「うううー。なんだって、この世にテストなんてあるんだってばよー・・・」
「うるせー。つべこべ言わずやれ、このウスラトンカチ。」
ここはナルト宅。サスケはここでナルトに勉強を教えている。
ナルトは一人暮らしをしている。小さい頃から両親が居ないナルトは、とある縁でうみのイルカという男性に引き取られ育てられた。中学までは共に暮らしていたが、高校に入ってからはイルカの家の近くのアパートで一人暮らしをしている。
体育以外はまるでダメなナルトは、中学生のころからテスト前にはサスケやサクラに勉強を教えてもらっていた。
サスケとサクラはいつでも頭は学年でもトップクラス。
学校ではサクラに、休日は家でサスケに頼んでいた。
サスケはなんだかんだ言いながらもナルトに勉強を教えている。
「ここが直角だろ?」
「だから内積0になるから・・・あ!!そっか!!!」
ナルトは最初はよくつまづくが、公式の使い方がそれなりに分かれば自力で解けるようにはなる。
何故普段の授業ではダメかというと、サボったり寝てたりするからである。
「じゃぁ次はこっちの問題だな。これはこの公式を覚えれば簡単だ。いいか・・・」
ナルトの視線に、サスケの長い前髪が入る。
それを追うように目線を上げ、ナルトはサスケの顔を見た。
サスケの横顔を見ると、女の子がキャーキャー言うのがなんとなく分かる。
真っ黒でさらさらな髪、綺麗に整った眉、まっすぐにのびた睫毛、漆黒の瞳、すっとした鼻筋、薄い唇―――
こうもバランスの良い顔がこの世に存在するなんて神は不公平だ、とたいていの男は思う。
ナルト自身、最初にサスケを見たときには思わず息を呑んでしまった。あまりに整った顔だったから。
自分の顔も、そこまで悪くはないとは思っていたが、一瞬、ではあるが、なんともいえない敗北感に襲われた。悔しかったから速攻でそんな考え打ち消したけど。
「おい、聞いてんのか。」
「うぉ!!え・・・あっ」
ナルトはあからさまに動揺した。サスケは大きくため息をつく。
「てめぇ・・・人に教えて貰ってんのに聞いてねぇとはどういう了見だぁ・・・?」
「ごっ・・・ごめんってば・・・」
あまりのサスケの凄みを帯びた顔にナルトは後ずさりしていく。
サスケは問題集に付箋を貼り、ナルトに突き出した。
「・・・?な、なんだってば・・・?」
「これ、宿題。明日までに終わらなかったら罰ゲームだからな」
その問題数、ざっと50問。
「こ・・・これを、明日、ま・・・で・・・に・・・?」
ナルトの顔がみるみる青くなる。
「人の話聞かなくても大丈夫だったんだろ?大丈夫。それ全部テスト範囲だから。」
「で・・・でも・・・そんな数・・・」
「で・き・る・よ・な?」
サスケは口は笑っているが目が笑っていない。
綺麗な顔の人間の殺気を帯びた笑顔は相当怖い。
ナルトはそれにあらがうことはできなかった。
一日がかりのテスト勉強が終了し、ナルトはコーヒーを作っていた。
サスケはナルトのベットに座ってマンガを読んでいる。
「コーヒー出来たってばよ~サスケはブラックだよな!」
「あぁ。」
そういってサスケはナルトからコーヒーを受け取った。
ナルトはコーヒーにスティックシュガー2本とミルクを入れ、鼻歌を歌いながらスプーンを廻し、サスケの隣に座った。
その姿を見て、毎度の事ながらサスケは眉の間に皺を寄せてナルトを見る。
「・・・なんだってばよ。」
ナルトは口を尖らせてちらりとサスケを見る。
「てめぇそんなん飲んでるから脳みそ溶けるんだよ。」
「うっせぇ!オレってば苦いの飲めねぇの!!お前の方が信じらんねぇよ!!そーんな苦いの飲むなんて!!」
「ったく・・・このお子ちゃまが。」
「オレがお子ちゃまならお前はオッサンだってばよ!!」
こんなくだらない口喧嘩さえも、ナルトは楽しかった。
オレが笑って、サスケも笑っている。このまま、時間がとまればいいのに、とさえ思ってしまう。
こんな乙女思考、一体どこで培ってしまったのか。自分でも笑ってしまう。
「おい、ナルト。」
そんなことを考えているときに名前を呼ばれ、ナルトはドキッとする。
「な、何だってば?」
「これ、おもしれぇな。続きねぇの?」
そういってサスケはさっきまで読んでいたマンガを指して言った。
「あ、それ?面白いよな!!それってばうちにあるので出てるのは全部。読みたいなら貸すってばよ。」
「じゃあ借りていく。ちょっとよんでもいいか?」
「いいってばよ!」
ナルトは笑顔で答え、サスケはパラパラとそのマンガを読み進めた。
それは一人の忍者少年がドベながらもいろいろな試練を乗り越え成長していく物語。主人公も努力家で好感が持てるが、ナルトが惹かれたのはそれよりもその少年のライバル。容姿端麗、成績優秀で、主人公となにかにと張り合い(というか主人公が一方的につっかかっているのだが)、散々主人公をバカにするが、いざというときは主人公を助け、主人公と共に成長していく少年。
その少年ががなんとなく、アイツに、サスケに、似てたから。
本屋で立ち読みして、そのライバルの少年がサスケに似ているな、と思った瞬間、買ってしまっていた。自分でも笑ってしまうような理由だが。
「この、主人公さ。」
マンガを読みながら、不意にサスケがナルトに話しかけた。
ナルトがサスケを見ると、サスケは言った。
「お前に、似てるよな」
「え?」
ナルトは目を丸くして答えた。
「なんか、一つのこと考えると何も見えなくなるとことか、後先考えず突っ込むとことか、ラーメンが好きなとこも一緒じゃん。」
クスクスと笑いながら答える。
ナルトはじっとサスケを見つめていた。
自分はライバルをお前のようだと思い、サスケは主人公をオレみたいだという―――。
なんだろうか、その瞬間、『ウンメイ』みたいなものをナルトは感じた。
「それに、」
サスケはナルトを見てニヤリと笑って言った。
「ドベでウスラトンカチなところもそっくりだし。」
ナルトはポカンとしてサスケを見ていたが、言葉を理解した瞬間、頭にボッと血が上った。
「サスケてめぇオレのことバカにしてんなー!!!」
そういってナルトはサスケに覆いかぶさり、二人でじゃれあった。
その後、夜も遅くなったので、二人でナルトのバイト先であるラーメン屋『一楽』へ行き、そのまま別れた。
なぁ、サスケ。
お前はまだ続き読んでねぇけどさ、オレみたいな主人公とお前みたいなライバル、血よりも濃い絆で結ばれるんだってば。
オレとお前も、そんな風になれんのかな?だったら嬉しいな。
コイビトよりももっともっと深い絆、お前と結べたらいいな―――。
最終更新:2009年02月11日 00:46