紅「さて、はじめるのだわ」
この一言でレコーディングは開始する。
翠「いくですよぉ!!」
翠星石のドラムが重く鋭い音を……
銀「これはバラードよぉ!?そんなヘビーなドラムじゃだめよぅ」
翠「そんなですぅぅ!!」
今のドラムはどう考えてもヘビメタ向き。
蒼「ねぇ、そこで落ち込まないでよ」
雛「雛のうにゅーをわけてあげるから泣かないでなの~」
翠「うぅ……ありがとうです……」
妹と年下に慰められる翠星石。
情けないなんて言ってはいけない。
紅「気を取り直して……はじめるわよ!!」
薔「……(コクリッ)」
翠「いくですよぅ」
翠星石のドラムが軽く音を出す。
蒼星石のベースが太い音を出す。
薔「♪」
薔薇水晶の如雨露が独特の音で輪に混ざる。
紅「♪庭師の夢は春の夢……♪」
これに真紅の声が絡む。
金「カナの想像通りかしら!」
ガラスで遮られたミキシングルームで機材を動かす金糸雀。
今日は録音スタッフがお休みなので金糸雀一人で機材を総て調整する。
手つきが覚束ない気もするが、以外にしっかりと調整していく。
紅「♪ あぁ健やかに伸びやかに あぁ健やかに伸びやかに ♪」
サビが終わり、翠星石がドラムを叩きながら台詞を言う
翠「私の如雨露を満たしておくれ 甘いお水で満たしておくれ」
そのとき、翠星石の懐から緑の光がとびだし、一直線に薔薇水晶の元に向かう。
いや、正確には楽器として使われている如雨露に向かう。
全員「あっ」
気がついたときにはもう遅かった。
翠星石の懐からとんだのはもちろんスイドリーム。
主人の言葉に反応して如雨露に水を入れに行ったのだ。
水が中に入り音質が変わる如雨露。
……までなら良かったのだが、今回はそうもいかなかった。
如雨露は胡弓のように立てて使っていたので当然水が溢れ出す。
スイドリームは一度如雨露を満杯にしなければ止まらない。
つまりは洪水ニルヴァーナ。
薔薇水晶付近を大量の水が襲う。
翠「やめるです、スイドリーム」
ドラムセットから身を乗り出してアタフタする翠星石。
その間にも水はものすごい勢いであふれ出てくる。
銀「とりあえず楽器を避難よぉ!」
楽器が濡れないようにミキシングルームまで避難する水銀燈。
雛「すごいの~、洪水なの~」
この状況を楽しんでいる雛苺。
紅「まったく……とんだハプニングなのだわ」
この状況でも紅茶を飲む真紅。
薔「……(どうしよう)……(でも楽しいwww)」
ずぶぬれなのに微笑んでいる薔薇水晶。
気は確かなのか、薔薇水晶。
蒼「薔薇水晶!如雨露を寝かせて!!」
まともな判断をする蒼星石。
叫びながら薔薇水晶に近づき如雨露を寝かせる。
如雨露が満杯になり、ようやく水はストップした。
銀「でぇ?……この惨事をどうするつもりぃ?」
キレかけの水銀燈が翠星石に詰問する。
幸いアンプやドラムセットは一段高い位置(雛壇?)にあったため、なんとか水を喰らわずにすんだ。
とは言ってもあと数秒蒼星石の行動が遅ければ今頃は、半分ほど水に漬かって使い物にはならなくなっていただろう。
紅「危うく水に漬けるところだったのだわ!」
雛「そうなると使えなくなっちゃうの~。賠償なの~」
銀「真紅ぅ……あなたは紅茶飲んで何もしなかったくせに……。」
紅「何?ヤるの?水銀燈」
銀「フフフフフフフフ」
二人は正に杖と剣で戦おうとしている。
蒼「……(本当はもっと危なかったのにな)」
全員気づいていないが、コンセントや機械が水没した場合は悲惨だ。
漏電の確率大、万が一全員が感電した場合を考えると更に恐ろしい。
バンド名をローゼンメイデンから漏電メイデンに書き換えなくてはいけなくなる。
薔「漬かると使えなくなる……フフフ」
雛「薔薇しーがこわれたのぉぉぉ!!?」
怒る真紅と雛苺の台詞からギャグを見つけ、それを口に出し、あまつさえ自分はびしょ濡れなのに、それで尚乾いた笑いを浮かべる薔薇水晶。
空気が読めない雛苺までもその雰囲気だけで心配させる。
……というかビビらせてる。
薔薇水晶、(何か間違った意味で)恐ろしい子。
蒼「まぁまぁ、とりあえず助かったんだし」
金「でもこれからどうするかしら!?」
金糸雀がミキシングルームからマイク経由で話しかける。
かなりテンパってる様子だ。加えてビビりも入っている。
その顔を見て真っ先に反応したのは翠星石。
翠「まさか賠償確定ですか!?」
反応はそっちでいいのだろうか?
雛苺の言葉でビビってる翠星石は青ざめた顔でたずねる。
金「賠償は無さそうかしら……まぁ、賠償金は二の次かしら」
一流バンドのマネージャーは言うことが違う。
一体スタジオにあるドラムセットとギター用とベース用の大型アンプ、この総てを足すとどれほどの価格になるのか……。
銀「あらぁ、なら何か問題でもぉ?」
金「え~っと……申し上げにくいかしら……」
紅「……言いなさい」
金「でもかしら……」
翠「言わないと話が進まんです!!」
金「……ならいうけど……おこらないでかしら」
銀「でぇ? なんなのよぅ」
金「さっき水がこちらまで来そうになって、カナはドアを閉めたかしら。
そしたら水はそちらだけでとまったかしら。でも……」
蒼「…………まさか!?」
勘のいい蒼星石は気がついた。勘のいい読者も気がついているだろう。
金「ドアが水圧で開かないかしらぁぁぁぁ!!」
全員「……脱出不能ktkr!!!」
翠「どどどどどどどどどどど……どうするですか!?」
薔「JOJO光臨?」
あわてる翠星石とその台詞の中にネタを見つける薔薇水晶。
薔薇水晶、本当に恐ろしい子。
蒼「とにかく、水圧で開かないなら水をどうにかすれば良いのでは?」
紅「そうね、何とかしてみるのだわ、ホーリエ!!」
人工精霊を呼び出真紅。真っ赤な光がいかにも熱そうだ。
紅「この水を熱で干上がらせなさい……何?出来ないですって!?」
全身で無理と表現するホーリエ。
紅「アナタそれでもこの真紅の人工精霊なの?」
銀「しょうがないわよぉ、精霊の熱量じゃとても足りないわよ」
紅「……どれくらい熱量がいるのかしら?」
銀「Q=C×m×ΔT+m×Hvでぇ、水温は今20度だからぁ、水1kgあたり2594.4kJねぇ」
雛「水銀燈すごいのぉ!!学者さんみたいなの~」
翠「無駄に博識ですぅ(ギュー)いたいいたいいたい!!」
一言余計な翠星石は水銀燈に抓られた。
ちなみにこの計算は周りへ逃げる熱を考えていません、あしからず。
蒼「うーん、僕達の精霊がエネルギー切れを起こしても無理だね……」
金「それ以前に皆が茹で上がるか蒸し上がるかしらぁ!!」
紅「あら、私は良いわよ、サウナみたいだし」
翠「ドラムをサウナ漬けにするつもりですか!痛むです!!」
全員「もともとお前のせいでしょう(なの かしら でしょぅ …… なのだわ)」
翠「シクシク……どうせどうせ……」
全員に突っ込まれ激しく落ち込む翠星石。
その周りを申し訳無さそうに回るスイドリーム。
蒼「そうだ!カベか床に穴を開けてそこから排水するってのは?」
金「無理かしら……」
薔「……なぜ?」
金「ここは地下かしら、穴を開けても向こうはコンクリートと土かしら」
翠「というかなんで地下スタジオなんですか!?」
銀「あなたのドラムがうるさすぎて前のスタジオ使えなくなったじゃなぁい」
紅「本当に、使えない人たちばっかりね……」
薔「……! 真紅……当てがあるの?」
紅「えぇ、もちろんよ」
蒼「どうするつもりだい?真紅」
紅「考えて見なさい、壁や床が無理でもドアならどうなのだわ!」
真紅はビシっと金糸雀がいるミキシングルームを指す。
そのむこうは入り口、その外には水が入ってきた時の為の排水溝。
紅「利用方向が逆になるけど……背に腹は変えられないのだわ!」
叫びと同時に水銀燈が飛行する。手には西洋風の剣が握られている。
一直線に向かうのは分厚い防音扉。
銀「必殺!!破壊の逆十字ぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ドッカーン、そんな効果音が丁度いい。
水銀燈の剣がなぞった先には青白い閃光が迸る。
それは正に綺麗な逆十字架になっていた。
銀「ジャンクにしてあ・げ・るぅ☆」
どこか茶目っけ有りに水銀燈がキメる。
計算では5秒後、この扉は粉々になる。
金「斬ったのにドッカーン?とかなぜ青白い閃光が!とか、
ジャンクにしてあげなくても既にされてるの決定とか、
色々突っ込みはあるけど今は一つだけ言わせてほしいかしら」
銀「なぁに?」
金「水銀燈が避難した楽器はまだここかしらぁぁぁぁ!!」
運べる楽器はミキシングルームに避難した。
水はミキシングルームを通して外に出す。
考えなくてももう意味はわかるでしょう。
薔「……ギターがギタギター……」
銀「そこはむしろベタベターがBetter……じゃなくてぇ!」
全員「楽器がァァ!!!」
防音扉が音を立てて崩れていく。
今から訪れる惨事に全員が眼を伏せた。
しかし本来聞こえるはずである不快な音が聞こえない。
銀「……ん?……(眼を開ける)!!」
水銀燈が驚きの声を発するとともに全員が眼を開けた。
そこに写されたものは異様な光景。
ミキシングルームに入ったとたんに消えていく水達。
しかしミキシングルームに居る金糸雀からだけは見えた。
そこに開く異様な「穴」を……。
ラ「全く……間一髪ではないですか……」
金糸雀の隣にはいつの間にかラプラスが立っていた。
金「どうやってここに入ったかしら!?」
ラ「簡単なことですよ、私は時空の旅人ですからね」
蒼「いや、それ答えになってないし……」
雛「密室殺人なのよ~」
翠「だれも死んでないですぅ!!」
紅「……にしても不思議なのだわ!」
銀「そうねぇ……(いや、頭が兎の時点で不思議だからwwwww)」
薔「…………!そうか!!」
皆が首をかしげる中、薔薇水晶だけがそのトリックを理解した。
ラプラスは時空のひずみ(本人曰く「兎の穴」)を開ける能力を持っている。
まずそれを使いドアが崩壊する直前にミキシングルームに侵入。
その後水が流れ来る瞬間、水の経路に「兎の穴」をあける。
そうすれば水は自然とどこかに流れ出る。
薔「……ドコへ流れるの?」
ラ「心配には及びません、太平洋のど真ん中ですよ」
薔「……ダブルライダーとカメバズーカが……」
いや、薔薇水晶、そのネタは古すぎる。
最終更新:2007年04月01日 01:35