そんなこんなで、俺はお暇することにした。
「遅くまでお邪魔してごめんなさい。」
「ううん。こっちこそ、チアキが『色々と』迷惑をかけちゃって…」
「い、色々って!」
チアキちゃんが慌てる。
「チアキちゃん。」
「な、ななな、なんだよ!」
「ありがとう。」
「へ…?」
「それじゃあ帰ります。」
俺は立ち上がって、玄関に繋がるドアに向かう。
「あ、玄関まで送るわ。」
二人も立ち上がり、俺についてくる。
今日は、自分にとって色々な意味でプラスな日だった。
南は押して押して押しまくらなきゃダメなんだ。徹底的に俺の想いを伝えなくちゃダメなんだ。
次に南に会った時は必ずや!
目が覚めた。
チアキの叫び声が聞こえた気がする。部屋は夕陽が沈みかける黄昏時、な感じの明るさだ。
私は頭をボリボリとかく。おなか空いた。ハルカ帰ってきたかな。あー起きあがるの面倒くさいなあ。
数分ボーッとして、起きあがった。
部屋を出る。居間に向かう。
がちゃりんこ
がちゃりんこ
「「あ」」
「み、水俣病!」
「あー藤岡、来てたのか。」
ガシッ
「え?」
俺は、南の腕を強く握る。
「ほぇ?」
俺は南の部屋と思しき部屋へと強制連行する。
ガチャ
どうしても、藤岡の想いは私には向かないのか。…くそっ!
私は歯を軋り、拳を作る。怒り?否。妬み?否。これは『ただの』愛だ。『純愛だ。』
…くそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっ!
「くっそぉぉぉぉお!」
「!?」
私は壁を思い切り殴る。そして漸く、声に出していたことに気づく。
ハルカ姉様が怖じ気付いている。
「ご、ごめんなさい、姉様!」
私はすかさず部屋に駆け込む。
「…藤岡」
一気に目が覚めてしまった。
居間のドアを開けたら番長が居て、そんで無理やり部屋に連行されて、それで…
「はぁ、はぁ…」
ベッドに押し倒されてしまった。肩をガシッと捕まれてうまく身動きがとれない。
「ば、ばんちy」
「南!」
「は、はい!」
すごい剣幕だ。こんな番長…いや、こんな藤岡見たことがない。な、何をする気なんだ…
って、落ち着け私!こ、これは藤岡の新たな技に違いない!兎に角、この動けない状態を何とかせねば!
そのためにはまず、こいつに余裕を与えねば!
「の、望みはなんだ!」
藤岡がピクリと反応する。手応えありだ。
「痛っ」
藤岡の手の力が強くなる。
「藤岡?」
「好きだ!」
え…?
「俺は、南が好きだ…好きです。つきあってください!」
藤岡の表情は至って真剣だ。今までこいつが『ジョークで』告白してくるとき、いつも真剣な顔をする。
…だが、今回は何か雰囲気が違う。
「俺はもう、我慢できない。南の気持ちが知りたい。」
藤岡、どうしてそんなに悲壮なんだ?
「好きなんだ。」
え…えぇ?
「いや…違う。」
今、藤岡が何を考えているのか、全く分からない。
「俺は南を、南夏奈を愛してる。」
愛…?こいつ、『愛してる』って言ったのか?
ちょっ、なんで私ドキドキして…
「愛してる。」
こんなの言われたの、初めてだ。ど、どうしよう、心臓がバクバク言ってるよぉ…
何も考えられない。あれ?藤岡って、こんなに格好良かったか?あぁ、変な汗が出てきた。
「南」
「は、はい」
「付き合ってくれ!」
どうにでもなれ。そんな言葉が頭に浮かんだ。
最終更新:2008年02月23日 21:30