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一、乙女たるもの形容し難いほど美しくあれ

 《Rosen's story【Ⅲ.運命の瞬間】》 

「さて、そろそろ学園祭の生徒会企画を決めるですぅ」
 行事企画担当の翠星石が提案した。
 今日の八人は『薔薇乙女』モードだ。
「ここが薔薇学じゃなかったらライブやってたのー」
 雛苺がぐでー、と備え付けの机にかぶさる。
 雛苺の意見に皆は賛同する。
 ここが薔薇学であるが故にライブができない。
 そんな事をしたら停学――いや、退学かもしれないのだ。
 結局、あーでもないこーでもないと言っている内に最終下校時間が来てしまった。
 がさがさと自分の鞄を整理する蒼星石。
 そこである事に気付いた。
「あれ?ねぇ、翠星石。僕のピック知らない?」
 暇なとき、イメージトレーニングするのにピックはいつも学校用鞄にも入れてあるのに、それがない。
「なくしたですか?蒼星石が、珍しいです」
「落としたのかなぁ。あれ気に入ってたのに、また買わなきゃ」
「次は気ぃつけるです」
 肩を落とす蒼星石のポンポン頭を翠星石は撫でた。
「何、あの人達…」
「どうしたのかしらー?」
 校門前で出てくのを渋っていた生徒に声をかけた。
「あ、黄薔薇様…。あの、校門の前に二人、男が…」
 耳、鼻、口にそれぞれ二つ程ピアスが開いている。
 体はもっとだろう。
「まったくぅ。あんなとこにいたら邪魔ねぇ」
 水銀燈までもが眉間に皺を寄せる。
 ため息を吐きながら八人は校門へ向かう。
「あ、危ないですよ薔薇様!」
「大丈夫よ…」
「こういう時の為に私達がいるのですわ」
 薔薇水晶と雪華綺晶が微笑む。
 しかし生徒は不安そうに眉を潜める。
「ちょっと貴方達」
 毅然とした態度で真紅が声をかける。
「こんなとこにいたら邪魔っていうのが分からないのー?」
 雛苺も頬を膨らませながら問い掛けた。
 しかし、二人の男――仮にB、Cとしよう――は八人を見てにやりと笑う。

「あー、ちょっといっすかぁ?」
 完全になめたような口調でBが言い返す。
「貴方達…この前の…」
「コレ、そこのショートカットの子のっすよね?」
「それはっ…!」
 僕のピック、と言おうとして口を接ぐんだ。
 周りにははこちらをちらちら見ている生徒がいる。
 勝ち誇った二人の笑みと対照的に、八人の顔は優れない。
「何か、用なの?」
「えぇ――」
 真紅の二人を睨む視線が少しゆらんでいる。
「折り入ってお話が…」
 と、Cは微笑んだ。

 ここはあのライブハウスに近い裏路地。
 二人と八人は対峙して睨み合っていた。
「返して。それは僕のピックだ!」
「はっ、拾ったもんは俺のもんだよ」
「何だって…」
「お、落ち着くです!」
 戦闘態勢に入った蒼星石を翠星石が止める。
「何が望みなの?」
 と、真紅が問えば二人はにやつきながら言った。
「そうだなぁ。まずはこの間の仮を返させてもらおうか!」
 言うが早いか襲い掛かってきた二人を蒼星石と水銀燈が一蹴する。
「まだ懲りないのぉ?この前遊んであげたばっかでしょぉ?」
「ハッ!いいんだぜ、学校にバラしても!」
「はぁ?私たちの学校があんた達みたいなの信じるとでも思ってるのぉ?こっちはねぇ!伊達に生徒会やってるわけじゃないのよぉ!」
「ならこれならどうだ?」
 と言ってBが取り出したのは数枚の写真。
 水銀燈が奪うように受け取り、一枚ずつ見るにつれて顔が青くなる。
「どこで撮ったのよぉ…こんなの…!」
 ぐしゃ、と写真を握り潰しながら水銀燈は問う。
 その写真にはライブハウスから出てくる八人の姿が写っていた。
 ぼやけてはいるが、見れば分かってしまうだろう。
「匿名で学校に送り付けてもいいんだぜ?」
 ぐっ、と水銀燈が怯む。
「どうすれば良いって言うのよぉ」
「言っただろ」
 この間の仮を返すよ!
 と、同時にCの拳が水銀燈の腹部にめり込む。
「っく…!」
 完全に入った訳ではないのでダメージは少なめの方だ。
「おい、そこのショート」
 Bが蒼星石を見てにやりと笑う。
「てめぇめだ、よ!」
 水銀燈と同じように拳が入る。
 二人は呻きながら倒れ、男達を睨み見上げる。
「おい、手ぇ出すなよ。出したら、…分かってるだろ?」
 と、Bは笑い、Cは縄を取り出し、二人の手を後ろ手に縛りあげた。
「刃向かうなよ。分かってんだろ?」
「っ!」
 水銀燈は耳元で囁やかれ、嫌そうに顔をしかめる。
「おめぇらもだよ!」
 ぐいっ、と真紅は腕を引っ張られる。
「二度と表に出られない顔にしてやるよ」
 男の指が蒼星石の頬を撫でる。
「や、や、やめるですっ!」

Illust ID:GUUzOxoOO 氏(48th take)

 翠星石が泣きながら叫ぶ。
「あぁ?んだテメ。バラされてぇのか!?」
「バラしたかったら勝手にバラせです!だからこれ以上、翠星石達に構うなです!」
「んだとぉ…」
「それは僕も同感だな」
 男の耳元でヒュッと空気が切れる音。
 男が恐る恐る左を向けば、蒼星石の足。
 後ろでは薔薇水晶がVサインをしている。

Illust ID:GUUzOxoOO 氏(48th take)

「好きになさぁい。それで気が済むのならねぇ」
 男はチッと舌打ちして、去っていった。
 途端に翠星石が泣き崩れ、蒼星石に抱きついた。
「蒼星石。蒼星石!良かったですぅ!怪我はねぇですか!?」
「翠星石…大丈夫だよ」
「水銀燈、貴女は?」
「私も大丈夫よぉ。ありがとぉ、薔薇水晶」
 水銀燈と蒼星石はそれぞれ薔薇水晶に感謝の意を述べる。
 それに少しだけ微笑んで返した薔薇水晶はすぐに厳しい表情に戻った。
「…でも、…問題は…これから…」
「そう、あの男達がどう出るか、ですわ」
 雪華綺晶は薔薇水晶の肩に手を置きながらそっと呟いた。
 満月の夜、犬の遠吠えが木霊した。

つづく

(以下執筆継続中)


最終更新:2006年07月25日 03:20
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