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一、乙女たるもの臨機応変に対処せよ

 《Rosen's story【Ⅴ.提案】》

 雛苺と金糸雀は泣いていた。
「泣いちゃダメですぅ。停学だっただけましだと思うです」
 結局あの後、二時間ほど説教を食らった。
「先生はこれですんだからいいけど、問題は生徒、ね…」
 真紅は空を見上げながら呟いた。
 帰る途中でも他の生徒達の軽蔑を感じられる目線が痛かった。
「いい考えがありますわ」
 サイゼリアで話しましょ、と雪華綺晶は微笑んだ。

「それはいいアイディアね早速――って、今何時!?」
「…そうね、大体ね…」
「サザンはいいのよ、薔薇水晶!今日ライブ入ってるじゃない!」
 サイゼリアで一時間ほど話し合った後、真紅が気付いた。
「わ、もうこんな時間!また制服で行くの!?大丈夫かな…」
「大丈夫ですわ。アイテムを用意してますわ」
「アイテムぅ?」
「えぇ、着替えてきましょう」

「良かった。ぴったりですわね」
「なぁに、これ」
 雪華綺晶が持ってきていたのはセーラー服だった。
「こんな大荷物、どこに持っていたのかしらー!」
 そこは小説ですから。
「髪もライブ用にしちゃえばバレないと思いますわ。さ、ライブハウスにレッツゴー!ですわ」

Illust ID:2b2Z6/vlO 氏(55th take)

                    *

「はぁ…なんとか終わったね」
「そうね」
「皆、新しい曲が書けたかしらー」
 金糸雀が意気揚揚と楽譜を見せる。
 無言で読み上げたメンバー達は思い思いの感想を述べる。
「これまた刺激的な…」
「そ、そうね。今までとは違う感じだわ」
「あらぁ、このくらいの方がいいわよぉ」
「そうですね。アップテンポだし、やりやすそうですぅ!」
「ヒナはなんでもいいのー!」
「ソロ、ある…?」
 なんだかんだ言い合って、結論は水銀燈が編曲を行なうことになった。
「ライブ用の後一曲のことなんだけれど、相談があるかしらー」
 金糸雀の話に七人は耳を傾ける。
「いいじゃなぁい。私は賛成よぉ」
「ヒナも、ヒナもー!」
「決まりなのだわ」
「じゃあさっそく明日から取り掛かるかしらー!」
 意見は一つにまとまり、ソロライブの話へと自然に流れた。
「そうね、この休憩は20分くらいが妥当だわ」
「ねぇ、休憩時間中にも何かやらなぁい?」
 水銀燈がにやりと笑ってそう告げる。
「お馬鹿さんね水銀燈。休憩時間中にもやってたら疲れ…」
「時間余ってる人だっているじゃなぁい?そういう人達にとっては無駄な時間だと思うのよぉ」
「そう…私の話は丸無視なのね」
 真紅があきらめたように紅茶を口に運ぶ。
「だからぁ、何か考えましょうよぉ」
 うーん、とメンバーは頭をひねる。
「あ!」
 と、翠星石が声をあげる。
「ロック歌手、ではないですけど、休憩時間中にバックミュージシャン達とコント的な映像流してた歌手がいるですぅ」
「貴女、そういう系統の歌手が好きなの?」
 真紅には分かったらしく、翠星石に問い掛ける。
「ううううううるさいですぅ!好きで悪ぃですか!?」
「あら、悪いなんて言ってないわ、愚かね。ちなみに私は好きだけど…」
「翠星石ぃ、詳しく教えてくれなぁい?」
「疎外感だわ…」
「愛情の裏返しよぉ」
「合点ですぅ!」
 翠星石は満面の笑みで話しだした。
 ちなみにその歌手はナース服を着たり、楽屋コントをしたりしていた。
 男だが。
「という感じですぅ」
「確かにいいんだけど、そんなお笑いセンスが僕達にあるかい?」
「滑ったら…THE END」
「その話聞き届けたり!」
 バン、と部屋全体が揺れ動くような勢いで入ってきたのはみっちゃん。
 顔には満面の笑み、瞳は遠くを見ている。
「何か、いいアイディアでもあるかしら?」
「お笑いのセンスは悪いけど私にもないわ」
「存在がお笑いのくせにですぅ…」
「しっ!黙って」
「じゃあどうするかしら?」
「でもね…お着替えはできるのよ!」
 一同全員が言葉をなくす。
「でも雪華綺晶がうちの衣裳の担当なのだわ」
「だけど、きらきぃちゃんは本番用の衣裳作らなきゃ行けないでしょ?既に何着か作ってあるのよ!いつかの為に!」
 その『いつか』が今来たんだとみっちゃんは輝いている。
「うーん、何にしようかしら?ナース?それとも今流行のメイドかな
あえて猫耳、ウサ耳、犬耳とか…制服とかは普段着てるし敢えてここで学ランとか!?みんな揃えた方がいいかなぁ…
あ、サイズも計らせてね!みんなの体、把握してないから…」

Illust ID:2b2Z6/vlO 氏(55th take)

 把握してないのに作り上げたのか、心の中で呟く。
「金糸雀」
 後ろで喋り続けているみっちゃんを軽く無視して、二度とない極上の笑みで金糸雀の肩に真紅は手を置いた。
「な、何かしら…?」
 ただならぬ恐怖を感じ、金糸雀は後退気味だ。
「マネージャーとして。みっちゃんと打ち合せしといてね」
「え、え!?ちょ、ちょっと待つかしら…みんな…みんなぁぁあああ!」
 後に金糸雀は語る。仲間は信じられない、我を忘れた人間ほど恐いものはない、と。

つづく


最終更新:2006年08月23日 23:00
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