TopHistory小説・第2巻 大罪~SEVEN~
第2巻 大罪~SEVEN~

大罪~SEVEN~

六聖獣となったユダ達は、ゼウスの命に疑問を感じつつも、その責務を果たす日々を送っていた。
そんな中、天界では年に一度の「聖霊祭」が近づき、大きな賑わいを見せていた。
だが、聖霊祭が始まった途端、祭りを楽しむ天使達に突如暗黒の森の魔物が襲い掛かる。
それは、聖霊祭の前に行われたゼウスの「粛清」が原因だった!!

天界に隠された秘密、そして光の天使の行く先は――

   ■データ
    ISBN978-4-86134-193-9 C0193
    定価:本体552円+税
    発行:株式会社フロンティアワークス

<小説 帯より>
 動き出した天界
   そして六聖獣の運命は――

ユダ達が六聖獣となって一年が過ぎた。そんな中、天界では年に一度の「聖霊祭」の準備が進められ、
大きな賑わいを見せていたが、その裏ではゼウスの「粛清」が行われ――。



天空城の親睦会

 かつてのような、位階制定前のあまねく平等であった頃の関係を少しでも取り戻せたら――天使にとって最高地位になった六聖獣の面々は、最近の荒んだ天界を憂いていた 
 現状を打破すべく、彼らは天空城を解放して親睦会を催そうと企画する
 様々な正天使たちに声をかけるも、一度刻まれた位階の溝は、そう簡単には埋まらないでいた

 なかなか成果が出ない六聖獣たち
 もう無理かと思われたとき、ゴウの知り合いだという正天使たちが、彼らの声に耳を傾けてくれた
 元はゴウを慕っていた彼らが位階制定で下位へと移り、彼らの親分を気取っていたガイからも離れた――とガイからは見られていたが、色々と手違いや思い違いがあったらしく、離れていった原因は喧嘩にあり、と同時期に位階制定が重なったものらしい

 なんだかんだと言いつつ、最終的にはそれを達成してしまうガイに、ユダとルカは「気負いすぎていたのかな」と思わずにはいられなかった
 多少なりとも、やんちゃではあるが、ガイの明るさに助けられていたから

 親睦会は、今まで知らなかった天使たちと出会え、親睦を多少なりとも深めることに成功していた
 今後も、このようなことを続けて行きたい、もっともっと、あまたいる天使たちとの交流を深めて行きたい――そんな思いを強めた六聖獣たちだった



悲しみの聖霊祭

「聖霊祭」は、天界が新年を迎えるに当たって催される一大イベント
 その日のために、自らの特技などを活かして準備を進めていく
 当日は自らの腕を披露したり、食べたり飲んだりして、大いに楽しむ日
 たいていは、神官から何処の手伝いをしろと言い渡されるが、六聖獣たちは主立って何処の班に回れというお達しが来なかった
 けれども、銘々の得意なことを活かすべく、彼らは率先して手伝いに回っていた
 シンは得意のハープを奏でることを、レイは手先の器用なことを活かすべく飾り付けを、ガイはぶどう酒作りを手伝うも、サボることが多いらしく、それを目撃していたシンに言い包められていたりと言うような、和やかな気配も天界に満ちるようになっていた

 次第に近づいていく「聖霊祭」
 それは、ある意味「粛清」の季節とも言える
 古に無頼な振る舞いをし続けていた天使たちに「粛清」を促したのは、か弱き天使であったパンドラが何もできぬまま襲われていたのをユダが目撃し、助けたことによる
 見てみぬ振りができなかったユダは、ゼウスに「粛清」を行うよう進言したのだった
 それが大神にどのような作用を齎すのか――もしも、当時のユダにそれがわかっていたら、彼は進言したろうか?
 目に見えて穏やかになった天界に、あの頃のユダは、それが正しい道であると確信していた
 もしも、ゼウスの傍に誰かがいれば、それはまた変わったものになっていたかもしれない
 心に歯止めが効かなくなり、いつしか非道なる道へとひた進んでいくのを、誰かが楔となって止められていたならば――天界の運命は、また違った方向へと歩んでいたかもしれない……
 しかし、それは単なる憶測
 すでに運命は、過酷なる道へと歩み始めていたのだから


 天を離れし天使がいた
 自らの出生の秘密を知り、六聖獣候補に選ばれながらも、それを拒否し、天を捨てた兄弟が下界にいた
 天のお祭りである「聖霊祭」
 それが近づいていることを、そわそわした気分で感じていた弟のマヤ
 一方、勝手に天を降りた身だから、天のお祭りに自分たちはいけないと諭す兄のキラ
 けれども結局のところ、弟に絆されて二人は天界に戻る
 ユダから貰った二往復分の命の泉の雫
 それは、いつでも戻ってこいというユダからのメッセージでもあった

 二人にとっては懐かしい天界で、懐かしい友と再会する
 最初は突っぱねていたキラも、ゴウたちの言葉に素直に「聖霊祭」を楽しむ気になった
 たくさん食べて飲んで、踊ってはしゃいで……
 またひとつ、忘れられない思い出を、その胸の奥に刻みつけていく
 キラはきっと、これが最後だと言うだろう
 天を捨てたオレたちが、何度もきていいところではない――そう思っているからこそ
 もう二度と天界には戻らないつもりだと――ユダは、ここはおまえたちの故郷だと言ってくれるが、それに甘えるわけには行かないと
 その思いは、隠しているつもりでも伝わるもの
 マヤとキラも、そして六聖獣の面々も、最後の思い出となるかもしれないこのひと時を心行くまで楽しんでいた

 けれども、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、新年を迎える
 と、同時に異変が起こった
「粛清」によって暗黒の森に落とされた、天使ならざるものたちの怨念が、ゼウスを怨むあまり魔物となって天界に甦ったのだった
 力なき天使たちの避難誘導をゴウたちが担当し、魔物と対峙したのはユダとルカ
 一瞬の隙を突いて、魔物はユダに攻撃し詛いをかけた
 それを見計らったかのようにゼウスが現れ、魔物を「希望の箱」に封印した
 さも、それは、自らの力で魔物を退治したかのような言い草で……

 光の属性であるユダは、詛いによって苦しめられていた
 ユダ自身の強靭な精神力で、魔物に取り込まれることこそ防げているが、このままでは、目覚めぬままずっと苦しんでいるだけである
 いてもたってもいられなかったルカは、闇属性の究極奥義である闇移しを行った
 術者本人の身の安全さえも保障できないという、秘儀中の秘儀
 自らの身の危険さえも顧みず、ユダを助けたい一心でルカはそれを行ったのだった
 けれども、それを途中で止めたのがゴウだった
「ユダも大切な仲間だが、おまえも大切だ。だから、止める」と




そして、決意……


 魔物の襲来と言う形で幕を閉じた「聖霊祭」
 しかし、それは、大神ゼウスが行った無闇な「粛清」が原因となり“怨み”が魔物に変化してしまうと言う形で噴出したもの
 だが、ゼウスはそうなった原因を自らにあり、反省するという素振りを一片足りも見せず、それどころか、今回の騒ぎを自らが収めたことを神官に言い触らせている始末だという
「嘘が本当らしく聞こえるな。悔しいけど」
 それは、彼らの本音だろう
 魔物を生み出してしまうまでに、自分が悪行を重ねている事など、当の大神ゼウスは思いもしていない
 自らが全知全能の神であり、自分の意に染まぬものを罰して何が悪い――そう公言して憚らない彼は、それが本当の正義の中で行われているのかどうかさえ、思い悩む事もないのだろう
 ユダにとって、その事実は、今まで心の中に燻らせていたある決意を実行に移すことに躊躇いを覚えないほどに膨らませていく要因となる

 一番の親友であり盟友であるルカにも、やんわりと止められた
 そして、ゴウにも……
 けれども、もう見逃してはおけない
 これ以上の非道な振る舞いをするゼウスを野放しにしてはおけない
 彼をこの天界から追放し、元の平等で平和な天界を取り戻すためにも……

 光の天使は、過酷なる運命の歯車をまたひとつ推し進めた

 やがて来るだろう、平和な世界を夢見て……




TopHistory小説・第2巻 大罪~SEVEN~
最終更新:2008年12月02日 19:55