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天正二(一五七四)年、夏――。
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(`д´)勝頼 「で、どうしろと言うのだ」
(’ー’*)昌信 「左様、まずは……」
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・御坊丸(信長五男、当時武田の人質)を親類衆の誰かの養子として、岩村城を預ける【織田との和睦】
・家康の弟、松平康俊と信玄の娘お菊を婚姻させる【徳川との和睦】
・この上で、内治を充実させつつ北条氏を攻略する
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(’ー’*) 「これを行った上で初めて、織田・徳川を相手にするべきかと」
(`д´) 「……」
(’ー’*) 「私、何一つ出来ない事は言っておりませんよ」
昌信の提案は不可能では無いが、今の武田からすれば無茶なものであった。現状と真逆の方針である。
実は、昌信の真意は内治の充実が狙いであり、北条は仮想敵に仕立て上げられたに過ぎない。
(`д´) 「それはそうだろうが……。 釣閑、どう思う?」
勝頼は長坂釣閑斎に意見を促す。
2
<丶´`A´`>釣閑斎 「されば……わざわざ北条との同盟を破って、織田・徳川と結ぶ必要が無いかと」
(’ー’*) 「そう考えるのも道理です」
<丶´`A´`> 「織田が畿内を制せず、徳川が三方ヶ原の損失を癒さぬ内に討つべきと思いますが……」
釣閑斎の言葉を頷きながら聞くと、昌信は口を開いた。
(’ー’*) 「浅井朝倉を滅ぼした今、信長は伊勢長島を討つでしょう」
(`д´) 「で、あろうな」
(’ー’*) 「これが終われば我らに牙を剥くと思われます。 虎の尾を踏む必要は無し」
これを聞いた勝頼は少し考えた後、妥協案を出した。
(`д´) 「織田に触れず、徳川を攻めるというのはどうだ?」
(’ー’*) 「長年の同盟を組んでいる相手を滅ぼされては、信長も天下に面目を失いますな」
<丶´`A´`> 「だから援軍に来ると? 三方ヶ原では兵三千しか送れなかったのだぞ」
(’ー’*) 「我らが高天神城を落とした時も、信長自身が兵三万を率い、三河吉田まで援軍に来ていたようですよ」
(`д´) 「それは聞いている。 だが間に合わなかったではないか」
(’ー’*) 「詫びで黄金を二袋貰ったとは言え、既に家康は信長への猜疑心が生まれているでしょう」
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(=゚ω゚) (朝倉攻めや姉川に呼び寄せておいて、徳川の危機にはさほど助けてくれぬ……)
(;゚ω゚) (信長殿は武田と戦うのを恐れ、徳川を滅ぼす気か!)
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(’ー’*) 「……と。 そして、信長はそれに気付いているはずです」
(`д´) 「……ふむ」
3
(’ー’*) 「ですから、次に徳川を攻めた時は必ず援軍に来るでしょう。 信長の面目が立ちませんから」
(’ー’*) 「さすれば、武田と織田・徳川の全面決戦となります。 これは避けるべき戦」
<丶´`A´`> 「……」
(’ー’*) 「今ならば織田も徳川も和平を受け入れるでしょう。 勝頼様、どうかお聞き入れを……」
(`д´) 「善処しよう。 弾正、下がってよいぞ」
勝頼は昌信の献策を聞いた。しかし、飽くまで聞くだけであった。
その提案が余りに現実離れしていた為である。
昌信を下がらせた後、勝頼は溜息を吐いた。
(`д´) 「……うーむ」
<丶´`A´`> 「確かに見るべき点もありますが、大半が弾正の憶測で立てられたもの」
(`д´) 「……だな」
<丶´`A´`> 「一人の者が考え出した策に全軍を挙げて乗るのは危のうございます。 あの川中島もそうでござった」
四度目の川中島の戦いで、信玄はある一人の男が提案した奇抜な策を取り入れた。
しかし、その策は敵に見破られ、逆に武田軍が窮地に陥った。
この時、信玄の弟・典厩信繁らが討ち取られ、さらに多くの兵を失った。
その男も失態を詫びる為、壮絶な討ち死にを遂げる。
(`д´) 「弾正の言い分はともかく、背信の奥平父子は叩かねばなるまい……」
4
天正三(一五七五)年四月十二日、恵林寺において信玄の葬儀が行われた。
(この時点で信玄の死から丸二年なので、三年目の翌年に行われたという説あり)
弔いは大導師を務める快川紹喜の他に、六人の高僧を招いた盛大なものだった。
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| ^ ^ ) ////゙l゙l; 南無阿弥陀仏……
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昌景は葬儀の間も、大意を答える事なく没した信玄の遺言の意味について考えていた。
(`・ω・´) (大底は他の肌骨の好きに還す、紅粉を塗らずして自ら風流……。 うーむ)
葬儀が終わり、昌景は昌豊と共に寺を後にした。
(`・ω・´) 「修理よ。 お館様の辞世の意味、お主は何と考える?」
( ^ω^) 「お? それがしが考えるに……」
( ^ω^) 「“不朽なる源を人々に伝えよう、それは飾気が無く、自然な事なのだから”……こんな感じだと思うお」
(;`・ω・) 「それはちと難解過ぎるのではないか」
余りに抽象的過ぎる解釈に昌景は唸る。
( ^ω^) 「三郎兵衛はどう見るお?」
(`・ω・´) 「“後の事は他の者に任せよう、自分はもう飾る事も無いのだから”……いかにも辞世らしいのではないか?」
( ^ω^) 「うーん、解釈にも色々あるお」
(`・ω・´) 「そうじゃ! 快川和尚の解釈を聞いてみるか!」
信玄と深い親交があり、世に知られる高僧快川紹喜ならば納得出来る解釈を答えてくれるかも知れない。
二人はそう考え、恵林寺に引き返していった。
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(’ー’*) 「おや、御二方。 忘れ物ですか」
(`・ω・´) 「おお、弾正か。 丁度良い、お主も共に参ろう」
(’ー’*) 「どちらへ?」
( ^ω^) 「和尚様のところへだお」
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不意の来訪にも驚かず、快川は茶を出してもてなしてくれた。
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| ^ ^ ) ////゙l゙l; あまり拙僧を疲れさせない方がいい
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(;`・ω・) 「導師の御勤め、お疲れのところ申し訳ありませぬ」
快川和尚 「いやいや、冗談冗談。 何用かな」
( ^ω^) 「実はお教え願いたい事がありまして……」
(`・ω・´) 「亡きお館様の辞世の事はご存知かと思いますが」
快川和尚 「あまり拙僧を侮らない方がいい。 もちろん知っておるよ」
(`・ω・´) 「我らの間で解釈を談じあっても、納得のいくものが出ないのです」
( ^ω^) 「和尚様の解釈をお聞きしたく、推参した次第でござるお」
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. | .>ノ(、_, )| そうか……あまり知らぬ方がいい事もあるが……
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そう呟くと、快川は目を閉じた。
しばらくの間を置き、三人に告げる。
快川和尚 「これから拙僧の話す事で、お主らの生涯に良くない影響が及ぶかもしれん」
(’ー’*) 「どういう事ですか?」
随分と大袈裟な言い方だ、と三人は訝った。
しかし、他の者ならともかく快川和尚の言う事に嘘があるとは思えない。
快川和尚 「それでも良い、と言うなら話そうか。 飽くまで拙僧の解釈だが」
(`・ω・´) 「……是非、お教え下さい」
快川は三人の顔を見渡す。
三人の顔は何を聞いても悔いは無い覚悟が満ちていた。
快川和尚 「よろしい。 ではお話しよう」
快川はいつに無く訥々と語り出した。
最終更新:2010年06月27日 18:04