放課後。
授業が終わってすかさず帰る奴もいれば、教室で勉強したり談笑したりする奴もいる。
俺はコートを着て帰宅モードになった。だがまだ帰らない。
後ろを振り返り南を窺う。外をみで頬杖をついている。帰る準備はしてあるみたいだけど、まだ帰らないのかな?
本当なら今すぐにでも話しかけたいけど、また冷たくあしらわれるかと思うと躊躇ってしまった。
教室からは徐々に人がいなくなる。南はまだ帰っていないようだ。
俺は再び振り返る。
「「!!!」」
し、しまった!目があってしまった。俺は慌てて前を向く。気まずいな、かなり
がたん
南が立ち上がった。足音がこちらに近づいてくる。や、やばい。心臓がやばい。
南が俺の隣に仁王立ちになる。
放課後になってしまった。
授業が終わってすかさず帰る奴もいれば、教室で勉強したり談笑したりする奴もいる。
私は授業が終わる前から帰宅準備をしていたからいつでも家路につける状況だ。
前方にいる藤岡もコートを着て、しかし未だに帰ろうとしない。
本当なら今すぐにでも話しかけたいが、冷たくしてしまったこともあり、気が引ける。
ふと窓の外を見る。曇りだ。私の心もどんよりしていた。
昨日みたいに素直になれたなら、どんなに晴れ晴れとした気持ちになるだろうか。
はぁ。灰色の景色を見てもますます心が曇るだけだ。やめやめ。
「「!」」
や、やばっ!藤岡と目があった!な、なんでこっち見てるんだよ!あ、ぁああっ!頭に血が上るぅっ!
お、落ち着けよ私!って、もっと熱くなってきたぁぁぁあああっっっ!
ぷつん。
私の中で何かが切れた。
ガシッ
「え?」
南は俺の腕を鷲掴みした。
「来い。」
「え、…え?」
南はそう言うと、俺を引っ張りだした。
「み、南!」
南はすごい形相で睨みつけてきた。
「黙ってついてこい!」
「はい!」
従順な俺は以下略。
どこに連れていかれるかとおもったら、そこは…男子トイレ?
南は躊躇うことなく突入する。幸いにも周りに人はいなかった。って、そういう問題じゃ!
がちゃん。
南は個室に俺を連れて、しかも鍵まで閉めた。そこで漸く手を離してくれた。
「み、南?どうしたん…むぐ」
不意打ちだ。南は俺の唇に自分のそれを押しつけてきた。
俺はそれを受け入れる。というかそれ以外に為すすべがなかった。
南は貪るようにキスをしてくる。南のペースに流されてしまう。このままではいけない。俺は南を無理やり押し返す。
唇が離れた時のイヤらしい音、唇を繋ぐ唾液の橋。俺にとっては初めてなことだれけで、俺を狂わせようとする。
だが、俺の理性は強かった。
「み、南、落ち着け!」
むしろ俺がだな。
南は物足りなさと、そして、なんとなくだけど謝意を表情~かお~に表す。
「南、いきなりどうしたんだ。」
「…だから」
「え…?」
南が何かを呟いた。
「好きだから、藤岡が、好きだから!」
そう言うと、南は俺に縋った。俺は条件反射的に南を抱きしめた。
「好きだよ。藤岡。」
南は急に穏やかになった。飼い慣らしたペットのように、俺の胴に頬ずりを絶え間無く繰り返す。
俺は、南のその行為から悟った。
やっぱり姉妹だな、と。
ふと、南の動きが止まる。南は俺を見上げた。
「なんか言ったか?」
時間が止まった気がした。
あれ、俺、声に出してたか?
「…聞き取れなかったんだが」
「あ、ああ…それは」
あ、危ない。危うく誤解を招くところだった。せ、セーフ。
「俺も、南が好きだ。そう言ったんだ。」
何とか誤魔化す。南は満足げに微笑む。
「当然だ、おまえは私の彼氏なんだからな!」
「あ、ああ!」
そうだ、俺は南の彼氏だ。俺の願いが漸く叶ったんだ。そして、俺は喜んでいる。
だが。
何故か、「あの子」が脳内をよぎった。
「しかし、あれだな。トイレで2人っきりというのはとてもアレだが、何か違う気がするんだ。」
「違うって?」
南は、俺にスリスリしながら語り出す。
「雰囲気だよ。トイレっていう状況は何か違うんだよ。夕陽が差し込む教室で、みたいな?」
言われてみれはそうだ。って、ここに連れてきたのは南なんだけど…
「藤岡はどうしたい?」
南は子猫のような目で俺を見つめた。かわいいよ南。
俺は南の頭をなでなでする。
「んみゃっ」
南は反応して可愛く鳴いた。
「俺はこのままでもいい。」
「ふぇ?」
「南が、俺のそばにいてくれるなら、それだけで…」
それだけで俺は満たされる。
「そ、か。」
南はちょっとだけ考え込む。そして頷いた。
「そうだな。藤岡がそう言うなら、きっとそうだ!」
「ああ、俺は南が好きだ。」
「ばっ!いきなりそういうことを!」
「南は?」
ちょっとだけ意地悪。
「す、好きだよ。好きに決まってんだろ!何度も言わせるなーッ!」
うほほ~ぃ。俺の全細胞が喜びの声を上げた。何度言われても良いもんだなあ…
「だ、だからさ、その…」
「え?」
南が口ごもる。
「なんだ、キスの続きをだな…」
おやすいご用だ。俺はすかさず南に口づけた。
外はすっかり暗くなってしまった。
下校の放送が始まるまで俺たちはずっと一つだった。あっという間の二時間だった。
「みな、んぷ、み…」
南の熱いキスに負けずに、俺はなんとか南を抑える。
ぷはっ
お互い息が荒い。
「そろそろ、はぁ、かえら、なきゃ。」
「あ、あぁ。もう、そんな時間、なのか?」
今まで全く気がつかなかったが、寒い。ここにいたら風邪を引く。
「なぁ、藤岡。」
「ん?」
「寒いな。」
「ああ。」
「こうして抱きついてるだけじゃ、流石に寒いな。」
「そ、だな。」
「なあ、藤岡。」
「うん?」
「やらないか?」
最終更新:2008年02月23日 22:58