2-159 「さきのど。 #16~#21」





#16
久「それじゃ今日はここまで!」
優「疲れたじぇ……」
久「みんな気をつけて帰るのよ。あ、和だけは残って」
和「私ですか?」
久「ええ。ちょっと話があるの」
優「じゃあ私たちは外で待ってるじょ」
咲(原村さん……)
パタン
和「部長。何ですか、話って」
久「和、ツモ切りの特訓のほうはどう?」
和「特訓? 続けてますよ。最近は自分でも動きが滑らかになってきたと思います」
久「そう、それはよかった。てっきり和は全国行きを諦めたと思ってたから」
和「私が? 全国行きを? ――馬鹿に、」
久「……」
和「馬鹿にしないでください! 私は何としてでも全国に行くって誓ったんです! 全国に行って、優勝しないと駄目なんです!」
和(そう、優勝しないと私は……優希とも、宮永さんとも……)


#17
久「ごめんごめん、冗談だって。そんなに怒らなくたっていいじゃない」
和「たちの悪い冗談ですね」
久「……心の迷いは消えたかしら?」
和「!」
久「ふふっ、じゃあね。また明日」
パタン
和(見抜かれてた……。私が全国行きに一瞬でも躊躇したのを、部長は見逃していなかったんだ)
咲「原村さん!」
和「宮永さん……。優希と須賀君の姿が見当たりませんけど」
咲「用事があるからって先に帰っちゃった。変だよね、二人揃って用事だなんて」
和「そ、そうですね(宮永さんと二人きりなんて……久しぶり)」
咲(訊いていいのかな、原村さんの様子がおかしかった理由。なんだか妙に緊張しちゃうな……)


#18
帰り道
和「……」
咲「……」
咲(会話がない……何か喋らないと)
咲「ゆ、優希ちゃんたちの用事って何だったんだろうね」
和「宮永さんは」
咲「二人して急に帰っちゃうからびっくりしたよ――って、え? なに?」
和「宮永さんは、お姉さんに会うために全国を目指しているんですよね」
咲「う、うん。正確にはお姉ちゃんと仲直りして、また家族一緒に暮らすためかな」
和「そうですか……」
和(宮永さんにも、私にも、全国に行かないといけない理由がある。心の中を整理できないまま大会に挑めばきっと不幸なことになってしまう。それを痛いほどよく解っているのに)

和(よく解っているのに、宮永さんの心を占めているものにどうしても嫉妬せずにはいられない……そんな自分が嫌いでたまらないの……)
咲(原村さん……どうしちゃったの? 悩みがあるなら言ってよ……)

#19
分かれ道
咲(もうここまで来ちゃったんだ)
和「……それでは、また明日」
咲「あっ」
咲(原村さんが行っちゃう……)
咲「ま、待って原村さん!」
ぎゅっ
和「きゃっ!?」
咲(引き留めちゃった……ど、どうしようっ)
和「み、宮永さん? どうしたんですか?」
咲「あ、あのね(勇気を出して、私……!)」


#20
咲「き、今日の原村さん元気なかったから!」
和「え……」
咲「それで私、心配で! 原村さんが元気ないとなんだか私も辛くって、な、何かあったなら相談してほしいなって思って!」
咲(恥ずかしい……っ、誰かにこんなこと言ったの、はじめてだよ……)
和「ずっと、気にかけてくれていたんですか?」
咲「うん。部活中から、ずっと……」
和(宮永さんが私のことを……う、嬉しい……)
咲(原村さんが真っ赤になった……でも、たぶん真っ赤なのは私も同じ)
和(握った手が)
咲(熱い……)


#21
和「ありがとうございます、宮永さん」
咲「原村さん……」
和「私は大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけなので」
咲「本当に?」
和「ええ。心配かけてごめんなさい」
咲「う、ううん。気にしないで!(原村さん、やっと笑ってくれた。よかったあ)」
和(今、目の前にいない人のことを妬むのはやめよう。それより私のことを見てくれる彼女のことだけを、私はずっと見つめ続けよう)

和(私に負けの味を覚えさせた相手。でも今は、誰よりもそばにいてほしい人。宮永さん……あなたの隣にいるために、私は全国優勝を目指します。だから――)
和「宮永さん、もう少しこのまま……手を繋いでいてもいいですか?」
咲「うん。私もちょうど同じこと思ってたよ」
ぎゅっ
和(宮永さんと一緒なら)
咲(原村さんと一緒なら)
和・咲(絶対、大丈夫! 私たちは全国に行ける!)





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最終更新:2010年04月23日 15:23
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