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…QUATTROのホール全体に流れるSE。ステージはまだライトアップされていない。
薄暗いホールの中には、今か今かとローゼンメイデンを待ち望むファン達がいる。
前の方にいるファン達はおおきくROZEN MAIDENと書かれたバンドTシャツを着ている。
老若男女問わず、多くのファン達がSEのリズムに合わせて体を揺らしていた。

「(いつみても、この雰囲気はいいのだわ…)」

ステージ脇まで着た真紅は、そう思い深呼吸をする。

「「すぅー…はぁ」」

他のメンバー達も同じタイミングで深呼吸して、静かに笑いあった。

「いっつも偉そうなくせに…緊張しすぎよぉ、真紅ぅ?」
「あら、水銀燈。人のこと言える?あなたも緊張しているように見えるのだわ」
「まったく二人とも情けねぇですぅ!」
「そういう翠星石も足震えてるのよぉ~!」
「まぁまぁ…誰だって緊張するんだから」
「…私は、大丈夫だよ?」
「ふふ、ばらしぃーちゃんは凄いですね」

と、そんなことを言ってるとスタッフの一人が声をかける。

「ローゼンメイデンさん、そろそろお時間です」
「わかったのだわ…照明を消してちょうだい」

ホールの電気が消え、完全に真っ暗になる。

「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

地響きを起こしそうな声。ほとんど悲鳴のような歓声に包まれる。
ステージの一カ所にスポットライトがあたった。ドラムである。
両腕を上げ、その手にROZENと書かれたドラムスティックが輝く。
彼女はそれを一回転させると。人間離れした勢いでドラムを叩き出す。
地面を揺らすツーバスの音。それと同時にステージ全体がライトアップされる。
水銀燈と雪華綺晶が同時に同じフレーズを弾き、ショルキーを背負った薔薇水晶がそれにあわせる。そこに、スラップで蒼星石が参加し…ブレイク。
一瞬、静かになる…
今まで目を閉じていた真紅がゆっくり目を開き。スタンドマイクを掴んだ。

「We Are ROZEN MAIDEEEEEEEEEEENN!!」

真紅がシャウトすると、観客は途端にハイになる。それと同時に水銀燈と雪華綺晶がギターを弾きはじめる。

「一曲目はこれなのだわ!HIGHEST!」

パンクサウンドとツーバスの重たい音。ライブということで本来は入っていない水銀燈&雪華綺晶の超絶ギタープレーも織り交ぜられたスペシャル仕様。
観客達はローゼンメイデンの音に酔いしれ、ジャンプする者、首を振る者、それぞれがそれぞれの好きなノリ方をする。ロックバンドのファンは意外と統一した動きをするものだが、ローゼンファン達は好きなように音にのる。
好き勝手やりたいヤツが揃ったバンドのファンは、やはり好き勝手したいヤツのようだ。

曲は終盤に入る。と、水銀燈に向かってニヤリと笑う。水銀燈はその意味を感じて、ニヤっと笑い返した。さらに、雪華綺晶はその隣にいた薔薇水晶にも目配せした。薔薇水晶は困った顔をした後、コクリと頷いた。その表情を言葉に表すと「やれやれ」といった感じだ。

HIGHEST! HIG…」

真紅の最後のシャウトの途中で、突然声をかき消すようなギターソロが始まる。
びっくりした真紅だったが、しばらくムッとした顔をして…やがて、苦笑した。
そして、自分の前を水銀燈に開け渡す。水銀燈が前に出て行く時、真紅はぼそっと言った。

「あなたに声をかき消されるのも、久しぶりなのだわ…」

水銀燈にはその声が聞こえたようで、ニッと笑って見せた。その後、雪華綺晶と薔薇水晶を見る。

「(いくわよ、きらきーにばらしぃー)」
「(ええ、お姉様)」
「(…頑張る)」

三人の息があった瞬間、始まったのは超絶ソロだった。
薔薇水晶の壮大なキーボードテクニック、最初は水銀燈も雪華綺晶もそれにあわせる。
しばらくすると、キーボードの音が抑えられ…水銀燈と雪華綺晶は同時に飛んでもないことをはじめた。ファン達も目を見開いて絶句し、呆然と目の前の光景を見る。

水銀燈と雪華綺晶は、二人で同じフレーズを弾いているのだ…アンジェロラッシュで…

真紅はその様子を見て驚いた後、金糸雀に紅茶を持ってこさせた。
彼女はよく水銀燈のソロの間紅茶を飲んでその光景を眺めているのだが、一曲目からそれを行ったのは初めてだった。
暖かいダージリンティーを飲みながら、ソロの様子を見ている。久しぶりに見た。
水銀燈のギターソロをじゃない。水銀燈が楽しんで弾いているギターソロを…
そして、その隣の新メンバー…雪華綺晶を見た。彼女が来てから、このバンドは良い感じに変化した。特に、同じギタリストである水銀燈にとって。

二人はソロを弾きながら、定位置に戻る。水銀燈は真紅にウインクする。
真紅は苦笑して、マイクの前に立った。

「まったく…あなた達!ボーカルの歌をかき消すとは何事なのだわ!!…まぁ、いいのだわ…次の曲にいくのだわ!!」

ようやく現状になれたファン達が歓声を上げる。
この調子でライブは進んでいく。雛苺と雪華綺晶が同時にステージからダイブしたこと以外、特にトラブルもなく、ライブは終盤へと入っていった。

「いよいよ、最後の曲なのだわ…これも新しいアルバムからの曲だったわね…」

真紅が言うと、水銀燈がAのパワーコードを掻き鳴らした。

「ラストナンバーなのだわ!Rock‘n’Roll kingdom!!」

ラストナンバーは真紅が作詞作曲したパンクナンバー、Rock’n’Roll kingdomだった。
タイトルの通りのロックンロール賛歌である。
真紅は彼女には珍しいほど荒れ狂った歌い方をし、それにのせられた水銀燈と雪華綺晶も激しくギターを弾く。途中でとうとう雪華綺晶のギターの弦が切れたが、彼女はそんなこと気にせずギターを弾き続けた。
スタジオレコーディング時はパートがなかった雛苺も、半デス声で途中から参加。
薔薇水晶も体を揺らし、水銀燈の隣でショルキーを弾く。
蒼星石も雪華綺晶の隣で、暴れ回るようにベースを弾く。彼女がここまで熱くなるのも珍しい。
翠星石のツーバスの勢いもさらに増していく。

…こうして、新生ローゼンメイデン初のライブは、見事成功に終わったのだった。
だが、ノンビリしてるわけにはいかない…次のライブ会場が待っているのだ。




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最終更新:2008年05月28日 00:30