1
昌豊は嘘を真に変えるため、暇を見つけては犬の訓練に勤しんだ。
元亀三(一五七二)年春、信玄子飼いの重臣四人は躑躅ヶ崎館に近い内藤邸に集まり、談議に花を咲かせていた。
┌───┐
|あっ! |
└y――-┘
∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ /⌒ヽ
( *’ー) (`・ω・) 彡`Д´ ミ (^ω^ )
/ Y i / ヽy/ヽ / y ヽ / Y ヽ
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ノ__))_) Oゞ三)三) 〈⌒ゞノ⌒_〉 (三(三_/つ
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
二∥二二∥二二∥二二∥二二∥二二∥二二∥二二∥二二∥二
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蕊蕊 蕊蕊 蕊蕊 蕊蕊
内藤家の屋敷の庭に犬が走りこんで来る。
( ^ω^)昌豊「ゲーン! もうちょっとだお!」
(U´ω`) ハッハッハッ
(`・ω・´)昌景「ゲン? あの犬に名を付けたのか」
( ^ω^)「そうだお。 修理亮となったそれがしの前の名を授けたんだお」
(`・ω・´)「成程、偏諱(へんき)のようなものだな。 源左衛門のゲンか」
ミ `Д´ 彡 信春「お主らの“昌”も武田信昌公からの偏諱授与だものな」
(U´ω`)「ハァハァわんわんお!ハァハァ」
( ^ω^)「よしよし、箕輪城から甲斐府中まで二日と一刻。 上出来だお」
(’ー’*)昌信「箕輪城から……大したものですな」
( ^ω^)「何言ってるお。 ゲンはもしかしたら……」
ミ `Д´ 彡「山城国は京から届けなければならぬ……か?」
( ^ω^)「そうだお」
(;`・ω・)「それは無茶だろう……」
(;^ω^)「おツンに忍犬じゃない事がばれたらおしまいだお!」
2
(’ー’*)「しかし、修理殿の仰る通り、お館様の上洛も夢では無くなりましたね」
ミ `Д´ 彡 「左様。 木曽路は大軍にとって難路ゆえ、遠江・三河から東海筋に上るのだろう」
(`・ω・´)「既に今川を滅ぼし、北条への示威も済んだ。 そろそろかね」
談合する四人の元に、近づく人影があった。
(;;;;;;;;;) 「皆察しがいいな」
( ^ω^)「誰だお!?」
四人が刀の柄を握ってその男を睨む。頭巾を深く被っていて人相が分からない。
(;;;;;;;;;) 「おいおい、主君に……」
男は言いながら頭巾を脱ぐ。
ミ(´∀` (彡 信玄「刃を向けるでないわ。 ふぅ」
(;^ω^)「お館様! 人が悪いお!」
四人とも片膝をつき、信玄を見つめた。
(’ー’*)「何故、修理殿の屋敷に……」
ミ(´∀` (彡 「少しは動かねば体も鈍るわ。 町を見てきた帰りよ」
ミ `Д´ 彡 「どうか御自愛下され。 お館様あっての甲斐武田でござるゆえ」
ミ(´∀` (彡 「分かっておる」
(U´ω`)「わんわんお」
縁側に座った信玄は、懐かしむような眼差しで昌豊の横に座っている犬を見た。
ミ(´∀` (彡 「……それは、修理の犬か?」
( ^ω^) 「いかにも、それがしの愛犬でござるお」
ミ(´∀` (彡 「撫でさせてくれるか」
( ^ω^) 「ご存分に」
昌豊は愛犬を抱き上げ、信玄に手渡す。信玄は膝の上に置き、撫で始めた。
3
(U´ω`)「くぅ~ん」
ミ(´∀` (彡 「こうしていると人食獅子を思い出す」
(`・ω・´)「ああ、お館様の愛犬でしたな」
ミ(´∀` (彡 「誰にでも吠えて噛みついて、狂犬さながらであったが、わしにだけは懐いておった……ゴホッ」
(’ー’*)(咳……? 妙に湿った咳をなさる……)
ミ(´∀` (彡 「わしの悪ふざけで鬼小島に殺されてしまったがな」
信玄の言葉には悔いが感じられた。そのまま膝の上で撫で続けながら、話題を戻した。
ミ(´∀` (彡 「先程の上洛の件だが……」
(`・ω・)*’ー’)^ω^)`Д´ 彡 「はっ!」
ミ(´∀` (彡 「いつとは言えぬが、遠くは無い。 とだけ伝えておこう」
(`・ω・´)「いつでも御命令下され!」
ミ(´∀` (彡 「うむ。 軍備兵糧の備え、忘れるべからず」
(`・ω・)*’ー’)^ω^)`Д´ 彡 「承知に御座る」
ミ(´∀` (彡 「ここだけの話だが……別動先鋒の一人は秋山伯耆と決めておる。 美濃遠山城を攻めて貰う」
(;^ω^)「羨ましいおぉ~!」
(`・ω・´)「伯耆の奴、喜び勇んで攻めましょうなぁ」
ミ `Д´ 彡 「遠山城主は女と聞く。 城は堅城だがさほど苦はすまい」
ミ(´∀` (彡 「ふふ……。 ゴホッ」
4
ミ(´∀` (彡 「ゴホッ! そろそろ館に戻るとしよう。 邪魔したな」
(’ー’*)「……」
( ^ω^)「家人不在にて、さしたるお構いも出来ず申し訳ございませんお」
ミ(´∀` (彡 「さらばだ」
(U´ω`)「くぅ~ん」
( ^ω^)「御忍びなれどお館様の御来訪、光栄でござるお!」
信玄は犬を膝から下ろして、立ち上がった。
(’ー’*) 「では、私はお館様をお送りしましょう」
ミ(´∀` (彡 「すまぬな、弾正。 頼む」
昌信に付き添われて内藤邸を出たところで、信玄は急に咳き込み出した。
ミ(´Д` (彡 「ゲフ! ゲフ!」
口元を抑えた指の間から血が漏れているのを見て、昌信は驚愕する。
(゚ー゚*)「やはり……お館様は」
ミ(´Д` (彡 「ウエッ! 誰にも言うまいぞ、弾正」
(゚ー゚*)「先程からお館様のご様子がおかしい事には気付いておりました。 しかし、病とは……」
ミ(´Д` (彡 「本当は、上洛が目的では無いのだ。 ゲハッ!」
信玄の口から血が溢れる。昌信は慌てて懐紙で拭った。
ミ(´Д` (彡 「わしが生きている内に……織田の力を大きく削ぐ事が目的よ」
(’ー’*)「お館様が命を削ってまでする事とは思いませぬ!」
ミ(´∀` (彡 「ふぅ……」
発作が落ち着いた信玄はゆっくりと語り出した。
5
発作が落ち着いた信玄はゆっくりと語り出した。
ミ(´∀` (彡 「よいか。 信長は既に、公方様(足利将軍)さえ手駒にしておる」
ミ(´∀` (彡 「公方様はもう傀儡じゃ。 これが利用出来なくなれば……」
(゚ー゚*)「まさか、天子様と公家衆を!?」
ミ(´∀` (彡 「それすら、いずれ打ち棄てるやも知れん」
(゚ー゚*)「……」
ミ(´∀` (彡 「上洛以前の信長であれば些かの難あれ、潰せただろう」
ミ(´∀` (彡 「今の信長は難敵であり大敵。 これを放ってわしが死ねば……」
武田は滅びる、という言葉を信玄は飲み込んだ。
ミ(´∀` (彡 「信長を討てれば良し。 出来なくとも一国に押し込める事が出来れば……」
(’ー’*) 「分かりました。 高坂弾正、お館様の御為、尽力致します」
病の事と、次の戦が上洛ではなく織田征伐に本意がある事を口外せず、そして次の遠征に力を尽くす事を一言で誓った。
ミ(´∀` (彡 「頼むぞ、弾正……」
昌信は信玄を支えながら館へ向かった。
6
同年秋、信玄は西上作戦を発動。評定において諸将に命令を下した。
ミ(´∀` (彡 「此度の戦、上洛は十分の勝ち、織田を討って五分の勝ちとしよう」
(’ー’*) 「……」
(`・ω・´) 「徳川を捻る事は当然、という訳ですな」
ミ(´∀` (彡 「そうよ。 まず三郎兵衛率いる別動隊と、わし率いる本隊が別々に徳川領に侵入する」
ミ(´∀` (彡 「その間、美濃に侵入した伯耆の別動隊が遠山城を落とす」
ハ_ハ
(゚∀゚;)秋山伯耆守信友 「……」
ミ(´∀` (彡 「山県別動隊と本隊が合流して徳川を屠りし後は西上を続け、秋山別動隊と合流する」
ミ `Д´ 彡 「隙の無い作戦、今更ながら感服致す」
( ^ω^) 「ん? 伯耆、顔色が悪いお?」
ハ_ハ
(゚∀゚;) 「え!? そんな事無いよ!」
( ^ω^) 「別動が嫌ならそれがしが代わるお。 伯耆が荷駄隊を率いる事になるがお」
ハ_ハ
(゚∀゚;) 「冗談じゃないよ!」
ミ(´∀` (彡 「ハハハ……。 ゴホッ」
昌信は信玄の咳を見逃さなかった。
(’ー’*) 「あとの細部は我々で検討致し、お館様の御裁許を戴きに参ります。 お館様は御休み下さい」
ミ(´∀` (彡 「ああ、では皆頼む」
7
信玄が去った後は、武田の領国だけでは無く近辺諸国の情報を網羅している原隼人佑昌胤に質問が飛んだ。
( ^ω^) 「徳川との戦場はどの辺になりそうかお、陣馬奉行殿」
{´昌`}原昌胤 「城攻めならば浜松城。 徳川の決断が遅くば、野戦で三方ヶ原でしょうな」
(`・ω・´)「家康の慎重臆病さが決めるか」
ミ `Д´ 彡 「では、織田とは?」
{´昌`}「これは城攻めならば岐阜城、野戦は両軍対峙するなら関ヶ原でしょうか」
(`・ω・´)「美濃辺りになるか」
{´昌`}「信長は読めませぬ。 今川との戦で果敢になったと思えば、朝倉攻めで一目散に逃げ帰ったりと」
ハ_ハ
(゚∀゚;) 「みっ、美濃遠山城を包囲するには何人位要るかな!?」
{´昌`}「透波の情報では三千人あれば十分かと。 力攻めも出来るでしょう」
ハ_ハ
(゚∀゚;) 「そっ、そっか~」
{´昌`}「各隊の間の伝達が肝要。 むかで隊(伝令)の連係が勝利をもたらしましょう」
( ^ω^) 「あっ、伝令と言えば……」
( ^ω^) (ゲンの力を試すいい機会だお!)
( ^ω^)「隼人、仮に犬が甲斐府中まで書状を届けるとしたら、どこからが限界かお?」
{´昌`} 「犬? ……そうですな、余り大きな川が無い方がいいでしょうから」
{´昌`} 「雪解けの増水が無い冬の間なら、遠州と三河の境までは大丈夫かと」
( ^ω^) 「恩にきるお!」
8
その夜、内藤邸。
( ^ω^) 「此度の遠征ではゲンも連れて行くお。 で、遠国から文を届けて貰うお」
ξ(゚、 ゚*ξ 「そう……大丈夫かしら」
(;^ω^) 「こいつは忍犬だお! 屁でも無いお!」
(U´ω`) 「わんわんお!」
ξ(゚、 ゚*ξ 「……まぁ嘘も続けりゃ真になる、かしらね」
(;^ω^)「……え!?」
ξ(゚、 ゚*ξ 「知ってましたわ。 忍犬じゃない事くらい」
(;^ω^)「いつから……?」
ξ(゚、 ゚*ξ 「はじめから」
(;^ω^)「……」
┌───────────
|すまんお! この通りだお!
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/⌒ヽ .'ノヽヾ
/⌒ヽ (; ^ω^) ξ(゚、 ゚*ξ
(∪´ω`) / ヽyヽ ハ∨/ヽ
ノ) / | 〈_」つ∞と ノ::[三L:ゝ
\(_,,,_,,,) と〈 ) 〉 (__ヽ)
(;^ω^) 「おツンが犬が苦手なのは知ってたお! しかし、この犬が余りに……」
(;^ω^) 「余りにそれがしに似ていたから……」
(U´ω`) 「くぅ~ん」
ξ(゚、 ゚*ξ 「……」
(;^ω^) 「この犬といると、自らが兄上や父上になった気がしたお!」
(;^ω^) 「愚かな事だとは分かっているお! けど、死んだ父や生き別れになった兄には会えぬお!」
おツンには昌豊が涙を堪えているのが分かった。
夫は情の厚い男だった。その為、もう会えない家族を偲んで犬を飼っていたのだ。
9
(;^ω^) 「それがしは、それがしは……」
ξ(゚、 ゚*ξ 「馬鹿ね」
(;^ω^) 「え?」
ξ(゚、 ゚*ξ 「私は一言も非難してないわ。 あなたの性根が優しい事も知ってる」
(;^ω^) 「……」
ξ(゚、 ゚*ξ 「私を助けてくれた時も、野犬を峰打ちにしてたわね。 無用の殺生を嫌うあなたらしく」
ξ(゚、 ゚*ξ 「そんなあなたに惹かれて、一緒に旅に出て、夫婦になったんですもの」
( ^ω^) 「おツン……」
ξ(゚、 ゚*ξ 「……この子はもう、家族だわ」
(U´ω`) 「くぅ~ん」
何年も連れ添った間柄だ。お互いの心が分からぬ筈が無い。
おツンも目から涙が零れるのを必死で堪えていた。こんな時、小鼻が膨らむ癖を昌豊は知っている。
( ^ω^) 「……それがしに過ぎた妻だお、おツン」
ξ(゚、 ゚*ξ 「べっ、別にそんな事ないわよ」
西上戦を控えた夜は更けていった。
最終更新:2010年06月13日 19:55