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みつのペンションに行くため帰ってシャワーを浴びることにする。
当然、男のジュンは真紅達がシャワーを使い終わるまで外で待つことになる。
いつもならこの町に1件だけある銭湯に行くのだが、今はまだ昼の3時過ぎ。
ジュンはしかたなく近くの自販機でスポーツドリンクを買い、玄関先で
真紅達のシャワーが終わるのを待っていた。

「うわぁ、やっぱり水銀燈のは凄ぇな、スピードメーターがデジタル表示
なんだなぁ、いったい何キロくらい出るんだろー?」
「でも金糸雀のもイイなぁ、乗りやすそうだしなぁ~」

今回の合宿にツーリングがてら乗ってきている水銀燈と金糸雀のバイクを
交互に見ながらジュンは独り言をつぶやいていた。
そっと水銀燈のバイクに触れてみる。
焼けたタンクが熱い、水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンを被う
サイドカウルにNinjaの文字、その下に「Rozen Maiden」と書かれた金糸雀と
揃いのステッカーが張られている。

「私のバイクに何かようぉ?」
「い、いや、カッコイイなって見てたんだ」

シャワーを浴びた水銀燈は襟がついた白のホルターネックトップスに背中は
編み上げの紐になっておりインナーには黒いブラだけが目立つ服を着て、
ボトムはダメージ加工をしたデニムのショートパンツにメタリックインパクト
ベルトをその長めのホルターネックトップスの上から斜めにつけている。

相変わらず派手だな・・・。
そう思いながら水銀燈を見ていると後ろから耳を引っ張られる。

「イテッ!」 

ジュンは後ろを向くとパフスリーブやリボンがポイントになっているブラウン
カラーのスムースジョーゼットカットソーを着た翠星石が頬を膨らませていた。

「もうみんなシャワー終わったですよッ、ジュンも早く入ってくるですぅ」
「痛っ、解ったから耳を引っ張るなよ~」

耳を押さえながらジュンは首にかけていたタオルを手にもち玄関から
浴槽に向かう。
途中の廊下で真紅とすれ違うが、先ほどの事故とはいえ唇が触れたのを
意識してか、互いに少し視線を外して通り過ぎる。

「ねぇ、貴女いつからジュンって呼んでるのぉ? 前はオタク人間とか
 って言ってなかったぁ?」
「そ、そんな事、翠星石は言ってねぇですよッ、ま、まぁ、アレですぅ。
 ジュンも一応ローゼンのメンバーですしぃ、哀れみで名前を呼んでやって
 るだけですぅ。 変な詮索するなコンチクショーですぅ」
「本当にそれだけぇ?」

水銀燈の質問に翠星石は先ほどまで膨らませていた頬は少し赤くなり途端に
モジモジしだす。

「ほ、ほんとうにそれだけですよぉ、翠星石はジュンのことなんぞ何ん
 とも思ってないですぅ」

そう強がりを言いながらも言葉の語尾が小さくなっていく翠星石の胸は
少しだけ小さな痛みが感じられた。
そして水銀燈と翠星石に会話は玄関で靴をはこうとしている真紅に聞こえていた。
靴ヒモを結びながら動きが止っている真紅はそっと人差し指で唇をなぞってみる。
そこには微かではあるが、確かにジュンの唇の感触が残っていた。

                    *

国道から脇道に入り20mほど海に近付くと、砂浜に突き出た白いテラスが
目立つペンション「Coral」がある。
この時期はサーファーとダイバー客が多いのか、その白いテラスにはサーフボードが
立てかけられ、Coralの横にはダイビング機材を洗う小さなプールにボンベ、フィン、
ウェットスーツが陰干ししてある。
雛苺はそのダイビング機材を興味深げな眼差しで見つめながら水銀燈の後ろに
続いてCoralの中に入ると、サーフブランドのシャツやパーカー、ラッシュガード
などが売られているコーナーが目に付く、その隣りにはダイバーが足摺岬付近で
撮った海中写真が壁にかけられ、ダイビングマップに印が付けられている。
そして店の奥は長いテーブルが4組ほどあり、そこから先ほどサーフボードを
立てかけていた白いテラスに出れる。
そのテラスには円いテーブルにビーチパラソルが程よい日陰を作り、イスは洒落た
デッキチェアが各3組ほど置かれて、海辺のオープンカフェスタイルのようにして
食事ができるようになっていた。
そのテラスからヘリーハンセンのエプロンを着たみつは金糸雀に声を掛ける。

「カナちゃん、いらっしゃい。 食事に来たの?」
「うん、おなかペコペコかしら~」
「じゃぁ、そこに座ってて、すぐに用意するから」
「あれ、ヒナちゃんも一緒なの? こんにちはヒナちゃん」
「こんにちはなの~」

この小さな漁師町ではほとんどの住人が顔見知りあいである。
しかも雛苺は金糸雀の実家の向かいに住んでいる。
それに雛苺はダイバーから海の話を聞きに小さい頃から店に顔をよく見せていた。
ジュン、そして真紅、蒼星石、金糸雀、水銀燈、翠星石、年上の人と同じテーブル
につく雛苺は心なしか自分も少しオトナにでもなったような気がする。
食事が来るまでの間、雛苺と真紅、金糸雀、水銀燈、蒼星石はダイバーが
撮った海中写真を見ている。
ジュンは砂浜に突き出た白いテラスに出て手すりにもたれて波を待つサーファーを
見ていた。

「ジュン、何を見てるですぅ?」
「ん? あぁ、サーフィンを見てるんだ」
「ジュンはサーフィンできるですかぁ?」
「イイヤ、やったことないよ。 ただ波に乗れたら気持ちイイ
 だろーな~って思ってたんだ」
「そんなことだろーと思ったですぅ、だいたいバイクにも乗れない
 ヤツが波に乗れるはずねぇ~ですぅ」
「バイクとサーフィンは関係ないだろー。 それにバイクは後4時間
 くらいで免許、取れるんだ」
「それでバイクは買うですかぁ?」
「うん、一応は中古でも買おうかなって」
「あ、あまりスピードが出るのは買うなですぅ、危ねぇですぅ」
「前にも同じようなこと言ってたよな? やっぱ心配してんのか?」
「なぁ、何を自惚れてやがるですかぁ、翠星石はお前の心配なんかこれっ
ぽっちもしちゃーいねぇですよッ!」

予測していたとおりの反応にジュンは少し笑う。
翠星石は笑われたことにムキになりジュンに肩を何度も叩く。

「ジュンに笑われたらムカつくですぅ~」
「痛いよ、おい、今のはマジで入ったぞ」

いきおいあまり翠星石の拳は肩を外してジュンのアゴに当たる。
右のアゴを押さえるジュンに翠星石は少し慌て、手をジュンの顔に添える。

「ご、ゴメンですぅ・・・」
「ふっ、ウソだよ、ウソ。 ハハハハ~」
「本気でムカつくですぅ~。 ウソをつく口はこうして
 やるですぅ~」

ジュンの顔に添えていた手で頬をつねる翠星石の顔はいつものムキになっている
表情をしているが、瞳はどこかニコやかに笑っていた。

Illust ID:boyQmqlt0 氏(54th take)

アゴには本当に入ったけど、まぁイイか・・・。
海からの南風がフワッと翠星石の髪を持ち上げる。
その風は潮の臭いと、立てかけられているサーフボードからのセックスワックスの
香りが混じってジュンと翠星石を吹き抜けて行った。

「で、これがカンパチの群れなの~。 そしてこっちがシマアジなの、
 美味しいの~」
「へぇ~、雛苺は物知りなんだね」
「貴女は魚君と友達なのぉ?」
「今日からウオイチゴって呼ぶかしらぁ」

雛苺はダイバーが撮った魚の写真を指差しながら説明する。
それに感心する水銀燈、金糸雀、蒼星石。
だが真紅の耳には雛苺の説明があまり入ってこない。
どこか不安な顔付きの真紅は、テラスで笑っているジュンと翠星石を
横目で追いかけていた。


最終更新:2006年07月31日 23:32
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