「うっしゃあああああ!!!テストしゅーりょおおおおおおお!!!!」
監督の先生が教室を出たとともに、少年が教室の真ん中で叫んだ。
ここは木の葉高校1年1組の教室。長かった2学期の期末テストが終わったのだ。
先ほど叫んだ少年は、犬塚キバという少年だ。口を開けると鋭い犬歯がきらりと見える。
「なぁなぁナルト!!打ち上げしようぜ!!テスト打ち上げ!!!」
「おぉ!!それってばナイスアイディア!!」
肩を組まれたナルトは笑顔でその提案に応じる。
ナルト・サクラ・サスケも同じ1年1組だ。
「ナルト、バイトあるんじゃねーのか?」
「今日までテスト休みもらってるんだってばよ!!」
「おっしゃ!!サスケも行こうぜ!!あ!!あとシカマルとチョウジも!!」
キバは窓際で話していた二人の少年達にも声をかけた。
ピアスに髪を1括りに結んでいる、なんともやる気のなさそうな少年が奈良シカマル。
隣でスナック菓子をバクバク食べているのが秋道チョウジである。
「めんどくせぇ~」
「何言ってんだよ!友との親睦を深めるのは大切だろ??」
「あ、ボク『焼肉Q』の割引券持ってるよ~」
「おお!!じゃあ焼肉で打ち上げ決定だな!あ!!シノ!!お前も打ち上げ来いよ!!」
キバは光に弱いために教室でも特別にサングラスをかけること許されている少年・油女シノにも声をかけた。シノは黙って頷いた。
「何何??打ち上げするの??楽しそうじゃない、私達もまぜてよ!!」
キバに長い髪をポニーテールにしている少女・山中いのが話しかけた。
「おういいぜ!打ち上げってのは大人数であるのが楽しいからな!!いのとサクラと・・・ヒナタもか?」
いのとサクラの後ろに隠れていた少女をヒョイとキバは見た。
濃い藍色の髪をした少女・日向ヒナタはその声にビクリとした。
「あ、あの・・・みんなの邪魔にならないなら・・・」
「邪魔なんかじゃねーよ!!じゃあ決まりだな!時間は7時!!場所は焼肉Qってことで決定~!!」
そのキバの提案にみんな賛成した。
「うわーみんなと飯なんて久しぶりだってばよ!!楽しみ楽しみ~♪」
学校からの帰り道、ナルトはうきうきしながら共に帰っているサスケに話しかけた。
「オレは一言も『うん』なんて言ってないけどな。」
「いいじゃんいいじゃん!みんなでやるのが楽しいんだし!それとも、なんか用があるってば?」
ナルトは少し悲しそうにサスケの顔を覗き込む。
そのナルトに眉をひそめて「・・・別に用はねぇけど。」とサスケは答えた。
「んじゃお前も参加決定だってばよ!!」ナルトは翻って笑顔になり、スキップでサスケの数歩前に出た。
ナルトはキバに負けないくらいみんなで騒ぐのが好きだ。
みんなでギャーギャー騒いでいたら、悲しいことも辛いことも、全部忘れてしまえるから。
午後7時、焼肉Qには先ほどのメンバーが集まっていた。
「んじゃ、みんなが集まったところで、期末テストお疲れさんでした!!かんぱーい!!」
「「「カンパーイ!!!」」」
キバの挨拶のあとに打ち上げが始まった。
「はーい、サスケ君!!このお肉もう食べれるわよ♪」
「何そんな焦げた肉サスケくんの皿においてんのよいのぶた!!」
「うるさいデコリーン!!」
「・・・自分のくらい、自分で取る。」
「・・・めんどくせぇな、女って。サスケ災難だなこりゃ。」
「おいチョウジ!!なに肉そんな取ってんだよ!!オレにもよこせよ!!」
「ふっふーん♪焼肉はサバイバルなんだよキバ!!」
「ナ・・・ナルトくん・・・このお肉、焼けてるよ・・・よかったら、どうぞ。」
「おっ!ヒナタサンキュー!!シノ!!お前も食ってるか!?」
「うむ。」
いろいろな方向からいろいろな声が飛ぶ。席もみんなかわるがわるになっていた。ナルトも久しぶりなのではしゃいでいた。
そんななか気になっていたのが、不機嫌そうなサスケの姿。
喋ることもなく、ただテーブルの隅でドリンクを飲んでいる。
「ナルトォ!飲んでるか!!食ってるか!!??」
「うぇっ!!キバ、お前テンション高すぎってばよ!!」
いきなり後ろからナルトの首に腕を廻し軽く絞めながらキバが話しかけてきた。
ナルトは廻された腕を外しながら陽気にキバに答える。
「わん!!」
突然にキバの胸元からキバの愛犬・赤丸が飛び出してきた。
「わ!!赤丸!!お前まで来てのかよ!!」
「しー!!これはここの店長には内緒なんだからな!!赤丸も出てくんなっつっといたのに!」
赤丸はキバの言葉もお構い無しにナルトに飛びつき、ナルトの顔を舐め回している。
「ぷはっ!!赤丸!!くすぐったいってば!!ひゃひゃっ!!」
「ナルトは赤丸のお気に入りだからなぁ。わりィわりィ、ナルト。」
そういってべろんべろんと赤丸に舐められた顔をぐいと自分のほうに向かせて、キバはナルトの顔を拭いてやった。
「いいってばよ!オレも赤丸好きだし!!」
キバに顔を拭かれながら、赤丸を抱いたナルトはにこりと笑う。
至近距離でナルトの笑顔を見たキバは一瞬手を止めて、まじまじとナルトを見た。
「?何だってばキバ?なんか顔赤くねぇ?」
「あっ赤くなんかねーよ!!・・・てかお前、惜しいよなぁ、ホント。」
「何が。」
「いや・・・女だったら絶対可愛いよな、お前。」
「はぁ?」
ナルトの声のトーンは一気に下がる。
ナルトは高校生にしては小柄で頬も少しふっくらしている。その上この綺麗な金髪碧眼。
これが少女だったら、ものすごい愛らしく、かつ美人になったであろう。
しかし、ナルト自身はこの女みたいな顔が大嫌いだった。この顔のせいで上級生につっかかってこられたこともある。返り討ちにしたが。
ケンカならともかく、変なオッサンに声をかけられることもあった。万札を何枚かひらひらと見せられ、これで一晩相手をしてくれ、と言われたことも。そいつも軽くボコッってやったが。
「キバ、お前ってばオレがこの顔コンプレックスってこと知ってるよな・・・?」
「いや、それは知ってるけどさー、改めて見るとホントかわ・・・」
キバがみな言う前にナルトはキバの両頬をこれでもかと引張った。
「そぉんなことを言う口はこれかなぁ~キぃ~バぁ~くぅ~ん~?」
「ひっひへぇっ!悪はっはから、はらひて!!ナルほ~」
思いっきり引張っているので、キバは涙目になっている。
「もういわねぇな!キバ!!」「ふん!」
頬を引張られつつも頷いたキバを見てようやくナルトは手を離した。キバはうう~と言いながら両手で両頬をなでている。
そんな二人のやりとりを見て他の参加者ははははっと笑っていた。
「でもま、本当に女だったらそこそこイケるよなぁ。そう思わねぇ?サスケ。」
いつの間にかサスケの隣に座っていたシカマルがサスケにそう言った。
「お前もキバの二の舞になりたいのか。」
サスケは冷静に答える。それはごめんだ、とシカマルは答える。
「ナルトは、あの見た目も少々はあるかもしれねぇが、人をひきつけるやつだと思わねぇ?」
「・・・さぁな。」
「ほら、もうナルトの周りに人が集まってる。」
「・・・・」
「あいつを見てると、いろいろ面倒だって思うけど、ちゃんとやんなきゃな、って思う自分がいる。ナルトは人をそんな風に前向きにさせる力があると思うんだよなぁ。だから、きっと人はあいつに惹きつけられる。」
「・・・何が言いてぇんだよ、シカマル。」
眉間に皺を寄せてサスケはシカマルに問いただす。
「んー。別に何が言いてぇってわけでもねぇよ。思ったこと言っただけだよ。」
そう言ってシカマルはサスケの隣から離れていった。
サスケはナルトを見た。
本当にいつの間にかナルトの周りには人が集まっている。
大勢の中心でナルトは無邪気に笑っている。すると、周りの人間も自然に笑う。
ナルトが笑うと、心の中がぽっと明るくなるような気がする。
シカマルの言うとおり、ナルトは人を惹きつける何かがある、と思う。
どんな人間も、アイツと触れ合うと、惹きつけられ、魅了されるるのだろう、ナルトに。
そう、きっと、自分と同じように。
そう思った瞬間、心のどこかに違和感を感じた。その『違和感』が何を指すのか、サスケには分からなかった。
打ち上げは大いに盛り上がり、9時で終了し、現地解散となりそれぞれの家路についた。
ナルトとサスケはサクラを家まで送った。
サクラを送っている途中も全く言葉を発さず、今もいつも以上に不機嫌な顔をしているサスケをナルトはチラチラと見つつも話しかけることは出来なかった。
「・・・人の顔ジロジロ見てんじゃねぇよ。何か言いたいなら言え、ウスラトンカチ。」
いきなり喋ったサスケにびっくりしながらも、ナルトは言葉を返した。
「サスケ・・・やっぱ、打ち上げ楽しくなかったってば?」
「何で。」
「だって・・・焼肉Qでもあんま誰とも喋ってなかったみてぇだし、今も、なんか不機嫌そうだし。もしかしたら、オレが学校の帰り道んときに無理矢理誘っちまったかなぁとか思って・・・」
「・・・別に楽しくなかったわけじゃない。」
「でも・・・」
「それより、」
サスケは足を止めて不意にナルトの腕を引く。
ナルトは驚いたが、足を止めて、じっとサスケの瞳を見上げる。
サスケはナルトより若干背が高いので、自然とナルトが見上げる形になる。
ナルトは話そうとする相手の目をじっと見つめるのがクセだ。
月明かりに照らされて、蒼い瞳がところどころがキラキラしている。
その瞳に自分が映っている。そう思った瞬間、サスケはその瞳に吸い込まれるような感覚を覚えた。
自分の全てをその、透き通った蒼の中に引き込まれるようだった。
暫く何も言わず、二人は月明かりの下で至近距離で見つめあった。
「なっ何だってば!!」
ただただ見つめられるこの状況に耐えられなくなったナルトは大声でサスケに言った。
はっと我に返ったサスケは、自分の言いたかった言葉を思い出す。
「何だよ本当に・・・変だってばよサスケ。そんで、『それより』なんだよ!」
「それより・・・お前もうちょっと気を引き締めろよ。」
「気を引き締める?どういうことだってば?」
ナルトは首をかしげる。
「だから・・・お前がいつまでもそんなお子ちゃまだから、キバにあーゆーこと言われんだよ。」
「あーゆーって・・・あぁ!!もう変なこと思い出させんなよサスケ!せっかく忘れてたのに!!」
言われたのはほんの数十分前なのにもう忘れていたのか、とサスケはそんな単純なナルトに呆れる。
「まさか、お前までオレのこと可愛いなんて思ってねぇよな!サスケ!!」
頬を膨らませながらサスケにナルトは問う。
「可愛いとは思わねぇけど・・・」
その瞬間、サスケは何も言わなくなる。ナルトはサスケが少しだけ目を見開いたような気がした。
「けど、なんだってば?」
「・・・けど、すっげぇウスラトンカチだとは思う。」
べっと舌を出して言ったサスケにムキーッとナルトは怒った。
ナルトとも別れ、サスケは一人夜道を歩いていた。
―――可愛いとは思わないが、お前は『綺麗』だと思う。―――
そうナルトに言いそうになった自分に疑問を思いながら。
最終更新:2009年02月17日 02:57