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真紅がマンションのカギを開けるとそこには水銀燈、翠星石、金糸雀の
3人がニヤニヤと笑いながら立っていた。
「真紅ぅ~。見たわよぉ~、ウフフフ。あれジュンでしょォ~?」
「と、都会の男は狼なのですぅ~」
真紅が商店街の真ん中で言ったセリフをマンションに帰ろうとしていた
水銀燈達に聞かれそのまま見られていた。
「カナ達は真紅と彼氏の少し前を歩いていたかしら、いきなり後ろから
真紅の声が聞こえて見たら、フフフフだったかしらァ~」
「ちょっと金糸雀、フフフって何んなの?私とジュンは何もないのだわ!」
ムキになる真紅に悪戯っぽく微笑む水銀燈。
「そぉ~お?真紅とォ、ジュンてぇイイ感じに見えたわよォ~」
「勘違いしないで頂戴、水銀燈!」
水銀燈の言葉でさらにムキになる真紅。その横で翠星石は携帯を
取り出しメールを打ち始めた。

~真紅に男ができた。チビでメガネ野郎な男と昼間から公園で
キスをしながら抱き合う真紅と~

「誰にメールしてるの翠星石。ちょっと見せなさい!」
素早く翠星石の手から携帯を取り上げメールを読む真紅の顔色が
変わると翠星石の姿は一瞬の間に消えていた。
水銀燈の部屋に立てこもる翠星石。そのドアを壊す勢いで叩く真紅。
「止めなくてイイのかしら?」
「イイんじゃなァ~い」
そういいながら水銀燈は冷蔵庫からビールを取り出し飲み始めると
水銀燈の携帯が着信を知らせる。
「あっメグぅ~。久しぶりじゃないぃ。どうラプラスは順調ォ~?」
「そのラプラスのことなんだけど、今ねCDを作ってるのよ」
ラプラスの曲を聴いたN’sレーベル側はその音楽性の高さとオディールの
聴く者を魅了する美しい声と歌唱力を高く買い、2ヵ月後のメジャー
デビューを計画し始めていた。すでに曲は出来上がりCMのタイアップも
取り付け録音最終状態だとメグは水銀燈に知らせる。
「凄いじゃないメグぅ~!」
「うん、そうなの、私達ラプラスにとって信じられないくらいのチャンスよ」
メグの喜ぶ顔が受話器越しに見え、ついつい水銀燈の表情にもメグと同じ
ような笑顔がみられた。
「それでね、水銀燈。ちょっとお願いがあるの」
「なぁに、お願いってぇ?」

ラプラスがデビューに向けて取り組んでいる曲は壮大なバラードで
あった。それはCMのタイアップである車メーカーが提示した男女の
出逢いがもたらす喜びと悲しみを表すイメージにピッタリなのだが、
ラプラス達はあと少しの広がりと奥深さを曲に入れたかった。
そこでラプラス達が考え出した答えが真紅と水銀燈にサポートメンバー
としてレコーディングに参加してもらうことであった。
「えっ、私と真紅がレコーディングに参加ァ?」
「そうよ、お願いできるかしら水銀燈?」
「もちろんよぉ、もちろん参加するわぁメグぅ」
その4日後、真紅、水銀燈、翠星石、金糸雀はレコーディングスタジオ
の中にいた。
「すげぇのですぅ、翠星石達がいつも借りてるスタジオとはまるっきり
機材が違うのですぅ~」
「あたり前でしょォ~。恥ずかしいから、あまりキョロキョロしないでよぉ」
ガラス越しにラプラスが作った曲に合わせ、イヤホンを耳にあて目を閉じ
感情を入れて熱唱するオディール。
(これがプロになった人の唄なのだわ・・・)
ほんの前までは同じ道を歩いていたラプラス。それが今ではこうして数多く
のスタッフに支えられ主役として真ん中にいるラプラス。
スタートラインは一緒であったのに気付くと遥か前を走り始めたラプラス。
真紅達は複雑な心境で歌うオディールの姿を見つめていた。

オディールの歌を録り終えたテープを聴きながら真紅と水銀燈はメグの
説明を受ける。
「このパートで真紅ちゃんにコーラスとして入ってもらいたの。水銀燈は
私が弾くギターにいつもの水銀燈らしいトーンで入ってきて欲しいの」
説明を一通り聞くと真紅と水銀燈は先ほどオディールが歌っていた部屋に
入り今度はメグ達ラプラスがガラス越しに真紅達を見る。
「まずは慣らしの練習からです」
スタッフの指示の元でやや緊張しながらもイヤホンをつける真紅と水銀燈。
そしてラプラスのメロディーが流れ出し、その音に体を預ける真紅と水銀燈。
真紅のパートが近づく。フゥ~、ゆっくりと深呼吸し胸に空気を貯める真紅。
次の瞬間、ガラス越しに様子を見ていた全てのスタッフの動きが止った。
真紅のハリがありどこまでも伸びていくような声に聴き入るスタッフの人達。
オディールとは正反対の声質を持つ真紅の声が絡み合うようにオディールの唄
と溶け合っていく。そこに水銀燈のギターが独特のトーンを伴って同じように
メグのトーンと融合していく。
「すげぇ、これ、そのまま録音してもOKじゃねぇの?」
レコーディングスタッフはそう言ったままガラス越しに真紅と水銀燈
を見つめていた。
それは真紅達にとって今まで手探りで探していた道、その道の向こうにある
扉がチラリと見えた、そんな瞬間であった。

歌い終わると真紅はガラスの向こうで見ている翠星石と金糸雀に目を向ける。
「凄ェのですぅ、みんな真紅と水銀燈にビビってるですぅ~!」
防音ガラス越しに声を出している翠星石の言葉は真紅と水銀燈には聞こえない
が、呆然と真紅と水銀燈を見つめるスタッフ達と金糸雀の笑顔が全てを
物語っていた。
「何なのあの子たち・・・凄いわ」
「あっ、そうかミッちゃんは薔薇乙女の歌を聴くの初めてだったよね」
大学でメグ達と知り合いラプラスに入ったミチコは今始めて聴いた真紅の
歌と水銀燈のギターに驚きを隠しきれない表情になる。
そんなミチコを巴はクスッと小さく笑う。
「ねッ、前に言ったでしょ。私達ラプラスにとって最大のライバルは
まだインディーズで曲すらだしていない女の子7人組みのバンドだって」
含み笑いで説明する巴のほうを向きさらに驚きの表情で聞くミチコ。
「じゃぁ、あの子達が前に話していた薔薇乙女の子なの?」
「そうよ。ほら、そこにいる2人もそうよ。翠星石ちゃん。金糸雀ちゃん」
巴はそう言い翠星石と金糸雀の肩を叩き新しくラプラスに入ったミチコを
紹介する。
「彼女は同じ大学でラプラスに入った碧みちこよ」
「こ、こんにちはラプラスでキーボードをヤルことになった碧みちこです。
ヨロシクね、えぇ~と翠星石ちゃん、カ、カナ・・・」
「カ・ナ・リ・ア。私の名前は金糸雀かしらッ」

防音ガラス越しに金糸雀とミチコが話しているのを見る水銀燈。
「ねぇ真紅ぅ。なんだか向こうが騒がしいわねェ。私達、ドジッたァ~?」
「さぁ、解らないのだわ。ただみんな私達を見ているのは確かね」
その時、いきおいよくドアが開きラプラスのマネージャーが入ってくる。
「こんにちは、私はラプラスのマネージャーの山本と申します」
そういい山本は真紅と水銀燈に名刺を差し出す。
「ラプラスのマネージャ~?」
水銀燈の言葉に山本はコクッとうなずき話を切り出す。
「君達の歌とギターはウチのラプラスから聞いてました。しかし
今こうして初めて聴き非常に興味が出てきました」
山本の言葉に水銀燈はあの日のENJUの白崎の言葉を思い出しイラツキ気味
に小さく言葉を出す。
「なぁにぃ?興味てェ~」
「単刀直入に言います。真紅さん、水銀燈さん。N’sレーベルから
曲を出してみませんか?」


最終更新:2006年05月26日 19:52