いつの間にか、ハルカの部屋に静寂が漂っていた。
藤岡は快感を味わうことに、ハルカは奉仕することに夢中になっていたためである。
聞こえるのは、両者が興奮のあまりに出す荒い声や息遣いとハルカによる手淫の音だけである。
最初はぎこちなかったハルカの手も徐々に早くなっていき、リズミカルなものになっていく。
「ハルカさん! オレ、もう…!」
限界が近くなった藤岡が声を抑えきれずにそう口にした。
それを聞いたハルカの手はより早いものになっていく。そして、
「うぁ!!」
ハルカの顔めがけて、思いっきり精液を放ち、ハルカの顔を白くしていく。
特に口元に集中し、口の中にも少し入ってしまっていた。
(……変な味…。)
呆けながらも、精液の味を確認するハルカ。
溜まっていたものを出して落ち着きを取り戻した藤岡は慌ててしまう。
「すみません! オレ、我慢できなくて…!」
「(ごくっ) …うぅん、いいのよ。元々私のせいなんだし…。」
そこでお互いの顔が合い、2人ともこれまでのことを思い出した。
冷静に考えると自分達はとんでもないことをしたと改めて自覚し、恥ずかしくなり、
2人して顔をそむけ、顔を赤くし黙り込んでしまった。

「わ、私、ちょっとシャワー浴びてくるね!」
沈黙を破ったのはハルカの方だった。実際自分に付いた精液を洗い落とす必要もあるが、
この妙な雰囲気から逃れたいがための発言だった。
「え、あ、はい。わかりました。それと…、さっきは本当にすみませんでした。」
「い、いいのよ、もう。あ、あと、まだ朝早いし、寝てていいからね!」
ハルカはそう言いながら出て行ったが、とてもそんな気分にはなれなかった。
(オレには、南がいるのに。何やってんだよ、オレは…。)
冷静になってから、自責の念がこみ上げてくる。
結局その場の雰囲気に流され、カナ以外の女に性欲処理をさせた自分が許せなかった。
自分の想いはその程度のものだったというのか。

『…お父さん。』

不意にそう口にし、微笑んでいるハルカの寝顔が頭に浮かんだ。
それが頭に浮かぶなどとは、自分は何を思っているのか、何がなんだかわからなくなった。



「…何であんなことしちゃったんだろう。」
シャワーを浴びながら、自分の行動の理由を考える。
そういうことに奥手な自分があんなことをしていたなんて、未だに信じられない。
父親に雰囲気が似ているというだけで、するものでもないだろうに。
(あの時、私が魔をさしたのがいけなかったのかな?)
実を言うと、ハルカは寝ぼけて普段どおりに自分の部屋に入ったわけではない。
藤岡が寝ていることを承知で、ベッドの中にまで潜り込んだのだ。
とは言っても、別に何も藤岡が泊まることが決まった時から計画していたわけではない。
夜中に1回起きたのも偶然である。確かにトイレで用を済ませた後、うっかり自分の部屋へ戻りかけた。
しかし、途中で藤岡に自分の部屋を貸していることを思い出したのだが、
そこで、藤岡が自分の部屋で寝ていることを、父親の寝巻きを着ている藤岡を意識してしまったのだ。
一度そんなことを考えると、頭より先に体が動いていた。
(最初はちょっとだけ、甘えるつもりだったのに。)
以前から、自分もチアキみたいに甘えたいと思うことが少しはあった。いつも妹達の面倒を見ているのだ。
たまには自分も甘えたいと考えてしまうことがあっても、無理はないはずだ。
だから、その時はチャンスだと思ってしまい、行動に移してしまった。
起きている時にはできないけど、寝ている時ならばと。
本当なら、少し布団の中に入って余韻に浸るだけのつもりだったのだが、
藤岡の温もりが想像以上に心地よくなってしまい、そのまますぐに眠ってしまったのだった。
そのため、ハルカはその時藤岡が起きていたことに気づいていない。
もっとも、藤岡は一睡もしていないのだが。

(早くあがって、朝ご飯の準備しなくちゃ。)
シャワーを止め、他のことをしようと考えた。気を紛らわせたかったからだ。
自分のしでかしたことの理由を考えても、答えは出てきそうにない。
とにかく意識しないようにすれば良いのだ。それなのに、
(さっきは藤岡君の…、あれをこの手で触っていたのよね。)
ちょっとしたことでも、すぐに先程のことを連想してしまう。
藤岡の肉棒を扱いていた方の手を見てしまい、興奮が蘇ってくる。
(あれが…、ここに入るのよね?)
その手で自分の股間に少し触れる。すると、体が少しすくんだ。
しかし、その手をそこから離すことはしない。今度は割れ目の部分を軽く撫でる。
「……ふっ、…くぅ!」
その程度の刺激なのに声が思わず漏れる。これ以上刺激を強くしたら、声もそれだけ大きくなりかねない。
だが、ハルカの指は更に快感を高めようとする。割れ目の奥へと潜り込もうとしていた。
(ダメ!)
しかし、恐怖が残っているのか、深くには入れられなかった。浅い部分への刺激で留めておくことにした。
指が深く入らないように指の腹で割れ目を擦る。
次第に割れ目から粘りがあるものが出てきて、快感も大きくなるのだが、何か物足りない。
恐怖はあるものの、いつしか快楽を求めるようになったハルカは反対の手をクリトリスへと伸ばす。



「ん!!」
思わず大声が出そうになる程、強い快感が襲ってきた。先程よりもずっと気持ちいい。
その刺激がきっかけとなり、ハルカの指の動きはより一層激しいものとなる。
それにつられるように息遣いも激しくなる一方で、
股間も既にかなりヌルヌルとしていて、快感を大きくさせるのを手伝う。
両手による女性器への刺激はどんどん激しさを増していき、ついに、
「―――!!」
ハルカは絶頂に達することができた。その際、唇を思い切り閉ざし、できるだけ声を出さないようにした。
こんな所を誰かに聞かれて駆け付けられたら、たまったものではない。
「………。」
何故朝ご飯の仕度をするはずが、こんなことをしているのか。
事が終わって、また考え出してしまう。しかし、今度こそ考えることをやめ、
早々にシャワーを浴びなおし、あがることにした。

とにかく何も考え込まないようにしたためか、あがってからの行動は速かった。
急いでバスタオルで体を拭き、服を着て、すぐに朝ご飯の仕度にかかった。

トンッ トンッ トンッ トンッ

仕度している最中に妹達も起き、食卓につく。後、来ていないのは藤岡だけだ。

 ガタッ!

「ど、どうしたハルカ!?」
「な、なんでもない!」
突然包丁のリズムが乱れたことに驚いた妹達に、
藤岡のことを頭に浮かべたら動揺してしまった、なんて言えるはずがない。
とにかく仕度に専念し、気持ちを紛らわせようとするも、
「おう、おはよう藤岡。」

ゴスッ!

「ハ、ハルカ姉さま!?」
「おい、藤岡! 何かハルカの様子がおかしいんだ! お前、何か心当たりないか?」
「い!? いや、知らないよ!」
まさか早朝の出来事を言うわけにもいかず、心当たりはあっても、しらばっくれるしかなかった。
何はともあれ、今の状態のハルカに朝ご飯を作らせるわけにもいかないので、
止むを得ず、その日の朝食はカップラーメンとなった。


最終更新:2008年03月12日 14:52