ニギメダナ序章
チェグの北方、上等学校があるというだけで、他には何一つとるところの無い、
つまらぬ漁村である。私は船着き場の小屋で雨やみを待っていた。
ここはナムシン王国ハムグァン県ユナンゲオ郡。
私はそこにあるグブンゲオ上等学校の四年生である。
真学校受験は終わったばかりである。
合否はまだ確かではないが、長い受験勉強生活は終わったのだ。
つまり皆、今の時期はハジけているというわけだ。
私は長い間行っていなかった同好会へ顔を見せてみた。
私が所属しているのは“海苔倶楽部”という奇妙な名の同好会である。
一体どのような輩が集まっているのかと怪しむ人がいるかもしれないが、
“海苔倶楽部”は名前の通り、ただの海苔好きの人間が集まった同好会なのだ。
活動内容は「海苔を喰う」だけでなく「海苔を養殖する」ことを主眼としている。
そして私はその“海苔倶楽部”の養殖場へ船で行こうとしたのだが、
船着き場に着いて運悪くそこへ雨が降ってきたのだ。
私は、四ヶ月前に摘み取りが終わった養殖場を見た。
遠くであるが、海苔網の支柱が数本立っているのが判る。
三年前の私は、あそこでキンジョン海苔を育てようとキンジョン郡まで行ったのだ。
そこまでの道のりは長かった。いろいろなことがあった。
私はその道のりでの出来事について思い返してみる。
◆
そう。あれは私が15歳、いや14歳・・・どっちだったかな。
葉月だから・・・まだ14歳だ。私は早生まれで、睦月が誕生日なのだ。
ではこれから当時のことを語ろうと思う。
じっくりとお聞きいただきたい。途中退席は認めない。
最終更新:2011年04月08日 17:51