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こころひとつ 1ー3

 ラムザ一行は、イグーロスに戻った。帰路は重苦しい雰囲気に包まれ、誰一人として言葉を発する者はいなかった。はっきりと浮き彫りになってしまった、平民と貴族の差、アルガスの思い、ディリータの立場……。それら全てが、一行の上には重くのしかかっていた。オーウェルは、それを少し上から見下ろすようなスタンスにあったが、皆と同じように、何も話さなかった。
 戻ったイグーロスには、目も当てられない惨状が待っていた。ベオルブ家当主ダイスダーグが骸旅団に襲われ、重傷。同じく、末の娘アルマが軽傷。そして、
「ティータ……が?」
 ディリータは呆けたように立ちつくした。妹ティータがベオルブ家の令嬢と間違われて、さらわれたというのだから、それも仕方のないことだ。
 ティータを救おうとするディリータと、それに同行するラムザ。一方アルガスは、ラムザと袂を分かち、単独で北天騎士団と行動を共にすることを決めた。
「ど、どうしよう……」
 ラムザとディリータを二人にしてやろうと、先がけてガリランドに到着した一行は、今後の身の振り方を相談した。今ならまだ間に合う。ラムザとディリータの行動は、北天騎士団の命令違反とまでは言わなくとも、明らかな独断専行である。ついて行けば、共に処罰の対象となることは免れない。騎士団に頭を下げ、戻るなら今しかない。
「ねえ、オーウェル! アンタも真面目に考えなさいよ! みんな悩んでるのよ!」
 気弱なブランドルの言葉に続き、エリーが口を開く。オーウェルは一人窓枠に腰を下ろし、夕空を見ていた。
「……オ、オレは、戻った方がいいと思うんだ」
 黙っているオーウェルに代わり、バグシーが話をつなぐ。彼らはいずれも、中流貴族の出だ。国の英雄を排出するほどの名家ではないが、生活に不自由したことはない。
「戻りたい奴は戻れば良いし、行きたい奴は行けば良い。別にオレたちは、ラムザに雇われてるんじゃない。アカデミーの生徒なんだ」
 オーウェルは、一同の方を見ずにそう言った。格好をつけてみたわけではなく、それが彼の生き方だった。当然のことを言われて、一同は口をつぐんでしまった。オーウェルは回りくどいことが嫌いで、すぐにこのように核心を突くのだが、そのせいか、人間関係を築くのは苦手だ。
「そ、そういう問題じゃ……」
「だいたい」
 エリーの反論を、オーウェルは一瞬で遮った。
「『みんな』っていうんなら、一人足りねえだろ? ちゃんと全員集めたらどうなんだよ」
 確かに、今ここに集まっているのは、オーウェル、エリー、ブランドル、バグシーの四人。
「……サマンサはまだ無理よ」
「まだショック受けてんのか、あのお嬢様は」
「しょうがないでしょ。あのコ、平民があんな生活してたなんて、多分初めて知ったのよ」
 だからどうした、と言いかけて、オーウェルはやめた。エリーとこれ以上言い争っても、不毛なことになるだけということは、分かっている。
「とにかく、オレは思うようにやらせてもらう。相談はお前らで勝手にしろよ。お嬢様も交えてな」
 オーウェルは、そのまま宿を後にした。

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最終更新:2009年06月26日 23:27