2-377 「さきのど。番外編 #22~#32」





#22番外編
久「というわけで」
優「全国出場おめでとうだじょー!」
ま「まさか咲と和が個人戦でも勝ち抜くとはのう。夢にも思わなかったわ」
和「おめでとうございます、宮永さん」
咲「あ、ありがとう。原村さんもおめでとうだよ」
久(咲がプラマイゼロをやっていることに、和はいち早く気づいてみせた。そしてあの場で叱ったからこそ、この結果が生まれたのね)
京「つ、疲れた……ただいまー」
優「遅いぞこの犬! タコスはちゃんと買ってきたかー!」
咲「おかえり京ちゃん。ごめんね、一人で買い出しになんか行かせちゃって」
和「須賀君はどの飲み物にします? 注ぎますよ」
ま「これでやっとパーティーが始められるのう」
久(咲と和……展開次第では面白いことになりそうね。ちょっとあれを試してみようかしら)
優「乾杯するじぇー! 音頭はもちろんこの私が、」
久「みんな、この数日間よく頑張ったわ。でもまだ終わらない。目指すは全国制覇よ! カンパーイ!」
カンパーイ!
優「じょ!?」


#23番外編
優「部長、酷いじぇ……最高の音頭を考えてたのに……」
京「いや、どう考えてもお前に音頭は無理だから」
咲「元気出して優希ちゃん。はい、タコス」
優「タコスうまー♪」
ま「単純じゃのう……」
和「? 部長、何しているんですか?」
久「ん、ちょっと本棚の整理をね」
和「……パーティーの最中にですか?」
久「たまに衝動的にやりたくなるときってあるじゃない。えっと確かこの辺に……あったあった」
和「ずいぶんと古い本ですね」
久「これは本じゃないわ。ノートよ」
和「ノート……?」
久「ええ。好きな人の名前を書くと必ず結ばれるという、通称ラブノートなのよ!」


#24番外編
和「……はあ」
久「あら、意外と淡泊なのね。和は占いとか好きじゃない?」
和「オカルトは信じない主義ですから。何よりそのノート、胡散臭すぎます」
久「まあねー。そう言うと思ったわ。私も正直信じてないし」
ま「そんなとこで二人して何やっとるんじゃ」
優「ピンクのノートだじぇ。それってのどちゃんのか?」
和「いえ、部室に置いてあったものみたいですよ」
久(なんで手に持ってる私をスルーして和に訊くのかしら。私には似合わないってこと?)
咲「それ、表紙にラブノートって書いてある……」


#25番外編
久「これに好きな人の名前を書くと両思いになれるらしいわ」
京「またなんてありがちな……」
ま「どう見てもアレのパクリじゃ」
久「ねえねえ、誰か試してみない? 書き方次第で即効性も出るみたいだから、有効かどうか、確かめようと思えば確かめられるわよ」
優「でも、ここには私たちしかいないじょ」
久「あら、何か問題ある? この中に、麻雀部の誰かを好きな人がいないとも限らないでしょ?」
咲「!」
和「!」
久(ニヤリ)
京「え? え? この流れって……もしかしてずっと俺のターン!?」
優「それはないじぇ」
ま「ないな」
久「ないわね」
京「ズガーン!」
和(ノートに名前を書くだけで両思い。そんなオカルトありえませんそんなオカルトありえませんそんなオカルトありえま)
咲「両思い……」


#26番外編
久「まあでもこれを使うってことは、すなわち自分に好きな人がいるってのを認めるようなものだからね」
和「リスクが大きすぎます」
ま「それ以前に機能せんと思うがのう」
京(染谷先輩が微妙に酷いことを言った気が……)
久「須賀君が使うんなら話は別だけど」
京「えっ、いいんですか!?」
久「ダメ♪」
京「……」
優「空気を読んだじぇ」
久「ってわけだから、須賀君以外で試したい人がいたら遠慮なく使ってちょうだい。本棚に入れておくから」
和「危機管理がゆるゆるですね」
京(ちょ、危機管理って……)
久「約一名の理性を信じるしかないわね。ま、大丈夫だとは思うけど」
優「咲ちゃん、さっきから黙り込んでどうした?」
咲「え!? う、ううん、何でもないよ。ちょっと私、ジュース注いでくるね」
久(ニヤニヤ)


#27番外編
パーティー終了後
優「うう、もう食べられないじぇ……」
ま「何だかんだで結構盛り上がったからのう」
久「後片づけも終わったし、帰りましょうか」
咲「わ、わたし!」
和「宮永さん?」
咲「ちょっとトイレ行ってくる! 原村さんたちは先に行ってて!」
トトトト……
優「行っちゃったじょ」
和「宮永さん、結構ジュース飲んでいましたからね」
久「邪魔しちゃ悪いし、先に下りてましょ」
ま「じゃのう」
和(……邪魔しちゃ悪い? トイレの、でしょうか)


#28番外編
翌日の放課後
和「宮永さん、遅いですね」
久「あら、心配?」
和「べ、別にそんなわけじゃっ」
咲「こんにちは」
優「咲ちゃん来たじぇー!」
和「こんにちは、宮永さん」
咲「こ、こんにちは」そわそわ
和(目を逸らされた……)
久「咲も来たわね。はいじゃあみんな注目! これからは全国に向けての特訓を開始するわよ!」
咲「……」ちらっ
和(見られてる……)
咲「……」ちらっ
和「あの。何か用ですか?」
咲「な、なな何でもないよ!」
久「あ……そーいえば」


#29番外編
久「アレ、どうなったかしらね」
ま「アレ?」
久「ラブノートよ、ラブノート」
ガタンッ
咲「~~~~~~っ……」
和「宮永さんっ!?」
優「咲ちゃん、卓に盛大に足をぶつけたじぇ」
京「俺がせっかく積み上げた牌が……」
ま「咲は相変わらず鈍くさいのう」
久「あら? ノートが」
咲「っ!」
久「ノートがなくなってるわ!」
和「えっ」
優「なにそれこわい、だじょ」
ま「ざわ……ざわ……」


#30番外編
凍りつく室内
久「……須賀君、あなたまさか」
京「おおお俺じゃないっすよ!」
ま「さあどうかのう。その慌てっぷりが逆に怪しいんじゃが」
優「貴様ー! 私というものがありながらー!」
京「お前は黙ってろ! なあ和、和は俺のこと信じてくれるよな?」
和「……須賀君」
京「はい」
和「退部してくれませんか」
京「Noooooooooooo!!」
咲「違うの! 京ちゃんは何も悪くない!」
和「み、宮永さん?」
京「咲……」
咲「ノートを取ったのは……私、だから……」
ま「ざわ……ざわ……」


#31番外編
和「宮永さんが、ノートを?」
咲「……」こくり
優「もしかして使う気だったのかー?」
咲「……もう使っちゃった」
ま「なっ」
和(宮永さん、好きな人……いたんだ)
優「咲ちゃんってそういうの信じるタイプだったのか……」
久「それで、効果はあったの? 好きな人とは両思いになれた?」
咲「……いいえ」
優「なれなかったのか?」
咲「解らないけど。反応がいつもと同じだったから、たぶん」
和(誰なの……宮永さんの好きな人って……)
咲(やっぱりいつも通りだよね……。うう、それよりなんでノート使ったこと、みんなの前でばらしちゃったんだろう。恥ずかしいよう……!)


#32番外編
久「でもね、咲。こういう考え方もあるのよ」
咲「え?」
久「ノートを使っても効果がなかった。反応がいつも通りだった。それって実は――最初から両思いだったんじゃない? ってこと」
優「にゃはー!」
ま「そういう考えもありじゃのう」
咲「え? ええ?」
和「……つまり、はじめからノートを使う必要がなかったってことです。宮永さんとその人は、その……り、……両思いだったんですから」
和(なんで丁寧に解説しているんだろう……胸が痛くて堪らないのに)
咲「そ、そっか! そういうことだったんだ!」
和「……ええ。ですから何も落ち込むことは、」
咲「だから今日の原村さん普通だったんだね! 私、ノートの効き目があるかどうか心配で心配で――あ」
久(ニヤリ)
ま・優・京「え?」
和「宮永さん……それってつまり……」
咲「あ、あ……」カチーン
優「ひゃあ! 咲ちゃんが石になったじょ!」
ま「あわわ、い、息をしとらん!」
和「宮永さん!? しっかりしてください、宮永さーん!」
いーまーを ぬけだーそーう♪ てに ふれーたー♪
Glossy future!

おしまい






最終更新:2010年04月23日 15:26
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