お風呂から上がった第一組、
ハルカと千秋は夕食の準備をしているので、次は内田とマコちゃんが入る事になった。
明らかに様子のおかしい藤岡とカナ。
何があったのか内田はトウマに聞いてみる事にした。
「ねぇ、トウマ。あの二人どうしたの?」
「いゃ、それがー…」
トウマは風呂であった事を内田にコッソリ教えた。
「……ってな事があったんだよ。」
「うわぁぁ…中学生って大人なんだねー////」
「バカッ!オレ達だって後2年したら中学生なんだから、お前も気をつけろよ。」
「え?何を?」
「お前…これから誰と風呂に入るんだよ。」
「誰って、そりゃマコちゃ……あーーー!!!!」
「おい、内田!早く入っちゃおうぜ!」
ようやく事の重大さに気づいた内田は、助けを求めようとしたが
マコちゃんに手をひっぱられ脱衣所に連れていかれた。
「さぁーて!早くお風呂から出てハルカさんの作ったカレーを食べるぞー!」
そう言ってどんどん服を脱いでいくマコちゃん。
「ちょっ・・ちょっと!マコちゃん!マコちゃん!」
「ふんふん~♪カレー♪カレー♪」
「…マコちゃ……マコト君!!」
「カレー~♪…って、うわぁ!内田!その名で呼ぶな!ばれちゃうだろ!」
「…いいから、とりあえずパンツはいてよ・・////」
そう言われとりあえずパンツをはいたマコト。
内田はマコトにも分かりやすいように説明を始めた。
「マコちゃん、あなたは男でしょ?」
「ぃや、オレは女だよ。」
「…じゃあ鏡見て。」
「・・・・?」
そこには髪止めを取り、女物の服を脱ぎ、トランクスを履いた自分が立っていた。
「あ、今は男だ!!」
「そう、大正解。それじゃあ私は?」
「内田はずっと女だろう?」
「そうだね、だったらもう分かるでしょ?」
「…何が?」
「だから!・・その・・年頃の男と女が一緒にお風呂に入ると…それはそれは、おかしな事が起きちゃうかもしれないでしょ?」
「うーん、大丈夫だよ!おれ内田と入っても絶対そんな気おこさないから!」
そう言ってマコトはお風呂にはいった。
「な…なんかそれはそれで傷つくなぁ…はぁ……」
そう思いながら内田も服を脱ぎお風呂に入った。
残念ながら内田には、交替で入るという案は浮かばなかったようだ。
内田も最初は戸惑っていたものの、ずっとカレーの歌を歌っているマコトに、
お風呂を出る前には、一緒に湯船につかる程安心しきっていた。
すると突然誠が内田に話しかけた。
「なぁ、内田。」
「ん?なぁに?」
「あのさ、オレ将来ハルカさんとお付き合いしようと思うんだ。」
「へぇー、そりゃ頑張ればいいんじゃない?」
「うん。それでさ、告白の練習をしたいんだ、だから内田がハルカさん役な。」
「えぇー、あの…私には断る権利はないの?」
「よし、それじゃあ早速始めよう!」
そう言うと、マコトは強引に告白の練習を始めた。
内田はため息をつきながらも、仕方ないので付き合う事にした。
「あの、ハルカさん!僕、前から大好きでした!お付き合いして下さい!」
「ごめんなさい。」
「……」
「………」
「えぇー…!内田!お前、練習のときくらい気持ち良く成功させてくれよ。」
「いや、でも私ハルカって名前でもないし上手く感情移入できないよ。」
「う~ん…名前……それもそうか。じゃぁもう一回だ!」
「はぁ…あと一回だけだよ。」
内田はそう言って、あと一回適当に終わらせてお風呂を上がろうと思った。
「内田!」
「ん?どうしたの?」
「オレ、内田の事が前から好きだったんだ!頼む!オレと付き合ってくれ!」
「…………」
微妙な間が空いた後、みるみる顔が赤くなった内田が返事をした。
「えっ…そ、そんな急に言われても…その…なんていうか…マコト君の事…嫌いとかじゃないけど、その…心の準備的なものが……////」
「??内田、そんな難しく言わなくても練習なんだから、ハイって言ってくれるだけでいいよ?」
「えっ?練習?…あっ!そうか!アハハ、ご…ごめん!」
「???変なやつ。じゃあもう一回な。」
「うん…。」
告白の練習をしているのはマコトなのに、なぜか内田の方が緊張していた。
一度深呼吸したマコトが、内田の目を見て真剣に告白の練習を再開した。
「オレ、内田の事が前から大好きだったんだ。オレと付き合ってくれ。たのむ!」
マコトの真剣な眼差しに、練習とは分かっていても内田は頬を赤くした。
そして内田も真剣にマコトの事を見つめ答えた。
「はぃ。私もマコト君の事が大好きです。」
何とも言えない空気が二人を包む。
見つめあったまま10秒程過ぎた頃、マコトが口を開いた。
「あの、この後どうするの?」
「えぇ?そ、そりゃ……OKされたなら抱き合ったりするんじゃない?」
「へぇー、そうなのか。よしっ!」
「あっ……」
口は災いのもと。両手を広げるマコトを見て、内田はまずい事を言ったと思った。
しかし不思議な事に内田は、裸で抱き合う事に『恥ずかしい』と言う気持ちはあるが、嫌と言う気持ちはなかった。
それに、こんなに必死になっているマコトの期待を裏切る事も出来なかった。
「じゃぁ…少しだけなら……」
「あぁ!さぁ来い!」
「……」
そう言うと内田はマコトの肩をつかみ、肘を折り曲げ自分の体と密着しないようにひっついた。
もし体を密着させたりしたら、自分の心臓の音がマコトにまで聞こえてしまいそうで怖かったから……
恥ずかしくて顔が熱い…顔を見えなくするため、内田はマコトの胸に顔を当てた。
「マコト君の心臓、すごくドキドキしてる……。」
「えぇ?!そ、そりゃドキドキしてないと死んじゃうだろ!よし!じゃあいくぞ!」
そう言うとマコトはおもいっきり内田を抱きしめた。
『トクン……』
内田は自分の心臓のドキドキとは違う、心の奥の方で音がなった気がした。
「(胸が苦しい…マコト君に強く抱きしめられているから?)」
しかし息が苦しいわけではない。何とも言えない気持ちに内田が気づいた。
「(あぁ……私はマコト君の事、好きになってるのかも…)」
しばらくして内田はマコトの手から解放された。
どれくらいの時間抱き合っていたのだろうか…
マコトから体が離れても内田は気持ちが整理できないでいた。
「よーし!これで準備OK!後はハルカさんに告白するだけだ!」
内田は自分がドキドキしてる時に、そんな事を言うマコトに少し腹を立て、少し意地悪してみることにした。
「あの、マコト君。いつ告白するの?」
「う~ん…さすがに小学生と高校生は無理だろうからなぁ……オレが中学生になったらかな!」
「でも、マコト君が中学生になったらハルカさんは高校卒業して、大学に行くか仕事してるんじゃない?」
「えぇぇ?!じゃ…じゃあオレが高校卒業してかr……」
「その頃にはハルカさんも誰かと付き合ってるんじゃな?」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「……ぷっ。」
それを聞いて固まるマコト。
内田はその姿がおかしくて吹き出しそうになるが、あまりにマコトが不憫で笑いをこらえた。
「そーねぇ、マコト君が失恋したら…私が付き合ってあげてもいいよ。」
「はぁ?!内田、お前何言ってn……んっ!!」
マコトが内田に文句を言おうとした瞬間、内田はその口を自分の口でふさぐ様にキスをした。
「ど、どう?少しは元気出た…?」
「元気って…お前何……」
「何ってキスの練習だよ?」
「えぇ…」
「そーね、じゃあ今度はキスの後の練習もしよっか…。」
「キスの後?」
「ぅん、お風呂入る前にカナちゃん達がしてた事、トウマに教えてもらったんだ。」
そう言い残し内田はお風呂を後にした。
お風呂を入る時とは立場が逆転し、風呂場にはマコトがボーっと立ちすくんでいた。
最終更新:2008年02月24日 00:30