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第三回定時放送 - (2010/12/15 (水) 21:59:59) のソース

**第三回定時放送 ◆xFiaj.i0ME


「……時間だ。 
 手を止めろ、などと言う意思も理由も無い。 せいぜい聞き逃さぬように注意することだ。 

 禁止エリアは 
 19:00からC-5 と I-6 
 21:00からE-1 と H-2 
 23:00からD-10 と G-7 

 そして、 
 [[高原日勝]] 
 [[マッシュ・レネ・フィガロ]] 
 [[ケフカ・パラッツォ]] 
 [[ミネア]] 
 [[シンシア]] 
 [[ビッキー]] 
 [[クロノ]] 

 以上の7名が、新たに死者の列に加わった。 
 速度が落ちた、などと無粋な事をいう必要は無いな。 何しろこれで死者は半数を超えたのだから。 
 もう半数とするか、まだ半数と取るか、いずれにせよ半分を過ぎた。 残された者たちはせいぜい奮起するがいい」 


◇ 


事ここに至って、余計な事柄を述べる必要は無い。 
遠くから響くのみの言葉など無くとも、今彼らを包む世界は雄弁に主張を続けている。 
短く、事実のみを告げた。 
……だが、それだけか? 


「らしくもない……」 

玉座の端を握る手の力が、僅かに強い。 
僅かに感じるのは苛立ちか、それとも怒りか。 

――私の声が、届いていますか? 
――届いているのなら、お願いです。どうか、耳を傾けてください。 
――私の名は、[[ロザリー]]。魔王オディオによって、殺し合いをさせられている者の一人です。 
――それでも、私は魔王の思惑に乗るつもりはありません。何があろうとも、傷つけ殺し合うなどと、あってはならないのです。 
――私はかつて、この身に死を刻まれました。そのときの痛みと苦しみは、忘れられません。 
――ですが、身に付けられた痛みよりも、迫りくる死の恐怖よりも辛い苦痛を、私は知っています 
――何より辛かったのは、私の死をきっかけに、私の大切な方が、悲しみと憎しみに囚われてしまったことです。 
――愛しいその方は私を殺めた人物だけでなく、人間という種族を滅ぼそうとしてしまいました。 
――その方を陥れようとした悪意によって企てられた、謀略であったことに気づかずに。  
――勇者様とそのお仲間のおかげで、私は再び生を受け、あの方を止めることができました。 
――そんな経験を経て、私は、改めて実感したのです。 
――命を奪う行為は悲しみを生み憎しみを育ててしまいます。悲しみと憎しみはまた別の悲しみと憎しみへと続いてしまいます。 
――大切な人が亡くなり、悲しみに暮れている方もいらっしゃるでしょう。仇を討とうと、憎しみを抱いている方も少なくはないかもしれません。 
――どうか、その大切な人のことを思い出してください。その人が、貴方のそんな姿を望んでいるはずがありません。 
――殺し合いに乗ってしまった方々、少しだけでも考えてみてください。 
――大切な人の死によって生まれる悲しみを、痛みを、苦しみを。 
――憎しみを抱き刃を向けるのは止めにしましょう。憎しみは目を曇らせ、刃は取り合うべきを切り落とします。 
――互いに傷つけ合い殺し合うのは止めにしましょう。私たちは、必ず手を取り合えるはずです。 
――私は今、生きています。それは、たくさんの強く優しい方々に出会い、手を取り合えた証です。 
――オディオに屈さず、未来のために手を取り合える強さを、私は信じています。 
――憎しみに流されず、悲しみ囚われず、互いに理解する心を。 
――人間も、エルフも、魔族も、ノーブルレッドも。誰もが、抱いているのですから。 
――願わくば、私の声が多くの方々に。 
――[[ピサロ]]様に、届きますように。 


……否定する気は無い。 
手を取り合う強さも、互いを理解しようとする心も。 それそのものは強く、美しい感情であったのは事実なのだから。 
背中合わせに戦う友が、呼びかけに応えてくれたかつての英雄が、最後まで己を信じてくれた仲間が、そして何よりも、己を待ち続けている人が。 
旅立ちの時も、戦いの日々にも、新たな仲間を得た時も、失意に囚われた時も、道が見えず闇雲に彷徨う時でも、一人になった後でさえ、力を与えてくれた。 

エルフの姫御。 強く、聡明な女性よ。 
貴女は勘違いをしている。 
貴女の声は決して届く事はない。  
いや、届く相手はいる、聞き届けるものも居るだろう。  
それでも、その声は本当に届けたいものには、届く事はない。 
貴女の声は、そもそも貴女の言葉など必要としていないものにしか届かない。 
かつて手を取り合った、勇者という存在にすら届かない。 もはや必要としていないのだから。 

哀れみはしない。 
貴女は強い人だ。 
かつて最後まで私の事を信じてくれた仲間のように。 
その道を、信じ続けて死ねる者もいるのだから。 

そして、だからこそ貴女には、今の貴女では決して理解することは出来ない。 

貴女は何も知らない。 
貴女は何も失っていない。 ただ失わせただけだ。 
己の全てを賭して守りたい物を失ったその先、そこに何があるのか……貴女は何一つ知ってなどいないのだ。 
それを知らぬ貴女の言葉は、その先にたどり着いたものには決して届きはしない。 
貴女は、その真実を知らないのだ。 

「……いや」 

或いはそれが…それも、真実なのか。 
理解にすら至らない場所。 
生物としての根本的な差異。 
貴女達には、貴女には、それが真実だったのか? 

なあ、……シア…… 
貴女達は、我々とは根本的に違っていたのか? 
いくら考えても、わからない。 

私は、決して届かない、……届かなかった言葉を、こうして考え続けることしか出来ないのか? 

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