昼休み蒼星石と雛苺の教室にあつまり昼食をとる翠星石と金糸雀。
彼女達の耳に他の女生徒の声が小さく入ってくる。
「ねぇ、きいた?真紅とか言う子と水銀燈。また停学だってぇ・・・」
「本当にバカだよね、コンクールでいい成績を取ったら大学推薦も・・・・」
今にもキレそうな翠星石をなだめる蒼星石。
「好きなように言わせておけばイイさ。どうせ明日には真紅と水銀燈の停学がとけるんだし。それに彼女達も真紅、水銀燈が来たら何も言えなくなるよ」
「そうですけどォ、やはりムカつくですぅ!」
イスから立ち上がろうとする翠星石を蒼星石が必死でなだめている頃、真紅と水銀燈はあの日言い合った公園のブランコに座っていた。
「ふぁぁぁ~。まだ眠いわァ~」
ブランコに座り大きなアクビをする水銀燈。
そのとなりのブランコに真紅も座り公園に設置された時計をみる。
「眠いってもうお昼を過ぎているのだわ。夜中まで何をしてるの水銀燈?」
「ヒマだしぃ~ギターを弾いてるわぁ。ところで話ってなァに真紅ぅ?」
「ねぇ水銀燈、この公園での話しはこれで3回目かしら?」
レザーのハーフコートからタバコを取り出し火をつける水銀燈。
「あら、そうだったァ~?」
「確かそうだったと思うわ・・・私、水銀燈に謝りたいの・・」
Illust ID:ddV04ob30 氏(20th take)
1月も終わりに近づき肌を刺すような風が真紅と水銀燈に吹き付ける。
「あの日、白崎から水銀燈のギターより私の唄を取ったと聞いたときハラが立つと同時に嬉しくもなったのだわ・・。」
タバコの煙をフゥ~と空にむけてはく水銀燈。
「ふぅ~ん・・で、それが何なのぉ?」
真紅は下を向き話を続けた。
「あの日に水銀燈が言った言葉。現実的な夢が目の前に現れた。その言葉は私も一緒だったのだわ。口ではみんなと一緒と言いながらも、かすかに白崎の言葉にグラついた自分がいたの・・・水銀燈のギターに勝ったって思い喜んだ自分がいたのだわ」
水銀燈はブランコをゆっくりと前後に動かしながら言う。
「あっ、そおぅ?で、どうしたいの真紅ぅ~」
「貴女に誤りたいのだわ。あの日に水銀燈にはキツイことを言った・・
でも私も心の中では水銀燈と同じようなことを考えてた時もあった・・
私は口では聞こえのイイことを言うだけの卑怯な女なのだわ」
ゆっくりと動いていたブランコが少しづつ早くなる。
「ウフフフ、本当に真紅っておバカさんねぇ~。真紅が卑怯で弱虫さんでバカ正直ってのは昔から知っていることよォ~。だから私はそんなおバカな真紅が大好きなんじゃなァい。私は卑怯だけの白崎が与えてくれた夢より、バカ正直な真紅の言葉を選んだだけよぉ~」
下を向いていた真紅の顔がゆっくりと水銀燈のほうを向く。
「す、水銀燈?」
「ウフフ、どうしたのォ~泣いてるのぉ?」
真紅は急いで知らない間に零れてきた涙をぬぐう。
「な、泣いてなんかないのだわ!それに私の夢は夢では終わらせないわ」
「あら、それは私も同じよォ。それに夢じゃなくドリームよぉ」
「そうね、願い叶う夢をドリームというのだわ」
肌寒さを増した北風が金色と銀色の髪を躍らせる。
2人はいつの間にか大きく揺れるブランコに座り互いに同じように見ている夢を語り合っていた。
その頭上には近い将来に見るであろう眩しいスポットライトの代わりに今は小さな小さな粉雪が真紅と水銀燈に舞い降りていた。
2月になり1年で一番寒い時期、コンクールに出場する部員だけが忙しく活気付いていた。
「真紅?いつになったら翠星石達のバンドも本格始動するですぅ?」
「寒いのは苦手なのだわ。春よ春」
真紅はそういうと真っ赤なマフラーを首にかけて帰っていく。
「なんだか真紅、顔色がわるかったの~」
「うん、そうだね声の調子も良くないみたいだし」
「真紅は昔から顔色悪い不気味っ子なのですぅ~」
その日からインフルエンザにかかった真紅は4日間寝込んでしまう。
それだけではなく見舞いに行った翠星石から蒼星石と水銀燈に感染し、薔薇女子高は一気にインフルエンザが蔓延してしまった。
真紅達は初期に感染し全快した頃には推薦枠でコンクールに出るはずの第3演奏部の部員ほとんどがダウンしていた。
「神は本当にいたかしら~。第3演奏部の代わりに出場決定かしらァ」
職員室から出てきた金糸雀は喜びの報告を真紅達に言うため溜まり場になっているアンセムに急ぎ走る。
体重がようやく減ってきた翠星石は口からミントアイスを飛ばす。
「なぁ、なんですぅ~。翠星石達が出れるですか?」
前に座る雛苺と真紅にミントアイスの塊が飛んでいく。
「あぁ~ん、汚いの~翠星石ィ。メッ、メッなのよ~」
雛苺を盾に翠星石のミントアイスを防いだ真紅は真剣な口調になる。
「詳しく話してちょうだい金糸雀」
1週間後にせまったコンクール、推薦枠の第3演奏部はほぼ全滅。
音楽や美術に力を入れている薔薇女子高としては学生音楽コンクールに主力の吹奏楽部の他にどうしても後1組は出したい。それでもともと推薦枠だった真紅達に声が掛かったことを金糸雀は得意気に話した。
「で、ヤル音楽はまたクラッシックなのかい?」
「それはイヤですぅ。翠星石はロックがイイのですぅ」
「あと1週間で何かできるのぉ~。ねぇ、創立祭でヤッたのをするのォ?」
水銀燈の言葉に不適な笑いを浮かべる金糸雀。
「フッフッフッかしらぁ。そのとおりよ水銀燈。でもカナ達はロックバンドよ、クラッシックやフィーリング系の曲なんかじゃないかしら」
金糸雀の計画はこうであった。
まず初めの1曲はクラッシックの中でもノリのいいマーチ系の曲を演奏しながらロック風にだんだんと変えていく。
後はロックに興味がない世代の者でも解りやすい曲をヤルというものだった。
「それは金糸雀にしてはイイ考えね。時間はないわ、早速選曲から始めるのだわ」
「ヘヘ~ン、実は前に推薦枠を貰ったときからカナの頭の中に何曲かはあるのかしら~」
その日から真紅達はまた1日の大半を音楽準備室と貸しスタジオにさいた。
そして時間は瞬く間に過ぎていく。
真紅達が住む街から車で1時間弱のところに私立文化ホールがある。
外は今年一番の寒さなのか人通りも少ない。その駐車場に数十台のバスがとまり各学校の演奏者たちが続々とホール内に入っていく。
「さ、さすがにこれだけの人だと緊張するですぅ~」
学校内の行事でしか演奏をしていない真紅達には大きな緊張が重圧としてのしかかる。
「ま、まだ私達の出番ではないのだわ。まずはリラックスよ。紅茶を買いに行ってくるわ」
「そ、そうねェ~。私もちょっと乳酸菌が入ったのを買うわぁ」
「ヒナも一緒に行くの~」
3人がホール入り口の自販機コーナーで緊張を隠しつつ飲み物を口に運ぶ。
トンッ、メガネをかけた女性が真紅とぶつかり紅茶がこぼれる。
「あぁ、ゴメンなさいィィ。大丈夫だったぁ~」
パニックになった女性はハンカチで真紅のスカートを拭く。
「別にヤケドもしてないし大丈夫なのだわ」
「どうしたの?のり」
ノリと呼ばれた女性の後ろに長い黒髪がよく似合う細身の女性がたっていた。
「あっ、メグちゃん。私またヤッちゃった」
メグと呼ばれた女性は真紅、水銀燈、雛苺のペコリと頭を下げる。
「その制服は薔薇女子高の方ですね、どうも私の友達が失礼をしたようでゴメンなさい」
「べつにそこまで誤ることはァないわよぉ~」
水銀燈の声に頭を上げるメグ。水銀燈とメグの目があう。
「ありがとう、それでは薔薇女子高のみなさん演奏、頑張ってください」
そう言うとノリとメグは去っていった。
「ホエェ~、今のメグって人なんだが水銀燈に雰囲気が似てたの~」
「フンッ、私わァ、あんなに病的な顔色してないわよぉ~」
いつの間にか後ろにいた翠星石がボソッと呟く
「水銀燈は昔から顔色悪い不気味っ子ですぅ」
クルリと振り返る水銀燈。
「へぇ~、またデコピンされたいのぉ、翠星石ィ」
「えぇ~それではこのコンクールでは珍しい女性4人組のロックバンドですねぇ~、いやぁ珍しい。それでは聖コリンヌ学園の軽音楽部、名前はラプラスです」
司会が説明すると1時間ほど前に自販機コーナーで会った女性が出てきた。
ノリと呼ばれていた女性はドラムに、メグと呼ばれた女性はギターを持っている。
もう一人はベースを持ったショートカットの髪に眼の下に可愛いホクロが似合う女性。
そして観客の目を引いたのは自然なナチュラルな金髪を後ろで束ね、すき通るような白い肌に青い目の女性がマイクをもちステージに現れたからである。
そして彼女達のバンドが音を出し始めるとホール内の観客は息を呑んだ。
最終更新:2006年12月01日 16:26