千秋の日記
「それじゃあ千秋、オヤスミなさい。」
「はぃ。おやすみなさい。ハルカ姉さま。」
ハルカ姉さまに寝るように言われ、私は自分の部屋へ向かった。
そして扉を閉めて、しばらく藤岡にもらった水族館の招待状をながめていた。
私は、扉をちゃんと閉めた事を確認すると、ベッドに飛び込み転げ回った。
「……嬉しい…嬉しい!!藤岡が私にだけくれた!藤岡は3姉妹の中で私を選んでくれたんだ!
水族館なんて言った事無いけど…藤岡となら楽しいに決まってる!」
私はベッドの上で転げ回りながら、時よりチケットを見てはニヤケ…また転がったりしていた。
しかしいつタケルサンタが入ってくるか分からない…
いったん落ち着いて、チケットを手帳などを置いている鍵付きの引出しに直し、電気を消しベッドに戻った。
しかしまだ胸がドキドキして眠ることが出来ない…私はしばらく布団の中で眠れずにいた。
すると、ハルカ姉さまが部屋の様子を見にきた…タケルが来るみたいだ。
とりあえず私は寝たふりをする事にした。
『ガチャ……ゴソゴソ…』
扉を開けてプレゼントらしき袋を置いていく音がする…毎年のことながら、タケルにはサンタの才能がない。
もしこんなのがサンタだったら、子供は物音に気づき、凄い確率でサンタは見つかってしまうだろう。
そんな事を考えながら私はタケルが部屋を出るのを待っていた。
…しかし一向に出ていく気配がない……と言うかずっと横に立っている?
私は少し気味が悪くなり、寝返りをうつふりをしてパンチをおみまいしてやった。
『……ドスッ!!』
我ながらなかなか良いパンチが入った。
「わっ…イテテッ……!!」
その声を聞いて私は驚いた……タケルの声じゃない。
私が少しだけ目を開けて横を見てみると、そこにはタケルより小さい…うずくまるサンタがいた。
「びっくりした……千秋ちゃん…起きてないよね……」
「うっ…うーん……スヤスヤ……」
「ふぅ…良かった。」
私は、とっさに寝たふりをしたが、その声…身体的特徴はまさに藤岡だった。
…しかし100%決まったわけじゃない。もしかしたら本物のサンタかも知れない……
「…あれ?さっきので髭がずれちゃった…付け直すか……(ぺりぺり)」
藤岡だ。交じりっ気なし、100%藤岡だ。
なんだ?!今日はタケルが来れなくて代わりに来たのか??訳が分からない。
その後、藤岡は髭も付けずにこっちをじっと見ている…ってか近づいている……?
えーっと…近づいてると言うか……藤岡の顔が目の前まで……
「千秋ちゃん…メリークリスマス…。」
そう言うと藤岡は私のほっぺに軽くキスをした。
落ち着け…落ち着け私!!…そう自分に言い聞かせながら、私は平静を装った。
しばらくすると藤岡サンタは髭を付け、部屋から出て行った。
部屋の外からはカナと藤岡の声が聞こえる…
「南、千秋ちゃんグッスリ寝てるみたいだけど・・・起こさなきゃだめなの?」
「当たり前だろ!千秋の夢を取り戻すため、お前を呼んだんだ!」
「…でも気持ちよさそうに寝てるし……」
「いいからもう一回行って千秋に顔を見られてから出てくるんだ!」
……そう言う事か…。つまり私が藤岡サンタを本当のサンタと間違えればいいんだな…。
すると藤岡サンタがもう一度部屋に入ってきた。
今度は咳ばらいをしながら足音も大きめだ…仕方なく私は演技をした。
「んんっ…あれ?……プレゼントが…・ん?」
「あ、メ…メリークリスマス!」
そう言って藤岡サンタは部屋を出て行った。
私は藤岡が家から脱出できるように、10秒数えてから深呼吸し部屋を飛び出した。
「ハ…ハルカ姉さま!今私の部屋にタケルではないサンタが!!」
その後、カナにも馬鹿にされたが、とりあえず藤岡の面目は保たれただろう。
私はそう思いながら、その夜キスをされた方のほっぺを触りながら考えていた。
「あのキスは…どういう意味なんだろう……」
プレゼントの中身はクマの人形だった。
私はそのクマにふじおかと名付けた。
藤岡の日記
玄関の外でオレはサンタの衣装を身にまとい、千秋ちゃんが寝るのを待っていた。
しばらくすると、南が出てきてOKサインを出し、オレは千秋ちゃんの部屋の前に連れて来られた。
南とハルカさんは、怪しまれないために居間でテレビを見ながら待機しているらしい。
それにしても、少しだけ顔を見られて逃げるなんて…そんな器用なこと出来るだろうか…
ともあれ千秋ちゃんの夢を取り戻すためにやるしかない!
『ガチャッ!……ガサガサ!!』
オレは、ドアのあける音を大きくしたり、プレゼントを置くときに音を鳴らしたりしてみた。
…しかし起きる気配はまったく無い。
千秋ちゃんが起きないので、しばらくそばで立ってみる…机の上には遊園地での写真が飾られていた。
そう言えば観覧者に乗る前に写真撮られて、それを千秋ちゃんにねだられたんだっけ…
一枚1000円と言うぼったくり価格だったけど…こうしてもらえるなら買って良かった…と言うか嬉しいな。
そんな事を考えながら突っ立っていると、寝返りをうった千秋ちゃんの手が、偶然にもオレの足を直撃した。
「わっ…イテテッ……!!」
しまった…思わず声を出してしまった……。
慌てて千秋ちゃんが寝ているか様子を見ると、寝息を立てて眠っていた。
オレは付けていた髭がずれてしまったので、一度外して付け直すことにした。
…それにしても可愛い寝顔だ。天使のような寝顔とはよく言ったものだ。
気がつくとオレは千秋ちゃんの唇に吸い込まれる様に顔を近づけていた。
しかし、寝ている千秋ちゃんの唇を奪うなんて…それはしてはいけない……
ぎりぎりで理性を失わずに我慢したオレは、
千秋ちゃんの耳元で『メリークリスマス』と言って、ほっぺにキスをした。
あまりにも幸せそうに寝ているので、起こすのが可哀そうになり、オレは一度部屋を出た。
「南、千秋ちゃんグッスリ寝てるみたいだけど・・・起こさなきゃだめなの?」
「当たり前だろ!千秋の夢を取り戻すため、お前を呼んだんだ!」
「…でも気持ちよさそうに寝てるし……」
「いいからもう一回行って千秋に顔を見られてから出てくるんだ!」
南にそう言われ、オレは千秋ちゃんの部屋にもう一度入ることになった。
今度は咳ばらいをしながら足音も大きめにしてみた。
ハッキリ言って、こんなサンタじゃすぐに子供に見つかるだろう…
そんな事を考えていると、いきなり千秋ちゃんが動き出した。
「んんっ…あれ?……プレゼントが…・ん?」
突然のことに、オレは慌てて作戦を実行した。
「あっ…メ…メリークリスマス!」
そしてオレは部屋を出た。
外に出ると、南が「でかした!」と言ってオレを外に連れ出した。
とりあえず千秋ちゃんは夢を取り戻せるらしい…
オレは満足しながら家に帰った。
最終更新:2008年02月24日 21:57