84 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/19(土) 16:24:07

三、海中に神殿の入り口がっ!

「あるわけないでしょ」

 遠坂に一蹴されました。

「火山島ならともかくサンゴ礁よ? 神殿が海に沈むなんて考えにくいじゃない。そもそもこの島は長い間無人島だったんでしょ。そんな大げさなものが残ってるとでも思う?」
「いやそれがな、遠坂。これがこの島の地図なんだけど」

 ここが俺たちが今いるコテージ。海岸線がこうあって、ほら、ここ。東の海中に妙な印と記述があるだろ?

「えーとなになに……。―――神殿の入り口ありマス? なにこれ」
「怪しいだろ?」
「どうだろ。ただの落書きじゃないの?」
「違うよ。わたし、見たもの」
「イリヤ?」

 イリヤの表情は暗い戦意に燃えている。静かな迫力。朝の事態にこの少女がどれほど怒っているのか、実感して背筋が寒くなった。

「一昨日、シロウと一緒に泳いだでしょ。そのとき、海の中に確かにあったよ。ちらっと見ただけだし、入口だけだけど。でも、今思えば確かに神殿だった」

 有力な証言が得られて、たちまち遠坂の顔が真剣になる。ルヴィアも加わり話は進む。時計等宝石学科が誇る双璧の天才。その二人が今、ここにいた。

「だったら、その神殿に魔術的な機構が残っているのかも……」
「確かにそうですわね。そしてもし古代の魔術が受け継がれているのでしたら、場合によっては空間移転すら可能かもしれませんわ」

 可能性があると見たとたん、魔術師の顔になる遠坂とルヴィア。時計塔にいるときはいがみ合ってばかりだったが、もしこの二人が手を組んだら、魔術師としてこれほど力強い味方はいない。

「よしっ、行ってみる価値はあるようね。士郎はボートと装備を準備して。桜とイリヤは探索魔術の支度をお願い。ルヴィア、あんたはわたしと魔術戦の用意。妙な輩がいたら問答無用でとっちめてやるんだからっ」

 やっぱり遠坂は頼りになる。その力強い眼光は自分の敗北を少しも信じていない。そして俺も勝利を確信した。思えば聖杯戦争の時からずっと、この遠坂と一緒に戦ってきたんだから。



 と、思ったんだけど。

「まさか入り口だけとはな……」
「なんで扉だけが沈んでたのよ……」

 たしかに「神殿の入り口」は存在した。「神殿の入り口」だけは。しかし肝心の中身が無いとはどういう事か。せっかく潜って調べたのに無駄骨じゃないかっ。

「ごめん……」
「イリヤのせいじゃないわよ。あんなもの見たら誰でもそう思うわ」
「しっかしなんであんなものがあんな場所に……」
「うーん……」

 三人で首を傾げていると、潜水具をつけて潜っていた桜とルヴィアが帰ってきた。

「どうだった?」
「あの扉、魔術的なものとは思えませんわね。少なくとも既存の魔術体系には該当しそうにありませんわ。それどころか奇妙な形、奇妙な紋様、奇妙な構造。まともな神経でつくったのかすら疑われます。大方どこかの道楽者が金に物を言わせた趣味の品でしょう」

 優雅じゃありませんわ、なんておっしゃるルヴィアお嬢様。優雅かどうかはともかく、そうか、魔術的なものじゃないか。だったらひとまず安心できる。

「あ、それと、金属製の標識が付いてました。あまり参考にはならないと思うんですけど、遠坂先輩、見ます?」
「ええ、ちょっと見せなさい。”南緯47度9分、西経126度43分。沈没した都市より引き上げる”?」
「沈んで、引き上げて……、結局また沈んでしまったのね。この島に流れ着いたのはなにかの縁かしら」



もうすぐ昼。食事後は何をしてみようか?
一、唐突に唱えたくなった! Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn!
二、せっかくだから海で遊ばないか?
三、調査続行。温泉が怪しい!
四、調査続行。キッチンが怪しい!
五、疲れたから昼寝だ。ベッドが俺を呼んでいる!

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最終更新:2006年09月04日 17:06