24 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/05/30(水) 05:00:40
——どちらにせよ、放っておけないよな。
家も分からない、両親が居ないなんて少女をダレカに預けるというのは、どうにも落ち着かない。
もしかしたらただの思考停止かもしれないし、あるいは……いや、考えるのは止そう。
どちらにせよ、日暮れは近い。
例え新都までだって、行った頃には日暮れになってしまうかもしれない。
本人がどこか行きたいところが無ければ、だが。
判断を保留して家に連れて行き、必要ならば善後策を考えることにしよう。
そうと決まれば、やるべき事があるな。
「俺は衛宮士郎、君の名前は?」
傍らの少女に尋ねる。
名前はどうしたって必要だ。
「……ホリィ」
少しの間を置いて少女が応える。
「それじゃホリィ、家が分からないなら、見つかるまでウチに来るか? 騒がしいところだけど……寂しかったりとかそう言うことは
無い、と思う」
ホリィと名乗った少女の方をちらりと見ると、じ、と大きな瞳を向けて。
「……怖いこと、しない?」
ぽつりとそんなことを呟いた。
「ああ、大丈夫、怖いことはないと思うぞ」
頭を撫でる。
「うん、それじゃ行く」
ホリィがぎゅっと手を握り返して笑顔を見せた。
家の入り口で、桜と遠坂が立っていた。
「先輩、突然どうし……」
「士郎、一体……」
こちらを見つけ、声を掛けようとしたところで絶句している。
それはまあ、当然、だよなあ。
「あ、あははは……」
桜はもう笑うしかないと行った虚ろな表情で笑ってしまっている。
「なんというか、もう慣れたからあんまり驚かないけど……一体どうしたのこの子」
遠坂は完全に犯罪者を見る目つきで質問してくる。
語気からすると詰問というか尋問というか拷問というか、とにかくそんな感じだけど。
とにかく、疚しいことはないので事情を説明する。
「な? 放っておくわけにもいかないだろ?」
「まあ、考え方は分からないでもないんですが……」
「連日子供を連れ帰ってくると、藤村先生は大暴れしそうよね……今居ないから良いけど……」
二人で眉間を揉んでいる。
「別に毎日ってわけじゃないだろ、偶々2日連続になっただけで」
「普通子供を連れ帰ってくるというのは一回だってありません」
ぴしゃりと桜が言葉を遮る。
……まあ、反論しようもない正論なんだけどさ。
「あの……」
「どうした、ホリィ?」
話の間顔を伏せていたホリィの顔が上がり。
「……あたし、迷惑だった? ここに居ない方が、いいの?」
泣きそうな目でみつめられた。
「そ、そんなことないぞ? な? 桜、遠坂も!」
「あ……そ、そうですよ、全然そんなことないですよ?」
「ちょ、ちょっと驚いただけだから、泣かないで、ね?」
頭を撫でたり抱きしめたり目元を拭ったりしながら三人で必死にホリィをあやす。
「うん……ありがとう、おにいちゃん、おねえちゃん……」
……やれやれ。
いきなりこの調子では、家の中に入ったらどうなることやら。
騒ぎを起こしそうな人とか、居るしなぁ……
ちなみに電柱の陰では、ヴェルナーと呼ばれたあの老人が頭を抱えていた。
玄関の戸を開け——
最終更新:2007年11月24日 13:56