2-657 「さきのど。 #22~#27」





#22
ラブノートなんてなかった、ある日の昼休みのこと
京「なんだ、今日は咲も和も弁当じゃないのか」
咲「うん、寝坊しちゃって。作る暇がなかったんだ」
和「私もです」
和(言えない……宮永さんにそっくりのアバターを夜通し作っていたなんて、言えない……)
優「じゃあ今日は学食に行くじぇ!」
京「お前は単にタコスが食いたいだけだろ!」
学食
京「そういえば今日はレディースランチの日か!」
咲(びくっ)
京「へえ、汁物か。なんか風邪気味だしちょうどいいな。咲、頼む!」
咲「……仕方ないなあ」
和(須賀君は、いつも宮永さんにレディースランチをお願いするんですね)むっ
和「今日は私が買ってきましょうか? レディースランチ」
咲「え?」
京「い、いいのか?」
和「はい」
和(私が代われば、宮永さんは須賀君のためにレディースランチを買う必要はなくなりますからね)
咲(原村さんが京ちゃんのために……。あれ、何でだろう。胸が苦しい……)


#23
咲「大丈夫だよ原村さん。私が買ってくるから」
和「いえ、遠慮しないでください。今日は私が」
咲「で、でも悪いよっ」
和「何も悪いことなんてありません。気にしないでくださいっ」
京「……なあ優希」
優「なんだバカ犬」
京「これってアレか? 俗に言う、奪い合いってやつか!? 俺っていつからこんなにモテてたんだ!?」
優「お前の目は節穴かー!」
和(宮永さん、お願いだから私に譲ってください。私は見たくないんです。あなたが須賀君のために動いている所を)
咲(原村さん、お願いだから私にやらせてよ。原村さんは京ちゃんのこと好きだったの? そんなのやだよ……)


#24
午後の授業
先生「このように、iPS細胞というのは身体のあらゆる細胞になれることから万能細胞とも呼ばれ――」
咲(授業に集中できない……)
先生「医療の進歩と共に必要不可欠な存在になることは間違いないと思われる。ちなみにiPSのiはi-podから名づけられたもので――」
咲(京ちゃんも原村さんのことが好きみたいだし、もしかしなくても、これって)
先生「以上のことはテストに出すぞー」
咲(両思い、だよね……)
先生「宮永! iPS細胞のことは理解できたか!」
咲「あ、はい! 知ってました!」
先生(なに? 知ってた……だと……!?)


#25
放課後の部室
咲「はあ……」
優「咲ちゃん溜め息なんかついてどうした?」
咲「ぼーっとしてたせいで、授業中に怒られちゃったの」
久「今の時期って眠くなりやすいからねえ」
ガチャ
京「うーっす」
和「すみません、遅くなりました」
久「あらこんにちは。二人一緒なんて珍しいわね」
和「来る途中でばったり会ったんです」
京「いやあ、昼休みの件もあったし、やっぱり和と俺って運命的なもので繋がってるのかな――って」
咲「……」じー
京「咲、なんか目が怖いぞ」
咲「……」ぷいっ
京「なっ」
和(宮永さんの機嫌が悪い? まさか、須賀君が私と一緒に来たことを怒ってるんじゃ……。え、ということはつまり、宮永さんは須賀君のことを……)
咲(京ちゃんひどいよ。二人並んだらお似合いに見えちゃう。また胸が苦しくなってきちゃった……)


#26
優「ローン!」
咲(あれ、どうして私……こんな牌捨てちゃったんだろう)
和(宮永さんが麻雀に集中していない。やっぱり須賀君のことが気になるのでしょうか……)
優「今日は二人からオーラが感じられないじぇ。これなら私の一人勝ちも有り得るな!」
久「あなたたち、本当に今日はどうしちゃったの? 具合でも悪いの?」
咲・和「……」ちらっ
京「?」
咲・和「はあ……」
和(須賀君がいなければ……)
咲(京ちゃんがいなかったら……)
咲・和(こんな気持ちにはならなかったのになあ)


#27
京「ずずっ」
久「あら須賀君、風邪?」
咲・和「!」
京「はい、実は今朝からちょっと辛くて」
ま「あんまり無理せんで、帰ったほうがいいんじゃないかのう」
京「いえ、これくらいなら平気――」
ガタッ
咲「ダメだよ京ちゃん!」
和「身体に障ったらどうするんですか! 今日は早く帰って休んでください!」
京「咲、和……」ジーン
咲(これで今日は原村さんとずっと一緒に……!)
和(誰にも邪魔されず宮永さんといられる……!)

京「ありがとう! 俺、帰るよ! 色々心配かけてごめん、じゃあな!」
タッタッタ……
優「だからお前の目は節穴だって言ったんだじぇ……」
和「さあ、ここから追い上げますよ。覚悟してください、優希」
咲「私もまだ諦めてないよ。優希ちゃん、覚悟しててね」
優「じょー!?」
ま「……つくづく報われんやっちゃのう、京太郎は」
久「ライバルが咲じゃ勝ち目はないわね。今度誰か紹介してあげようかしら」

咲(ごめんね京ちゃん。でもこの戦いは負けられないんだ。だって原村さんは私の――)
和(須賀君。あなたが宮永さんとどういう間柄でも私は構いません。でも譲れないものが一つだけあります。宮永さんは私の――)
咲・和(大切な人、なんだから)





最終更新:2010年04月23日 15:28
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