127 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/06/10(日) 04:35:49
とりあえず夕食の支度はやってしまおう。
まあ、下拵えだけだろうが、鍋物は基本さえ守れば後は融通無碍だから簡単にやっつけてしまうことも出来るし。
そして今日は素材が良いのだから、どこまで味を広げるか、と言う点が焦点になる。
普段ならば少し濃いめにするところだが、子供もいて、大人もいる、さらには腹は適度に膨れてしまっている。
と、なれば素材を生かしつつ薄味にして小皿で調整してもらった方が良いだろう。
鼻歌交じりに冷蔵庫から野菜を取りだし、洗って刻み、鍋に張った水に面取り大根を入れて茹で……
「よし」
薄味だがしっかりとしている、これなら文句はそれほど
「よし、じゃないでしょこの馬鹿」
突如背後から頭部にチョップを食らった。
「……遠坂、どうしたんだ?」
「どうしたじゃないでしょ……さっき玄関で自分がなんて話したか覚えてる?」
思い返してみる。
……ああ。
ホリィの話か。
「ちゃんと話すぞ?」
そんなに大した話の量にはならないし。
「じゃあなんで料理を始めちゃうのよ……この家が結構広いって言っても集めるのに何時間も掛かる訳じゃないでしょうに」
「ああ、うん、そうだな、そうだった」
「アンタって時々そうよね、真面目に突拍子もないことを始めるの……なんで?」
聞くような事でもなかったであろうちょっとした疑問を口にした。
「さあ? なんでだろうな、多分癖みたいな物だろうから意思でどうこうってものじゃないんだろうな」
「ふぅん……ま、意図的にやってるようなら殴ってでも矯正させてたでしょうね」
二人して軽く笑う。
「ともかくさっさと来てちょうだい、もう集まってるから」
その言葉を背後に受けて、コンロの火を切り、手を拭いた。
遠坂に話したように、ホリィを連れてきた経緯にそれほど深い話があるわけではない。
軽い質問と、ついでに冷たい視線に応えながら、話はサクサクと進んだ。
ちなみにホリィはなのはとフェイトに頬ずりされたりしながら縁側に座っている。
あまりベタベタされるのは好きではないのか、困ってはいるが、だからといって嫌がっているわけでは無さそうだ。
イリヤとノインは二人の熱気にあてられたのか、ちょっと距離を置いて居間の畳の上に座っている。
「……なるほど、事情は分かったが……それで良いのかね?」
ジェネラル……カールさんが倫理的にとか社会的にとか、様々後に続けられそうなところで言葉を切って質問してくる。
当然言葉には出さないが『戦い』にだって決して良いことではないだろう。
だがそれはノインを連れてきている時点で、リスクという意味では同じ事だ。
その事だって、情報を得る為のリスクと考えれば……いや、あの時はそんな理屈は考えなかったけど。
「そりゃあんまり良くはないでしょうけど、放っておく訳にもいかないでしょう、日暮れだって近いんだし」
まだ明るいが、太陽は地平線に接し、沈むまではそれほど時間は掛からないだろう。
「確かに最近はまた物騒になってきたらしいしな、日が暮れて事件に巻き込まれる、と言うこともあり得ない話ではない……のだがな」
正しさを認めつつ、それでも渋い顔の氷室。
まあ大体何を考えているかは分かるのだが。
「ま、お人好しも度が過ぎるとこうなるってー事だな」
「蒔、君の場合は犬猫に似たようなことをしていなかったかね」
飼いこそしなかったもののな、と小さく続ける。
「うっ……それは別に良いだろ、ちょーっと肉をくれてやっただけなんだから」
ふいっと目を背ける。
「あら、お優しいのですね」
ルヴィアの言葉に頬を少しだけ赤らめる。
「う、うるさいな、ほら、今はそう言うこと話してないだろ、あの子をどーすんだって事だよ」
ま、そうだな……それが問題だ。
最終更新:2007年11月24日 13:58