『熱戦だッ烈戦だッ超激戦だッ』
(キャラ)フリーザ、継国縁壱、鬼舞辻無惨
この世の理とは、気がつけば移ろい、終わっているものだ。
朝露は陽を受ければ消え、夕暮れはいつの間にか夜へ変わる。
鬼もまた同じだった。見つければ刀を振るう前に陽光へ追い立て、やがて灰となる。
私には、それが呼吸をするのと同じように、至極当たり前のことだった。
この殺し合いに呼ばれたことさえ、そうであるように。
私は支給された荷を確かめ、周囲の店内を探り、次に為すべきことを静かに考えていた。
──もし、『あの男』がこの地にいると初めから知っていたなら。
──私は思案する時間さえ惜しみ、ただちに動いていただろう。
それに気付けなかったのも、ひとえに私の至らなさだった。
私は思う。
「おやおや。もしや、この方とお知合いですか?」
「……『知り合い』、か。…………確かに、そう言えなくもない」
「フフッ。それでは私は席を外しましょう。旧交を温める邪魔をするほど、無粋ではありませんので」
「……」
かつて我が兄が、人の道を外れ、鬼へと身を堕としたとき。
──兄上にとっても、あれは『気がついたら』……ではないのかと。
「……『鬼舞辻無惨』」
「…………ッ!! ……ゴボッ……! ガハッ……ハァ……ハァ…………。──」
「──……。……見ろ、私は……この様だ。……もはや、お前が手を下すまでも……ない……。──」
人の一生とは、あまりにも短い。
だからこそ、一瞬なのかもしれない。
「──……化け物ッ……、──『継国縁壱』……ッ!」
「…………」
血に混じったその声が届いた時、ふと耳飾りが揺れた。
“風がないのに不思議なことだ”と思うまでもない。
鬼舞辻無惨。──奴の身は崩れ、肉はことごとく破綻し、もはや自力で上体を起こす力すら残っていなかった。
視界もとうに、定かではないのだろう。
濁った瞳は、自らの朽ちゆく肉体ではなく、ただ、私だけを映していた。
いくつもの歳月を経ても、その眼差しだけは、あの日と何一つ変わってはいなかった。
「……今もなお、死が恐ろしいのだな」
「…………ゴホ、ガ……ッ。……無駄な言葉を、言わせる……な……ッ」
「そうだな」
「……」
……私は、この場へ導かれたわけではない。
ただ街を歩き、刀の具合を確かめようと静かに鞘を払った、その一瞬のことだった。
天地を揺るがす幾度もの轟音。
鬼とは異なる気配を感じ取り、私はその方角へ向かった。
そうして辿り着いた果てに目にしたのが、この凄惨な光景だった。
先ほど私と言葉を交わした、白い肌をした男。この徹底的な破壊は、あの者の仕業なのだろう。
『ビル・テラス』と称したこの場所は、朝陽を平穏に迎えることも、眼下に広がる人々の暮らしを望むことも、もう叶わない。
無惨は、瓦礫とも肉片とも埋もれたまま、ただ静かに、その終わりを迎えようとしていた。
「……さぞ…………愉快なのだろうな…………。貴様は……」
ふと、無惨が一度だけ、酷く緩慢に瞬きをした。
「……愉悦か。鬼から見れば、私はそう映るのかもしれない。だが私は、殺し合いに興じるつもりなど──」
「違うッ……!!」
「…………」
奴は血を吐き、咳き込み。
それでもなお言葉を吐き出す。
「あの日からだ……。あの赫き刀……あの呼吸……あの日から私は……ッ、……逃げた」
「……」
「……死など……恐れていたのではない。私が怯えたのは……夜だ、暗闇だ。闇の中にはいかなる時も、……必ず貴様が……立っていた……ッ」
「……」
「ようやく……終わると思った。ようやく……貴様のいない世界で……死ねると思った……。……なのにッ──」
「──貴様はあの日のまま現れ……、──」
口元が大きく歪む。
「──私も……、あの姿のまま。…………この無様な姿を晒す。──」
憎悪とも、自嘲ともつかぬ笑みを浮かべる。
「──……それも、貴様ではない、得体の知れぬ…………化け物によって……ッ」
「……………」
そして、自らの砕けた身体へと虚ろな目を落とす。
「……ゴホッ、ガハ、ゴホ…………。……殺ってみろ…………。さあ、今すぐ……その刀で私を細切れにしてみせろッ…………!」
「……」
終わりに、無惨は歪んだ自身の顔──辛うじて形の残る額を、血塗られた手で拭った。
どろりと濡れたその手で、一度だけ。
私は何も言わなかった。
……今の私に、返す言葉など元より存在しない。
「継国…………縁壱ィッ…………!」
「…………」
当然だった。
言葉を返す必要などない。
人間は情で動き、鬼もまた自らの情を操る。
奴らがどれほど眉を強張らせ、泣き面を作り、道理を語ろうとも、そこに意味などない。
……いや、意味がないのではない。そこに意味を求めてはならないのだ。
だから私は今まで、刀を握り続けた。
そして無惨は今、病床の子供のように、小さき身体を震わせる。
私とこの男の対比は、どこまでも浅く、相容れない。ただそこに在るだけだ。
ゆえに、これは同情ではない。
せめてもの情けではない。
「……殺せ」
奴がなおも、血走った眼で私を睨みつける最中。
私は、無惨が何よりも恐れ、怯え続けた赫き刃先を、静かに地面へと擦り下ろし、
「……ィイッ! 殺せェエエエエッ──」
「少し、付き合えるか」
「…………ぁ?」
「酒だ。……私も、久しく口にしていない」
その場に、ただ静かに置いた。
………
……
…
◆
【♪BGM】
無惨は、──彼は、言った。
“何の冗談だ。ふざけるな”
もっともなことだ。
酒とは、人が互いの心を酌み交わすためにあるもの。
鬼である無惨にとって、それは侮辱に映ったのだろう。
その返答を聞いた時だった。
……気づけば私の、張り詰めていた頬の力が、ほんのわずかに抜けていた。
鬼の前で、そのような表情になったのは初めてだった。
深い意味など、そこには無い。
ただ、長い旅路の果てに旧き知人と再び会った。
……そんな、不思議な心持ちが、どこかにあったのかもしれない。
「……愚かな男だ。どこまでも、底の浅い……」
「……そうだな」
酒瓶をと、二つの御猪口。
私は無惨の傍らへ静かに腰を下ろし、また酒を注ぐ。
無惨は、辛うじて動く左手だけを伸ばし、震えながらその杯を掴んだ。
……彼は、諦めたのかもしれない。
あるいは、その終わりを前にして、ほんの一瞬だけでも、人としての振る舞いを取り戻そうとしたのか。
その内理までは、私にも分からなかった。
ただ、一つだけ。
水面へとしがみつくように向けられた、その眼差しを見て。
──無惨にはまだ、この世界を視る力が残されているのだと、それだけを静かに知った。
「……毒でも盛ればよかろうに」
「古い諺がある。……酒は百薬の長、されど万病の元。つまり、元より毒なのだと」
「…………まったく。……どこまでも救い難い、愚かな男よ……」
「否定はできない」
「……」
夜風が、私の着物を揺らした。
私は杯を傾け、澄んだ液体を口へと運ぶ。
無惨もまた、何も言わずにただ酒を喉へと流し込んでいた。
杯が幾度か満ち、そして空になるまで、互いに口を開くことはなかった。
「お前は、人間の頃、酒を飲んだことはあるか?」
「……なに?」
「……深い意味はない。興味があっただけだ」
「……。──」
「──……くだらん問いを。……私は二十歳を迎える前に死ぬと言い渡された、病床の身であったのだぞ。──」
「──酒など、薬の味を損ねるだけの濁水に……過ぎん…………」
「そうか」
「……いや、一度だけだ」
「?」
「かつての……牛鍋屋だったか。人間の真似事として、形ばかり口にしたことはある。……無論、私の考えは変わらなかったがな」
「……伊勢屋の、あの牛鍋屋か」
「……なに……っ?」
「酒豪だった弟子がな。……酒は不味いが、あそこの牛鍋だけは格別だと、よく笑っていた」
「…………」
「安定した味なのだろうな。あそこは」
「…………良い風に言うな。……注げ、縁壱」
無惨は笑わない。
意地でも、私に向けて笑みなど零しはしない。
……そういう男なのだろう、と。
酒というものは、一時だけ言いくるめてくれる。私などでは到底及ばない包容力だ。
「私は、……妻と暮らしていた頃に一度だけ飲んだ」
「……」
ふと、自分でも予期していなかった過去の記憶が漏れた。
「酷く安物だったが……あの時は、とても温かかった。肴として出されためざしの味すら、まるで覚えていないほどに」
「…………」
「……あの時は、このままで良いと、思ってしまった」
「……戯言を…………っ」
本来なら、語る必要などない話だった。
それでも、この夜だけは、言葉が止まらなかった。
「“お前も、その温かさを知っていれば違った”……そう言えば、よいだろう…………」
「……」
「人間とは……皆そうだ。救えもしない相手に向かって……、したり顔で救いを語る……。貴様程度の浅薄な思考など、私には取るに足らん……」
「……」
私はその言葉へ、静かに首を横に振る。
「……説教は苦手だ。私は人を不快にしたくない質でな」
「『人を』──な……?」
「……あぁ、人は人。鬼は鬼だ。……それだけのことだ」
「……どこまでも…………反吐が出る……」
そしてまた一杯、水面に満月を浮かせる。
「貴様はあの夜、竹林で出会った時も……そうだった」
「……」
「私の首を撥ねようとしながら、その眼には憎しみではなく……ただ、哀れみだけがあった。──」
「──それがどれほど……、私の自尊心を刻んだか、貴様には分かるまい…………っ」
「……分からないな」
「…………」
今度ばかりは一息に飲み干さず、少しずつ杯を傾けた。
酒とは、そうして味わうものだと聞いたことがある。
私はただ、その記憶にならった。
「……」
「……」
「おい」
「……なんだ」
「“分からないな”……それで……終わりか? 何か、他にあるだろう…………。普通の人間であれば、それに付け加えて……諭すような言葉を…………」
「……すまない、撤回しよう。今の私にできる返答は、『無』だ」
「……………もはや呆れる私が愚かだッ」
「確かにな」……と。
私は自嘲するように、小さく息を漏らした。
無惨という男は、何も変わらない。
決して笑いはしない。私の姿を見ようともしない。ただ、己のなかの執念だけを語る。
そうして私の拙い発言を見下し、すべてを諦めたように小さく溜息をつくのだ。
夜明けの光が訪れるにはまだ時間があるというのに、彼の瞳は、酷く眠たげに揺れていた。
「天災……。……どれほど強大であろうと、生物は、必ず死ぬ…………」
「…………」
無惨は静かに酒を飲み干し、独り言のように言葉を漏らした。
砕けかけた掌を月明かりへかざす。
その指先は、時の流れとともに少しずつ灰へと変わり、夜風にほどけていく。
彼は、その様をただ見つめていた。
己の終わりから、最後まで目を逸らすことなく。
「…………今までずっと、貴様を化け物だと思っていた」
「……」
「……縁壱、貴様も所詮は…………人の子だ」
「……それが私の選んだ道だ」
「………………」
私も、それ以上何かを為すわけでもなく、ただ彼の様を見続け、寄り添った。
それが正しい行動なのかは、私には分からない。
この夜、私が発した言葉のすべてが、大きな過ちに値するものなのかもしれない。
──それでも最後は。
「…………命令だ。この酒汲み……すべて、なかったことに……しろ。誰にも、語るな。……………」
「……」
「……貴様が言葉を交わした……相手は、……………鬼舞辻無惨などでは──」
──、
────。
「……」
静寂が戻った暗闇のなか、チャプン、チャプンと。
私は手元に残された御猪口を揺らし、そのかすかな水量を確かめた。
………
……
…
◆
万物の営みとは、常に、気づかぬうちに終わりを迎えている。
鬼の命も、その例外ではない。
見つければ、刀を抜く前に陽光へ追い詰め、
…………やがて灰へと還す。
私にとっては、それがただ息を吸い、吐くのと同じように、至極当然のことでしかなかった。
「……」
夜更けの闇はどこまでも深い。
崩れた建物を後にした時だった。
私は振り返ることなく、夜空へ静かに声を向けた。
「──…………降りて来い」
「……おやおや。面白い方ですねぇ。私を呼びつける者など、久しく見ませんでしたよ」
「…………ならば、一つ問おう」
「フフフ……ええ。どうぞ」
刀の柄に、そっと手をかける。
夜風を拒むように、耳飾りが小さく揺れる。
「……白いな。……異邦の者か」
「フフ……! その程度の認識しか持ち合わせていないのであれば、それで結構です」
「……」
──いらぬと知りながら、一度だけ深く『呼吸』する。
「無惨さんはほんの退屈しのぎにはなりましたよ。あなたはどうでしょうね?──」
「──私にアクビさせないことを祈りますよ。……地球人…………!」
「────来い」
酔いはもうない。
──ッ────────────────……
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡確認】
【継国縁壱@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:日輪刀
[道具]:支給品一式不明x1~3
[思考]:理不尽な殺し合いを、私の代で終わらせる。
1:眼前の白き異形を、今この場で屠る。
【フリーザ@ドラゴンボールZ】
[状態]:無傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:虫ケラどもの皆殺し。このような茶番に本気を出す私ではありません。
1:眼前の剣士を、塵一つ残さず粉砕する。
2:「お労しや、無惨さん」……とでも泣きつくかと思えば、随分と冷淡ですねぇ?
3:主催者を含め、この星にいる有象無象を、一匹残らず消し去って差し上げましょうッ!!
最終更新:2026年06月27日 13:51