いているのだが…
「…銀ちゃん…初期のHIDEみたいだよ?」
ギタリストでひび割れといえばXJapanが世に出だした頃のHIDEである。
「あっ…確かにそうねぇ…髪の毛も立てちゃおうかしらぁ?」
「絶対にやめてなのだわ水銀燈」
などと真紅と水銀燈の漫才やらナイフに代わりナタを取り出す雛苺やらが騒いでる間に時間は刻一刻と過ぎていく。
そして、開始10分前…メンバー達は完全に神経集中へと入っていた。
真紅は紅茶を飲みつつ、これから始まるライブのイメージする。
ライブは生き物だ。トラブルは起きる…ひょっとすると熱狂した観客が暴徒化することもあり得るかもしれない。それをカバーするのも、ボーカルの仕事だ。
水銀燈はAmのスケールを永遠と練習している。水銀燈なりの精神統一である。
余談だが、陣内孝則がボーカルしていたバンド「ザ・ロッカーズ」のギタリスト、谷信雄もよく階段に座ってスケール練習をしていたそうだ。
雛苺は悪魔の召還…ではなく、ヘッドホンをつけて音楽を聴いている。
某ブラックメタルバンドの自殺したボーカルの遺作だ。悪魔の様な声に導かれながら、彼女の脳内にはこれから始まるライブの映像が流れる。
さぁ、今日はどんなパフォーマンスをしてやろう?
薔薇水晶は…また寝ている。緊張などまるで無しだ。
彼女はライブを楽しい遊び場だと考えている。仕事などではなく、ファンが楽しんで、メンバーが楽しんで、自分が楽しむ場だと思っている。
故に、彼女は純粋にライブを楽しみ、それが周りを楽しませるのだ。
ちなみに今、彼女は水銀燈とデートする夢を見ている。
雪華綺晶は読書中だ。マザーグーズの詩集である。
彼女はライブが始まるまで一切ギターに触らなかった。
彼女曰く「ライブでのみ触るからこそ、その音に勢いと命が生まれる」
とのことだ。理解出来ない理論ではあるが、実際彼女がギターを弾く時、ただのEのコードすら、深みのある音を生みだすのだ。
翠星石はひたすらイメージ練習である…スティック回しの…
彼女はドラムを、いかに目立たせるかに命をかけている。
それ故に彼女の中でドラムはツーバスであり、神はYOSHIKIなのだ。
スティックを回しながらも、足下はツーバスを踏むように忙しなく動いている。
蒼星石はベースの練習だ。スラップで短いフレーズを何度も何度も練習している。
彼女はメンバーの中でも特に練習熱心であり、指の皮は誰よりも厚く。
そして、その音楽に対する思い入れも熱い。
自分の思い全てをベースに乗せて、吐き出すように彼女はベースを弾く。
真剣に、激しく…
みんなそれぞれ、バラバラの精神統一だ。
しかし、その思いは全て一カ所につながっている。
ライブだ。ステージだ。
「本番まで後ちょっとかしらぁ!みんな、準備はできたかしら?」
楽屋に入ってきた金糸雀が声をかける。
全員が顔を上げる…いや、薔薇水晶はまだ寝ている。
「って、まだ寝てるですかばらしぃー!!?」
「…Zzz…」
「…早く起こすのだわ…」
…気を取り直して…
「みんな、準備はできたかしら!!」
全員が金糸雀を見る。その目は自信に満ちている。
「もちろんなのだわ!」
「あたりまえじゃなぁい」
「雛はいつでもOKなのよぉ~!」
「…」
「出来ていますわ…お姉様」
「あったりまえじゃねぇですかぁ!」
「うん、準備万端だよ」
さぁ、行こう…天国の階段はすぐ側にある。
階段を上った先には、ロックスター達の天国がある。
さぁ、行こう…ライブは、ステージはもうすぐだ!
最終更新:2008年04月13日 20:56