4月も終わりに差し掛かり桜も散り始めてきた。
薔薇水晶「ごめんないさい・・・・。ごめんなさい・・・・。」
「やーい片目!!」
「気持ち悪いんだよ!!近寄るな!!」
「なにが『繋がらない』だよ!!鬱陶しい!!」
「止めるの!!!」
眼帯をつけた少女の前に同年代に比べると小柄な少女が立っていた。
「なんだよ・・・。やんのかよ。」
雛苺「いっつもいっつも薔薇水晶ちゃんのこといじめて!可愛そうなの!!」
「ちっ・・・ウザいなぁ・・・。おーいみんな帰るぞー!!」
雛苺「大丈夫なの~?」
薔薇水晶「うう・・・・ありがとう・・・・あっ。」
薔薇水晶は片目を大きく見開いて驚きの声をあげた。
雛苺「どうしたのなの~?」
薔薇水晶「・・・何でもない・・・・わざわざごめん・・・。」
雛苺「うゆ?どうして謝るの~?いっつも薔薇水晶ちゃんのことばっかりいじめるあいつららが悪いのよ~。」
薔薇水晶「・・・どうして私の名前を・・・・。」
雛苺「同じクラスメイトとして当然のことなのよ~。」
薔薇水晶は嬉しかった。自分を助けてくれただけでなく影が薄い自分の名前を覚えてくれた人がいたことに。
雛苺は満面の笑みで薔薇水晶を見つめる。
薔薇水晶「??」
雛苺が手を差し出す。
雛苺「ヒナと一緒に帰るの~!!」
その日をきっかけに雛苺と薔薇水晶は一緒に遊ぶようになった。雛苺のおかげで薔薇水晶も次第にクラスに溶け込めるようになってきていた。
雛苺「ばらしーは凄いのー!!」
薔薇水晶「そ・・・そうかな・・・えへへ・・・。」
最近は放課後に音楽室を借りて雛苺が薔薇水晶にピアノを教えるようになった。
雛苺「ヒナが始めたときよりずっとずーっと上手なのー!!」
薔薇水晶「あ・・・ありがとう・・・。」
雛苺「ばらしーにはヒナたちには見えてないものが見えてるの?」
薔薇水晶「うん・・・。みんな誰でも小指の所に糸がついてるんだ・・・。お母さんが言うには運命の人と出会うと糸と糸が繋がるんだって・・・。」
雛苺「ヒナと薔薇水晶は繋がってるの~?」
薔薇水晶「うん・・・。あの時私とヒナちゃんの糸が金色に光って繋がったんだ・・・。」
雛苺「あはは。ヒナとばらしーは運命の人なのー!!」
薔薇水晶が馴れない笑顔をみせる。雛苺が白い歯を見せて笑う。
そんな日が永遠に続けばいいと2人は願っていた。
しかしその願いは儚くも打ち砕かれることになる。
雛苺「ただいまなの~!!今日はお友達を連れてきたの~!!」
雛苺は自宅の玄関を開けて言った。が、返事は無い。
雛苺「誰もいないの~?ばらしーあがってて!!」
薔薇水晶「お・・・おじゃまします・・・。」
初めて他人の家に入ったということで薔薇水晶はいつになく緊張していた。
雛苺「そんなに緊張しなくていのよ~。今お茶淹れてくるの~。」
薔薇水晶はソファにちょこんと座って雛苺を待っていた。
しかし雛苺は何分たっても来る気配が無い。
薔薇水晶「・・・遅いな・・・。」
少し不審に思った薔薇水晶はキッチンへと足を運んだ。
薔薇水晶「ヒナちゃ~・・・・・・・」
薔薇水晶の目には立ち尽くす雛苺と首を吊った2人の大人がいた。
薔薇水晶「・・・・。」
雛苺は立ち尽くしたまま動こうとしなかった。薔薇水晶も足が震えて動けない。
雛苺「・・・・・はははは・・・・。」
薔薇水晶「ヒナちゃん・・・?」
雛苺の口が初めて開いた。
雛苺「あははははははははははははははは!!!!!」
雛苺は狂ったように声を出して笑い出した。
雛苺「お父さんが!!お母さんが!!死んでる!!あはははははははははは!!!!」
薔薇水晶「おっ・・・落ち着いて・・・!」
雛苺「うるさい!!!!」
雛苺の肩に手をあてた薔薇水晶を払いのけて、雛苺はキッチンの奥へと走った。
キッチンの奥から戻ってきた雛苺は右手に包丁を持っていた。
雛苺「ヒナもあっちにすぐ行くの~」
薔薇水晶「ヒナちゃん・・・やめて・・・・。」
雛苺「うるさい!!!」
雛苺は薔薇水晶を睨みつけた。
雛苺「ねぇ、ばらしー?一緒に死のう?大丈夫だよ・・・・。怖くないよ。」
雛苺は笑みを浮かべながら薔薇水晶へと近寄っていった。
薔薇水晶(いや!!だれか・・・。誰か助けて!!!)
薔薇水晶の意識はそこで途切れた。
「止めなさい!!」
薔薇水晶は叫んだ。いや、正確に言えばそれは薔薇水晶であって薔薇水晶では無い。
雛苺「ば・・・ばらしー・・・?」
「私は薔薇水晶では無いわ。薔薇水晶に住むもう一つの人格『雪華綺晶』よ。」
雛苺「何変なこと言ってるの~!!もういい!死んでやる!!」
パチンッ
雛苺が包丁を自分の心臓へと向けると同時に頬に痛みが走った。
雪華綺晶「馬鹿なことはやめなさい!!」
雪華綺晶は雛苺にビンタをすると雛苺の顎を持って話した。
雪華綺晶「いい?あなたが死んで喜ぶ人間なんていないのよ。」
雛苺「でもぉ・・・でもぉ・・・・。」
雛苺は目は涙で溢れかえっている。
雪華綺晶「あなたが死んだら私の分まで薔薇水晶は泣くわ。そう思う人は沢山いる。だからあなたは生きなきゃいけないのよ。ご両親の分まで幸せにならなきゃダメなのよ・・・・。」
雛苺「ううっ・・・・ううっ・・・・ばらしーーー!!」
雛苺は雪華綺晶の胸へと飛び込んだ。
雪華綺晶「泣きなさい・・・。一生分の涙をここで流しちゃいなさい・・・。」
*
数日後、親戚のもとへと引き取られることが決まった雛苺がこの町を離れる日だった。
雛苺「ばいばいばらしー。」
薔薇水晶「・・・・・。」
雛苺「また・・・会えるよね?」
薔薇水晶「大丈夫だよ・・・運命の人だもん・・・・。」
それを聞いた雛苺はとびっきりの笑顔になった。
雛苺「ばらしー。ばらしーに言われたみたいにヒナ幸せになるの。」
薔薇水晶「?」
雛苺「バイバイ。」
雛苺は別れの挨拶を終えると車に乗り込む。
雛苺を乗せた車は2人を引き裂くように前進した。
「雛苺ちゃん・・・。後ろを見て・・・。」
助手席に座った少女が雛苺にそう促す。
雛苺が後ろを見ると薔薇水晶が必死に車を追いかけていた。
「止めなくていいの?」
「いいの・・・。また・・・会えるから。」
「我慢しなくていいのよ。」
「大丈夫、大丈夫なの・・・。ヒナ強い子だから・・・。強い子だから!!」
薔薇水晶と雛苺はこの日の別れを境に強くたくましく成長してった。
最終更新:2007年03月27日 22:33