SINGULAR BLADES 科学技術

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科学技術関連


※設定は随時作成・更新中のため、項目ごとに矛盾があったりします。

【リパルジョン・インターフィアラー】

 重力工学が生み出した斥力発生機関。一般には重力及び慣性力の制御機関として知られる。
 IDeAほか人工重力を用いた技術(リパルサー・テクノロジー)の根幹であり、RI弾頭などの
「RI」はこれの略である。同時代の「三種の神器」に数えられる機械装置のひとつ。
 一基のRIは凡そ小型のシリンダー型をしており、装置の規模と出力に応じて一定の範囲内で
任意の重力ベクトルを生み出す。これはアインシュタインの等価原理(重力と慣性力は区別できない)
により、「空間を任意の方向に曲げる」ことと同義である。

 メカニズムについては製造元であるティルトクラフト社の秘伝として一般公開されていない。
特許権を無視してリバースエンジニアリングで機構を一部再現したニコラス・ノースクリフによると、
負質量物質を強力な磁場と核力で束帯し高密度に圧縮、対となる正質量物質の高密度球とペアにして
シリンダー内部にて距離を調整しながら回転させることで重力波を発生させ、空間を歪めるシステム。
パルス状の重力波を連続的に放射することで空間の復元作用を押し留めて重力勾配を維持できる、
という理屈だがニコラス曰く「全容は理解できていない」とのこと。また彼は
「“大喪失”前の技術が使用されているのではないか」とも推測している。在野の優秀な技術者たちが
法を侵してなお、鹵獲品のコピーを手探りで改良するのが精一杯であり、技術の更新は遅い。
(企業や研究機関がテクノロジーを秘伝として抱え込んでいるため、どの分野でも技術発展は停滞している)

 製造には二種類の合成不能資源が必要なため、コストは高い。片方は負質量物質で、これは
ケノンリアクターと専用生産設備があれば生成可能だが、もう一方が厄介。負質量物質を縮退させ、
核力による結合を強いるための電磁石には桁外れの磁力が求められる。反発力によってバラバラに
なろうとする無数の粒子を一点に押し込むだけの磁力を発生させるとなると、合成可能物質のみで
作れるコイルでは絶縁破壊を起こして自壊してしまう。この用途に耐える導線の構造は現在宇宙に
ただ一種しか確認されておらず、超新星残骸や古い惑星でわずかに発見される希少元素
「レーンシウム」が必要となる。これの採掘が、こんにちの銀河における肉体労働者たちの主な
仕事である。合成の目処が立たないいま、レーンシウムの鉱床を保有する業者は莫大な利益を得ている。

[検討中のネタ]
 相反質量体のペアを利用するのではなく、レーンシウムの機能をもう少し拡張して
 そっちの特性として引力/斥力の発生を説明する?
 レーンシウムは常温超電導特性を持つが、エネルギーの投入方法と高次構造部の形状によって
 通電時に磁界ではなく重力場を発生させるとか。負質量物質を使う点を残すなら、
 レーンシウムと負質量原子を合わせて安定させた“虚数合金”みたいなものを設定し、
 重力制御はこの合金の能力ということにするか? 色々オカルト特性持たせられる。
 だいたいメタトロン(ZOE)のイメージ。
→最初に超物質としてのレーンシウムが発見され、別ラインで真空炉が発明され、
 無限のエネルギーを最大効率の電磁石にぶち込めるぜ、とかやっていたら
 高次元方向へのエネルギー流出および型変換(電力→重力)が発見され、重力工学へ発展?


【縮天航法<リプレイサー・ドライブ>】

 正式名称は空間歪曲駆動。いわゆるワープ航法。
 リパルサー・テクノロジーの応用形の一つであり、艦船やシングラル(人型全領域戦闘機)が実装している。
これによる転移は略して“リップする”などと言われることもあり、縮天航法を搭載した船は
俗に転移船<リッパー>と呼ばれる。空間を「切り裂いて」いるわけではないため
誤解を招く呼び名だが、略称とは正確性より呼びやすさを基準に広まるものであった。

 原理としては、局所的な重力場で空間構造を極端に捻じ曲げ、遠く離れた二つの位置座標を
「重ね合わせる」ことで見かけ上の距離をゼロにし、瞬時に二点間を移動するもの。リプレイサーの
名の通り、正確には「同体積の二つの空間を入れ換える」ものであり、転移先に物体があった場合は
転移主体と入れ替わりに消失、転移元の座標に出現することとなる。この効果を転用した兵器も存在する。
 長距離転移ならば一度で大容量コンデンサを空にするほどの莫大なエネルギー消費ゆえ
連続使用が困難であり、また非常に強い重力波を起こすため、遠方からでも察知され易い。
飛程と呼ばれる基本転位距離も、シングラルで数十光年、艦船で1000~8000光年と、
銀河系(直径十万光年)の広大さに比すればまだ短い。
 それでも超光速通信が禁じられている恒星間文明においては、縮天航法搭載の連絡船が
最速の情報伝達手段となっている。連絡船が積み荷とするその情報を狙う宇宙海賊や、
彼らの戦果を捌く非合法の情報屋など、闇の情報ビジネスもまた存在する。

 消費するエネルギーはおおよそ転移距離に比例して増大するが、至近距離の転移も簡単ではない。
これは高次元空間が複雑かつ繊細な構造をしており、通常空間からの重力的影響を大きく受けるため。
 縮天航法を行う際、転移半径の中に強い空間歪曲があると、高次空間に形成される転移ルート
“エシュアの歪廊”に構造変動が起こり、まったく予想外の座標にリップしてしまう。
 たとえば高密度物質を用いて重力を制御する斥力干渉器<リパルジョン・インターフィアラー>などは、
近傍空間に一基あるだけでも転移精度に重大な影響を与える。また、惑星や恒星の摂動が
常に異なるベクトルの重力的影響を及ぼしてくる星系内空間も、転移には適さない。そのため
縮天航法を行うときは、できる限り障害物の少ない星系外縁空間をリップイン/アウトの座標に
指定するのが常識である。
(余談ながら、恒星間航行の移動時間の大半は恒星系に出入りするための通常航行が占める。
 恒星の質量や宇宙港の巡る軌道にもよるが、系内港と転移可能領域との移動にかかる時間は
 斥力推進船なら銀河標準時にして平均一週間ほどであるとされる)

 転移主体と重力源が相対静止状態であれば、転移座標の補正計算は可能となる。しかし彼我の
運動ベクトルが不規則に変化するような状況では、通常の座標計算システムでは補正が追い付かない。
ゆえに戦闘中の短距離リップなどはどこへ飛ばされるかわからず、緊急脱出の用途でしか使い道がなかった。
 近年では、周囲に運動重力源があっても動的に補正計算を行うことができる“マイクロドライブ”の
システムが一部勢力で実用化され、戦闘中の近距離転移は戦術に組み込まれつつある。ただし
転移直後の一瞬で自機の体勢や周囲の相対座標、運動ベクトル等あらゆる空間的情報を
再把握しなければならない関係上、実戦での活用には熟練を要するのが現状である。
(座標設定の自由度を犠牲にして、より自動化を進めた簡易マイクロドライブも運用試験中)

 前述の通り高次元の時空連続体は複雑に歪曲しており、三次元空間内での直線距離が必ずしも
転移時の最短距離となるわけではない。空間構造を測量し、最適な転移航路をマッピングする試みが
数百年にわたり有志の手で続けられている。航路データベースはパブリックドメインであり、
官民問わず広く用いられる。宇宙海賊の類もこのデータに従って人気の転移ポイントを狙う。

 一部の宙域はどうやっても空間を上手く変形させることができず、転移による進入・通過が
不可能なことから「次元暗礁」と呼ばれる。次元暗礁内部は光速の壁で外部と隔絶されているため、
連邦の管理が及ばず治安は悪化しがち。逆にこれを反連邦勢力が拠点として利用していることもある。
またブラーフマナ自治星区など、銀河連邦に対して一定の政治的独立性を有する共同体は広域の
次元暗礁内にあることが多い。連邦のデータベースに登録されていない未知の有人惑星も存在する。

 ドライブ非搭載の一般船舶などのために、銀河系各星域を結ぶリプレイサー・ゲートの
転移ネットワークを作ろうという計画が民間で立ち上がったが、海賊やテロリストの妨害に遭い
安全性が確保できないという理由で凍結に追い込まれている。裏で糸を引いていたのは
流通を支配したい連邦政府や大企業であるとの噂も。

[補遺]
  • 宇宙港には星系ネットの深部、公的機関のエリアに通じるアクセスターミナルがあり、来航者の航路データベースと相互に情報を交換、アップデートする。アップロードを拒否することもできるが、代わりに最新データのダウンロードもできなくなる。
  • 航路データを改竄する技術力を持たない不法就航者は、最新の公的航路データを利用できず、犯罪組織などが作り上げた危険な非公式航路を飛ぶことになる。マフィアが守っている航路などもあるが、通常の通関税より遥かに高額の通行料を請求される。
  • 軍事機密や企業秘密の航路情報は宇宙港のデータベースに公開されていない。
  • 当然ながら、公式データベースに登録されていても、許可がなければ開示されない航路は存在する。
  • 旧太陽系へ通ずる航路、別名『冥府航路(ダイアウト)』は半ば伝説と化している。無数の偽航路データが出回っており、真実を知るのは一握り。

【転移座標重力圏補正体】

 通称“グラヴ・ピン”。一部星系で内惑星軌道に設置されている、巨大な重力制御ユニット群。
周辺天体が生み出す重力偏差を工学的に補正し、恒星間転移航路を安定させる役割を持つ。

 縮天航法による空間転移は、できうる限り出発点/出現点がフラットな時空の中に
設定されていることが望ましい。転移座標が大きな重力偏差の中にあると、
超空間に形成される転移航路“エシュアの歪廊”が正しい座標に接続されず、
出現点がずれる現象が確認されているためである。
 転移距離が長ければ長いほど、誤差の影響は甚大なものとなる。恒星至近からの
転移を強行した結果、行方不明となった船は銀河史上に数知れない。

 このため通常は、転移始点および目標を惑星軌道の外側に置くことで、
主星の重力や惑星の摂動による影響を最小化するという運用が為される。
 が、人間が居住可能な地球型惑星は内惑星軌道に位置するものであり、そこから星系外縁の
転移座標まで通常空間を移動するには、最短でも一週間程度の期間を要するのが常である。
 恒星間航行にかかるとされる時間の大半が、実質的にはこの系内航行に費やされている。

 然るに、「通常空間の無駄な移動時間」を短縮できないか? と考えるのは人間の
自然な心理であり、その無茶に応えるべく開発されたのが、転移座標重力圏補正体だった。
 これはつまり、人工重力の大規模な応用である。惑星間空間に多数の斥力干渉器を分散配置し、
それらの生む重力場の合成ベクトルによって、周辺天体が生む自然の重力場を相殺する。
以て、縮天航法の使用に適したフラットな時空を任意の場所に生み出す。
 理論上はどこにでも安定した転移座標を作り出すことができるとされているが、
実際は補正効率の面から、系内の重力均衡点<ラグランジュ・ポイント>に設置されることが多い。

 実際に設置されている星系がごく一部に留まるのは、運用に膨大なエネルギーを要するため。
補正体一基あたりに真空炉ひとつを常時稼働させねばならず、財政に相当の余裕がなければ
のちの収益を計算に入れても、なお導入コストを捻出できないのである。
 例外的に“田舎”の星系でも設置されていることはあるが、これは大企業の資本により
資源開発など利潤が見込める事業のために行われた“道路整備”であり、公共設備ではない。
そのため使用可否や料金は管理企業の一存で決定され、辺境における企業権力強化の道具と化している。


【微小機械技術】

 マイクロマシナリーテクノロジーとナノマシナリーテクノロジーを合わせた概念。
将来的にはさらに微小なフェムトマシナリーテクノロジーも加わる可能性が示唆されている。
(ただしフェムトスケールでは「機械」と呼べるような構造物は作れないとされる)

 マイクロマシナリーテクノロジーはマイクロメートル単位の工作機械に関する技術。
この領域に属する機械は俗にマイクロマシンと呼ばれ、巨視的スケールの物質加工などに向く。
マイクロレーザークラスターや“光塵”といった応用技術も存在する。マイクロマシンの
長所は多機能さと作業の速さにあり、単純な破壊や分解ではナノマシンよりも効率的。
 ナノマシンにも共通することであるが、自力で長距離を移動するのは非効率であるため
ミリボット(ミリメートル級小型ロボット)やセンチボット(センチメートル級小型ロボット)を
親機としてスケールミックス運用されることが多い。銃砲弾やミサイルに搭載される場合もある。

 ナノマシナリーテクノロジーはナノメートル単位の工作機械を扱う。この技術の産物である
ナノマシンは用途に応じて無数の種類が存在し、分子レベルの分解再構築を可能とする。
 しばしば万能の技術として扱われるナノマシンだが、現在のところ単一の機種であらゆる
分子を取り扱えるわけではない。多くは元素ごと、あるいは金属や有機物といった区分ごとに
特化した分子変成機能を持たされ、それ以外の物質には対応しない(または作業効率が落ちる)。
最も万能に近いとされるドレクスラー・コーポレーションの汎用複合ナノマシンシステム
“アゾット”は、対象の分子構造に応じたレプリケーターをその都度自動生成することで
幅広い物質に対応する。この技術は当然同社が特許権を独占しており、業界最大のシェアを誇る。
街頭に設置されている公共用分子コンポーザーもアゾットの限定運用システムパッケージである。

 ナノマシンが合成できる物質は価格が大幅に下がり、ナノテク以前とは工業の形態が大きく
変わってしまった。建築や製造業においても細かい作業を担当するのは微小機械群で、
人間のオペレータはそのプログラミングと監督が主な仕事となる。一方で需要の増大する
合成不能資源の価格は高騰しており、また合成材料となる原子も人工生成できない場合は
何らかの形で補充しなければならないため、宇宙鉱夫などの仕事は完全になくなってはいない。

 分子合成は基本的に同じ原子で構成された物質間でしか変換できない。そのため錬金術のごとく
鉛を金に変えるような原子レベルの変成は不可能。過去の地球にはそのようなフェムトスケールの
粒子制御技術もあったとされるが、“特異点戦争”とその結末たる“大喪失”によって失伝した。

 ナノマシンの長所は精密な作業ができること、分子間の接合・分解が可能なこと、それ自体を
集めて構造物にできること、自己複製による作業の自律性などがある。自己複製については
マイクロマシンも備える機能だが、ナノマシンの方が総じてパーツが少なく構造が単純なため
より高い効率で増殖可能となっている。ナノマシンそのものの集成構造物としては、建築現場で
広く用いられる有機分子系生体建材などが具体例に挙げられる。

 用途は医療、食糧生産、ゴミ処理、工業、環境改造、軍事などあらゆる分野に存在する。
現代テクノロジーにおける「三種の神器」の内、もっとも市民の暮らしに密着した技術と言える。

【ハイゼンベルク粒子加速器】

 名の通り、粒子加速器の一種。不確定性原理を利用し、位置の自由度と運動量の不確定性を
交換することで、微小軽量な粒子を一個ずつのオーダーで弾き飛ばすことができる。
 ビーム兵器などの連続的な加速粒子束を作るには適さないが、イオンや核子を一個ずつから
射出できるほどの小型化が可能であるため、ナノスケールのイオンエンジンなどに応用できる。
 移動能力を持つナノマシンの推進装置として利用されるほか、シートやフィラメント上に
大量に並べることで、クリーンかつ比推力の大きい高効率イオンスラスターとしても運用できる。


【真空炉<ケノンリアクター>】

 現在までに人類が生み出した中で最も強力な、半永久的エネルギー発生機関。
別名をVPリアクター(Void Polarization / 真空分極)とも言う。第二種禁制技術にして、
同時代における三つの最重要テクノロジー「三種の神器」のひとつ。

 真空は完全な無ではなく、何らかのエネルギーが揺動する場である。不確定性原理によって
真空中で素粒子の対生成と対消滅が起きていることは、ごく初期の量子力学で解っていた。
第一世代のケノンリアクターは、この真空エネルギーを抽出するための機関であった。対生成する
粒子を対消滅の前に引き離し、真空揺らぎから質量とエネルギーを引きずり出すのである。

 真空エネルギーは決して大きなものではない。そのため、これが実用的なエネルギー機関に
なると考えている研究者はいなかった。だがリアクターの稼働実験を進めるうち、粒子と反粒子を
取り出した後に残る微弱な“斥力”が検出される。これがマイナスの重力エネルギー、あるいは
負の質量を持った粒子であることが判明。第二世代ケノンリアクターの開発が始まった。

 確率的な揺らぎによって一瞬だけ現れるに過ぎない仮想粒子対を捉えて利用するということは、
可能性からエネルギーを取り出しているのと同義である。いわば物理法則の隙を衝いて宇宙から
本来存在しない(利用できない)エネルギーを盗み出しているに等しい。エネルギー保存則が
ある以上、巨視的にはどこかで増分がキャンセルされていなければならず、それが負のエネルギー
及び質量となって「本来起こるはずだった対消滅」の代わりに残る。

 逆に言えばこれは、正と負の質量・エネルギーを等量だけ取り出す限りにおいて、保存則を
破ることなく無尽蔵のエネルギーを真空中から引き出せるということでもある。これを前提に
対生成の源である真空の量子揺動を増幅するというアプローチで研究が進み、プランクスケールの
小さな揺らぎを捉えて、そこにエネルギーの投入と回収を繰り返すことで確率波の振動を制御する
技術が確立。ついには真空が潜在的に有している以上の莫大なエネルギーを産出する新型リアクターが
完成し、これが人類をエネルギー問題から永遠に解放した。恒星間文明時代となった現在も、
この波動増幅型ケノンリアクターは民生から軍事まであらゆる分野を支えている。

 量子揺らぎの増幅には、リアクター自体が産出するエネルギーの大半が再投入されている。
ゆえに、そこから取り出せる利用可能エネルギーは全体のごく一部でしかない。しかしエネルギーの
産出総量自体が徐々に上がっていくので、リアクターが安定した連続稼働に耐えうる上限の出力
(定格出力)に達する頃には、単位時間あたりに取り出せるエネルギーの獲得量もまた莫大になる。
 量子振動の増幅効率には未だ限界があり、リアクターに火が入ってから定格出力に達するまで
長い時間を要する。そのためオーバーホール時以外は完全に停止させず、アイドリング状態を
維持しておくのが一般的。特にシングラル(人型全領域戦闘機)などはスクランブルの必要もあり、
立ち上がりの時間を短縮すべく、待機出力が高めに設定されている。

 瞬間的に定格以上のエネルギーを発振することも、リミッターを解除すれば可能である。
もちろん反応炉に掛かる負担は増大するし、部品の消耗も自己修復機構の能力を超えて早まる。
振動数を上げ過ぎれば炉心が内部から崩壊し、膨れ上がる反物質の激流がリアクターと
周囲のあらゆる物質を巻き込んで、核兵器を遥かに凌ぐ極大爆発の中に消えることとなる。
(余談であるが、この炉心暴走を利用した反物質爆弾も過去に開発された。統一銀河連邦が
 封印している禁制技術兵器の中には、天体破壊クラスの惑星間弾道弾すら存在するという)

 太陽光発電と違い星系外空間でも稼働可能、また縮退炉にもエネルギー効率で勝る。有害な
化学物質や放射能汚染を残すこともない。一見して完全ノーリスクのエネルギー機関であるが、
実は長い目で見た場合にひとつの問題が指摘されている。

 正の質量・エネルギーはそのまま電力や反物質燃料として利用されるが、負の質量・エネルギーに
関してはすべてを利用し切れず、大部分を星間宇宙に棄てているのが現状である。
これらは所謂ダークエネルギーと同様の性質を持つため、自らの斥力で拡散しながら空間を膨張させる。
しかも負のエネルギーには量子利息という効果が働き(エントロピー増大則が負のエネルギーに
適用された結果と思われる)、その総量は時間経過とともに増大してゆく。

 宇宙の膨張が加速しているのは、空間体積に比例してダークエネルギーが増加しているためである。
そしてケノンリアクターが無から取り分けた負のエネルギーがここに加わることで、
ほんの少しずつだが宇宙の質量バランスは崩れ、空間膨張はさらに加速するようになる。
 宇宙の膨張加速率が上がれば、熱的死やビッグリップによる宇宙の終焉までの時間は縮まる。
ケノンリアクターとは、いわばこの宇宙の寿命を加速度的に削ってエネルギーを生み出す機関なのである。

 専門家がこのような指摘をしても、ケノンリアクターの使用が規制されたり自粛ムードになる
気配はほとんどない。なぜなら宇宙の寿命はもともと一般人が到底想像し得ないほど長く、
たとえ銀河人類が一年に棄てるマイナスエネルギーで宇宙の最終的寿命が数兆年縮むとしても、
それを現実問題として対処しなければならなくなるまでの時間は、まだ永劫に等しいからである。


【補助脳】

 人間の知覚・思考・記憶といった脳機能を補助ないし強化するコンピュータ・デバイスの総称。
黎明期には外科手術による脳内配線とチップ埋め込みが行われていたが、微小機械技術の発展により
鼻孔からマイクロ-ナノサージャリーパッケージ(マイクロマシンとナノマシンの複合封入カプセル)を
挿入するだけで自動展開されるタイプが開発された。現在の主流はこちらで、その手軽さから
法定テクノロジー・レベルB-3以上の星系では市民の大半が導入しているとされる。

 補助脳の形状をひとことで言い表すなら“網”である。生体脳のニューロン網に寄り添う形で
分子アセンブラが編光晶体のフィラメントを敷設していき、グリア細胞の隙間には
補助入出力系のマイクロセンサーセルアレイが配置される。
 こうして形成された結晶質のメッシュは、繊維の一本一本が通信ケーブルであると同時に
演算能力を持つ光量子コンピュータであり、人間の脳神経を伝わる情報について
フィルタリングし編集することが可能となる。

 知覚情報に介入する技術の典型例として、A/VR(仮想/拡張現実)識覚投影インターフェース
“パーセプション・プロジェクター”が挙げられる。PPは五感の入力経路を監視し、
流れてくる情報を拾い上げて、仮想環境の情報とマージした上で元のルートに戻す。
すると最終的に知覚系へ出力されるクオリアは、生体神経が受信した基底現実の情報と、
PPが挿入した仮想/拡張現実の情報を重ね合わせた複合現実として像を結ぶことになる。
完全に仮想現実へ没入する能動投影(アクティヴプロジェクション)モードの場合は、
基底現実からの入力をシャットアウトして、仮想環境の情報のみを感覚中枢へと受け渡す。
 PPの投影情報はしばしば「人工的な幻覚」「プログラムが見せる夢」と表現される。

 イオン電位パルスによる生体脳の情報処理プロセスを電磁波ベースに変換することで、
思考速度を格段に高めることも可能である。しかしこの用法は人間ベースの技術的特異点
“超越<トランセンデンス>”を招来する可能性ありとして、一定以上の倍率での主観時間圧縮は
第一種禁制技術に指定されている。


【パーセプション・プロジェクター】

 補助脳の仮想/拡張現実インターフェースを提供する、統合知覚補助システム。広義には
対応する通信・変換プロトコルや記述言語などの規約を含めた、関連技術の総体を指すこともある。
 技術レベルが一定以上の星系では市民生活に必要不可欠とも言われ、社会基盤の一角を担う。
その実態は、簡単に言えば人間の脳に働きかけ、制御された幻覚を生み出すソフトウェアである。
 人型全領域戦闘機の操縦システム「QFI(クオリア・フィードバック・インターフェース)」や
睡眠学習装置サブリミナル・エデュケーターの技術的基礎となったシステムで、いずれも
ギブスン・アンド・スターリング社の特許製品。設計はG&S社初代CEOにして
伝説的エンジニア、アンソニー・クロームストライカーの手になる。

 パーセプション・プロジェクターの利用モードには二種類ある。AR(拡張現実)として
覚醒状態での知覚上に情報を投影するパッシヴプロジェクションモードと、肉体は休眠させた
状態で意識の方を仮想空間に投影するアクティヴプロジェクションモードである。
接続方法には有線式と無線式があるが、ホログラスやヘッドギアなどの外部機器を使った
無線接続なら端子がなくとも利用可能。有線接続には別途のポート埋設処置が必要。

 仮想空間自体にも「層(レイヤ)」が存在し、パッシヴ用に現実と同期させた「レイヤ1」と
アクティヴ用に現実と切り離された「レイヤ2」が分かれている。しかしアクティヴでも
L1での行動は可能なため、離れた場所から投影体だけを飛ばしてパッシヴ状態の友人に会いに行く、
といった虚実の境界をまたぐ使い方が(ネット環境さえあれば)可能である。もっとも、
通信ラグの関係上、リアルタイムでの通信が可能なのは惑星程度の距離に限られるとされる。
逆にパッシヴでL2にアクセスすることは、肉体が危険なので出来ないようになっている。
基底現実の上に敷かれたL1までしか行けないパッシヴは「浅いダイヴ」、現実から完全に
乖離可能なL2まで潜れる(飛べる、とも言う)アクティヴは「深いダイヴ」と俗に呼称される。

 一部のサイバーフリークや電脳カルトが存在を噂する「レイヤ3」は半ば都市伝説めいた
代物で、人ならざる知性種族が作った異形の電脳世界であるとも、純粋数学や幾何学の
形象・概念で構成された「真理の世界」であるとも伝えられる。その実体はL1、L2を記述している
レイヤ0とも呼ぶべきメタ構造野であり、本来は可視化されない。このL3を認識できるのは
一部の特別な才能を持った人間のみ。彼らは“核接触因子保持者<カーネリアン>”と呼ばれ、
ネットワーク管理者しかアクセスできないはずの仮想物理法則までも、思念のみで自在に
書き換えることができる。

 仮想空間に「入り込んでいる」かのような錯覚を提供するアクティヴプロジェクションだが、
実態はあくまで脳と機械の通信によるフィードバックであり、思考活動自体は脳で行われている。
実際に脳から神経信号や量子波のゲシュタルトを「吸い出す」わけではないため、実体が死ねば
レイヤ上の投影体も消滅する。逆に投影体が仮想空間上で死ぬような事態があっても基本的には
接続が切れるだけで実害はない。ただしロジカルウェポンによる攻撃は例外で、プロジェクターに
組み込まれた数々の安全装置をも回避してパルスの逆流を起こさせる。多くの場合、本来なら
あり得ない強力な電流でプロジェクターの回路が破壊され、同時に接続者の脳にもダメージが及ぶ。

 パーセプション・プロジェクターが描く仮想空間は、個人の娯楽からコミュニケーションツール、
果ては基底現実の戦局を左右する電脳戦まで広範な用途がある。が、PPネット環境が十全に
整備されているのはいまのところ主星系のみ。それ以外のロケーションでは技術力や予算の不足、
情報セキュリティの確保が困難など諸々の事情から、ネットに巨大な空白地帯が出来ていることもある。
特に公共性の高いL1はカバーする領域を拡げるのが難しい。L2は独立性が高く安全も確保しやすい
ため、個人利用や船舶・施設内のローカルエリアネットワークとして利用される。

 QFIやサブリミナル・エデュケーターはこれと同種の技術を用いているが、利用環境が
それぞれ排他関係にあり、各プロジェクションモードとの併用はできない。ただしQFIの方は
機体をネットの通信プロトコルに同期させることで仮想空間の情報を共有することが可能。

 仮想空間のオブジェクトは微細な光点の集合として投影されており、視覚データの最小単位
となるこの光点を“立体画素<ソリッド・ピクセル>”と呼ぶ。基底現実の環境ホロなども
レイヤ1のデータフローと同期していることが少なくないため、プロジェクターの扱いに
慣れていない人間は虚実のオブジェクト認識が混乱しがちである。


【Ψ言語】

 仮想/拡張現実(V/AR)開発用プログラミング言語。Ψは「サイ」と読む。
 源流は22世紀末、AI研究と心理学・脳科学の発達が可能にした高等言語である。
(天使語で書かれた未解読文書『ロガエスの書』の解読によって生み出された、という異説もある。
 事実、Ψのソースコードは英語ベースの文法を持つとされるが、実行時に生成されVM上で動作する
 中間言語ファイルは、0と1からなる機械語ではなく、拡張Unicodeにも存在しない謎の専用文字で
 記述されている。これこそ真のΨ言語であり、『ロガエスの書』の逸話から“天使語”とも呼ばれる。
 英語ベースの文法は、実のところ強力すぎる機能を制限するためのインターフェースに過ぎない)

 人間の知覚情報や記憶・感情などを扱うためのデータ型が標準ライブラリとして提供されており、
ソフトウェア開発者は任意の五感や情動を生成・制御するためにそれまでのような難解きわまる手順、
複雑怪奇な専門的ハードウェア知識を必要としなくなった。素人同然のサンデープログラマーすらも、
人間の身体感覚や心の動きを自在にコーディングできるようになったのである。

 Ψ言語の登場は数多の業界に待望された必然だったが、いざ実用化されてみると
その巨大な潜在能力が現実世界をも変え始めた。加速度的に進行する仮想環境の充実。
民間のアイデアが人工知能研究の場に流れ込み、単なる思考機械を超えた人工意識レベルの
AIが急速に現実味を帯びてきた。機械に人間の感覚・情動を持たせられることになり、
人間と機械の境界線にまつわる議論がかつてなく白熱した。史上初の第一種知性構造物にして
史上最悪の知性災害“イドロマンサー”も、核となるコードはこの言語で書かれたものである。

 地球圏脱出後、対AI電子兵器の影響でしばらくV/AR空間は荒廃し切っていたが、
天才的SEアンソニー・クロームストライカーが主導となり、散逸したΨ言語の
ライブラリやV/AR空間構築ノウハウを復活させるプロジェクトが行われた。
しかし人々の心理に刻み込まれたテクノロジーへの恐怖は払拭しがたく、
クロームストライカー自身もまた、戦前の技術をただ取り戻すのでは同じ過ちを
繰り返す惧れなしとできなかった。そこで、V/AR技術の再構築に際し、彼らは
第一種自律知性の発生を抑止するための様々な安全措置を講じることとなる。

 Ψ言語は高位文法解釈プログラムの存在を前提としており、これは第二種知性構造物に
相当する“危険な”技術である。AI関連技術の多くが失われた現在となっては
その言語仕様に手を加えられる人間もおらず、さりとて“安全な”技術のみを用いて
Ψに代わるV/AR記述言語を作り上げることは不可能だった。

 そこで、Ψ言語の仕様自体はそのままに、その全容を隠蔽し、安全な機能のみを人間に
提供するためのインターフェース(仲立ち)言語が新たに用意された。これはほとんど自然言語に
近い形で仮想環境を記述可能なマークアップ言語であり、CSMLと名付けられた。
(CSML=Common Sense Markup Language/共有感覚マークアップ言語の略。
 言うまでもなくコモン・センスとは「常識」の意もあり、今後の時代に
 常識の記法たるべき言語として設計されたが故の多義的ネーミングである)
 そしてCSMLによってΨ言語のプログラムを駆動し、人間を再び幻覚地平に誘うための
物理装置として、識覚投影機“パーセプション・プロジェクター”が開発された。

 以後、CSML形式のV/AR空間に対応した様々なプログラミング言語が生み出されてきたが、
これらは元を辿ればすべてΨ言語の高すぎる機械可読性(マシンリーダビリティ)を制限し、
人間に扱い切れるよう機能をデチューンした縮小再生産品の言語である。

 播種船団時代の遺跡や孤絶文明圏の古代ストレージからしばしば発掘されるオリジナルの
Ψ言語アプリケーションは、安全性を重視して規格化された現代の開発言語では実装不可能な
機能を備えていることが多い。ソースコードそのものは高位文法解釈プログラムなしには
解読できないが、原初Ψ言語を土台とするCSMLの仕様上、パーセプション・プロジェクターは
ちょっとした改造を加えるだけでこうしたレリックプログラムを実行できてしまう。


【汎言語フレームワーク“セフィラシル”】

 銀河連邦の高度電脳化文明を支えているのは、地球失陥前から受け継がれてきた
巨大なアプリケーションフレームワークである。これはΨをはじめとする様々な
プログラミング言語で共用できるように規格化された関数やデータ型の集積であり、
パーセプション・プロジェクターによる全感覚型インターフェースと、
豊富な開発サポート環境もあって、プログラミングの素人でもある程度自由に
アプリケーションプログラムの作成が可能となっている。

 現在“セフィラシル”と呼ばれるこの汎言語フレームワークは、千年以上にわたって
不特定多数の開発者が更新し続けてきたものである。あまりに巨大化・複雑化しすぎて、
どんなに詳しい人間でも全体の一割すら把握していない。中には違法な関数や
マルウェア作成のための汎用データクラスも多く放流されており、有益な開発のみならず
サイバー犯罪もまた素人の手で容易に行われ得るという負の側面が存在している。

 なお、セフィラシルという名は本来、この開発/実行環境に含まれる膨大なライブラリ群を
ツリー式に分類した模式図の名称であった。樹のイメージから、ユダヤ密教カバラにおける
“生命の樹<セフィロト>”と、北欧神話の“世界樹<ユグドラシル>”を合成した
造語であるという説が一般的。


【レリックプログラム】

 セフィラシルの統合規格で作成されたライブラリファイルのうち、起源を
太陽系圏消失以前に遡るものの総称。多くの超高度プログラムが“特異点戦争”と
その後の混乱の中で失われたが、まれに廃コロニーや漂流船などの遺跡から
“発掘”されることがある。
 現在は禁止されている高位文法解釈プログラムを使用し、オリジナルのΨ言語で
コーディングされたものであるため、その多くが今の技術では再現不可能な機能を有している。
情報が星間交易の最も重要な商品たる現在、レリックプログラムがとてつもない価値の
情報資産として取引されるのは言うまでもない。
 しかし「政治によるテクノロジーの徹底管理」を存在意義とする銀河連邦にとっては
危険物でしかなく、使用はおろか単純所持すらCJPO(連邦統合治安維持機構)の取締対象となる。
 レリックプログラムの中には、第二種~第一種知性災害を引き起こすに足る
きわめて危険な自律系が含まれていることもある。総じて現代人の手には余る代物ばかりで、
取締は当面必要な措置と言える。


【核接触因子保持者<カーネリアン>】

 ある種の先天的テクノ異能者を指す語。語源は旧世界におけるOSの中核部<カーネル>と、
玉髄<カーネリアン>を掛けたもの。またの名をL3認識能力者<サードレイヤード>とも。
 パーセプション・プロジェクターによる仮想/拡張現実は、人間の知覚・感情・記憶といった
ファジーな情報を直接扱うΨ言語の仕様あってこそ成り立つ。しかし、ヒトの精神に寄り添う
この技術が、それまで誰も知らなかった人間の潜在能力に光を当てることとなる。
 核接触因子保持者。脳のグリア細胞内マイクロチューブルと呼ばれる部位に、量子波動関数の
共振制御器官(核接触因子)を持つ人間。彼らはΨ言語によって構築されたV/AR空間で、
CSMLインターフェースの隠蔽を透過し、場を記述するコードのストリングを直接知覚・干渉できる。
本来ならユーザーが触れることのできない変数を操作し、管理者権限がなければアクセスできない
ネットワーク基幹部分のオブジェクトを自在に生成・改変・消去することができるのである。
 これが高度仮想化社会においてどれほど強大な能力であるかは言うまでもない。あらゆる
セキュリティを無視して個人情報や企業秘密にアクセスし、意のままに改竄し得るのだ。
企業や連邦政府が禁制技術のアーカイブにかけたプロテクトも容易く突破でき、隠匿された
テクノロジーの秘伝を野へ放つことも可能。統一銀河連邦の技術管制主義を根本から覆しかねない
脅威の能力であり、連邦市民は自分がカーネリアンだと認識した時点で自発的に当局へ出頭、
ナノ生体手術によって能力を破壊することが法律で義務付けられている。が、当然このような
力を手放したがらない者も多くおり、また彼らに非合法な活躍の場を与える闇組織や
地下ハッカーフォーラムは銀河系のどこにでも存在している。
 カーネリアンの中にも能力の強弱が存在するらしく、Ψ言語の仕様に対する核接触因子の
適合率が高いほど、仮想環境に対し行使し得る支配力も大きくなると言われる。
 発揮される電子的権能のレベルにより、カーネリアンは九つの等級に分類される。

Lv1:天使(アンシェル)級…仮想空間の隠された構造や暗号化データの中身を知覚できる。
Lv2:大天使(アルカンシェル)級…個人端末のファイアウォール程度なら無視できる。
Lv3:権天使(アーカイ)級…中小企業クラスの電子防壁を素通りできる。
Lv4:能天使(イシュシアス)級…公共仮想空間の内部変数に干渉し、環境を書き換えられる。
Lv5:力天使(ヴィルト)級…星系ネット中枢へのアクセス及びデータフロー改竄が可能。
Lv6:主天使(ドミニール)級…ネットワークを介し、他人の思考や記憶に干渉可能。
Lv7:座天使(スロウンズ)級…軍事用ロジカルウェポンに匹敵する電子攻撃/防御能力を有する。
Lv8:智天使(ヒルヴ)級…巨大企業体のメインフレームに侵入し禁制技術情報を持ち出せる。
Lv9:熾天使(セラフ)級…電脳世界においてほぼ全能。

 とくに仮想空間の物理演算法則そのものを改変可能になるLv4以降が桁違いに危険である。
しかし高レベルのカーネリアンは発現の割合も少なく、事実上の最高ランクとされるLv8など
数兆人にひとりという確率でしか存在しない。実はレベルごとの出生率に差はないのだが、
能力等級が上がるのと比例して、能力者が脳に重篤な障害を持つ確率も高くなる。そのため
他人との正常なコミュニケーションが取れず、己の異能を知らぬままに終わることが多いのである。
 Lv9の熾天使級カーネリアンともなると、高すぎる量子共振能力と通常の脳機能が共存できず、
人間として生活することすら不可能なのではないかと言われている。半ば神話上の存在である。


【幻獣】

 パーセプション・プロジェクターの広域通信ネットワーク、俗に言うパースネットの
仮想空間上に棲息するAL(人工生命)の総称。
 もとはバグ駆除用の自律機能系や、愛玩用のヴァーチャルペットといった
第三種~第二種知性構造物が“野生化”したもの。ネット接続端末のメモリを活動領域とし、
それらノードの断片化メモリや余剰演算リソースを「喰って」成長・繁殖する。
 知性災害対策関連法(モラヴェック法)により知性構造物の性能限界は厳しく制限されているが、
野生化した電子生命体は十全な保守運営の下ではあり得ない危険な変異を起こすことがある。
そのことが判明してからは、変異の有無にかかわらず幻獣自体が駆除対象となった。
(悪性変異していない幻獣でも、ネットワーク上の演算リソースを消費する点では有害と言える)
 充分に進化したALは第一種知性構造物のレベルにまで到達し、制御不能のシンギュラリティを
引き起こす可能性すらある。このため、幻獣退治は反連邦勢力に対する弾圧と並んで
CJPO(連邦統合治安維持機構)の主任務のひとつと言っても過言ではない。


【幻獣使い】

 野生化した自律機能系オブジェクト「幻獣」を何らかの方法で私物化し、再利用する人間のこと。
対ウイルス用のセキュリティソフトなどで捕獲し、「刻印<カラー>」と呼ばれる制御プログラムを噛ませて
使役可能な状態にしている場合がほとんど。まれに刻印なしで幻獣を従える者も存在する。
 幻獣使いが己の飼う幻獣を何に使うかは千差万別だが、一番多いのは戦闘用。
 知性災害対策関連法により高度な自律機能系を持ったロジカルウェポンの開発・使用は
禁じられているため、“調教”された幻獣がその代替物として取引・運用される。
違法な高位自律系ロジカルウェポンを密造するより、既存の自律系である幻獣を
捕獲・改造する方が技術的・コスト的ハードルが低いという事情もある。
当然これらは違法であるため、CJPO(連邦統合治安維持機構/メガリス)の取締対象。

【サブリミナル・エデュケーター】



【情報通信】



【人格矯正措置】

 精神工学(メンタル・テクノロジー)は第一種禁制技術に指定され、所持・使用・取引・研究が
無条件に禁止される技術体系のひとつであるが、これを合法的に運用している例外的機関がある。
 連邦超域司法局。統一銀河連邦における最上位の司法機関であり、連邦構成国がそれぞれ有する
下位司法機関が単独で対応し得ない重大犯罪などを裁くために、それは存在している。

 超域司法局の科す刑罰に死刑は存在しない。代わりに最高刑として定められているのが
前述の精神工学を応用した第一種~第九種の人格矯正措置である。
 受刑者はナノ投薬を受けたのちパーセプション・プロジェクターに接続され、
措置等級に応じた人格矯正プログラムを受講する。措置は最短30分、長いものでは
休憩を挟みつつ数日にも及ぶことがあり、その過程で受刑者の精神構造は変質してゆく。
 統計上、措置が要求される効果を発揮する確率は86%。14%の人間には効かないことになるが、
これは先天性のサイコパスなどが該当し、彼らにはまた別の専用措置が執られる。

 受刑者の精神がどのような影響を受けるかは各等級ごとに共通の基本骨子があり、
その上に個別の適性・情状などを加味した詳細な設定が大小数万のパラメータで管理される。
たとえば第九種の基本的な作用は「己の罪状に罪悪感を抱かせる」ことであり、詳細設定では
罪悪感の強度、自傷衝動の抑制レベルや原告・被害者への感情バイアスなどをコントロールできる。
措置強度が上がる(等級の数字が小さくなる)ごとに精神への影響は強力なものとなり、
必然的に措置前の人格が破壊される度合いも大きくなる。第四種以上では「スーパーエゴ」と
呼ばれる人工人格が植えつけられ、受刑者の行動を常に監視・抑制する内なる支配者となる。

 最高強度の措置は第一種(本能レベルで法を侵犯できなくなるほか、法律が関与しない
あらゆる行動・判断にもスーパーエゴが介入する)というのが公的な情報であるが、
さらに隠された等級として“第零種措置”が存在し、市民の間では都市伝説として語られている。
 第零種では元の人格は完全に焼き消される。それまでの好き嫌い、価値観、善悪などの
すべてが否定され、受刑者の脳には理想市民の心理モデルを元に最適化されたスーパーエゴのみが残る。
それは贖罪と社会貢献のためだけに存在を許された生けるロボットであり、いかなる用途にも
人権を考慮せず投入することができる。彼らは法的には死体なのだ。

 人工知能の開発が許されなくなった“特異点戦争”後の時代において、知性化機械の代理として
人間には危険であったり精神的に多大の苦痛を伴うような仕事を担う労働力が要求された。
第一種措置および被措置者の扱いは、そのような歴史の中で形成されてきた人類の暗部と言える。

 高強度措置の恐るべき効果がクローズアップされがちだが、第七種までの低強度措置は
懲役や罰金の減刑と引き換えに自ら受けることも可能である。治安維持活動への参加によって
同じく量刑が減免される“グラディアトール”の制度と合わせ、犯罪者の人権を国家が管理、
より生産的に彼らを活用していくという統一銀河連邦の司法制度が如実に表れたシステムとなっている。


【光塵<ファンタズメーカー>】

 マイクロマシナリーテクノロジーを応用した立体映像の投影システム。
 発光素子を搭載した微小機械群と、それを生産・制御する本体で構成される。
狭義には散布されるマイクロマシン(発光セル)のみを指して“光塵”と呼ぶ。
 理屈としては、任意の空間に展開した無数の発光セルが微細な光点の集合体を作り出し、
その色彩や明るさを本体部からの信号で制御することによって立体映像を作り出すもの。
 展開範囲は本体が発生させる磁場で制御するが、磁場で範囲を限定していなくとも、
発光セルのネットワークさえあれば通信の届く範囲にはどこまでも映像を投影できる。
充分な量のセルを展開すれば、都市や惑星といった巨大なオブジェクトすら再現可能。
 従来のレーザープラズマ発光式に比べて、真空中でも使えることや、角度に配慮すべき
光源を必要としないため設置・展開が容易であることなどが利点。
 反面、映像の展開速度ではプラズマ発光式に劣るほか、発光セルが消耗品であるため
ナノ合成用の材料を定期的に補充する必要がある。(セルの生産・分解機能は搭載済)
また磁場の拘束を破るほどの強風など物理的干渉にも弱く、像が乱れやすい。
これらの欠点を克服した次世代型発光セルがドレクスラー社で研究されており、完成すれば
次はナノスケールのものになると言われている。
 発光セルは細菌ほどのサイズで、基本的には人間が吸い込んでも無害な構造になっているが
まれに免疫系が拒絶反応を起こす者もおり、製造・販売元のマイクロフト・インダストリーは
現在「光塵汚染被害者の会」から訴訟を起こされている。


【アドヴァンスト・アンチエイジング】

 人間の老化を抑制する方法全般を指し、主に処置や投薬を行う時期によって区分される。
 現在主流となっているのは先天性処理で、受精卵~胎児期の段階で分子マニピュレータにより
遺伝子を操作し、代謝コントロール・細胞活性・テロメラーゼ生産の機能を人体に付与する。
全身の細胞一つ一つの寿命が飛躍的に延長されると共にRNA転写過程のエラーが極限まで排除され、
プログラムされた年齢まで成長すると、あとは年数を経ても老化が起きなくなる。成長を止める
時期が早いほど寿命の延長率は上がるものの、一般的には20~30歳が成長停止年齢に定められる。
これは人間本来の成長限界をそのまま利用でき、処置が簡単で、費用が安くなるためである。

 富裕層や一部の特殊な階級に属する人間は予算的に余裕がある、またはコストを度外視する
必要があるため、成長停止年齢を引き下げることもできる。これはとくに幼形成熟措置と呼ばれ、
常人より長い時間を子供の姿のまま生き続ける被措置者を、俗に「矮星族(ドワーフ)」と呼ぶ。

 先天性処理の利点は、テロメアの延長だけでは寿命を延ばせない一部細胞にも効果が対応していること、
細胞の生命力をフルに引き出すため寿命延長効果自体が後天性より高いこと、治癒力上昇効果など。
欠点は20~30歳停止でも後天性処理に比べて費用が高額化する(医療保険の適用外であるため)ことや、
精神的成熟も遅くなる傾向にある(統計上)こと、処置が産前であるため被措置者本人の意思が介在しない
ことなどが挙げられている。先天性処理を受けた人間が後から老化抑制を解除することはできない。

 後天性処理は主にテロメアを投薬やナノマシンで延長するもの。市民ならば保険が適用されるため
安価に実施できる利点がある。これでも肉体的にはほとんど完全な不老を実現できるのだが、
歯や脳など一部の組織は単純にRNA転写エラーをなくすだけでは老化を防ぎ切れないため、
寿命そのものの延長作用は先天性処理ほど大きくない。健康に生きて150年、まれに180年程度。

 これらの技術があることにより、ある程度都会化された地域に住む銀河連邦市民の外見年齢は
10~20代の場合がほとんどで、中年・老人の域に達した外見年齢の持ち主は希少である。
辺境星域や、中央のデータベースに登録されていないコミュニティではこの限りではない。


【アセラス】

 旧ナインライヴズ・ジェネティクス(現エレボール)社が秘密裏に開発を試み、治験段階で
発見された副作用からプロジェクトそのものが闇に葬られた不死の秘薬。
 遺伝子操作された植物に、かなり高度な有機分子アセンブラの複合配列が刻印されており、
矮星族すら凌駕する長寿と強靭な肉体、知的能力の強化、そして核接触因子までも服用者に与える。
 あまりに急激な遺伝子改変となるため、技術管制法群に引っかかるとして開発は継続されなかったが、
被験者たちの生き残りが持ち去ったサンプルは現在も惑星ラカルヴに生息している。
人間の手に渡れば一大事であるから、エルフたちはこの植物を森の最奥に隠して
その一帯を聖地として守護している。
 連邦法上は現在でも第二種禁制技術に相当する。


【インテリジェントウェア】

 コンピュータを内蔵し、変性分子繊維で仕立てられた衣服のこと。高度なナノテクの産物。
 機能には価格や用途別に様々なバリエーションがある。おおむね共通する基本性能として
生地を形成する繊維が人工筋肉の役割を果たし、着用者の動作を補助したり身体を守ったりする。
純粋なパワーでは外骨格型のパワードスーツに及ばないが、ほとんど通常の衣服と変わらない
着心地やデザインの自由度から広く普及している。連邦では軍服・戦闘服に採用されているほか、
民間のファッションとしても常に流行の一角を占める。パワーアシスト機能の出力は法律で
制限されており、一般人が危険なほど高出力のウェアを扱うことはできない。安全域を超えた
出力のものは「武器」として取り締まりの対象になる。ただしプログラムによってリミッターを
掛けるなどの安全基準を満たせば、高スペックのモデルも販売・購入・着用が可能。災害など
有事の際には特例として出力制限を破ってよいことになっている。ほか、人の手での力仕事を
要する職種などの場合は、別途で定期的に申請を出すことで一部制限が緩和される。

 パワーアシストだけでなく、情報端末としての機能を備えるモデルもある。ディスプレイや
スピーカー、通信アンテナ、記憶装置などが繊維構造の内部に織り込まれており、文字通りの
“ウェアラブル・コンピュータ”として使用可能。各種外部ストレージ(光量子メモリなど)
にも服の方で規格を合わせられるほか、ネットワーク上に自分のフォルダを持っておけば、
ウェアを着替えても同じデータにアクセスすることができる。

 エネルギー源は蓄電繊維に充電された電力がメイン。加えて光発電素子や、着用者の身体から
出る老廃物を分解して得られる化学エネルギーが補助動力となる。ハイエンドモデルになると
尿や糞便すら分解して取り込むことができ、不要な分子は無害な構造に組み替えて排出される。

 運動補助や演算の規模によっては膨大な熱が発生する。この熱は、モノフェーズ熱伝導素子の
回路を通じて放熱部に集められ、そこで強制光排熱システムによって電磁波へ変換、放射される。
光排熱システムは艦船などの対レーザー装甲に使われているものと同様の技術で、回路が耐え得る
範囲内であればどんな熱量も強制冷却できる機構である。そのため火災現場など高温環境への
進入にも適しており、消防士の耐熱服は特にこの機能を強化したウェアとなっている。
 軍事用のハイエンドモデルとなると、通常のナイフや火薬式の拳銃弾程度は至近距離でも
受け止められる防御力を持つ。耐熱性、耐弾性から爆発物に対する防御としても有効。


【編光晶体<ルミナリスタ>】

 多能性可変フォトニック結晶の別名。照明からレーザー兵器、装甲、コンピュータの演算中枢、
記憶媒体、排熱機構まできわめて多岐にわたる機器に使用されている人工物質である。
 その性質は「電磁波の捕捉・操作」に集約される。光を捉え、結晶構造の内部に閉じ込め、
軌道を自由に曲げたり、波長を変えたり、位相を揃えてレーザー光束を作り出したりできる。

※昨今現実において研究されているフォトニック結晶とは、生成には精密なナノテク的プロセスが必要だが
 あくまで静的な構造物であり、用途に応じた分子構造を後から変更することはできない。
 これに対し、編光晶体は電圧による周期構造の動的制御が可能な分子プログラミング物質であり、
 たとえば対レーザー装甲をレーザー発振レンズや光学カメラとして再設定、転用することもできる。
 現代ではまだ理論上のものでしかない、フルバンドギャップによる完全な光の閉じ込めも
 編光晶体ならば基本機能の一つとして利用可能である。

 以下、使用技術の例を挙げる。

  • 照明
→電流を流すとそのエネルギーを光に変換して放出するように分子構造をプログラミングできる。
 このため単純な給電機構と繋げば明度や光色を自在に調節可能な電燈となる。
 ただし照明としてはLEDの方が安いため、高機能な照明装置が必要でなければあまり使われない。
  • レーザー発振媒体
→チャージした光をコヒーレント化し、簡単にレーザーを照射できる。照射時間や角度は
 電子的にコントロール可能なため、プログラム次第で様々な撃ち分けが可能。
 ただし容量ギリギリまでエネルギーを蓄積すると量子トンネル効果による「臨界放射」が起き、
 光が外部に洩れてしまう(晶体が光り始める)。たとえば限界まで光をチャージした
 レーザーブレードは激しく発光してしまい、著しくステルス性を損なう。これを隠すには
 何らかの被覆が別途必要。レーザーブレードであれば遮光素材の鞘に納めるのが一般的。
 (この特質から、レーザーブレード専用の抜刀術体系が存在する)
  • 対レーザー装甲
→微妙に異なる構造の編光晶体を層状に重ねることで様々な波長の光に対応する。
 ダイヤモンド並みの耐圧性とCNTの5倍の引っ張り強度を持たせられるため、物理強度も優秀。
 斥力装甲“IDeA”及び後述の排熱機構と組み合わせることで、恒星内部への潜行にも耐える。
  • 光量子演算機関
→この時代の主要なコンピュータ。量子コンピュータとノイマン型の機能を併せ持つ。
 まさしく三次元光子回路をマッピングされた編光晶体の塊であり、その演算能力は回路密度と
 晶体の体積に比例する。回路密度はほぼ頭打ちとなっているため、光量子演算機関は
 基本的に巨大であればあるほど強力な演算資源を持つことになる。
 編光晶体繊維を織り込むことで演算能力を持たせた衣服がインテリジェントウェアである。
  • 光量子メモリ
→結晶内で光を減速・停滞させ続けることができるため、記憶媒体としても利用可能。
 まず容量が途轍もなく大きく、ほんのわずかでも自然光があれば晶体内部で自己発電して
 情報を恒久的に保持するため、事実上は不揮発性メインメモリとして二次記憶装置なしに運用できる。
  • 編光ケーブル
→光ファイバーケーブルの上位互換。通信速度は互角以上であり、加えて回線それ自体が
 演算能力と情報記憶領域を持つため、データの損失や減衰を事実上ゼロに抑えられる。
 (パケットロスや減衰自体は発生するが、それをリアルタイムに修正・増幅できるため影響が出ない)
  • 無線通信ユニット
→電磁波を操作する特質上、電波などの周波数をコントロールしながら発射することもできる。
 照明と組み合わせれば可視光通信の送受信ユニットとしても応用可能。
  • 排熱機構
→モノフェーズ熱伝導素子(一方向にのみ熱を伝える人工物質)との組み合わせにより実現した技術。
 素子を通して熱エネルギーを誘導し、末端部で電磁波に変換。編光晶体のラジエーターから
 放射することで、熱を強制的に排出する。光発振面積が多いほど排熱効率は上がる。
→晶体に負の屈折率を設定し、カメラのレンズとして使用することで、理論上無限の解像度を得られる。
 これにより通常の光学レンズでは原理的に不可能だった超長距離高精細映像解析などが可能になった。
 劇中、人型全領域戦闘機が衛星軌道上からミリ単位以下の粒度で地上を観測できるのはこのため。
 なお編光晶体によるスーパーレンズは21世紀初頭時点で研究されているものより一歩先へ進んでおり、
 限られたレンズ直径の中で取得できる光学情報量を、屈折率の動的変更プログラムなどにより
 限界まで高められる。いわば、スーパーレンズの理論的解像度上限に最も近い準完全レンズと言える。
 (カメラとして特化調整された晶体については、レンズの内部に位相が異なる複数の焦点を生み出し、
  その光学情報をデジタル合成して、レンズ径や波長から来る解像度の物理的限界を迂回する
  画像・動画専用の入出力システムを備えている)


【超光速通信】

 広義には、光よりも早く情報を伝達する手段全般を指す。つまり縮天航法<リプレイサー・ドライブ>による
連絡船の往還なども超光速通信に含まれるのだが、この意味で用いられることは稀である。
 狭義の――そしてより一般的な意味での――超光速通信とは、情報を媒介する通信波そのものの速度が
光速を超えるような技術を指す。このうち有線式のものは一部で利用されているが利便性に乏しく、
話題に上ること自体少ない。よって主に意味するものは無線式の超光速通信装置となる。

 超光速無線通信はいわゆる因果律侵犯技術であるためきわめて実現が難しく、現在までに実用化が
確認されているのはEPR相関を利用した縺れ量子ビット(EQB)の状態転移通信のみ。このEQB通信にしても
ペアを成す転移素子の間でしか情報をやり取りできず、素子は一度使うと機能を喪失する消耗品である。
そのため転移素子は「一ギガ量子バイトで惑星経済が傾く」ほどに高額であり、大規模な
通信ネットワークを構築するのは不可能とされる。連邦では現在、第一種星間災害など
特定の重大事態発生時しか使用が許可されないような、緊急回線の類を中心に限定配備されている。

 かつて地球時代<アース・エイジ>には、無制限に使用可能な超光速通信技術が研究されていた。
だが“大喪失”以後に定められた技術管制法群により、大規模超光速通信を可能とする技術は
第一種禁制技術に指定された。第一種、すなわち研究・売買・所持・使用のすべてが一切許されず、
存在すら禁じられるレベルの最高位封印対象テクノロジー。その背景には“情報の過流動化”という
超光速通信社会において起こりうる事態を予言した情報理論がある。

 電磁波による無線通信はすべからく光速度に縛られる。それが有効なのは星系規模が限界であり、
恒星間通信には連絡船によるデータの物理輸送が必要となる。この一見不便かつ洗練を欠く情報伝達は、
星系単位で通信ネットワークをブロック化することにより、実は電子的防疫に役立っているという。
 たとえば強力な新型コンピュータ・ウイルス。危険思想や宗教による文化遺伝子(ミーム)汚染。
そして密造AIや幻獣などによる知性災害(インテリジェント・ハザード)。それらの情報的脅威は
通信速度に比例して拡散速度も高まる。超光速通信によって星系ネット同士が結ばれ、銀河系が
ひとつのインターネットを共有するようになれば、誰にも情報の拡散を制御できなくなる。
どこかのマッドサイエンティストがひとたび邪悪なAIを創り出してしまったなら、対処する間もなく
全銀河系でネットワーク機器や分子機械が乗っ取られ、暴走し、人類文明は速やかな滅びを迎えるだろう。
 だが、通信速度が光速以下に制限されているなら対処のしようはある。致命的な情報が
拡散するより早く警告を伝達し、適切な情報遮断措置を取ることで、恒星間文明の全面的崩壊を
水際で食い止めることができるかもしれない。ゆえに、大規模超光速無線通信技術の存在は許されない。

 ウイルスや知性災害の脅威を除いても、文化面で悪影響が大きいと指摘する論説もある。
情報圏が分割されていることで多様性が保たれているのに、その境界を成す距離と時間の壁が
超光速通信によって無くなってしまえば、銀河規模でリアルタイム共有されるに至った仮想空間は
激烈な相互情報侵略の戦場となった挙句、多様性を失って均一化していくだろうというのである。
この均一化はむしろ成熟の過程であるとして歓迎する考え方もあるが、主星系の論壇では
多様性の保護を謳う派閥が現在まで優勢を保っている。


【EAM(感情調整薬剤)】

 生化学的、あるいは分子工学的アプローチによって感情や感覚のコントロールを実現する薬剤。
主に深い悲しみや怒りなどを中和し、精神の平衡を取り戻すために用いられる――という建前だが、
実際は合法化された麻薬ともいうべき使われ方をしており、依存症などが問題化している。
 成分を違法に調合したEAMもあり、これは従来の違法ドラッグと区別されない。
連邦全体で見ると、むしろ麻薬・覚醒剤の類を全般的にEAMと呼称するようになりつつある。
 悪名高い“黄金の蜂蜜酒<ミード>”も違法EAMの一種である。


【アリスの指輪】

 第二種禁制技術であるタキオン・テクノロジーの産物。荷電共役変換機環、
パリティ反転リングなどとも呼ばれる。
 名の通り環状の構造体で、大部分がタキオンの減速器からなる。
機能はいたって単純、タキオン・リングをくぐり抜けた物質の電荷を反転させるだけである。
プラスとマイナスが入れ替わるだけの話に過ぎない。

 大ごとである。
 物質の電荷が反転するということは、単純に言っても電子が陽電子に、
陽子が反陽子に変わることを意味する。つまりこのリングを通った物質は、
同じ質量の反物質に化けてしまう。それは超高効率の燃料であり、
超高威力の爆弾にもなり得る。1グラムの反物質が等量の物質と対消滅すれば、
広島型原爆の3.4倍のエネルギーを解放する。

 大型のデブリひとつ変換すれば、それだけで天体破砕クラスの反粒子爆弾が作れてしまう。
エネルギーとしての利用価値を云々する以前に、このリングは危険すぎた。ゆえに封印された。
 現在、統一銀河連邦の管理下で稼働している少数の実機を除き、過去に建造されたリング
およびその設計データ、技術研究資料等は、ほぼすべて破棄されている。
 ただ一基のみ、記録上所在不明のリングがあるとされており、連邦統合治安維持機構の
一部局がこれの行方を隠密裏に追っているという。


【超幾何工学】

 重力工学と分子工学の派生技術。人工重力で空間を変形させ、歪曲空間の中で
分子マニピュレーター等による操作を行うことで、物質の構造を高次元方向に拡張する。
自然界には存在しない性質を備えた様々なエキゾチック物質を生み出すことができるほか、
簡単にマイクロブラックホールを生成できるため、条件さえ合えばありふれた物質を
対消滅に次ぐ高効率でエネルギーに変えることもできる。

 理屈としては縮天航法と同様で、高次元の方向成分を含む重力偏差を作り出すことが肝要。
空間の変形さえ出来てしまえば、通常空間ではあり得ない結合の高分子を生成するなどの
副次的作業は、より低位の技術の組み合わせでも実現可能になる。こうした応用の容易さも
実質的なリスクを高めており、第一種禁制技術に指定すべきではないかとの議論が絶えない。

 現在は第二種禁制技術とされているが、技術レベルは最高位に近いA-2が設定されている。
これは主星系の高セキュリティ施設内限定で運用を許される位階であり、一般大衆からは
事実上隠匿されているに等しい。そのため、超幾何工学の存在自体を知らぬ市民の方が多い。

[memo]
  • 自己同一体多重化許容原理
 超幾何工学には直感を裏切るいくつもの奇妙な法則が存在している。
 うち一つが「自己同一体多重化許容原理」と呼ばれるものである。
 これは「観測可能な外部次元および内部次元の全パラメータが一致する存在体は、同時並列的にいくつ存在してもよい」
 などと言い換えられることもあるが、これでも一般人に理解可能な説明とは呼び難いため、
 大胆に解像度を落として「完全に同一の存在情報を持つ物体は、いくつでも同時に同じ位置を占められる」
 などと概説されるのが通例である。
  • 次元解凍
 次元解凍の理論モデルとして、なめらかな立方体から“メンガーのスポンジ”を生成するアルゴリズムがしばしば引用される。
 一般化すれば、これは「有限の体積から無限の面積を引き出すことができる」と同義であり、
 さらに次元を引き上げて援用すれば「わずかな高次元空間から無限の低次元空間を展開できる」ということでもある。
 (ただし元の情報量が有限である以上、展開後の情報密度も無限に希釈されてゆくことにはなる)
 また次元解凍の過程が可逆的なものであるなら、物理法則と符号化方式の許す限りの密度において
 低次元空間(の情報)をコンパクトな高次元空間構造体に圧縮することもまた可能である。


【エキゾチック蒸気機関】

 通常の蒸気機関が「燃料を消費して水を加熱し、その膨張圧で仕事をする」のに対し
「水そのものを(超高効率の)燃料にする」ことで低コスト・高出力を実現した第二種禁制技術。
 重力工学の派生技術体系である超幾何工学に基づき、微細力場格子が水分子を高次元方向へ折り畳むことで
シュヴァルツシルト半径の内側へと自己崩壊させ、ほとんど全質量をエネルギーへと変換する。
(燃料物質が水なのは、重力崩壊を誘導可能な物質の中でも構造が単純であったのと、
 調達コストを含めた扱いやすさのため)

 通常空間とのインターフェース部分に熱が溜まるため、燃料となる水の一部を筐体冷却に流用しており、
その排熱噴気が古き良き蒸気機関の排気煙を思わせるということで「エキゾチック蒸気機関」と呼ばれた。
正式名称は「量子重力誘導式次元縮退機関」であり、本物の蒸気機関とは根本的に別物。

 安価に強大なエネルギーを生み出すことができたが、使い勝手のいい電力を直接作れないことや
基礎技術となる超幾何工学の危険性などから、ケノンリアクターとの競合に敗れた。
 別名を“壊水炉”ともいう。


【停滞場<ステイシス・フィールド>】

 重力工学の応用技術。局所展開した人工重力場で時空を歪め、時間経過が極端に遅延する空間を作り出す。
内部の時間を完全に停止させることはできないが、比較的狭い領域に限れば、現在の技術でも
一秒が外界の数年に相当するほどの甚大な時空偏差を生み出せる。

 開発意図としては、生鮮品の保存や救命救急用の生命維持装置などが考えられていたが、
容易に軍事転用できるポテンシャルがそのまま潜在的リスクと看做され、第二種禁制技術の指定を受けた。
 危惧された用途としては、通常空間ではごく短時間しか存在できない危険な物質を
停滞場に封じて運搬し、そのまま弾頭としてぶつけるなどの方法が考えられる。
とくにストレンジレット弾や“アイス・クレイドル”などの準相転移兵器が警戒されており、
実現すれば、生身の人間が携行可能なサイズの爆弾で惑星や恒星を破壊できてしまうことになる。

 とはいえ基礎技術となる重力工学のテクノ・リテラシー要求水準自体が高く、また
時間の流れを大きく歪めるほどの空間歪曲を作り出すためには、莫大なエネルギーが必要になる。
大量の斥力干渉器と、ケノンリアクターなどの高出力エネルギー機関を揃えなければ、
たとえ停滞場技術のデータそのものを持っていたとしても、再現は容易ではない。


【氷の揺籃<アイス・クレイドル>】

 超幾何工学によって生み出された、水分子の異常結晶体。通常空間における完全安定物質であり、
接触した水分子を連鎖的に“氷の揺籃”へ変質させてしまう触媒の機能を果たす。
また、一度結晶してしまえば単純な熱や衝撃では破壊できなくなる。
 海洋を持つ惑星なら、“揺籃”を一粒投げ入れるだけで瞬く間に海を凍結させてしまう。
こうした危険性から第一種禁制技術に指定されており、星をも滅ぼす準相転移兵器の一つとして恐れられる。


<以下は作成途中の設定につき、採用するかどうか含め未定>

【金鎖竜機関<ファフニール・エンジン>】

 量子ブロックチェーンの発展形にあたる分散型台帳技術。銀河系の実質的な基軸通貨“カルム”の技術的基盤。
 最大の特徴は物理的な量子もつれをハッシュ鎖の生成アルゴリズムに組み込んでいること。これにより、
計算資源の高性能化などでハッシュレートがどんなに上がろうと、決済を一瞬で完了しつつ検証難度を一定に保つ。
また同時に、物理法則に守られた完全な耐衝突性をも実現する。この特異なハッシュ生成特性を、
超光速通信用の使い切り量子トークン“ジェム”に結びつけたのがカルムである。


【仮想通貨“カルム”】

 分散型台帳技術『金鎖竜機関<ファフニール・エンジン>』を用いて地球時代に実装された暗号資産の一種。
名称は「量子(Quantum)」+「黄金(Aurum)」に由来する。
 現在の銀河経済圏において、連邦や星間国家群が発行する法定通貨をも凌ぐ、最強の基軸通貨である。
かつて存在した国家の支配権を失墜せしめ、企業体群が銀河の支配者となった最大の直接要因でもある。

 暗号通貨としてはステーブルコイン(担保となる別の資産と連動し、価値の変動を抑える仮想通貨)に
分類され、初期の仮想通貨が抱えていた「価格の不安定さ」という問題点を当初から克服していた。
それだけなら特別なことはない。カルム以前から、他にも複数のステーブルコインが国際的に流通している。
 カルムが他に抜きんでた一点とは、価値の裏付けとなる資産が従来の「国家が発行する法定通貨」でも
「石油や電力などのエネルギー資源」でもなく、超光速通信用の量子ワンタイムトークン“ジェム”に
設定されたことにある。ジェムによる量子転送回線はQビット単位の使い切りだが、傍受不能の即時通信を約束する。
情報通信における速度とセキュリティの頂点規格を利用する権利が、カルムの価値を担保する無形の資産となる。
 ジェムもまた一種の暗号資産であり、カルムの管理団体“星華銀行”が超光速通信の中央交換局に
ジェムを集積することで、カルムの取引所と効率的に連携させている。同一の運営母体が資源と通貨を
一手に管理するからこそ、この強大な価値連動システムが滞りなく成立しているのである。
 発行上限は定められておらず、理論上は際限なく流通量が増大する。このような無制限発行型の仮想通貨は
過剰供給によるインフレの可能性を常に抱えているが、カルムの時価は「使えば消失するトークン」と
連動しているため、通貨としての価値が常に情報(の即時通信)へと変換され続けている。人間の欲望が
絶えざる生産と消費のサイクルを回す限り、永遠に機能し続けるシステムを内蔵した通貨であると言える。

 カルムもその歴史の始まりから最強の通貨だったわけではない。
 地球時代においては、大容量データ転送に適さない超光速通信が必要な局面など、せいぜいが惑星間の
緊急連絡程度であり、そのトークンを担保とするカルムの貨幣価値も、決して飛び抜けたものではなかった。
 すべてが変わったのは〈特異点戦争〉と、それに続く〈大喪失〉からである。
 人類の過半数が死滅するという未曽有の惨事に、迫る太陽の崩壊を前にしてなお既存の国家体制が
政争に足を引かれて協力できずにいたとき、人々を導いたのは多国籍巨大企業群であった。
彼らの迅速かつ有機的な連携により、人類は脱出船団の建造を“種族の存亡を懸けた事業”として
推し進め、恒星間宇宙への船出という壮挙を断行するに至ったのである。
 このとき、企業群がなぜかくもスムーズに協力態勢を構築し得たのか――。
 その答えこそ、太陽系の消滅という確定未来を目前にして、真の価値を潜在させ始めたカルムの存在にある。
控えめに言っても文明半壊という混乱のなか、国家の残骸をなんとか再編しようとする者たちは
あくまで政治的観点から事態の収拾を図っていた。誰も、数多ある仮想通貨の一つが
「この破滅の危機に至って初めて持ち始めた恐るべき価値」に気付いてなどいなかった。
 だが、カルムと超光速通信事業の運営母体であった企業は真っ先に気付いた。他の巨大企業も、
追随するようにその可能性を認識した。――超光速通信は、これからとてつもない価値を持つと。

 人類が生き残るには、播種船団を建造し太陽系から脱出するほかない。ならば人類はそうするだろう。
その確かな未来において、星間空間をゆく船団がいつまでも密集隊形を取っているわけがない。
それはリスク分散のための安全策でもあり、あらゆる理由を見つけて分裂しようとする人間集団の
習性を歴史から読み解いた結果の予測でもある。
 だが宇宙は広い。十万km単位ですら近接圏内と言える距離感の世界で、電磁波による従来の無線通信は
通常空間の最高速度たる光速で行われながらもなお遠く、遅すぎる。
 時間をかけてもよい通信なら我慢も出来よう。あるいは縮天航法を搭載した連絡船を飛ばしてもよい。
だが本当に緊急の、即時性が求められる情報というものは、人類文明が続く限り決して無くならない。
すなわち超光速通信の需要も絶えることはない。どころか、まさにこれから跳ね上がろうとしている。
 企業たちはどうしたか?
 来たるべきカルム経済圏の時代を予見し、また確かなものとするため、談合を結成したのである。
秘密裏にマイニングした大量のカルムとジェムを企業間で売買し、国家や大衆がその価値をようやく
認識したときには、既に採掘済みのカルムおよびジェムの大半を企業連が寡占していた。

 のちの六百年にわたる船団漂流時代〈離散紀〉にも、暗号通貨の価値を確証するコモディティという意味では
情報を即時確実に届けられる量子トークン以上のものはなかった。また旧国家群は多くの技術を喪失し、
リソースを生存のためにつぎ込まねばならない状況で、軍事力の十全な再建などは望むべくもなかった。
武力の低下はとりもなおさず、信用が命である通貨の発行・管理主体として致命的な弱体化を意味する。
この経済的衰弱が、歴史や伝統の喪失と相まって、さらに国家の権威を薄弱化させる負の循環構造を生んだ。
 翻って、船団の運営にも食い込んでいた企業群は、ほとんど絶対的な価値を約束されたカルムを大量に保有する。
この強大な資本基盤の上に、私兵すら有して、銀河を彷徨う人類文明の全経済を牛耳るようになっていったのである。
 宗教も国家も人類を導き得なくなったとき、最後に残った“神話”は貨幣であった。
テクノロジーによる支配も、企業による国際政治の壟断も、もとをただせば“価値”の掌握に端を発する。

[memo]
  • 国際社会が健全に営まれている限り、いかに巨大な超国家的企業と言えど、国を無視して専横を振るうことはできない。なぜなら国家には、企業が(本来なら)持ち得ない二つの強大な権能がある。ひとつは「暴力の独占」、もう一つは「社会契約に基づく合法的支配」である。
  • 逆に言えば、企業主導の経済先行型文明を成立せしめるには、「軍権」と「法権」の奪取が必要となる。それを成し遂げるには、何らかの破局的状況を経て国家の武力と法治が弱体化することが不可欠。そして特権と背中合わせに国家が抱える弱点として、「自らも合法性に縛られる」という制約があった。
  • しかるに、企業が国家にとって代わろうとするなら、目指すべきは「合法的プロセスによる禅譲」である。その不可能事を可能としたのが「狂ったAIによる全人類への無差別攻撃」「太陽の破壊による外宇宙への追放」「超光速通信資源を一次担保とする(企業主導の)グローバル仮想通貨による非国家的経済圏の構築」という一連のイベントだった。
  • AIとの死闘のために総力戦体制を布いた国家群は、どうにか残存人類の系外脱出までは実現したもののまったく合法的に莫大な富を蓄えていた巨大企業群への経済的依存度をズブズブと深めていき、とうてい返済が現実的でない多額の負債を抱えるまでになっていった。そこで企業連が持ち出した救済策(という体の、当初からの目的)が、政府機能の一部売却である。社有地の統治代行権、警備名目での軍備保有特権、禁制技術の管理運用にまつわる絶対裁量権……。
  • 名目上は契約に基づく外部委託ということになり、まったく合法的な取引を装っていたが、これは本来ならありえない暴挙だった。それだけ国家というフレームワークに限界が来ていた、ということでもある。
★要するに「チート仮想通貨とAIの叛乱を利用して国家群を借金漬けにし、国家機能を合法的に売却させ、強大化した企業群がそのまま人類文明圏の政治・軍事・経済を掌握」というシナリオ。実現性はたぶん無いので、ごあんしんください。