千秋の日記

しばらく藤岡とテレビを見ていたが、このソファーと言うのはしっくりこないな…
家にはソファーなんて置いてないから、座りなれないと言うかなんと言うか…
私はそう思い、いつものように床に座っている藤岡の膝元へ向かった。

ふぅー……うん、やっぱりココが一番落ち着く。
私は藤岡に寄りかかり、紅茶を飲みながらテレビの続きを見ていた。
さすがは元旦と言った所か、深夜にも関わらずテレビはどこの局も賑やかだ。
藤岡と私は漫才を見ていたのだが、私はこの漫才と言うもので笑った事がない。
…と言うか、最後にお腹を抱えて笑ったのっていつだろう?そんなどうでもいい事が急に頭をよぎった。

「なぁー、藤岡。 お前私が声を出して笑ってるところ見たことあるか?」
「どうしたの急に?…うーん……そう言えば見た事無いかな…?」
「そうか…私も自分が声を出して笑った記憶が無いんだが、もしかして私は笑った事がないのか?」
「それは分からないけど……じゃあオレが千秋ちゃんを、苦しくなるくらい笑わしてあげるよ!」

そう言うと藤岡は、後ろから私の脇腹に手を回しくすぐり始めた。

「おい藤岡、そんな事したらくすぐったいだろ?」
「こちょこちょー……って、あれ?そう言う時に笑う物なんじゃないのかな?」
「そうなのか?…すまん、じゃあくすぐったく無いのかもしれないな。」
「…うーん……じゃあこれでどうだ!」

藤岡はそう言うと、今度は脇腹だけではなく体全体をくすぐり始めた。
さすがの私も、これは少しくすぐったい…藤岡は更に激しくくすぐり続けた。

「ふ…藤岡、これはさすがに少しくすぐったいぞ。」
「でしょ?じゃあ笑って笑って!」
「えっと…んー……笑うとは少し違うような…んっ……」
「? じゃあどこが一番くすぐったいの?」
「…うーん……耳と、太ももと…後は胸とか……んぁ…っ……後、そこ…そこももくすぐったい…。」
「えっ?!…あっ、ご…ごめん!えっと…そんなつもりじゃ…」

藤岡はそう言うと、何故かくすぐるのをやめてしまった。
藤岡は私を笑わすと言っていたが、私からすれば気持ち良かったくらいだ。
おそらく温泉などでマッサージされて、気持ちいいって言うのはこう言う気分なんだろうな。

「藤岡、お前マッサージの才能があるんじゃないのか?」
「???」
「そう言えば…私も藤岡が笑ってる所をあまり見た事が無いな……ニヤッ…」
「えっ?ちょっと…千秋ちゃん……?」
「藤岡、観念しろ!!」

私はそう言って、後ろから藤岡をくすぐろうと立ち上がった。
しかし、走った時にさらに痛めたのか、思っていた以上に足に力が入らず、私は藤岡をそのまま押し倒してしまった。
藤岡の顔が近い…そう言えば数時間前に藤岡のこの唇にカナの唇が……



「…あの……千秋ちゃん?」
「藤岡、少し動くな!」
「え?…どうし……んん…っ……」
「…んっ……」
「ぷはっ…ど、どうしたの急に?!」
「……消毒だよ。」
「え?消……んん…っ……!」

そう、これは消毒…藤岡の唇から、カナの唇の感触を忘れるまで……
藤岡の唇は、私の唇の感触だけを覚えていればいいんだ。
私はそう思いながら数分間に渡り、藤岡の唇に私の感触を刻み込む様にキスを繰り返した。

「…んー…っ!…ぷはぁ!…ハァ…ハァ……よし、これくらいで大丈夫だろ。」
「……ハァ…こ、これくらいで大丈夫って…?」
「藤岡は何も気にしなくていいんだ。私としたキスの事だけ考えてろ。」
「えっと…そりゃ、まぁ…今はそれしか考えられないけど…。」
「ならそれでいいんだ。」
「?」

私はそう言って、再び藤岡とテレビを見始めた。
相変わらず漫才は笑えない……と言うより、さっきの消毒の事で頭がいっぱいだ。
私とした事が少しやりすぎたかな……あれじゃあ酔っぱらったカナと一緒じゃないか。

しかし本当の所は、やりすぎどころか全然足りない。…私の体はまだ藤岡を求めているんだ。
テレビがCMになると私は藤岡の方を振り向き、物足りなさを目で訴えてみた。

「……じぃー…」
「……?」
「…じぃーー……」
「…ど、どうしたの?」
「……」

だめだ、藤岡の奴…鈍感なんじゃないのか?こんなに目を見て訴えているのに気付かないなんて!
その時の私は、よほどキスがしたかったのか目をつむり、あごを少し上にあげてキスを待ってみた。

「えっと…これはキス…してもいいって事なのかな?」
「……」

私は無言で少し顔を縦に振った。
藤岡の唇が軽く私に触れる…たった今あんなに激しくキスをした所なのに、それよりももっと何かを感じる…
もしかしたらキスはするよりも、される方が気持ちいいのかもしれない……
私は無意識に力が入っていたのか藤岡の服を強く握り、キスが終わった頃には藤岡の服はシワがついていた。

その後も、私はCMごとに藤岡の方を振り向きキスを求めた。
もう漫才なんて3分漫才、5分CMでもいいくらいだ。
藤岡も3回目くらいからは、私が振り向くと笑顔ですぐにキスをしてくれる様になっていた。
…しかし私には、もう一つ消毒をしなければならない場所があった。
それは藤岡の口内だ…あの中にはカナの舌や唾液が……
私は何か良い方法がないか考えながらも、とりあえず藤岡と今日7度目のキスを楽しんでいた。



千秋の日記

ところで、1つ気になっている事があるんだが…舌を入れたりするキスはなんて言うんだ?
藤岡にキスをしてくれと言ったところで、唇が触れるだけのものだろうし…それとも何か他に名称があるのか?
…そう言えば学校でバカな男が何か言った時に、一部の女がエッチとかなんだかキャーキャー騒いでたな…
もしかしてあの時言っていた言葉が……う~ん…思いだせ…あの時なんて言っていたんだ…?
…えっと…確か………あっ!そうだ、思いだしたぞ!

「おい、藤……んんー…っ!…バ、バカ野郎!何でいきなりキスするんだ!」
「えぇ?!…いきなりって、さっきまで振り向いた時はずっとしてたのに?」
「…そう言えばそうか。いや、それよりも藤岡にお願いしたい事があるんだ。」
「何?」
「……その、恥ずかしいんだけど…せ、セックスがしたいんだ!」
「……ぇ?」
「だから…恥ずかしいから何回も言わすなよ!……わ、私と…セックスしてくれ!」
「セックス…それってあのSEX…?」
「…多分。」

さすがに女から、舌を入れるキスを要求するのはおかしかったのか…?
藤岡は魂が抜けたように宙を眺めている。
でも私だって、ここまで言って後戻り出来る訳がない…何としても藤岡の口に私の舌を……

「藤岡…私とセックスするのがそんなに嫌なのか…?」
「え…嫌と言うか…まだオレ達子供だし……」
「じゃあいつになったら良いんだ?」
「良く分からないけど…せめて高校生……できれば卒業してからかな…?」
「なっ!…そんなの待てるわけ無いだろ!…それに藤岡だって中学生なのにカナとセックスしてたじゃないか…」
「えぇぇ?!そんなのしてないよ!」

藤岡が何を言っているのか分らない…私は目の前でカナの舌が藤岡の口に入るのを見たんだ。
カナが酔っていたとは言え、私の目の前でセックスしておいてそのいい訳は通じないだろ…
…しかしそんな事は今はどうでもいい、とにかく藤岡を説得しなくては……

「私は…藤岡とキスしてるだけじゃ物足りなくて…どうしてもセックスがしたくなったんだ…」
「……えっと、ひとつ聞くけど…千秋ちゃんは…その、セックスの意味分かってるのかな?」
「それは…入れたり入れられたりするんだろ…?」
「それは…まぁ、そうだけど……でもやっぱり子供どうしでそれは…」
「だから大丈夫だ!私は少なくとも、カナのバカ野郎よりは中身は確実に大人だ!」
「…でもこう言うのは中身よりも、体が大人にならないと……」

なんだ藤岡の奴…キスは結構あっさり受け入れたのに、セックスはかたくなに拒否か…
そもそも舌を入れるだけなのに、体が大人にならないとってどう言う事だ…?
そんなに差があるのか…?それとも、私では経験不足とでも言うのか…?
…しかしさすがにこれ以上粘っても無理そうだ。私はとりあえず今日はあきらめることにした。

「…わかった。とりあえず今日はあきらめるよ。」
「えっと…ごめんね……。」
「いや、私こそ急に言って悪かったな。藤岡が認めてくれる様に頑張って大人になってくるよ。」
「がんばる?」



…そうだ、経験が足りないと言うなら練習をすればいいだけなんだ。
トウマなら女だし、セックスとかしても浮気にはならないだろう…

「明日からしばらく、トウマとセックスの練習をしてみるよ。」
「…えぇぇ?!そ、そんなのダメよ!」
「仕方ないだろ。てっとり早く大人になるには経験を積むしかなんだ。」
「だからってそんな…トウマとセックスなんて……絶対にダメだよ!」
「…藤岡、なんでそんなに怒るんだ?……トウマはおん……あっ…」

そうか…そう言えば藤岡はトウマを男と思っているんだった。
って事は私は今、他の男と舌を入れるくらいのキスをすると藤岡に言った事になるのか…
それは練習でも怒って当然だな…

「藤岡、今のは無しだ。トウマとのセックスは無し!」
「そう…それならいいけど…。」
「うん、内田や吉野とセックスの練習するよ。」
「……えっと…それも出来ればやめた方が…。」
「藤岡?お前なんでそこで赤くなるんだよ?じゃあ誰とならいいんだ?」
「それは……やっぱりオレ以外の人は嫌…かな。」
「それは私だって藤岡意外とするのは気が乗らないけど…藤岡は私が大人にならないとダメなんだろ?」
「…………」

…んっ?藤岡が何か真剣に考え出している…もしかして気持ちが揺らいでいるのか?
よし、あと一押しだけしてみる価値はあるかもしれないな…

「藤岡、お前だって外でセックスするのは恥ずかしいだろ?」
「そ、そりゃそうだよ!」
「…って事は、必然的に家で二人きりの時しか出来ない訳だ。」
「…まぁ。」
「じゃあ次はいつ家で二人きりになれるんだ?」
「それは…」
「藤岡…私はセックスなんて初めてで恥ずかしいんだ。…でも初めての相手は内田とかじゃなくて藤岡が良いんだ!」
「…千秋ちゃん……本当にいいの?」
「あぁ!」

私がそう言うと、藤岡は真剣な顔で何かを決意した様だ…。
すると何故かリビングのテレビを消し、藤岡は私を自分の部屋のベッドへ運んだ。
なぜリビングでしなかったのか…少し疑問はあったが、私は藤岡とセックス出来るならどこでも良かった。
一刻も早くカナの毒牙に侵された、藤岡の口内や舌を消毒しなくては……その事で私の頭はいっぱいだった。


最終更新:2008年03月06日 20:13