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「今週のヘヴィーローテーションは、先週デビューした可愛い女の子
7人組みのバンド、薔薇乙女!この薔薇乙女はアマチュア時代には
あのラプラスを超える人気が地元ではあったそうで、私も初めて聴いて
すぐにファンになりました。それでは薔薇乙女でローザミスティカ。
要チェックですよ~」
ピアノのイントロ、それは静かにゆっくりと始まる。それに合わせて雛苺と
金糸雀の愛らしい声がハミングするとそれを打ち破るかのように翠星石の
ドラムが響き蒼星石のベースが太い音で支える。
その直後に水銀燈のギターが激しく吼える。
いつの間にかピアノの静けさは消え、メロディーが走り出す。
そこに真紅の大気を振るわせるような声が美しくも強く広がる・・・。
ラジオの電波に乗り薔薇乙女のデビュー曲、ローザミスティカが走り出す。
憂鬱な月曜の朝に、何気ない水曜の昼下がりに、金曜の夕暮れの渋滞の中で、
土曜の深夜にドライブを楽しむ恋人達の耳に薔薇乙女の曲が届いていく。
「薔薇乙女って知ってる?」
「あぁ、知ってるよ。7人組のバンドだろ。オレ、CD買ったよ」
「本当?ローザミスティカのカップリング曲もイイって聞いたけど?」
「うん、凄ェ、泣けるよ。貸そうか?」
このローザミスティカで薔薇乙女はラプラスに迫るセールスを記録する。
そして圧倒的な実力とそれぞれのビジュアル面でも大きな話題となる薔薇乙女。
今ようやく薔薇乙女とラプラスは同じ舞台の上にたった。

                    *

デビュー後の薔薇乙女達の視線の先に広がって見える景色は昨日までとは
違っていた。街を歩くと自分達の曲が耳に入ってくる。
音楽雑誌のヒットチャートランキングで薔薇乙女の文字を目にする。
通り過ぎていく人の囁きが聞こえる。
「ねぇ、あの子。ホラ、薔薇乙女の子に似てない?」
「ん?あぁ、似てる、似てる。でもこんな所に居ないっしょ~」
地下鉄から地上に続く階段を急ぎ足で駆け上がる翠星石と水銀燈はその
まま待機していた車の後部座席に乗り込む。すると助手席に座る金糸雀が
後部座席に体を乗り出し厳しい口調で2人に言う。
「遅いかしらァ~。予定の時間を15分も過ぎてるかしらッ」
プクッと頬を膨らませる翠星石に向かって金糸雀は時計を見せる。
「ゴチャゴチャうるせェですぅ。まだ東京の地下鉄に慣れてねぇのですぅ」
「時間厳守かしらッ、水銀燈が付いていながら遅刻はどういう事かしら」
「遅刻は私の得意分野よぉ~、もう忘れたのォ?ウフフフ。所でどうして
金糸雀が薔薇乙女のスケジュールを仕切ってるのぉ?」
「なッ、それは貴女達のせいかしらァァ~!」
デビューが決まった直後の薔薇乙女にはまだ正式なマネージャーが決まって
なく、その時にラジオでローザミスティカをヘヴィーローテーションで流して
もらう話をする際に金糸雀のアイデアと巧みな交渉術を見た真紅達が勝手に
金糸雀の名刺を作って配りまわった。
よって知らない人が金糸雀をマネージャーと間違えて仕事の話をしてくるよう
になっていた。
当初は怒り狂っていた金糸雀だが今では薔薇乙女の戦略や軌道を考えると
楽しく夢が広がり寝る時間を惜しんで計画を立て、ある時は出演交渉や
PV撮影の段取りまで引き受け今では立派な薔薇乙女メンバー兼マネージャー
という器用な立場にいた。
「で、今日の予定は、なァにィ?」
「水銀燈と翠星石は写真撮影、その後はみんなでアルバム曲の
レコーディングかしら」
「真紅達は今なにをヤッてるですぅ?蒼星石とチビ苺なんか朝早くから
出て行ってたですぅ」
「それはコレかしらッ」
得意気な顔をして金糸雀はカーラジオをつけるとスピーカーから
DJと真紅達の会話が聞こえてくる。
「それじゃぁ薔薇乙女はただいまアルバム製作中ですか?」
「そうね、来月の頭には発売なのだわ」
「えっ、僕は発売日のこと始めて聞いたよ」
「ヒナも初めて聞いたの~」
「いつ・・・決まったの?」
「今よ、私が決めたのだわ」
ラジオを聴いていた水銀燈が笑いながら金糸雀の顔を見る。
「あらあら、たァ~いへんよォ。真紅ったらァまた勝手に決めちゃったわぁ」
「スケジュールがァァ~!まだ4曲しか出来てないかしら~」
金糸雀が今後の予定に頭を抱えていると車は撮影スタジオに到着した。
眩い照明とカメラの周りではスタッフ達が忙しく動き回っている。
その中の一人が水銀燈と翠星石に衣装を渡す。
「時間がないから直ぐに着替えるかしらッ」

予定では夏に出すアルバムに付くミニフォトブックの撮影のため翠星石は
薄い緑色を基本とした色彩の浴衣に着替えて出てくるとすでに水銀燈の
撮影は始まっていた。
水銀燈はデニムのショートパンツに黒色ベースに白で逆十字の模様がプリント
されたタンクトップという組み合わせでギターを持ちデッキチェアーに座って
いる。
「背景はCGで作るかしらッ、次は翠星石の番かしら~」
「翠星石はこういうのは苦手ですぅ~」
そういいカメラのほうに歩く浴衣姿の翠星石はいつになく淑やかに見える。
帯をきつく締めすぎたのか体に密着した浴衣が歩く度に小柄ながら丸みと
程よいハリのある翠星石のヒップを形取る。
ドラムスティックを持ちいつもの翠星石らしい笑顔などを撮り無事撮影が
終わり更衣室で浴衣の帯を解く翠星石は左手で軽く髪をかきあげると
小さな耳たぶが現れる。
照明の熱なのか薄っすらと浮き出る汗が白く細いうなじから首筋にかけて
一滴流れ、解けた浴衣から見えるボリュームがありつつもツンッと
上にあがっているバストの谷間に滑り込んでいく。
タオルでその汗を拭く翠星石の手はバストから可愛く無駄な肉など
付いていない健康的な腹部に伸びていくと、小さな肩に掛かっていた浴衣が
パラリと翠星石の体を伝うかのように落ちる。
「あっ」
小さく声を出す翠星石は反射的に足を曲げると、細くくびれたウエストから
プルンッと弾けそうなヒップ、そこから伸びる白く柔らかいふくらはぎに
浴衣は引っかかっていた。

Illust ID:Ptain61P0 氏(33th take)

                    *

撮影が終わりレコーディングスタジオに着くと、先にラジオ番組が終わった
真紅達はスタジオに入りそれぞれが出すアイデアを音にし、メロディーを
作る作業に取り掛かっていた。
水銀燈は自分が作った曲について薔薇水晶と話しだす。
金糸雀はスケジュール帳を広げて真紅に詰め寄る。
いつもの賑やかなレコーディング風景が展開されていると
スタジオ入り口のドアがノックされる。
「どう、水銀燈。アルバムの曲は順調に進んでる?」
「こんにちは、私達も近くのスタジオで曲を録っているので
様子を見にきました」
メグと巴が差し入れのケーキを持って真紅達がいるスタジオに入ってくる。
「うわぁ~イチゴケーキなのォォ~。美味しそうなのぉぉ」
「翠星石にもよこしやがれですぅ~」
巴が持ってきたケーキに飛びつく雛苺と翠星石。それを見ていつもの
無邪気な笑顔を見せるメグ。
「薔薇乙女はいつも元気ね。その元気があのローザミスティカのヒット
になったのかな?」
「そうね、私達はいつも全開よ。ところで前にした約束の曲も
もうすぐ完成しそうなのだわ」
真紅と水銀燈がラプラスのサポートメンバーとしてレコーディングに参加
していた時の約束。
それは薔薇乙女がファーストアルバムを出す時はラプラスがゲスト参加
するというのが真紅、水銀燈、そしてラプラス達の間で交わされていた。
その曲を先ほどから水銀燈はメグがいるのに気付かないほどの真剣な目付き
で薔薇水晶と作っていた。
メグはそんな水銀燈の肩を軽く後ろから叩く。
「あら、メグぅ~。来てたのぉ?」
「いつになく真剣な顔してたのね、入ってくる時に声を掛けたのに」
「そうねぇ~、曲を作ってる時はァ、ちょっと入り込んじゃうわァ」
「ねぇ、どんな感じの曲になったの?」
「まだ完成じゃぁないけどォ、こんな感じの曲よぉ~」
水銀燈から渡されたイヤホンを耳にあて目を閉じると水銀燈のギターと
薔薇水晶のキーボードが見事なメロディーを展開しメグの胸に響いていく。
まだ未完成ながらもメロディーはダイナミックに広がっていく。
歌詞は付いてなくともメロディーだけで曲の持つ世界が何を言おうとして
いるのかがイメージできる。
(さすがに薔薇乙女ね、私がヤリたいことを簡単にヤッちゃうなんて)
そう思うと自然とメグ独特の無邪気な笑みが口元に出る。
「イイ感じの曲ね、この曲のアレンジは、キーボードの、えぇっとォ~?」
「薔薇水晶よぉ。もう、最近のォ、メグは本当におバカさんになってきた
わねぇ~。ちなみにぃ、今日は何曜日でしょうかァ~?」
水銀燈は少しイタズラっぽくメグに質問をする。
「今日はもちろん水曜日よ!」
笑いながらも当たり前のように答えるメグ。
「ちょっとォ~、今日は土曜よ。本当に大丈夫なのぉ?」
「フフフ、そんな心配そうな顔をして~。冗談で言っただけよ。
そろそろ私と巴もレコーディングに戻るわ。その曲ができたら連絡
ちょうだいね」


最終更新:2006年06月07日 00:02
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