1
岐阜城に来た武田の使いは首桶を携えていた。
信長が小姓に開けさせると、中には平手汎秀の首が入っていた。
ミ(´∀` (彡 「何で、盟約を交わしているお前の将が三方ヶ原にいるんだね」
信玄は平手汎秀の首を、断交のしるしとして織田へ送ったのであった。
これを言えば、信玄も秋山信友に遠山城を攻めさせた事を問われるが、今の状況は織田に不利である。
(#‘ω‘ *) (信玄坊主めが……)
(*‘ω‘ *) 「急ぎ掃部を武田のもとへ送るぽっぽ!」
(; <●><●>) (もし戦っていたら、首だけで帰還したのは私かも知れませんね)
織田掃部は信長の一族であり、武田との交渉を任されていた。
信忠と松姫の縁談の際にも答礼使を務めた男であった。
2
信玄が血を吐き倒れたのを見て、武田の本陣は騒然となった。
ミ(´Д` (彡 「……」
(゚ー゚*) 「お館様! お館様!」
(;゙゚'ω゚') 「弾正、どういう事だ! 何故お館様が血を吐いて倒れる!」
(; ^ω^) 「あわわわ……お館様……」
ヽ∧_∧ /
/\=◎ノ
ノミ/ `Д´ミ \__从__人从__人__从从__人__从/
/= 廿三廿 < 静かにせんかお前らあッ! >
U|゚__゚| //Y∧∧V´`Y∧∧V´`/Y∧V\
ノ三八三ゝ
U U
うろたえる諸将を信春が一喝する。
叫ぶなり、倒れ込んだ信玄を抱えて喉に残った血を吐かせた。
彡`Д´ミ 「良し、これで息が止まる事は無し、と」
終わると、信玄を仰向けに寝かせ自分の陣羽織を脱いで被せた。
彡`Д´ミ 「戸板を持って参れ」
一同は、信春の一連の行動を呆けたように見つめていた。
まるで信玄が倒れた所から白日夢を見ているようだった。
彡`Д´ミ 「戸板だよ、早くな」
ここで諸将は我に返った。
( ^ω^) 「あ……承知だお! おーい! 戸板を一枚持って来いお!」
(’ー’*) 「申し訳無い、美濃殿。 本来ならば私がやらねばならない事を……」
彡`Д´ミ 「何、良いのだ」
(`・ω・´) 「流石は年長者にして、一国の器量持ち。 御見それしました」
彡`Д´ミ 「お館様とて人。 病を得る事もあろう」
(’ー’*) 「野戦で冬の風にあたり、悪くしたのやも……」
信玄は戸板に乗せられ、飛んで来た侍医・板坂法印の治療を受けた。
3
徳川との戦から二日後、十二月二十四日に遠州刑部に進軍。ここで年を越す事になった。
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≡≡ OVOゞ三) ≡≡ (三(つVつ ≡//≡≡≡≡//≡
( ^ω^) 「とりあえず、お館様の御容態を見つつ西上は続ける、と」
彡`Д´ミ 「御快癒なされた時、少しでも京に近付いているようにな」
(`・ω・´) 「織田との戦いにはお館様の采配が要る。 それまでには大丈夫だろうよ」
三人に向けて、昌信が詫びる。
(’ー’*) 「お館様の病の事、内密にしていて申し訳ありませんでした……」
(`・ω・´) 「言うな、弾正。 口止めを受けていたのだろう」
( ^ω^) 「病が知られたら、我らの士気に関わる……お館様らしいお」
この四人だけでなく武田の将兵にとっては、信玄のいない武田など想像も付かなかった。
4
信玄の寝所に赴いた四人は、床に伏す信玄に作戦の許可を得る。
∧ ∧
∧∧ (’∀’ ∧∧
ミ `Д彡 彡 ⌒ ミ ヽy「 (・ω・´ )
/ ヽv ヽ (  ̄((; `ー) L_|_と と ヽ
/ o〉 \ (''⌒`''"~`ヽ, (三(三ノ_
と _ゞ三)三) \\ ''' :::: ヽ
\ヽ,,,_,_,, /⌒\
ヽ,,___ (^ )
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(_」 〉
(三(OVO
(`・ω・´) 「お館様。 年明けより我らは三河へ侵攻、という事で良いでしょうか」
ミ(´∀` (彡 「それでいい……」
( ^ω^) (お館様……やつれてきたお……)
ミ(´∀` (彡 「三河の城攻めはお主らに任す。 頼むぞ……」
(`・ω・)*’ー’)^ω^)`Д´ 彡 「はっ!」
ミ(´∀` (彡 「それと……。 交渉ごとには信廉を影武者として使え」
(`・ω・´) 「承知にござる」
寝所を出た四人の所へ、跡部勝資が用件を伝えに来た。
( `ハ´)跡部 「織田の使いで織田掃部と言う者が来ておるぞ」
(`・ω・´) 「早速か。 信廉様に御出まし願うかね」
(`・ω・´) 「良いですな、信廉様。 口は利かない方が怒っている事も表せてよろしいかと」
ミ(´∀` (彡信廉 「やれやれ、面倒な事よ。 絵でも描いていたいわ」
5
昌景が信廉を引き連れて、織田掃部の前に姿を見せた。
織田掃部は戦々恐々の呈で平伏している。
織田掃部 「信玄公におかれましては……」
(`・ω・´) 「挨拶はよいぞ。 用件を申せ」
ミ(´∀` (彡信廉 「……」
織田掃部 「はっ。 主・信長より書状を預かって参りましたので、御覧に頂きたく」
以下に信長の送った弁明状と、それに対する信玄の返信を記すと……(甲陽軍鑑 品第三十九より)
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(*‘ω‘ *) 「家康が血気にはやって信玄公に刃向けぬよう、織田家中の者を派遣したぽっぽ」
(*‘ω‘ *) 「それが合戦となってしまい、信玄公の御成敗を受けた事は道理に適う事ぽっぽ」
(*‘ω‘ *) 「信玄公に手向かった織田家中の者の家は断絶させる」 (; <●><●>)!?
(*‘ω‘ *) 「さらに織田は徳川と断交した上で、我が嫡子・信忠を信玄公の婿として近侍させたい」
(*‘ω‘ *) 「人質も信玄公の望むまま、お出しするぽっぽ」
ミ(´∀` (彡 「武田の縁者になりたいと言って、擦り寄って来た頃の信長はともかく」
ミ(´∀` (彡 「今の信長は天下にその武威を知らしめたとは言え、その内に薄汚い欲心がある」
ミ(´∀` (彡 「聖政賢の道による政治を考えようとしない信長は、やがて天から見放され」
ミ(´∀` (彡 「ついには飼い犬に身を裂かれる、不名誉な死に方をするだろう」 (;><)!?
ミ(´∀` (彡 「今後は、信長と再び親密になる事は無いだろう」
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取りつく島も無い武田の対応に、織田掃部はうなだれて去って行った。
6
年が明け元亀四(一五七三)年一月三日、武田軍は西上を再開。三河へ侵攻し野田城を包囲する。
武田軍はこの城を力攻めにせず、包囲した上で水の手を絶つ策をとった。
この間に、昌豊は文を書いた。
( ^ω^) 「“戦勝の事、御伝え申し候。 去る十二月末、我等徳川の軍勢散々に打ち破り……”」
(;^ω^) 「これじゃ同盟家に送る戦勝報告だお!」
( ^ω^) 「“明けましておめでとう。 おツンも息災かお?” 」
( ^ω^) 「“我らは何の障害も無く、西上を続けているお”」
昌豊は信玄の発病を伏せた。
( ^ω^) 「“きっと、山ほど土産を持って甲斐に戻るお”」
( ^ω^) 「“くれぐれも体を大事にして、それがしを迎えてくれお”」
( ^ω^) 「“三河野田より 内藤修理亮昌豊”……と」
昌豊は墨が乾くと書状を折り畳み、油紙に包んだ。
( ^ω^) 「さて、後はお前次第だお。 頼むお」
/⌒ヽ
(∪´ω`) 「わんわんお!」
ノ) /ヽ=|
\(_,,,_,,,)
首にかけた竹筒に書状を入れた。
さらに、昌豊は内藤隊の陣地から出て、進軍してきた道を指差す。
( ^ω^) 「お前だけ、我らが進んできた道を辿って甲斐に戻るお」
(∪´ω`) 「くぅ~ん」
( ^ω^) 「さぁ、行くお!」
昌豊の合図に、愛犬ゲンは矢の様な勢いで飛び出していった。
その姿が見えなくなるまで昌豊は見送っていた。
7
武田軍は金山衆によって野田城の水の手を絶ち、二月十日に降伏させた。
しかし、その間も信玄の容態は悪化する一方であった。
ミ(´Д` (彡 「ゲホッ、ゲホ! ぜぇぜぇ……」
(`・ω・´) 「お館様、野田城が落ちました」
ミ(´Д` (彡 「ようやった。 さぁ、進軍させよ」
(`・ω・´) 「しかし、お館様の御容態を考えますと」
ミ(´Д` (彡 「心配無用。 すぐに良くなる……」
(´・ω・`) 「……」
武田軍は西進したが城攻めには向かわず、二月十七日、三河長篠城に入城した。
ここで信玄の病が癒えるのを待つ事となった。
∧ ∧
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ミ `-´彡 彡 ⌒ ミ / (・ω・´ )
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(三(OVO
信玄は床の中でうわ言を繰り返すようになった。
ミ(´Д` (彡 「すまぬ、兵部。 許してくれ、義信……」
これを聞いた昌景は涙を堪え切れなかった。
(`つω;) 「お館様には忘れえぬ事でしたな……。 それがしもでござる」
兄虎昌がこの場にいたらどう思うだろう、と考えると昌景はやりきれなかった。
8
信玄がこの状態では、西上は続けられない。
重臣の間で軍議が開かれ、甲斐へ撤退する事に決まった。
(`・ω・´) 「お館様、武田軍は甲斐に戻ります」
ミ(´Д` (彡 「そうか……」
昌景は西上の命に背く事に死の覚悟をしたが、信玄は力無く了承した。
( ^ω^) 「故郷で病を癒し、再び西上軍を起こすお!」
ミ(´Д` (彡 「そうだな……」
東三河から武田軍が撤退した。
その進軍は粛々とし、連戦連勝をかさねた軍にはとても見えなかった。
9
武田軍が東三河から信濃に入り、駒場に至った時である。
四月十二日、信玄は枕元に諸将を呼び集めた。
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∧∧ (’∀’ ∧∧
ミ `Д彡 彡 ⌒ ミ ヽy「 (・ω・´ )
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(三(OVO
ミ(´Д` (彡 「六年前、駿河侵攻の頃からわしは病に蝕まれ始めた……」
信玄が語り出す。枕元に集まった者達も、これが遺言である事に気付いた。
ミ(´Д` (彡 「……わしが死んだ後は」
ミ(´Д` (彡 「義侠の男、謙信入道と結べ。 あの男は情厚く……」
信玄の言葉は、異様な程に上杉謙信を高く評価していた。
幾度もの戦を通じて、分かりあったかのような口振りである。
ミ(´Д` (彡 「良いな。 遺言は以上だ」
諸将が頷く。信玄は久しぶりの笑顔を見せた。
ミ(´∀` (彡 「肩の荷が下りた様だ……。 紙と筆を持て」
信玄は震える手で筆を握ると、紙にさらさらと文字を連ねる。
昌景が受け取ると、紙には“大底還他肌骨好 不塗紅粉自風流”と記してあった。
ミ(´∀` (彡 「辞世だ。 大底は他の肌骨の好きに還す、紅粉を塗らずして自ら風流……」
(`・ω・´) 「意は?」
ミ(´∀` (彡 「ふふっ」
信玄は笑っただけで、また気を失う様に眠ってしまった。
10
それから数刻し、信玄の脈をとっていた板坂法印が告げた。
板坂法印 「御脈が早くなっております。 間も無く御臨終かと……」
(`つω;)*゚ー゚)^ω^) 「お館様! お館様!」
彡`Д´ミ 「上洛し天下に号令なさらぬのか!」
ミ(´∀` (彡 「……」
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お館様、お館様と呼ぶ声が聞こえる。
(`・ω・´) 「お館様」
ミ(´∀` (彡 「……はっ」
(’ー’*) 「御転寝(おうたたね)の所、申し訳ありませぬ」
ミ(´∀` (彡 「ここは……どこだ」
( ^ω^) 「何を仰るお。 ここは近江国水口でござるお」
ミ(´∀` (彡 「そうか……悪い夢を見ておった……」
そうだ。 自分は徳川を破った勢いで織田との決戦に臨み、そこでもまた勝ったのだ。
今、近江水口にいるとすれば京は目前である。
彡`Д´ミ 「進軍はいかにしましょうか」
ミ(´∀` (彡 「ああ。 そうだな……」
信玄は四人の顔を見渡す。
自分より年上の信春はともかく、子飼いの三人も老けたものだ。
思えば、父を甲斐より追い、当主の座に就いてから三十年以上経っている。
古典を好んで読む青年だった頃を顧みると、早く隠居して京の公家衆と解釈を語り合いたいと思った。
11
(`・ω・´) 「ゆるりと進軍しても、明後日には京洛に入りましょう」
ミ(´∀` (彡 「ならば、前もって我等の入京を知らさねばならんな」
信玄は思案した後、昌景に告げた。
ミ(´∀` (彡 「三郎兵衛……」
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|明日は…瀬田に旗を立てよ |
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ミ ;゚Д彡 彡 ⌒ ミ ヽy「 (・ω・´ )
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と _ゞ三)三) \\ ''' :::: ヽ
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(三(OVO
(`つω;) 「……はっ。 必ず」
ミ(´∀` (彡 「ふふ……」
信玄は昌景の返事を聞くと嬉しそうに笑い、息絶えた。
甲斐より出た乱世の英雄は、叶わぬ上洛の夢を見ながら没したのであった。
最終更新:2010年06月13日 20:07