第十八話 門出
光李「ひどい有様ね・・・」
月夢「だけど、一人も死んでない・・・」
真「もうここには居ないみたいだな」
小雨「王が、雪鎖と姫をさがしているらしいよ。懸賞金を賭けられてるみたい」
眞之「あいつも知っているだろう。そこまで鈍くは無いさ」
◇森◇
雪鎖「知り合いか?」
由香「はい。 彼女達は私の世界に住んでいる人たちです」
茨『何故、具現化していないのに見えたんだ?」
由香「私も、雪鎖さんの体を借りていますので」
この二人も俺の体を使ってんのか・・・。
はっきり言って迷惑なんだが。
雛菊『すいません。他に『器』が無かったので』
雪鎖「人の体を『器』扱かよ」
茨『気にするな。気にしたら負けだ』
何に負けるんだよ。
桜「あのー、全く話が読めないんだけど」
雪鎖「俺だって分からないよ」
茨『自己紹介がまだだったな。 俺は『針乃 茨』だ。一応、茨の守護者だからな』
雛菊『私は『空墓 雛菊』です。 茨の付き添いです』
雪鎖「何をしに来たんですか?」
茨『お前の身を守るように、上の奴らから言われたんだ。おまえが、この世界を守ることになるかもしれない、と』
俺がこの世界を守る?
そんな馬鹿な。
雪鎖「まあいいや。で、いつまで俺の体を使うつもり?」
雛菊『上層部の方から、撤退命令が出るまでですので、具体的な時間は分かりません」
雪鎖「まじか・・・」
由香「私も、同じような感じですけどね」
雪鎖「もういいや。この話はやめよう。 そろそろここから離れたいし」
さゆり「あ、あの!」
歩き出そうとしたとき、さゆりさんが声を出した。
雪鎖「何?」
さゆり「行きたい場所があるんです」
雪鎖「行きたい場所?」
何だ?
さゆり「『デザートコンビナート』です」
・・・
・・・・・
・・・・・・・
聞き違いか?
雪鎖「えーっと、もう一度言ってくれる?」
さゆり「『デザートコンビナート』です」
聞き違いじゃなかったー。
雪鎖「本気で言ってるんですか!?」
翠「あそこは危険ですよ!」
さゆり「お願いします!」
さゆりさんは、頭が地面に着くのではないかと思うほど深く頭を下げた。
雪鎖「どうして・・・コンビナートなんかに・・・?」
さゆり「私の───が居るんです・・・」
小さな声で、呟くように言った。
雪鎖「え?」
さゆり「私の・・・・私の、兄弟が・・・いるんです・・・」
兄・・・・弟・・・。
姉さんは、どうしてるかな。
雪鎖「それって、もしかして・・・」
違ってほしいと願った。
しかし、次に聞こえてきたのは残酷な言葉だった。
さゆり「捕虜として、そこに収容されているんです。 元々体の弱かった妹は、長く働くことができず、毎日体に鞭打ちをされていました」
雪鎖「さゆりさんは、もしかして・・・そこから?」
悪いと思いつつも、聞いてしまう。
さゆり「はい。監視の目を盗んで、私だけで逃げ出したんです。 妹達には、つらい思いをさせてしまいました・・・」
さゆりさんはうつむいて、震えた声で言った。
さゆり「今度こそ・・・妹達を助けたいんです。 きっと、今も辛い思いをさせてしまっている。 だから、お願いします」
その言葉は震えていた。
しかし、それでも力強い声だった。
雪鎖「・・・・わかった。俺は、その妹達を助けたい。このまま放っておくことはできない。 桜たちは、どうする?」
桜や花城さん、翠さんのほうを見る。
桜「そんなん、決まってるでしょ」
花城「もちろんさ」
翠「私達も、行きたい」
子供「うん・・・」
茨『おまえは・・・ほんとに、心のそこから優しい奴だ。その優しさが、おまえをどんな道へ、導くか・・・』
雛菊『そうだね・・・』
由香「がんばろう」
みんなの賛同は得られた。
しかし、さっきから気になっていたんだが・・・
雪鎖「その子は・・・誰?」
翠「これでも一応、18歳ですからね」
雪鎖「え?」
翠「いろいろとありましてね。ちょっと、発育が遅いだけなんです」
そうなのか。
悪いこと聞いちゃったかな。
雪鎖「そっか。 それじゃ、そろそろ行こうか」
俺達は歩き始めた。
最終更新:2012年02月07日 19:31