268 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/06/21(木) 03:54:54

イリヤを森まで送っていく事にしよう。
「もうすぐ日が暮れるし、送るよ」
他にやることはあるはずなのに、どうしてだろう。
何故か、イリヤと離れるのは躊躇われた。
「もしかして、心配してくれてる?」
イリヤは足を止めて、半分だけ振り返る。
「そりゃ心配だよ……近頃は物騒だからな」
「うんうん、女の子を大切にするような男の子になっておねーさん嬉しいわ」
人差し指を立てて嬉しそうに笑う。
「それじゃ、行きましょう?」
きゅっとイリヤが袖を掴む。
「あ、ちょっと待ったイリヤ、無言で何回も居なくなるのは問題だろ? だから一言だけ声を掛けてからにしておくよ」
「うん、それじゃそうしましょう?」

「桜、ちょっと良いか?」
気付けば電話は既に終わっていた。
居間で卓袱台に肘をつき、ぼんやりとテレビを見ていた桜に声を掛ける。
「は、はい? どうしました先輩?」
がばりと桜が振り向く。
「ん? どうした桜? ちょっと顔が青いぞ?」
ほんの少しの変化だったが、なんとなく、いつもより顔が青ざめているように見えた。
「い、いえ、何でもないですから……どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとイリヤを送ってくるから、遅くなるようだったら鍋だけ作っておいてくれるか? 準備はしてあるから」
「あ、はい、わかりました」
「ん? イリヤスフィール嬢をか?」
桜が頷くのとほぼ同時に向かい側で本を読んでいた氷室が顔を上げて問うてくる。
一瞬だけ言っている意味が分からなかったが、すぐに理解した。
思い出すのに難儀したが、イリヤとは一緒に住んでいる、という嘘からだったんだよな、今ここに氷室達が居るのは。
「ああ……ちょっとした家庭の事情、と言うヤツだよ」
「ふむ、そうか……ならば手早く行ってくると良い、日が暮れるまでそう時間はないだろうし、私や間桐さんの方も少し話があるのでな


「あ、いえ、私は別に……」
桜がわたわたと慌てるが、その様子から何か話がありそうだ、というのは読み取れた。
「……わかった、それじゃ帰りは急いで戻ってくる」
「はい、それじゃ気をつけて行ってきてくださいね」
深呼吸を一度して、落ち着いた桜が笑顔で言った。


「それにしてもシロウ、本当に良いの? 私を疑えって言ったばっかりなのに」
玄関の戸を潜ったとき、イリヤはそんなことを言ってきた。
「んー……俺はイリヤを疑わないから、ってのじゃ駄目かな?」
その解答に、イリヤは少し溜息を漏らす。
「そんな風に信頼されたら、なんにもできないじゃない」
「そうでしょうな、貴女はお優しい……衛宮君、右手前の電柱を」
言われた先に視線を向けると、そこに狙撃兵が出現した。
そしてその狙撃兵のライフルがきっちりと眉間を狙っているのがあっさりと理解できた。
「うっわぁ……もしかしてずっと?」
両手を挙げたくなるが、ふっと構えたライフルを外して狙撃兵が消失する。
「一応の用心だよ、私の独断でね……何しろ一応、私も彼の人の配下でな、勿論全面的に賛同しているわけではないがね」
そう言って歯を見せて笑う。
目は笑っていなかった。
もしかしたら彼は護衛の役目も果たしてくれていたのかもしれないが、命令如何であっさりと暗殺に取って変わったことだろう。
「なるほど、あれはジェネラルの特殊能力、ってところか?」
姿を消して隠れることをしなかった彼のことを付き人の武人か何かだと思っていたが、どうやらジェネラル——ヒトラー配下の人間らし

い。
そういえばルヴィアのジェネラル——マンネルヘイム氏にしても部下を召還していた。
直接見たのは数人だけだったし、言葉を交わすことはなかったが、見ることの無かったこの家での戦闘ではかなりの数を召還し、そして

戦力の消耗を避けていたという。
それがこの人のように、自我を持つ存在だったとすれば納得だ。
そうであれば戦力として召還できるのはかつての配下であった人間達に他ならない。
「勿論私自身が使える兵力は彼から貸与された者達だし、私自身は戦えんと言う意味では同じだ。
 私は事故で一線を退いたためにな……これがハインツあたりならば別かもしれんがね」
ハインツ、と聞けばおよそ誰か分かる。
電撃戦の生みの親、ハインツ・グデーリアンだろう。
「ああ、あの人は……ね」
何しろ最前線で指揮をする、のみならず戦車の機銃でポーランド歩兵を薙ぎ倒した、などという逸話まで残っている程である。
……上級大将なんて高官なのにな。
「ま、それは良い……君も行くのだろう? 君を攻撃する意思はもうないから安心したまえ」
一人歩き出して振り返るその口元の笑みは、僅かに獣を思わせた。

269 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/06/21(木) 03:56:43

ひぐらしのなく頃に『竜宮レナ』:「そうですね、急ぎましょう」イリヤの手を握って歩き出す
沈黙の艦隊『アレックス・P・ナガブチ』:「あ、そうだ」学園の様子をついでに見ていく、というのはどうだろうか?
ポケットの中の戦争『アルフレッド・イズルハ』:「その前に商店街にでも寄って行きませんか? 少しくらい足りない物もあるでしょう?」ヴェルナー氏に提案する


選択仕入れると本文が長すぎると言われたのでせっかくだから選択肢の他にちょっとしたクイズを。
選択肢の名前に書かれた3人は作中である共通するセリフを言いますが、それは何でしょう?
とりあえず期限は……次の投下か日曜までくらいと言うことで。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年11月24日 14:04