私はまず、愛液にまみれた手を洗った。今になって自分がなんとも恥ずかしい行為をしていたことに気づいた。
藤岡、『私の』に気づいたかな…。『それ』に気づいて欲しい反面、恥ずかしさから気づかないでいて欲しいとも思った。
「藤岡…」
きゅん。私はやはり、期待しているのか?アレの日が近いわけでもないのに、こんなにも欲情している。
「おい。」
「えっ!?」
いきなり声をかけられて私は驚き振り返った。
「な、なんだ?」
「手を洗わせろ。いつまで洗っているつもりだバカやろう。」
「え?あ、ああすまなんだ。」
私は慌てて蛇口を捻る。
しゅばー
「ひゃっ」
「うわっ」
し、しまった!逆に回してしまった。激しく水が渋く。
「ばっ、バカやろう!早く止めろ!」
「ご、ごめん!」
私は蛇口を急いで閉めた。
「ほら、さっさとどけよ。」
私はどかされた。
「ったく…」
「あははー」
私は笑ってごかそうとしたが、チアキに睨まれた。
「うっ…」
私はそそくさと洗面所を後にした。
カナが洗面所を去った。何故手を洗っていたのだろう…。でもまあそんなこと私には関係ない。
私も手を洗おうと蛇口に手を伸ばしたが、思い出す。この手、指先が触れた『藤岡』を。
とくん。先ほどの興奮が蘇る。私はとても恥ずべき行為をしたのだ。顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかる。
しかし、その反面嬉しい。というよりは、カナより先の領域に踏み込めたという達成感があった。
必ずや、藤岡を我がものに!
私は皹にならぬようにしっかりと手を拭く。
もし藤岡とまた素手で手を繋いだとき、綺麗な方がいいからな。
居間に行くと、炬燵にはハルカ姉様しないなかった。
「ただいまです。」
「お帰り、チアキ。」
私はすかさず炬燵に入る。
「寒かったでしょう?すぐお風呂に入る?」
炬燵に入ったばかりですぐに出るのは気が引けるなあ…。
そう思った矢先、カナが居間にやってきた。
「先風呂入るけど、いいか。」
「…ああ。次入る。」
私の返事を聞くや否や、カナは浴室へ飛んでいった。
ちゃぽん。
私は肩まで湯に浸かる。あったけー。
「…はぁ」
私は今日を振り返ってみた。私は、一日中藤岡のことを考えていた。今までこんなことなかった。
藤岡が恋しくて恋しくて、どうしようもないくらい恋しくて仕方がない。
今の私は、少し触れられただけで悶えてしまいそうだ。もしこの四肢、躰が奴の思うがままにされた日には…。
ふと、胸を見る。最近成長がやたらと速い気がする。中学生の時と差は歴然だ。
といっても大きすぎるわけじゃあない。 我ながら掴みやすい大きさだ。藤岡は気に入ってくれるかなぁ…。
私の胸を見てなんと言うだろうか。触ってみてなんと言うだろうか。どう弄るだろうか。吸ったり、その、挟んだりするんだろうな。
嗚呼、カナ沈没。ブクブク。
暫くもしないうちに息が苦しくなったので沈没をやめた。チアキも早く入りたいだろうからそろそろ出てやろう。
床に就いても私の中の熱い感情は治まらない。しかし、何故かオナニーをする気にもならない。し過ぎたかな。
うーむ、藤岡と話したくて仕方がない。携帯電話を手にする。しかし、時間が時間だ。もう眠っているだろう。メールも然りだ。
暫く適当に携帯電話をいじっていてふと思いつく。
私はカメラを起動させ、フラッシュモードにする。そして、下半身に着ているものをすべて脱ぎ捨てた。
「よ、よし!」
何が良しなのか兎も角、体育座りをして性器に手を伸ばし、クリトリスを弄る。
「ふみゅっ…」
必死に声を抑える。しかし今回はオナニーが目的ではない。すぐに濡れてきたので指を離す。
乾かぬうちに、私は左手で『くぱぁ』した。そして右手には携帯。なんかいざとなると、背徳感が襲ってきたぞ。でも私はやめない。
なるべく奥まで見えるように開いて、後は撮るだけだ。決定ボタンを押すだけだ。
ぽちっ。かしゃっ。
私は、恐る恐る画面を見る。
「…あ、ぅぅ」
みなけりゃ良かった。一言で表すと、水浸し。それは想像以上に変態な性器で、グロテスクだった。
「まあ、いっか。」
私は、送信した。
ちゃぽん。
私は肩まで湯に浸かる。温かい。
「はぁ。」
私は今日を振り返ってみた。というより、先ほどの藤岡とのやり取りをだ。
我ながら大胆なことをしたものだ。この指先は、藤岡の性器に触れたのだ。考えただけで心が躍起し、感情を高ぶらせる。
私は、その指先を舐めてみた。なんてことはない、最早清潔な指先だ。だが、この指先は記憶している。藤岡を、藤岡の熱を!
私はその指先を、自分の秘部に触れさせた。ぴくりと反応した。
「ふぅ、じ…ぉかあ」
嗚呼、切ない。胸が熱く苦しくなる。愛おしい。藤岡が愛おしい。今まで、ここまで苦しくなることはなかったのに…
ただ単純に『好き』だっただけなのに、その感情はこんなにも激しい想いへと変貌を遂げた。
全ての元凶は奴だ。カナ!カナよ、お前さえいなければ、こんなことには!
「んふっ…んん」
湯のなかで必死に性器を弄る。決して気持ちよくはない。だが、そうせずにはこの欲望は抑えきれない。
分かっている。分かっているんだ。藤岡は、真の意味で振り向いてはくれない。積年の想いが漸く実ったのだ。
藤岡は、カナというとても熟れた、彼奴にとって甘美な果実を手に入れたのだ。
私は選ばれなかったのだ。
マイナス思考回路が働く中、私は果てた。
床に就いても私の中の熱い感情は治まらない。しかし、当然ながら自慰をする気にはならない。じゃないとバカになる。
カナよりバカになったらおしまいだ。それだけは勘弁。
眠りに就こうと目を閉じても藤岡が現れて私に微笑みかける。
『チアキちゃん。』
私の耳元で甘く囁かれただけで、私は、もう!
『大好きだ。チアキちゃん。』
そう言うと私を優しく抱きしめてきた。私は答えるように藤岡に身を委ねる。
『ふじおかぁ…』
強く抱きしめる。嗚呼、藤岡の躰、温かくて柔らかい…え?
「ふぁ?」
気づくと、私は布団にしがみついていた。
「え、えぇ?」
私は困惑する。確かに藤岡が居て、でもここは家で…
ああそうか。たまにあるよな、夢と現とが混ざり合った感じの感覚。つまり幻。残念…。
なんか、どっと疲れたな。これならすんなり眠れそうだ。
「ふじおか、おやすみ。」
私はふじおかの頭を撫でて、それから眠りに就いた。
最終更新:2008年03月06日 19:46