「え……私を? 藤岡が?」
「うん……」
「ちょ、ちょっと待って、まだ心の準備が、あ……」
本気になった男子の力に女子が叶うべくもない。反論の隙を与えられる暇もなく、カナは藤岡に押し倒された。
そして即座に藤岡の手が、己の浴衣にかけられる感触を感じる。
「え! もしかして脱がすのか!?」
「もしかしなくても、脱がすよ。じゃないと南を気持ちよくさせられない」
いくら全裸を見られていたと言えども、偶発的な事故で肌を露にしてしまったのと、
異性に故意に脱がされて肌を露にしてしまうのでは、感情の振れ幅も大きく違う。カナのアタマが一気に沸騰する。
「それはいくらなんでも恥ずかしい!!」
「俺のを咥えていた時は恥ずかしくなかったの?」
「え……それは……」
「南……初めての割には結構積極的に咥えていたように見えたけど。エッチな音一杯たててさ」
「!!」
藤岡はそう言ってにやりと笑った。勿論、カナの浴衣をはだけさせる手は止めずに。
「藤岡……お前、こういう状況だと性格変わるんだな……。
それよりさっきの話……お前の言うとおり、そんなに恥ずかしくなかったのかもしれない。
そんなこと考えるより、何ていうかいっぱいいっぱいだったよ……。
少しでも藤岡が気持ちよくなればいいなー、なんて……」
消え入りそうな声でそう囁くカナ。
「南って、もしかして痴女だったのかな?」
「な! ち、違うッ!!」
「嘘だよ。それを聞いて俺、正直嬉しくてしょうがない。南を好きになってよかったよ」
カナはまた一気に顔面の温度が上がったような錯覚に襲われた。
そして藤岡はすかさず、露になったカナの柔肌、お腹の辺りに口付けた。
「ヘンなところを……舐めるんじゃ……ぁ……」
「ここならもし跡になっちゃってもそんなに目立たないでしょ?」
そんな軽口を叩きながらも、藤岡はしっかりと柔らかい肌の感触を味わった。
口を離すと、案の定赤いキスマークが、カナのへその横あたりに残ってしまっている。
「うう……お前……なんてことを……」
「次はこっちかな……」
ぶーたれるカナを尻目に、藤岡は今度は控えめに膨らむの双丘に目をつけ、
手際よくブラをずらしあげると、ピンク色に輝いて見える乳首に唇を寄せた。
「ぁ……だ、ダメっ……」
小さくあえぐカナを見て、効果覿面と悟った藤岡は、余ったもう片方の胸を手で愛撫し、攻め立てた。
「南って、結構着やせするタイプ?」
「ん……そ、そんなことないと……おもっ、ぁ……」
「そうかな。結構大きい方だと思うけど」
(かく言う自分も、比較対象なんてないんだけどね)
藤岡は興奮に霞がかる頭の中でそんなことを考えながら、舌と手を動かし続けた。
「あっ……やぁ、あぁっ……!」
やがて何とかせき止めていたカナのあえぎ声が、一段と大きくなる。
自分が普段は全く出さないような『女』としての声をあげていることに驚いたのか、
カナは必死に右手で自分の口を塞いでいた。
「? なんで塞いじゃうの? 可愛い声、もっと聴きたかったのに」
真っ赤になって目を瞑り、口を塞いだままふるふると首を振るだけのカナ。
こうなったら何としても我慢できないまでに快感の喘ぎ声を引き出してやろうと、藤岡は思った。
同時に、やはり自分にはS寄りの性癖があるなと感じて自嘲気味に笑ってみせる。
そしてするすると藤岡の手は、カナの身体の下のほうへ伸びた。
既にパンティまで露になっている下半身。藤岡の手はその太股の辺りを執拗になで上げ続けながら、
徐々に中心点であるソコに目掛けて這うように進んでいく。
太股を撫で上げるたびにビクッと震え上がり、より強く口を抑えんとするカナの姿がどうにも可愛らしい。
「……!!」
下着の上からではあったが、その周辺を触らんとすると、これまで以上にカナの身体が跳ね上がる。
が、それをきっかけにか、カナは脚をぎゅっと閉じてしまい、藤岡の手の侵入を拒み始めた。
「困ったな、このままじゃ南を気持ちよくさせてあげられないよ?」
藤岡が何を言ってもカナは目を瞑って首を振るのみだ。
まあその仕種など小動物っぽくて、藤岡にとってはやはり破壊的な可愛らしさではあるのだが。
仕方なく藤岡は中心の周辺を撫で上げるように、ひたすら愛撫し続けた。
すると徐々に脚のガードが甘くなる。藤岡はすかさずソコに手を滑り込ませた。
「うわ……凄い――」
下着の上からでも手に滑り気が染み付くぐらいの、カナの具合のよさに思わず藤岡は声をあげた。
「――もうこんなに濡れてる。これは……あとでもう一回お風呂に入らなくちゃね」
そう言って意地悪く微笑んで見せると、カナがやっとのことで口を開いた。
「う、五月蝿い……藤岡……お前、あとで覚えて……あふっ!」
しかし藤岡が下着の上から指を動かして刺激して見せると、カナの口はまた塞がれた。
が、今度という今度はその喘ぎ声を全て押し殺すのが難しいほど、カナの身体にはこれまでに経験したことのないような、
得体の知れない感じが襲い掛かっていた。これが所謂快感というものだとは、カナはまだ気付かないようではあったが。
そしてついに下着の中へと手が差し込まれ、その指が僅かに動いた時、
「――!!」
とうとうカナは手でも抑え切れないほどの喘ぎ声を上げてしまった。
「ふじおか……」
カナは力の抜けた身体を何とか動かし、藤岡の腕を掴んだ。
上気した顔、そして何かイケナイ薬をキメてしまったかのようにとろんと溶けた瞳で見つめられ、藤岡は思わず手を止めた。
「……どうしたの? もしかして……ちょっとやり過ぎた?」
「そうじゃない……。でも、私もうダメそうだ……」
「ダメ?」
「もう……声が抑えられそうにないよ」
「俺は別に構わないよ。南の声、可愛いし」
「バカ……お前が良くても私が良くないよ……。
こんな大きな声出ちゃったら……その内誰かに気付かれちゃう」
確かに。ここは浴場前の廊下、声もよく通る。人気がないとはいえ、いつ誰が通りかかるともわからない。
じゃあこの状況を、猛りきった己のアソコを、ビショビショに濡れたカナの身体を、どうすればいい?
藤岡は考えるものの、興奮しているせいか、上手く頭が回らない。
すると、
「続きは……お風呂でしよう?」
カナは驚くようなことをのたまった。
「え? ふ、風呂で? って言ってもどっちで……」
するとカナはおもむろに女湯の暖簾を指差した。
「お、女湯~!!??」
もはやこういう状況になってしまったとはいえ、藤岡にとっては女湯は鬼門。トラウマの元だ。
「だいじょうぶ……今日この旅館に、私達以外の女性客はいないらしいから……」
本当か? と疑いつつも、カナの淫靡にそまったようなとろーりと溶けた瞳を見ると藤岡は何も逆らえないのだった。
最終更新:2008年03月12日 16:23