真紅は水銀燈と睨みあっていた。
「真紅ぅ・・・・・・お先にどぉお?」
「あら冗談でしょう・・・・・・丁重に辞退させていただくわ」
お互いにひきつった笑みを浮かべ、視線だけで相手を射殺そうとしているのがわかる。
もし現実に火花が散っていたとしたら2人の姿は白黒のシルエットとしか見えなかっただろう。
2人が譲り合いの精神をいかんなく発揮していると、ついに翠星石が白羽の矢を放った。
「次は水銀燈いっとくですぅ」
「んなっ・・・・・・!!」
「ふぅ・・・・・・」
真紅はあからさまな安堵のため息をついた。水銀燈が立ち上がり、きっと真紅を睨みつける。
「水銀燈ー、優勝候補が何尻ごみしてやがるですか。さっさと来るですよ」
「い、いやよ!!」
水銀燈は手で自らの胸を覆い隠すようにしてあとずさった。
「だ、誰がそんな破廉恥なこと」
水銀燈も必死だったのだろうが、真紅から見てそれは経験的に言って賢明な行動とは言えなかった。
もはや誰も逃れることはできないのだ。無駄な抵抗はいたずらに翠星石の嗜虐心を煽るだけである。
「あらあらあらあらそーですか仕方ないですねそれは仕方ないです全く仕方ない」
言わないことではない。
見れば翠星石はこれ以上無いほどの笑顔を満面に浮かべていた。
「お気の毒様・・・・・・水銀燈」
真紅が呟くのと、翠星石が両手を指揮者のように振り上げたのはほぼ同時だった。
「な、ちょっ、あなたたち、何するのぉ!!」
一瞬のことだった。
「ごめん水銀燈、僕は従わないわけにいかない・・・・・・」
「ばらしーの言っていたことが頭でなく心で理解できたかしら・・・・・・道連れは多いほうがなんとやら」
「みんないっしょなのー♪」
「お姉さま・・・・・・おみ足・・・・・・失礼」
水銀燈は両腕を蒼星石と金糸雀、両脚を雛苺と薔薇水晶にとらえられ、完全に身動きがとれなくなっていた。
被害者が次の加害者になる・・・・・・『死なばもろとも』の心理を利用した悪魔の業。
これこそがこの『Rozen Maiden胸囲杯(バストカップ)』の真の恐ろしさだった。
「は、放しなさいあなたたち・・・・・・ひぃっ!?」
見れば薔薇水晶がどさくさに紛れて水銀燈のふとももに頬をすり寄せていた。
あんなに幸せそうな薔薇水晶を見たのは初めてだ(ミリ単位の表情筋の変化だが)。
「さぁて・・・・・・覚悟決めるです」
翠星石がにじり寄り、水銀燈のシャツに手をかけた。
「い、いやぁ・・・・・・」
こうして拷問がはじまった。
※都合により一部音声を変更してお送りしています。
「でかいとは思ってましたが、まさかこれほどとは・・・・・・えりゃ」
「っちょ、測るんじゃないのぉ!?やめっ、やめなさい翠星石!!」
「うえー、わー、わー、へー、ほー、ふーん、です」
「ひゃ、あ、はぁ、あっ、あふ、いあっ」
「あーもームカっ腹が立ってきたです。何なんですか。ケンカ売ってるですか。乳酸菌のおかげとでも言いやがるですか、このっ、くぬっ」
「ぅあっ!?な、何よそれぇ・・・・・・どうして、そんな、メトロノーム!?まさか、あ、いやぁっ!」
「うりうりうりうり。どれ薔薇水晶もやっちまえです。・・・・・・なに?遠慮はいらんです。せっかくの機会ですから。抑圧よ去れです」
「そ、そんな、2人がかりで!?や、やめて、お願い、ひゃう、あ、あぁん!!」
「ふわー、すっごいのー・・・・・・ねえねえ蒼星石、水銀燈の、あんなになってるのよ」
「す、翠星石、それに薔薇水晶もやりすぎだよ・・・・・・あ、ああ、そんなことまで・・・・・・」
「も、もうダメぇ・・・・・・許してぇ・・・・・・え、ウソ、なに、冗談でしょぉ・・・・・・まさか、ドラムスティックを!?や、いや、ダメ、それだけは、ホントに、あ、あぁ、いや、あ、あああああああああああああああああああああああああ」
2分後。
水銀燈は、あたかも乱暴されたばかりの少女のように・・・・・・実際ほぼその通りだが・・・・・・リビングの隅のほうで膝を抱えてしくしくと泣いていた。
ついでにその傍らで、薔薇水晶が自らの鼻血でできた血の海に沈んでいたこともつけくわえておく。
「さ~て残るは真紅ですぅ、あーゆーおーけい?」
ついに翠星石からのお呼びがかかった。自分の番だ。
「そうね・・・・・・さっさとお願いするわ」
真紅はのそりと立ち上がると自ら翠星石のもとに歩み寄り、上着をまくり上げた。
その態度に、翠星石は意外そうな面持ちで訊ねる。
「おろ、てっきり抵抗するかと思ったですが・・・・・・ていうか真紅が一番やりにくそうだったから最後にまわしたですのに」
「先に5人もやられてしまえば・・・・・・ふぁ、心の準備もできるというものではなくて?それより、測るなら早いところ済ませてちょうだい」
「むむむ、手間が省けて助かる反面、ちょーっとがっかりですぅ」
言いながら翠星石は真紅のブラを外し、(高そうなのしてやがるですねー)計測の準備を始めた。
翠星石に胸をまさぐられている間、真紅の脳裏には柔らかい羽根布団が覆う自室のベッドのイメージが浮かんでいた。
(眠いわ・・・・・・)
限界だった。
時刻は1時半を過ぎようとしている。もともと試合の観戦を終えたらすぐに家に帰って眠りにつく予定だった。
彼女が翠星石に抵抗しなかったのも、さっさと終わらせて帰って眠りたかったからという以外にない。
(まさかこんなことで眠りの時間が脅かされるなんて・・・・・・)
もはや目を開けているのもやっとである。今なら立ったまま眠れるかもしれない。
(まだ・・・・・・終わらないの・・・・・・かしら・・・・・・)
胸のサイズを測るごときで何を手こずっているのか。あくびをかみ殺しながらそんなことを考える。
翠星石が何かを言っているような気がする。しかしよく聞き取れない。
他にも雛苺や蒼星石の声もしたように思ったが、それは遠い部屋から呼ぶような響きとしか聞こえなかった。
何、何を言っているの?
気づけば真紅は声のする方向へと歩き出していた。いつの間にか周囲は一面が真っ白な空間に変わっていた。
しばらく進むと目の前にベッドが浮かんでいた。寝巻き姿の真紅は掛け布団をめくって中にもぐりこんだ。
洗い立てのシーツからは太陽の匂いがする。枕に顔を埋めると、頭の後ろからぼんやりと締め付けられるような眠気がやってきた。
至福のときである。
だが何かがおかしい。どうも窮屈だ。
目を開けると、自分の横には翠星石がいた。
シングルベッドに2人も寝ていれば狭いのは当たり前である。そもそも何故翠星石が自分のベッドに寝ているのだろうか。
翠星石、そこをどきなさい。
「やっぱり、かたちが綺麗ですねぇ」
かたち?何を言っているの。さっさとここから出なさい。
「それに上向きですぅ。そこんとこはちょっぴりうらやましい気もするです」
わけのわからないことを言ってないで、出なさいと言ってるでしょう。ここは私のベッドなの。
「なんだか変な気分になってくるですねぇ・・・・・・」
翠星石は頬を紅潮させ、濡れた瞳でこちらを見上げるようにしていた。
ば、馬鹿なことを言わないでちょうだい・・・・・・あなた、人のベッドにもぐりこんでそれは、冗談としても笑えないわ。
「でも・・・・・・やっぱり・・・・・・」
何?まだ何かあるの?
ふいに翠星石が真紅の胸を真正面から鷲づかみにした。
ひゃ、なに、翠星石、何をす
「水銀燈と比べると、ちっちゃいですねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、真紅は閉じていた目を見開いた。
最終更新:2006年06月19日 10:28