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| ^ ^ ) さて、と
(. >ノ(、_, )ヽ、}
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快川和尚 「よいか、まずもう一度。 “大底は他の肌骨の好きに還す、紅粉を塗らずして自ら風流”」
(`・ω・)*’ー’)^ω^) 「はい」
快川和尚 「まず、“大底”は大抵。 これは天下や世相を表すと考えた方がいい」
快川和尚 「そして“他の肌骨の好きに還す”。 これは先に述べた世相が自身の意に成らぬものだと告げている」
快川和尚 「“紅粉を塗らずして”とは、飾る事無く……つまり見栄を捨て、己の本音で生きるということ」
快川和尚 「“自ら風流”……それが最も楽な事なのだから。 以上だ」
三人は瞬きもせず、快川和尚の顔を見つめていた。
しばしの沈黙を昌信が破る。
(’ー’*) 「つまりは……」
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ミ(´∀` (彡 「このままならぬ世の中では、己を偽らずに生きる事が楽なのだよ……」
ミ(´∀` (彡 「それを妨げるならば、忠義や家すら捨てて構わぬ」
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(’ー’*) 「……というのが和尚様の解釈でよろしいですか」
快川和尚 「左様。 万が一、甲斐武田が滅びる事があってもお主らは殉ぜずとも良い……と」
快川の解釈は、三人が武田の将である事を否定するものであった。
2
場は再び沈黙に包まれた。
江戸期と異なり、当時の武士にとって忠義とは絶対のものでは無い。
家臣も主を選ぶ自由があり、主家を出ていく自由もあった。
( ^ω^) 「……少なくとも」
昌豊が口を開く。
( ^ω^) 「我ら三人は、亡きお館様に多大な恩義がござるお」
(`・ω・´) 「……うむ。それがしは兄者の件」
(’ー’*) 「私は農民の身から格別のお引き立てを頂きました」
( ^ω^) 「そして、それがしは出奔の末に帰参を許され、同じくお引き立てを」
快川和尚 「……」
( ^ω^) 「例え我が身が滅びようと、武田の御家から離れる気は毛頭も無いお」
快川和尚 「では、お主らの家族や代々続く家はどうする。 道連れとするのか?」
快川の鋭い問いに昌景が答える。
(`・ω・´) 「どうあれ、恩義を受けた我ら一代は武田の御家に命を捧げ申す」
( ^ω^) 「三郎兵衛の言う通り。 甲斐武田がある限り忠節を尽くすのみだお」
快川和尚 「……そうか」
三人の澄む目を見ると、快川は何も言えなくなった。
快川和尚 「いやはや、飽くまで拙僧の解釈。 深く考えられぬように」
3
(’ー’*) 「本日は貴重な御教授、忝うございます」
快川和尚 「うむ。 またいつでも来られるといい」
(`・ω・)*’ー’)^ω^) 「失礼致す」
快川は去ってゆく三人の背をいつまでも見つめていた。
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| ^ ^ ) ……死すとも悔い無し、か
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快川も武田の治世に限界が近付いている事を知っていた。
既に、一月後に奥平氏の守る長篠城攻めが決定されていた。
このまま敵との決戦になり、敗戦すれば取り返しのつかない大打撃になる。
その末に甲斐武田の滅亡となれば、家臣で殉じる者も多いだろう。
そんな惨い光景は見たくない。三人に伝えたのはそんな心からだった。
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| ^ ^ ) ////゙l゙l; あやつらめ……命は大切にした方がいい
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快川は既に見えなくなった三人に向かって呟いた。
4
長篠城への出陣まで一ヶ月を切ってからも、昌信は撤回を進言し続けていた。
はじめの内は昌信の言に耳を傾けた勝頼も、最近では煩わしくなったのか会おうともしない。
その日、早い内から出仕した昌信は勝頼への謁見を求めた。
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(’ー’*) 「勝頼様に御意見仕るべく、高坂弾正参りました」
<丶´`A´`> 「……勝頼様は書見中である」
(’ー’*) 「ならば、お待ちしましょう。 勝頼様にお伝えあれ」
<丶´`A´`> 「……承知した」
信玄の死が公表された今、勝頼は自身が指示しなければならない政務に追われていた。
<丶´`A´`> 「勝頼様、高坂弾正が参っておりますが……」
(`д´) 「またか……。 良い、待たせておけ」
勝頼には、昌信の度重なる進言にも関わらず侵攻策を採った事による後ろめたさがあった。
会えばそれを批判されるに決まっている。
二刻(四時間)後────
<丶´`A´`> 「勝頼様。 そろそろ……」
(`д´) 「会いとうないのだ。 その内弾正も帰るだろう」
5
四刻(八時間)後────
(`д´) 「日も落ちてきたな……」
<丶´`A´`> 「勝頼様! 弾正は姿勢も崩さず、いまだ待っておりますぞ!」
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(`д´) 「何と……」
<丶´`A´`> 「いかがなされます」
(`д´) 「……今日は会わぬ。 帰るように伝えてこい」
<丶´`A´`> 「それは……承知しました……」
<丶´`A´`> 「……勝頼様は急な頭痛で伏せっておられる。 今日はお帰りあれ」
(’ー’*) 「そうですか……では」
昌信は立ち上がり、退出していった。
6
昌信は翌日も同じように出仕してきた。
<丶´`A´`> 「会うだけ会うべきかと……」
(`д´) 「仕方ないな……」
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/ ( ヽy/ )
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Oゞ三)三) / y/ ヽ
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〈ヽ i / _/つ
(`д´) 「わしは忙しい。 手短に申せ」
平伏していた昌信は顔を上げる。
(’ー’*) 「はい。 では、度重なる私の進言を反故になされたのは何故でしょうか」
(`д´) 「それは、背信した奥平を叩かねばならぬからよ」
(’ー’*) 「大勢力に挟まれた小豪族など、そのようなものです。 今日は従い、明日は叛く……」
(`д´) 「……」
(’ー’*) 「そのようにせねば生き永らえぬのです。 それを一々潰していてはキリが無いかと」
7
(`д´) 「逆に言えば、奥平ごときを潰せぬ武田は代変わりして武威が落ちた、と世に笑われるだろうが」
(’ー’*) 「そのような浅はかな輩など、笑わせておけばいいのです」
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/ ( ヽy/ ) < 勝頼の名を物笑いの種にさせよと申すか!!>
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勝頼が一喝する。昌信は怯まずに言葉を続けた。
(’ー’*) 「ここで戦わぬ事は、決して恥になりませぬ!」
(#`д´ ) 「……よし、分かった! そこまで言うなら、お主の出陣命令を解く」
(゚ー゚*) 「な……お待ち下され!」
(`д´) 「お主を除き、我らで奥平を攻める。 これで不満は無いな」
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∧ ∧ <お待ちくだされ!勝頼様!勝頼様ー!!>
( *’Д)'') //Y∧∧V´`Y∧∧V´`Y´`∧V´`Y∧V∧V\
/ ノ
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i l
と)_ノO_)
勝頼は振り返る事も無く去っていく。昌信はその背に向け、叫び続けた。
奥平討伐の出陣まで既に半月を切っていた。
最終更新:2010年07月02日 02:27