1
織田・徳川連合軍は千五百丁の鉄砲の内、五百丁を酒井忠次率いる別動隊に預けた。
酒井は雨に憔悴する兵卒を、お家芸“海老すくい”で激励しつつ鳶ヶ巣山砦に向かった。
五月二十一日未明────。
酒井忠次 「良し、かかれい!」
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( ´゚ω゚` ) 三枝守友 「何と! 敵襲か!」
鳶ヶ巣山砦の守将は信玄の異母弟・河窪信実のほか、和田業繁、名和無理之助(宗安)らである。
そして、昌景の猶子にして婿である三枝守友もそこにいた。
( ´゚ω゚` ) 「急ぎ本陣に伝令を回せ! 我らは敵に向かう!」
酒井率いる別動隊と、鳶ヶ巣山砦の武田軍守兵での激戦が始まった。
( ´゚ω゚` ) 「押されるな、かかれ!」
指揮を執る守友を酒井の鉄砲隊が狙う。
酒井忠次 「良し、放て!!」
( ´゚ω゚` ) 「ぐううっ!」
弾丸が守友の四肢を貫いた。
馬から転げ落ちた守友は本陣のある方向へと顔を向ける。
( ´゚ω゚` ) (山県殿、いや……養父上……)
( ´゚ω゚` ) (……どうか、御無事で甲斐にお戻りあれ……)
2
<ヽ―/> む!
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ノミ/`・ω・)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/=Yヨ参Yヨ
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ノ三八三ゝ
(,,/ ,,/
(`・ω・´) (婿殿の身に何か……)
鳶ヶ巣山砦をはじめ、四つの砦を落とした酒井別動隊はその勢いを駆り、武田軍駐留地の有海村を襲撃。
ここで山本勘助の子・山本勘蔵、昌信の嫡子・高坂昌澄らが討ち取られた。
奇襲は功を奏し、酒井別動隊は大戦果を上げた。
伝令によって、成功を伝えられた織田・徳川陣営は大いに湧きたった。
(=゚ω゚) 家康 「酒井がやったよぅ!」
(*‘ω‘ *) 信長 「……見事ぽっぽ。 “家康は”良い家臣に支えられているぽっぽ」
(; <●><●>) 佐久間信盛 「……」
(*‘ω‘ *) 「……ともかく、これで武田の動きは封じた。 奴らにはもう、無傷の撤退は残されて無いぽっぽ」
( <●><●>) 「必ず戦うことになる……と?」
(*‘ω‘ *) 「で、ある。 すなわち……」
・長篠城守兵・酒井別働隊と織田・徳川連合軍の挟撃を支えつつ、甲斐へ撤退する
・織田・徳川本隊を打ち破り、勝利を収める
(*‘ω‘ *) 「武田に残されたのはこの二つ。 そして、後者を選び、我らの陣に向かってくるならば……ふふふ」
3
昌景らの元にも、鳶ヶ巣山砦及び有海村駐屯地が奪われたという急報がもたらされた。
拠点が落とされた事よりも、これからの武田を担う若い将を失った事が三人を落胆させた。
(`つω;) (婿殿……安らかに眠られよ。 そして昌澄殿……弾正に申し訳が立たぬ)
彡`Д´ミ (お師殿……勘蔵らがそちらに参ります。 わしが不徳なばかりに)
昌景と信春は鳶ヶ巣山砦、有海村に向けて黙祷を捧げる。
その二人の背を昌豊は見つめていた。
( ^ω^) 「何故若い者から先に逝くのかお……まだ先のある者が……」
しばらくして信春は振り返り、出来るだけ明るい声で二人に告げた。
彡`Д´ミ 「さて、軍議に参ろうか」
( ^ω^) 「……だお!」
ミ《,M,,》シ
<ゝ(`∞´)ノ>
ミ`д´ ミ
∧_.ヘ /~( ソ )~ヽ ∧_∧
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∧_.ヘ `Д´ミ / \ (ω・´| ヘ_∧
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∧_.ヘ ^ω^) / \ (´昌`ヘ_∧
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{´昌`} 原昌胤 「織田・徳川軍の奇襲によって我が軍は……撤退路を失い申した……」
('A`) 穴山信君 「何という事だ……」
(`д´) 勝頼 「皆、策をあげよ」
様々な意見が出たが、それは撤退論と交戦論に分けられた。信長の予見通り、武田軍にはこの二つしか残されていない。
( ^ω^) 「おそらく、酒井も我ら本隊までは攻めては来ないお」
(`・ω・´) 「逆に、我らが撤退しようとすれば織田・徳川本隊との挟撃に遭うな……」
彡`Д´ミ 「このまま撤退をすれば、挟撃の末に大打撃……下手をすれば壊滅しかねん」
{´昌`} 「ただでさえ退き口(撤退戦)とは困難なもの……三増峠の北条と違い、信長は周到な準備をしているでしょう」
(`д´) 「となれば、交戦して敵に勝たねばなるまい」
軍議は次第に、織田との交戦へと傾いていった。
この場にいる全ての将が歴戦の猛者だ。一見楽に思えても、壊滅に繋がる策に乗るはずが無かった。
4
陣馬奉行である昌胤によって、布陣が定められてゆく。
{´昌`} 「三郎兵衛殿を左翼、美濃殿を右翼に据えた鶴翼の陣で攻め……」
{´昌`} 「両脇より敵陣を崩した後、中央部隊も加えた総攻撃に掛かる……これでよろしいでしょうか」
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【織田・徳川軍三万八千】 【武田軍一万五千】
( <●><●>)佐久間 # 彡`Д´ミ馬場
# (㍾・_・㍾)土屋 ヽ(゚∀゚)ノ信豊
丹羽・羽柴 # ('A`)穴山
# ( ´_ゝ`)真田
(*‘ω‘ *)信長 # (`д´)勝頼
# (`又′)小幡
# ( ^ω^)内藤
本多 # {´昌`}原
(=゚ω゚)家康 # ミ(´∀` (彡信廉
大久保 # (`・ω・´)山県
#
# (-@∀@)小山田(長篠城の抑え)
(`д´) 「うむ。 異論は無い」
{´昌`} 「挟撃の撤退戦ほどでは無いでしょうが、これもまた激戦となるでしょう……」
彡`Д´ミ 「で、あろうな」
(`・ω・´) 「おそらく信長の事、これを狙って奇襲を加えたのであろう。 奴の狙い通りになったわけだ……」
「ヽ /⌒ヽ
| / ヽ)// ミ《,M,,》シ
l/ l/ <ゝ(`∞´)ノ>
〇 〇 ミ`д´ ミ ∧_∧
∧_.ヘ /~( ソ )~ヽ <※ /ヽ だがッ!!
/ \※> / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ (ω・´|≡ヽ
∧_.ヘ `Д´ミ / \ /=Yヨ参Y
/ \※> / そ⊂ |___| )
∧_.ヘ ^ω^) / バン!γ \≡八≡ ヘ_∧
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5
昌景は叫ぶと床几から立ち上がり諸将を見渡した。
(`・ω・´) 「我らには信長のはかった理を超える、歴戦の軍略・武勇がある!」
(`・ω・´) 「用兵の真髄も熟知しておる! 地の理は信長にあろうと、人の和は武田にあり!」
(`・ω・´) 「さぁ! 我らで天の刻を掴み、信長の道理を覆そうではないか!!」
( ^ω^) 「お……おお! 三郎兵衛の言う通りだお!」
( ´_ゝ`) 真田信綱 「これは……フーンとか言ってられないな」
彡`Д´ミ (……兵部殿! 三郎兵衛は何と立派に……!)
(`д´) 「良く言った三郎兵衛!」
昌景の言葉は、武田本陣に熱風が吹きぬけたように諸将の血を熱くさせ、酔わせた。
(`‐ω‐´) (兄者……あなたがこの場にいても同じ事を叫んだでしょうな……)
昌景の胸の内には、いつでも猛将虎昌という兄がいた。
今、その兄が微笑んでいるように思える。この苦境を覆して見せよ、そう告げている。
(`・ω・´) 「勝頼さ……いや、お館様。 出陣の命を!」
(`д´) 「良し! 武田の武勇軍略をもって、この地に敵を屠る! 御旗・楯無も御照覧あれ!」
軍議は終わった。陣幕を出てきた将には、いずれにも悲壮なまでの決意が宿っていた。
6
出陣まで一刻を切った頃、山県隊に命を下している昌景の元に、信春と昌豊が近づいてきた。
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/⌒ヽ /\=◎ノ
( ^ω^) ノミ/ `Д´ミ
/l了===了 /= 廿三廿.⊃,、
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〈_/:::ノ--∞|::|_〉 ノ三八三ゝ: (_<)
ノ三八三八 ' //三/|三|\
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'"、'、、_、、: `,,;:,、'、、_、、: `,,;:,、'、、_、、: `,,;:,、'、、_、、: `,,;:,、'、、_、、: `,,;:,
(`・ω・´) 「何用ですかな」
彡`Д´ミ 「どうだ、準備も出来たろう。 少しこれで……」
そう言って信春は手に持った瓢を揺らした。たぽん、と中の酒が音を立てる。
( ^ω^) 「極上の酒らしいお! 飲まぬ手は無いお!」
この状況で酒盛りとは……。一瞬そう思った昌景であったが、すぐに考え直して笑みを浮かべた。
(`・ω・´) 「……ふふ、いただこうか」
三人は騎乗となり、先頭の信春に従って馬を走らせた。
彡`Д´ミ 「良し、ここだ」
信春が馬を止めたのは長篠城の北に接する、大通寺山の麓であった。
そこには鬱蒼とした緑の中にぽつんと、湧水が溢れ出る小さな泉があった。
すぐ近くで激戦が始まろうとしているのに、ここは驚くほど静かだ。まるで戦とは無縁の桃源郷のようだった。
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7
(`・ω・´) 「……随分と、のどかな場所ですな」
彡`Д´ミ 「いい場所だろう。 二年前の西上戦の時に見つけたのだ」
信玄の西上は長篠城までが限界であった。
信玄が病に伏していた時に、信春はこの場所を見つけたのだという。
彡`Д´ミ 「御快癒されれば、ここで酒宴を……と考えていたのだがな」
( ^ω^) 「……」
信春が盃に酒を満たし、それぞれに回す。二人とも無言のまま、それを受け取った。
彡`Д´ミ 「さぁ、飲もう」
信春に合わせて、二人が盃を掲げた。そして、三人とも一気に喉へ流し込む。
( ^ω^) 「くはぁーっ! 堪らんお!」
(`・ω・´) 「美味い! こんな美味い酒は久しぶりですぞ!」
彡`Д´ミ 「そうだろう、珍しい酒だからな。 清酒というそうだ」
当時の酒と言えば、濁酒が一般的であった。清酒は超高級品であり、滅多に飲むことが出来ない。
( ^ω^) 「水のように澄んでいながら、この美味さ……」
彡`Д´ミ 「亡きお館様は無理でも……弾正や伯耆にも飲ませてやりたかった」
三人は、この戦場にいない昌信と信友を思った。
8
そして、軍議が終わってからずっと考えていた一抹の不安を昌豊が語る。
( ^ω^) 「……仮に。 仮に、我ら老臣がこの戦で全員死んだら……」
( ^ω^) 「弾正一人が……老臣として武田を支えなければならんのかお……」
設楽ヶ原で切り結ぶであろうこの合戦は苦戦になる事が目に見えている。
強固な野戦構築を行った、倍以上の兵数を持つ敵だ。だが、武田にはこれしか道は無かった。
当然、戦死する可能性が高い。三人とも覚悟は出来ていた。
しかし、三人が憂いているのは自身の死では無い。
これから先、武田という重荷を一人で支えねばならない昌信の事であった。
(`・ω・´) 「“勝頼様に無理をさせない”という約束も反故にしてしまった……」
彡`Д´ミ 「一言、弾正に詫びたいところだな……」
そうは言っても、公式の書状でそんな事を伝えられるわけが無い。
他の者の目に触れる危険が高いからだ。
( ^ω^) 「……あっ! そうだお!」
言うなり昌豊は馬にまたがり、山を駆け下りていった。
少しの時間を経て、戻ってきた昌豊の腕には愛犬が抱かれていた。
(∪´ω`) 「くぅ~ん」
(`・ω・´) 「なるほど! 考えたな、修理!」
彡`Д´ミ 「修理の愛犬に運んでもらうわけか! これなら我らの真情を伝えられるな!」
( ^ω^) 「問題は……老犬だという事だお。 さらに距離が遠い事も心配だお……」
ここ、三河長篠城から信濃海津城までは無茶だ。昌胤が言っていた通り、甲府までが限界だろう。
老犬にとっては、それすら無理かもしれない。
( ^ω^) 「しかし……他に方法が無いお。 頼むお」
(∪´ω`) 「わんわんお!」
9
三人によって書かれた書状は、昌豊の手によって愛犬ゲンの竹筒に入れられ、厳重に封をされた。
( ^ω^) 「これが最後の仕事だお。 じゃ……頼むお」
(∪´ω`) 「わんわんお!」
いつかと同じように、愛犬は駆け出して行った。三人は姿が見えなくなるまで見送る。
(`・ω・´) 「我らの魂は、修理の犬に託して故郷へ送った」
( ^ω^) 「……」
(`・ω・´) 「魂を持たぬ我らは既に死人(しびと)。 死人に後悔など、ある筈が無い」
彡`Д´ミ 「これで何の感情も持たずに戦える……というわけか」
(`・ω・´) 「さて、そろそろ戻ろうかね。 我らの……死に場所に」
三人は大通寺山を降り、それぞれの陣に戻った。間もなく、勝頼から突撃の命が下されるだろう。
あの美酒のせいか、昌景は非常に気が昂っていた。
死人は感情を持たず、眼前の敵を切り裂くだけだ。そう唱えて、法螺貝と陣太鼓の鳴るのを待った。
やがて、腹の底まで響くような法螺貝の音が響き渡り、陣太鼓が狂ったように打ち鳴らされた。
最終更新:2010年08月15日 15:11